2014年1月31日金曜日

「北条政子」 永井路子 1990 ★★

婚期を過ぎても、誰も夜這いに来てくれないモテない政子。そんな時に届いた手紙に「遅れてきた恋」かとソワソワしていたら、何やら訪れてきた男は隣の下女の部屋に入ってしまったようで、嫉妬と悔しさに狂おしくなる政子。

「今度は何読んでるの?」と聞いてくる妻に、そんな話をすると、「なんだか面白そうじゃない。政子ってそんな風だったの?」と興味を示す。今ならアラサーやらアラフォーやらと呼ばれ、親に心配されつつも、きっと相性の合う人が出てくるはずだと信じて待つ乙女心。どんな時代になっても、女性の心は変わらないというところだろうか。

伊豆でそこそこの有力者の娘として過ごす政子。その彼女の一生を決定付けたのが流人・源頼朝との出会い。そして燃えるような恋。都の優雅さを漂わせる頼朝に上手いこと手のひらで転がされてしまう政子。そして徐々に夢中になっていく自分の心もコントロールできず、雨の中頼朝のもとへと駈けて行く。

平氏から源氏へと、世の中心が大きく動いた平安末期。そして訪れた坂東武者の鎌倉時代。征夷大将軍となった夫・頼朝を支え、2代3代と短命で終わった息子達の後に、自ら尼将軍として幕府を取り仕切った強き女の印象が強い政子だが、本書ではあくまで女性として恋をし、夫に振り回され、子供を失い悲しみにくれる母として、そして将軍となる子供達との確執と、世の表舞台に引き出された一人の女性の悲しみと苦しみに満ちた生涯として描きだす。

世を変える活躍をする男がいれば、その後ろでじっと世の変化を見続ける女がいる訳で、どこかの田舎でなんともない一生を送っていたかもしれない彼女もまた、自ら望んでその役割を演じていた訳でもないのだろうと改めて気がつかせてくれる女性の視点で描かれた一冊であろう。
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目次
/あしあと
/京みやげ
/父と子
/こがらしの館
/夜の峠
/からす天狗
/月下兵鼓
/白玉の・・・
/海光る
/炎
/泣きぼくろ
/芙蓉咲くとき
/白い扇
/朝のひぐらし
/甲はじめ
/灯火の祭
/野は嵐
/見わたせば
/黒い風の賦
/京の舞姫
/柳の庭
/妄執の館
/月歌
/花嫁の興
/小さきいのち
/幻の船
/修羅燃え
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