2021年10月27日水曜日
Red House レッド・ハウス_Philip Webb フィリップ・ウェッブ_ 1859 ★★★
2021年10月13日水曜日
Sir John Soane's Museum ジョン・ソーン美術館_John Soane ジョン・ソーン_ 1809 ★★★★★
母校であるAA Schoolより招聘を受け、5年間その任を全うしたのだが、その最後の年となった2019年。Intermidiate(日本の学部1,2年生に当たる)のあるクラスが一年を通してのテーマと上げていたのが、[Crude Hints Towards an Architectural Academy of the Future]。つまり未来における建築の学びの場とは?という投げかけで、その中のヒントとして [House Museum]、つまり建築家の作った住宅、もしくは建築家自身が住んだ自邸が建築を考える上で大きな意味を持つのではないかということで、その最初の一歩として挙げていたのがイギリスを代表する大建築家、ジョン・ソーン(John Soane)の自邸であり、現在は美術館として公開されているジョン・ソーン美術館(Sir John Soane's Museum)。
エリートであったソーンは、グランド・ツアーとしてイタリアを訪れる機会を得て、着実にキャリアを積み重ね、イングランド銀行の設計を行うなど、英国を代表する建築家として活躍した。その一方様々な場を訪れた際に収集した絵画や建築に関わる装飾品などを自宅に飾り、テラスハウスの両脇の家も徐々に買い取り、自宅内の展示も増殖させていったことで知られている。
そのソーンの収集品と自宅を見せるのがジョン・ソーン美術館で、内部は博物館として設計された訳でなく、自宅に展示していたもの、そして徐々に拡張されていったこともあり、まるで迷宮の様な複雑な空間に、空間を目いっぱい利用して収集物を展示し、壁も天井も所狭しともので埋められているその空間は、まるでソーンの頭の中を覗いているような一種おどろおどろしい空間となっている。
ジェフリー・バワの兄であるベヴィス・バワの作り上げたブリーフ・ガーデンも一人の人間の一生に渡る執着の空間化という点では同種の雰囲気を醸し出しているが、スリランカのそして田舎の広大な地にひっそり隠れるようにして作られた外部と一体化した理想郷に対し、こちらはロンドンという都市の仮面を被ったテラスハウスの一角に、ひっそりと作り上げられた洞窟の様な空間性。実際に訪れた際には、様々な場所が夥しいモノによって覆われていながら、その一つでもその場所から少しでもずれていたら間違っているという印象を受けるほど、光の入り方、視線を注ぐメインの彫像の位置、そしてサイズを変える様々なオブジェクトの並べ方など、それぞれの場所で一つ一つ空間が完結していることには驚かされる。
そして、どこが入り口で、参観経路がある訳でもなく、ソーンが一日を過ごし、そして建築に向き合う為に様々な場所に座り、収集したモノ達と対話し、そしてアイデアを受け取って図面に向かっていた、そんなHouse Museumの時間の流れが生き生きと伝わってくる。
この空間は恐らくどの時代を生きた人々にも深い感銘を与えることを証明するかのように、18世紀の建築家でもあり、画家でもあった ジョゼフ・ガンディ (Joseph Gandy)の描いたこのジョン・ソーン美術館の絵が、この空間性を最もよく表現している。
日常の中に目にする場に置くモノ。それはその建築家の頭の中であると同時に、今まで訪れてきた建築や都市の写しでもある。東洋においては庭園が世界のミニチュアとしてその役割を果たし、思考の場として機能してきた部分もあるのあろう。
2021年9月22日水曜日
2 Willow Road_Erno Goldfinger エルノ・ゴールドフィンガー_1939 ★★★ ★
印象的だった建築家の自邸を考えていくと、やはりこれは外せないと思うのがゴールドフィンガー(Erno Goldfinger)の2 Willow Road。かつて一度スケッチし纏めてみたが、今回改めてじっくりと考えてみることにする。
改めてこの住宅を考えてみると、記憶に残るのは、ダイニングから横長の窓で切り取られた敷地の北に位置するハムステッド・ヒース(Hampstead Heath)への眺望。ピクチャー・フレームとして機能するこの横長窓は、図面をよく見ると、一階にある柱が2階では無くなっているのに気が付く。逆の南側では一階の柱がそのまま2階を貫通し、3階まで到達していることから、構造的にはこの北側の柱もあった方が合理的だったにも関わらず、ダイニングからスタディまでの一続きの空間がこの住宅の中心となる空間であり、そこからこの住宅を決定づけるハムステッド・ヒースへの眺望には風景を三つに切ってしまう2本の柱はどうしても取り除きたかったのだという執念を感じる。
同様に、建物の顔をなる北側のファサードを見てみると、Willow Roadに面したこの建物は住所で気には1から3までの3つの住宅が一つになったテラスハウスであり、中央の2 Willow Roadだけが、スパンを広くとられている。1から3までを貫くようにして2階に設けられた水平窓を横長のフレームとして立面の中で現代性を表現するために、各住戸を分ける場所の柱は2階部分でも残されるが、それ以外の柱はどうしてもこのフレームを貫かないようにしたかっという意図だろうと推測する。
更に北面立面を詳しく見ると、2階部分の解放できる窓は中央と両端に設けられ、他の部分はサッシすらない横長の一枚ガラス。1と3は縦のサッシが見受けられるから、自身が住まうこの中央住戸の2階からの眺望をどうしてもサッシレスのフレームに収めたいというゴールドフィンガーの執念が染み出しているようである。
その他にこの住居を印象深くしていたのは、なんといってもこれだけ北と南に眺望を確保できるとともに、開放的な窓を設けて生活をできる周辺環境であろう。片側に公園を持つだけでなく、南にも自らの庭を十分なプライバシーを確保して設けられるとは、なんとも羨ましい限りである。
そして、二階部分の書斎側の壁を一面占める本棚と、その前にこの空間の主人として君臨するかの雰囲気を醸し出しているデスク。これもゴールドフィンガーのデザインであるのだが、そのデスクの上においてある、ゴールドフィンガーが愛用していた文具などが、これまた素晴らしいデザインのものばかり。どれだけモノに愛着を持ち、デザインに向き合っていたか、そしてこのデスクでスケッチなどをして時間を過ごしていたかが分かる素晴らしい家具達である。
次に北側と南側の間に設けられた30センチほどの段差。部分的に収納をして使われているが、中央の円形階段が矩形の部屋に有機的な場所性を加えているのと同様に、この段差がとても良い形で北と南に違う場所を作りながら繋げている。ギャラリーと呼ばれる空間はさらに天井高を下げられて、少しニッチの様な空間として落ち着ける溜まりの空間になっており、そこだけ温かみのある木で仕上げられており、イームズハウスのソファの空間を彷彿させる。
もう一つは三階の寝室レベルにおいて、様々な場所に設けられた天窓とそこから降り注ぐ自然光。円形の階段室やその壁の後ろの浴室など、曲線の壁と円形の天窓からの光がとてもよく融合し、空間に彩を添えている。
毎日の生活の中で、視線を向ける風景があること。
窓を開放しても、プライバシーに支障のない周辺環境との距離感。この二つさえ得られれば、複雑なことはせずに、じっくりと地に足の着いた設計でこれだけ豊かな日常生活のための空間が得られるのだと改めて勇気をもらえる秀作である。
2017年7月9日日曜日
香港(Xiānggǎng,ほんこん) ★★
そんな2017年。今年だけで既に4回目となる訪問。関わるプロジェクトのお陰で、なんとなくではあるが地理も理解できてきたが、どうしてもステアリングの前に何台ものスマホを着けて、その画面をひっきりなしに操作しながら、イヤホンで話続け、客をほったらかしにしておきながら、突然の様に「行き先はどこだっけ?」と聞いてくるこの街のタクシードライバーには本当に頭がくらくらしてくる思いがして、そんなストレスを感じるならば公共交通で移動したほうがよっぽど楽だと今後のことも考えてオクトパスカードを入手し、見れば見るほど良くできているパシフィックプレイスで脆皮焼肉を堪能し、中国銀行ビルや香港上海銀行といった学生時代に学んだ建物達を見上げ、M+に代表される開発が進むウェストカオルーン(西九龍)を中心に、21世紀にも競争力を保つ新しい都市として着々と変貌を進めつつある香港の姿を高層ビルの最上階に位置するクライアントのオフィスから見下ろしながら、30年後のこの都市の姿に想いを馳せることになる。
















