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2012年10月11日木曜日

「命の遺伝子」 高嶋哲夫 ★★


最先端の遺伝子研究、
暗殺、
ナチスの残党、
第4帝国の秘密を残す南米、
細胞の分裂回数を決める遺伝子:テロメア、
バチカンの陰謀、
驚異的な回復力を備える文明と隔離された民族。

これだけ見ると笹本稜平の本かと思ってしまうが、原発、自然災害、エネルギーとその活動を広げる作者の新しいフィールド。

「ES細胞―万能細胞への夢と禁忌」ではないが、ノーベル賞の受賞で一気に加速するであろうIPS細胞の研究が突きつけるであろう、究極の選択。それは自らのクローン製作と拒絶反応を起こさない若い細胞に満ちた「自らの」身体への移植を通して見られる不死の世界。

その時に人類に求められるのは、「神の炎」と呼ばれた原発の技術を手にした時と同様に、「どこで止めるか」の勇気と自制を持つことであるだろう。

こんなにせちがなく閉塞感に漂う世界でも、そこに生きる生命たちは未だ「たった一度の」命を生きている。そして皮膚の後ろには誰もが真っ赤な血を循環させて、フラジャイルなその存在を支えているからこそ、人生は悪くないと言えるのだろうと思いを馳せるにいられない。


2010年6月8日火曜日

「DANCER ダンサー」 柴田哲孝 2007 ★★★


「河童」、「天狗」、「竜」と徹底して日本の伝説上の古代説をモチーフにして、現代の時事問題と絡めながら、ハードボイルドな物語を展開していく作者なだけに、どうにかもう一絞りして、なんとか上記の列に加われるような生物を見つけ出してもらいたかった。恐らく「ツチノコ」も考えたが、どうも品位にかけるので諦めざるを得なかったのだろうと勝手に想像するが、「ダンサー」はないだろうとややがっかりするタイトル。

物語は昨今話題のキメラ(Chimera)に関するもの。二個以上の胚に由来する細胞集団から形成された個体であり、ギリシャ神話に登場する生物キマイラを語源にする、いわゆる遺伝子操作によって生まれた生物という意味。

ES細胞―万能細胞への夢と禁忌」にも描かれるように、臓器移植など無限の可能性を秘めるのと同時に、恐ろしい方向性へと動き出す可能性も秘めている遺伝子操作技術。その危険性をお決まりのUMAと絡め、もう一つ人間ドラマを絡めさせて物語りは展開する。

トランス・ジェニック動物と呼ばれる人間の遺伝子を持つマウス。体細胞核移植によるヒトES細胞株を植えつけられ、免疫システムの拒否反応を検査される。喧々諤々の議論が繰り返され、論理的な意見から、宗教的見解、医学的な可能性まで様々な立場からの議論がなされるその技術の在り方。人が生物の創造主になりうるという可能性。

「愛するものができるとその愛の重さの分だけ確実に弱くなる」

「嗜好品に贅沢を怠ると男は精神が枯渇する」

如何にもアウトドアタイプの作者らいし、肉食系の一冊。そして相変わらず「モノ」にこだわりを見せる主人公の様々な台詞。

トランスジェニック動物とキメラの違いを、ダンサーに人格を与えるかの様に説明する終盤。UMAからまた新しい生物へとその世界観を広げたという一冊なのだろうか。