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2017年10月26日木曜日

「ザ・サークル」 ジェームズ・ポンソルト 2017 ★

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スタッフ 監督: ジェームズ・ポンソルト 
原題: The Circle 
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スタッフ メイ・ホランド : エマ・ワトソン 
イーモン・ベイリー : トム・ハンクス 
タイ・ラフィート: ジョン・ボヤーガ 
マーサー:  エラー・コルトレーン 
アニー・アラートン:  カレン・ギラン   
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フェイスブック、ツイッター、インスタグラム・・・

次から次へと生み出される様々なSNS。テクノロジーは我々の生活の効率を高める手助けになるはずが、いつの間にか「SNS疲れ」が叫ばれる程に逆にそのテクノロジーに追われるかのように時間を過ごすようになった現代社会。SNSと上手く距離をとりながら、仕事やプライベートを充実させるために使える人はいいが、そうでなければ自分の誰かを比べストレスを感じ、ネットの先の不特定多数に認められるために自分を演じ、いつの間にかSNSに怯えながらも、それでもやめることができず時間を過ごす人は一体どれほどいるのだろうか。

誰もが発信者になり、誰ともコミュニケーションが取れる燦燦と光が差すような時代の、強い光だからこそ生まれる濃い影。テレビ東京の経済番組では勇ましいナレーションと共に紹介される現在の様子かと思ってしまうほど、手を伸ばせばすぐそこにある遠くない未来を描いたかの様な作品。

カジュアルで効率的で、開かれた社会と世界と人々の為になるイノベーションを追い求める若いテック企業。世界中の誰でも想像できるような企業のことを描いているのかと勘違いしてしまいそうなほど、この映画で描かれる企業の働き方、組織のあり方はインターネットによって生み出された様々なネット巨人の姿が頭に浮かぶ。

プライベートとネットの境目が無くなり、同じサービスでオンタイムで繋がった会員のカメラが全世界を覆う監視社会になり、警察がその行方をつかむことのできなかった犯罪者をほんの数十秒で追い詰めるのは、どこかのテレビ番組か、それともある種の宗教儀式かと思わされる。

この映画が公開されるころには、テック業界では遥か先に進んでいて、ここで描かれる問題はとっくに昔に解決済み課題となるくらいのスピード感で世界は進んでいくのだろうが、かつて毎年でる新しい家電やパソコンに終われたように、今は毎月現れる新しいSNSやアプリに追われるのでは、数年後は数週間で生活が変わるのかとぐったりする気持ちになりながら、自分の中でぶれないものをしっかりもって生きるのが唯一の舵取りなのかと自らの日常を振り返ることにする。

























2014年4月13日日曜日

「後悔と真実の色」 貫井徳郎 2010 ★★★

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第23回(2010年) 山本周五郎賞受賞
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札幌で起きていたガスボンベ連続爆破事件。犯行声明まで添付され、札幌北署関連の施設が標的とされているようである。高らかに犯行を宣言し、警察に対しての挑発を行うその姿は、世間を震撼させている。

犯行声明と共に、犯行予告も行い、次なる犯罪の可能性を社会に植え付け、恐怖を蔓延させる。卑劣な手段であるが、間違いなく効果を発揮する。その事件を頭の中で写し合わせながら読むことになるこのミステリー。700ページ近い長編ミステリーではあるが、登場人物の一人ひとりがしっかりとその人物背景まで作りこまれており、最後まで破綻することも無く読みきれる。

王道のクローズド・サークルに乗っ取っている為に、ある程度のところで真犯人は特定できることができるが、それでもこれだけインターネットが日常の中に入り込んできた現代において、ある種の知的犯が自らの犯罪を高尚なる社会的正義だと思い込むことで正当化し、それを世間に知らせようとする行為と、匿名性のネット社会において、そのような犯罪者を讃え、煽る傾向にある2chを代表とするネットの性質を巧く捉えての新しい形の犯罪形式を描きだすこと。

そして、警察官であっても一人の人間であり、それぞれに家族があり、日常のなかで軋轢や嫉妬、出世願望や羨望、刑事として正義感と雇われている身であることの葛藤など、様々な揺れ動く真理を描きだす。

階級による組織内の差別、事件解決よりも組織内での保身、縦割り組織の中で拘束される行動などなど、それを翻弄する「指蒐集家」と名乗り、殺害した女性の指を切り取りその行為をネット上の掲示板で実況すると言う犯人に見事に振り回される警察組織。

最初は誰が主人公か良く分からないほど複雑に多様な人にフォーカスが当てられるが、徐々に主人公としてのスポットライトを当てられていく刑事・西條。スマートで男前で、検挙率は高いが組織内での社交はあまり行わず、それでも自らの警察としての業務には誇りを感じている。

周囲から見れば誰もが羨むはずの彼も、家庭では妻との間は完全に冷え切り、それでも惚れた弱みと説得して結婚までこぎつけた弱みからただただ現状を維持するだけに留まりながら、それでも外で若い記者との不倫を続ける。

そんな彼になんとも表現しようのない嫉妬を抱え続けるのが年上刑事の綿引。こちらは妻に交通事故で先立たれ、その時の怪我の為に車椅子生活となった息子を高齢の母親に世話をしてもらいながら生活をしている現状で、どうしても出世して今の生活を抜け出そうと願うことは、同時に誰かを引き落とすことで自らの地位を手に入れることに繋がっていく。

刑事の職を追われたとたんに、「ただの人」としてかつての同僚からは何も情報も与えられないどころか、けんもほろろに扱われる西条。心のどこかで破綻を望んでいたかのように、堕ちるところまで堕ちた先でも、真犯人への思いは捨てきれない。

そんな愚直な刑事の姿に対比するように、ネット上で「神」になったかのような万能感を感じ、更に積極的な行動と犯行に及ぼうとする真犯人。一度弾けた欲望は、留まるところを知らずに膨張するかのように、もっと自分に注目して欲しい、もっと自分に注目し続けて欲しいと、更に次の、もっと大胆な犯罪へと掻き立てる。

毎月の様に報道される、無差別で人を傷つけようとする事件の様子。「相手は誰でも良かった」という言葉の裏にあるのは、鬱々とし未来になんら希望を持てない自分に、たった一度でもよいから世間からの注目を浴び、自らを認識してもらいたいという欲望に他ならない。

そんな現代における新しい側面を描き出しつつも、しっかりと大きな物語として纏め上げた良作である。


2012年11月27日火曜日

指の間から流れ落ちていく水

人大(人民代表大会)が終わり次第Google関係の復活かと思っていたが、想像以上に接続の不安定な状態が続いている。その為にブログにアップすることもままならなければ、googleカレンダーにメモを取ることすら困難な日々が続く。

そんな時間を過ごしていると、それこそ毎日の忙しなさに身を任せ、過ごした時間を振り返ることなく日々が過ぎ去っていく。手にすくった水が、指の間から零れ落ちていくのを眺めるように、何も自分の身体に定着することなくただただ流れていく様に。

恐らくこんなブログを書くのは10分くらいの時間であろうが、その10分がどうやっても取れない、探し出せない毎日を過ごしていれば、どんどんどんどんと水は流れていってしまう。考えたことも、思ったことも、感じたことも、見たことも、完全に忘れることは無いだろうが、どんどん新鮮さを失いながら指の間を過ぎ去っていく。

びしゃびしゃに水浸しになった足元に映る自分の顔を見つけて、何とかせねばと心に思う。

2012年9月4日火曜日

堕ちるのに時間はいらない

圧倒的弱者である幼児を相手にニュースにとても嫌な気分になる。

宮崎勤の事件で見せられた、ワンルームに溢れる欲望の嵐。一見雑然としたその風景に秘められた欲望の秩序。VHSという淘汰された媒体の助けを借りることでこの世に現れた欲望の風景。

かつてはエロ本を一冊購入するにもそれなりの出費が必要だったが、現在ではモニターの前から動かずとも、ワン・クリックだけで無限に自分の欲望を満たすものが飛び込んでくる。

それは誰にも制御されることなく、インターネットによって加速させられる欲望空間。

ゆとり世代やゆとり以後という安易な言葉ではくくれない、誰も制御してくれない肥大化するだけの欲望に、どう折衷していくか教えられることなくその身体を晒されてきた世代。

たとえ同居していても、ワンルームという境界の裏で、モニターというブラックボックスに入れられて、インターネットのクラウドの先に隠さた、親からも見えない世界で密かに、そして確実に大きくなる欲望たち。

社会との接点は煩わしいものではある反面、人間一人では保つことができない理性を繋ぐか細い線として機能する。しかし、無意識のうちに現代人はその糸を一つまた一つと切ってしまう。そして現実と自分の妄想の中の欲望が乖離していくのに気づかないまま、誰も注意をできることなく、現実の世界を朦朧と漂うことになる。


「堕ちるのに時間はいらない」


酒鬼薔薇聖斗事件で社会が感じだ背筋がゾッとする理解不能な猟奇的感覚。しかし今度は違う。これはインターネットと個人主義によってもたらされた、誰にでも、そしてそれはあっという間に訪れうる欲望の穴。クラウドの先から、モニターには納まりきらず、果たしてワンルームから飛び出し街に溢れる欲望空間。

日の光に当たるべきでない蠢くような腫れ物が、一気に外に解放される。
それはあまりに自由であまりに危険。

ぜひ、容疑者の部屋とそのモニターの中に隠された欲望を社会に曝して欲しいと願う。そこに広がるのは恐らく整然とした白く漂白されたような空間だろうと創造する。