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2016年3月11日金曜日

「トイレのピエタ」 松永大司 2015 ★


松永大司

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スタッフ
監督 松永大司
脚本 松永大司
原作 松永大司『トイレのピエタ』
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キャスト
園田宏(余命宣告される元芸大生): 野田洋次郎
宮田真衣(高校生):杉咲花
横田亨(がん病院でのルームメイト):リリー・フランキー
尾崎さつき(宏の元彼女):市川紗椰
園田智恵(宏の母):大竹しのぶ
園田一男(宏の父):岩松了
橋本敬子(がんで入院する子供の母):宮沢りえ
橋本拓人(敬子の息子):澤田陸
武田晴子:MEGUMI
金沢:佐藤健
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建築という仕事柄、普段からアートに関する人々と接する機会をいただくことがある。美術館のキュレーターや、アートイベントのダイレクター、それにギャラリストやアーティスト。

改めて思うのが、普段日常で会っている「アートを生業としている人々」は、厳しい競争というフィルターをすでに潜り抜けてきている人であり、その作品やキュレーション能力において、世間からある一定の認知を受け、才能を認められ、絵を描いたり、作品を残すことに時間を割くことを可能とした人であるということ。

その中でもキャリアの段階において、それぞれにまた厳しい競争があり、その中で再度ふるいにかけられ、残った人がより上のステージにて、より大きな自由を得て信じる「アート」を世に送り出すことになる。

アーティストとして特別な才能と技術を身につけるため、芸術大学や独自に学ぶ。しかしその後どうにかして世に出るためには、誰かの目に留まり、評価してもらい、展覧会などの機会を得ていかなければいけない。その為に採用されているのが全国に散らばる様々な分野のアートを手がけるギャラリーシステム。才能があると目をつけたアーティストとギャラリーが何かしらの契約を結び、製作を援助し、方向性を語らいあい、そして展覧会を企画して世の目につくようにし、活躍の場を広げていくことで、アーティストの作品の価値を高めていく。

絵がうまかったり、独特の完成があり作品のクオリティを高めることができることと、それを誰かに知ってもらい、自らの活動を支える収入に変換すること。その二つはまったく異なる能力であり、小さなころからずっと絵を描いてきた人に、ある年齢からいきなり後者の仕事もしろと言っても、なかなかうまくできるものではない。営業や広報、そして人との付き合い。そんな対外的な才能とは違って、深く自らに向き合う能力があってこそできる作品もあるはずである。

しかし、現実は社交的で人付き合いがうまい、人脈が広い、可愛かったり、イケメンであったりと、絵の才能とは違う部分での要素を持っていることが、「誰かに自分の作品を知ってもらう」という点を突破するには大きな力を発揮する。

学生時代は同級生からも一目置かれ才能があるとされた芸大生。卒業後、定職に付くこともなく、アルバイトのビルの窓の清掃を行いながら、徐々に絵を描くことから遠ざかり、もやもやした気持ちを抱えながらも、クラブに通い刹那的に日々を過ごしていく主人公。

そんな主人公が突きつけられたのはいきなりの「がん」と「余命」宣告。そんな折にであった日常に苛立ちながらまっすぐに感情をむき出しにしてくる女子高生。徐々に弱る自らの身体と、「死」を受け入れながら生きていく周りの患者仲間の姿、そしてそんな自分の深刻さを物ともしない様に振舞う女子高生の真衣に振り回されながら、徐々に自分の人生を振り返り、自分の周りにいる人々と再度向き合うことになる宏。

この主人公を若者に人気だというロックバンド・RADWIMPSのボーカルの野田洋次郎が演じたことで、大きな話題を呼んで、かつ様々な映画賞にてもいろいろな賞を受賞しているようであるが、地方から絵を志して東京に出てきて、自ら求める「アート」と作品制作以外のことで評価されるアートの現状とうまく着地点を見つけられぬまま、漂うように今を生きる若者の演技はやはり真に迫ったものがある。

「余命」という自らの命の残り時間を直視したときに、人が何に時間を費やすのか。そこにその人が過ごしてきた一生の本質が見えてくる。そして主人公が選んだのは、出会った人々との記憶をとどめるように、アパートのトイレに「ピエタ」をモチーフとした女子高生の姿を描くこと。

学生のように若すぎず、社会人としての責任を持つほど老い過ぎず、モラトリアムの中で向き合う自らの残された時間。そこにはなかなか惹きつけられるものがあったが、今度アート関係の友達にぜひともどれくらいのリアリティがあるのかと感想を聞いてみたいものである。



2016年3月7日月曜日

「海街diary」 是枝裕和 2015 ★★★

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スタッフ
監督 是枝裕和
脚本 是枝裕和
原作 吉田秋生『海街diary』
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キャスト
香田幸(三姉妹の長女): 綾瀬はるか
香田佳乃(三姉妹の次女):長澤まさみ
香田千佳(三姉妹の三女):夏帆
浅野すず(三姉妹の異母妹):広瀬すず
佐々木都(三姉妹の母):大竹しのぶ
椎名和也(医師):堤真一
二ノ宮さち子(海猫食堂店主):風吹ジュン
福田仙一(山猫亭店主):リリー・フランキー
菊池史代(大船のおばちゃん):樹木希林
坂下美海(佳乃の上司):加瀬亮
井上泰之(湘南オクトパス監督):鈴木亮平
浜田三蔵(千佳の恋人):池田貴史
藤井朋章(店長、佳乃の恋人):坂口健太郎
尾崎風太(湘南オクトパス選手):前田旺志郎
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様々なところで映画賞を総なめしているらしいこの作品。大ヒットを記録しているということで、ヒットした漫画の実写化の流れも、これでより強固なものになるだろうと予想させる一作だろう。

舞台である「鎌倉」の落ち着いた街並みと豊かに残る自然の姿を前面にだし、全編を通して認識できる場所があちこちに登場するのも、映画を見えはロケ地を巡る観光客を期待する最近の邦画の流れであるのだろう。

主演の綾瀬はるかや、最近どの邦画を見ても出演しているように思われる、大竹しのぶ、リリー・フランキー、樹木希林や風吹ジュンなどの安定した脇役の演技もさることながら、自由奔放な次女の役を演じる長澤まさみの演技が非常に自然で好感が持てる。

海があって、里山があり、家族がともに住まう家があり、様々な舞台となる縁側がある。そんな日本の良き風景をふんだんに散りばめたこの映画と漫画が現代にヒットしているというのも、それが日本全国から失われつつある現代を投影しているからだろうかと想像を膨らませる。

今年も「住みたい街ランキング」の上位の常連としてランクインしたという鎌倉。古代の時代から人が集って住まったこの場所には、やはり生活の場として「心地よい」と感じる何かがあるのだろうと想像する。

この映画を見たことで、また紫陽花の咲く時期にこの街を訪れては、あちこちで「え、映画のシーンで使われていた場所だ」と発見するのもまた新たなこの街の楽しみとなっていくのだろう。















2014年12月1日月曜日

「鉄道員(ぽっぽや)」 降旗康男 1999 ★★

高倉健が亡くなったというニュースが流れ、周囲の中国人が「大変な俳優を失ったね。」と声をかけてくることに驚いた。なんでも海外文化が解禁になった時に初めて持ち込まれた映画が高倉健主演の映画であり、同年代の中国人は殆どが彼の映画を見たことがあるという。世界的な映画監督のジャン・イーモウや中国の新聞各社がコメントを出したように、中国にとっても高倉健と言う俳優は、時代を代表する一人出会ったということが良く理解される。

その割りに、高倉健の映画を何本見たことがあるかと考え直すが、ほとんど見たことがないことに気がつく。亡くなることがきっかけで出演作を見ようと思うのもまた、一つのきっかけだろうということで、何本か高倉映画を観てみることにする。

その一本目となったのがこの映画。当時飛ぶ鳥を落とす勢いであった広末涼子が高倉健と共演をすることでテレビでも随分プロモーションがされていたので、すっかり観た気になってしまっていたが、よくよく考えると観ていなかったようで、改めて冬の北海道の寒さを想像しながらじっくり「不器用さ」を観ることにする。

何かの本で、南極観察鯛に参加していた人に、「どんな人間が一番強いですか?」という質問に、「アメリカ人の様に屈強な肉体を持っている人間でもなく、ただただ毎日外に嵐が吹いていようが雨で何日も閉じ込められようが、同じ時間に起きて、歯を磨き、顔を洗って食事を取り、同じペースで一日を繰り返すことができる人間。それが一番持ちこたえるのです」という答えが返ってきたという話を見たことがあるが、まさにそんな愚直な男の姿を見せてくれる高倉健。

自分の信念に従い、愚直に真っ直ぐに、決して派手ではないが毎日毎日、同じことを繰り返すことで社会に対して奉仕する、そんな不器用な男の姿。

自由主義経済が闊歩する現代社会においては、採算が取れないならば閉鎖して当然とばっさりと切り捨てられてしまうような地方のローカル線。かつての賑わいを失い、出て行くことも無く取り残されたように暮らす人々。その人たちの生活を支えるために存続するローカル線。そしてそこで職務を全うする男。

雪積もるプラットフォームで赤い旗を振る姿はやはり日本だけでなく、世界が見惚れた名優の絵になる姿だと納得する作品である。
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スタッフ
監督 降旗康男
原作 浅田次郎
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キャスト
佐藤乙松  高倉健
杉浦仙次  小林稔侍
佐藤静枝  大竹しのぶ
佐藤雪子  広末涼子
杉浦明子  田中好子 
吉岡敏行  安藤政信 
吉岡肇   志村けん  
集配人   坂東英二
牛乳配達  きたろう
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