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2012年2月16日木曜日

早稲田大学芸術学校 卒業設計展 「WAA DIPLOMA 2011」


非常勤講師としてお世話になって5年目。春から北京に戻る為にしばらく学校とは距離をおくことになるので、今年が最後の指導学生となる上に、東日本大地震の年に一緒に建築を考えてきた学生達の最後の晴舞台となる卒業設計展。

社会人主体の学校ということで、昼間仕事や学校を終えてから夕方にこの学校に来て、夜遅くまでスタジオでプロジェクトを進め、また明日はそれぞれの日常を繰り返す。

大学で同年代に囲まれて学ぶ環境とは違い、学生同士でも20歳ほどの年齢の幅を持ち、多様な人生の背景を持った人が集いながら、不器用ながら建築の魅力に振り回される、そんな時間を3年繰り返した彼らがその節目に何を考え、何を作るのか。

自らの想いに沿って、自らテーマを設定し、施主も予算も何の制約もない卒業設計という夢舞台。次に誰かに作品を見てもらえるまでは暫く時間がかかることだろうから、ぜひとも悔いの残らないようにと、最後の仕上げをしている設置会場に差し入れ片手に昨晩足を運んで来た。

その展覧会が本日より開催されます。

土曜日には元・前校長二人によるトークセッションとして、各作品の解説も行われるので、興味のある人はぜひ。



早稲田大学芸術学校 卒業設計展「WAA DIPLOMA2011」
2012年2月16日(木)~28日(火) 10時30分~19時00分
※水曜休館・19日(日)臨時休館、入場無料
◆鈴木了二×赤坂喜顕 ギャラリートーク
2012年2月18日(土) 18時00分~ 
※入場無料・参加自由
会場:リビングデザインギャラリー リビングデザインセンターOZONE 7F
住所:東京都新宿区西新宿3-7-1 新宿パークタワー内
TEL:03-5322-6500
WEB:www.ozone.co.jp
・JR新宿駅南口から徒歩約12分
・西口エルタワー前より約10分間隔で無料バス運行





2010年10月30日土曜日

下田の住宅 物質試行50 鈴木了二 2010 ★★★★



















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所在地 静岡県下田市蓮台寺
設計 鈴木了二
竣工 2010
機能 個人住宅
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秋の始まりを感じながら、伊豆の海岸線を南下したどり着いたのは黒船来航の地・下田。早稲田大学芸術学校で一緒に教鞭をとらせていただいている鈴木了二先生の最新作品、下田の住宅 物質試行50のオープンハウスに呼んでいただき、ワクワクしながら135号線をひたすら下る。

最近、つくづく思うことは、一人の建築家が本当の意味で、全てのことを自分の身体で理解して、設計に反映できる規模の臨界点は個人住宅なのではということである。それぞれのプロジェクトの規模には振り幅があるが、内装、個人住宅、集合住宅、商業施設、オフィス、ホテル、公共施設、都市計画とさまざまなタイポロジーの中、個人で施主の信頼を受け、敷地調査をし、予算のコントロールをしながら、関連法規をクリアしつつも、施主の求める生活を形にし、隈研吾の嘆く「とりあえず、見積もりの取れる図面」にならないように毎日頭を抱え、構造、空調、工務店とのよいチームワークを形成しながらも、コンセント一つに至るまで納まりと素材を理解しながら、それを全て図面化し徹底する作業を行うには、必ずどこかに物理的臨界点が現れてしまう。

「禁断のパンダ」の有名レストランの料理長のように、自分は手を動かさずに全体をコントロールする指揮者としてプロジェクトを監理する能力が、ある規模以上では必ず必要とは頭では理解できるが、図面を見ながら、左手を壁に添えて、ぐるっと図面の中を歩いて、その手に触れる感触が全て図面に現れるような、自分の身体をもって設計を進めるという作業にどうしても後ろ髪を引かれるというのが、誰もがかかえるジレンマであるのはしょうがなく、最適化と効率化が、職能に対する体のよい免罪符にならないように、急いで歩ける規模はやっぱり個人住宅が限度なのかと思わずにいられない。

さて、見せていただいた住宅は、今も一緒に学校で生徒を教える大親友が物件を担当したということもあり、設計過程からいろいろと話を聞かせてもらっており、かなり設計者として自己同一化できる内容でもあったので、非常に楽しみにしていた。

第一印象はその大きさ。周辺は木造二階建ての住宅街に、手前に引きをとってスクッと立ち上がる白の壁面。一瞬なにが建っているのか理解できないのは、その白さだけではなく、これが何か、を理解するスケールの物差しがないが為。人がモノを見るときに、自然と基準となる対象物を脳の中で探し、それを基にして脳の中で自分なりに再構成を行い、安心できる世界を構築するから日常生活を送れるのだが、それが建築の場合は、周辺の建物や、各部屋を示唆する窓の大きさとそれが位置する階の存在。そして階段という身体のスケール。加えて、設備という異物としてのスケール。

通常与えられるそのようなスケールの物差しがまったく与えられない正面ファサード。上部が窪んだまさにホワイトキューブ。「私は個人住宅です」と、頼んでもいないのに、雄弁に喋ってしまうものを剥ぎ取り、一見、何もないように見せるこの潔さの為に費やされた、設計に対する異物を排除する作業と立体的にヴォイドを内部に貫入させ、立体的なコートヤードタイプでプランをまとめた計画。スケールを変えても破綻しないプロポーション。面と開口の関係のみに還元された建築。ひっそりと物を語らぬファサードに迎えられて感じるのは、基準を失った恐怖と不安感。

壁に穿たれた正方形の開口と、地盤面から微妙に持ち上げられることにより、縁側のように境界を作るテラスはそのまま室内へと延長される。玄関という機能は剥ぎ取られ、2000mmから4500mmまで一気に高さを変えるキッチンダイニングにアクセス。その床は、外部テラスのコンクリート板の硬質を受け継ぎ、現場内コンクリートの磨き出しで、内部に膨張材を仕込む為に目地無しの絶対水平へと変換される。この風合いを出すのはかなり大変だったようだが、かなりの綺麗に仕上がっており、そこに触れる壁面との取り合いは、15mmのコーナービートで薄くだが、しっかりと見切られる。

ルイス・バラガンも好んで使うが、低い天井高さより一気に高い天井高さの空間へと放り込まれるときのコントラストによって生まれる解放感でと、同面でつながるテラスによって、一階はかなりの広さを感じる空間で心地よい。一部吊られ、一部天井に埋め込まれた金物にはめられたシームレスのスリムラインで、照明器具から、一本の線へと還元された光と、上部から差し込む自然光によって、白の壁面でも場所によって様々な表情を見せてくれる。

変則二階建てで、コンクリート造や鉄骨造でやる入り組んだ空間構成を、木造のトラスを組み込むことで、壁面に現れる厚みも、通常予想するものよりも、格段と薄く全体のプロポーションをすっきりとまとめている。室内の移動動線は、幅600に押さえられ、これまた不思議なプロポーションを見せるのだが、常に立体的なヴォイドに部分的につながっているために、不思議と窮屈な感じを受けずにすむ。

建築の仕上ラインを家具の側板の仕上げ分凹ませることで、工程における境界線を見せず、抱き込んで、塗装で同一に仕上ることで窓枠の見切りを消し去り、コンセントも壁面同面で、底目地で見切って凸感を無くす徹底した白への還元。壁面に沿わして歩いた手の痕跡が、何重にも浮き上がってきそうな詳細部分。もちろん、テラスのインターホンにもstカバーで面一に押さえらている。北側とテラスに向けられた開口部は、少し壁面から凸して取り付けられ、通常のサッシからはかなり離れたプロポーションを作り出す。

縦にも横にも何度も図面上を歩き回って、指紋をふき取るように消し去られた様々な境界線。指先の感触が変わるたびに、入隅、出隅と身体の方向性を振れるたびに、何度も速度を緩めながら、頭を抱え、消しては描く重ねられる線。これから住まう施主が何年、何十年かけてたどり着くその膨大な移動距離こそが、よい空間の発芽を促すとすっかり納得し、これから自分で歩かなければいけない距離に思いを馳せる。






































































































































































2010年5月14日金曜日

金刀比羅宮 鈴木了二 2004 ★★★★

















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所在地 香川県仲多度郡琴平町
設計 鈴木了二
竣工 2004
機能 神社周辺施設
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照りつける初夏の厳しい日差しの下、果てしなく続くと思われる階段を上ると、徐々に神域へと入っていく。その先に待ち受ける本堂を仰ぎ、左に折れると伝統と近代の新しい形の融合を見せる建築郡が顔を見せる。
現在、早稲田大学芸術学校で御一緒させていただいている校長でもある鈴木了二先生による金刀比羅宮プロジェクト。瀬戸内海を見守る、海上交通の守り神として、古くから親しまれてきた讃岐の名刹。その歴史に加えられた社務所等々の施設である。
授与所棟にて鈴木了二先生に用意していただいた推薦状を巫女さんにお渡しし、見学の旨を伝えると、担当してくださる若い巫女さんがやって来てくれた。ご挨拶をし、見学の旨を伝えると快く説明をしてくださる。内部空間は関係者のプライベートスペースということで、写真の撮影は禁止されたが、階段を上りきった身体から噴出す汗に、心地よい風を感じながらの気持ちのいい見学となった。
分散する建物の前を横切るときには必ず、正対しお辞儀をする巫女さんに習い、ここには沢山の神様がいるんだという神道空間を実感しながら、緑黛殿と呼ばれる斎館棟に向かう。
「既存の遺構と新しい建物を同列に扱いたいと思いました。そして、伝統といったものを、今風にアレンジする姿勢は採りたくないと思った。実際に伝統の中に浸かってみると、結構、自由なんだということも分かったのです」
と鈴木了二先生が言われるように、一見伝統建築の木のオーダーと見間違う鉄骨による柱割り。絶対水平を作り出す鉄による人工地盤に対して、絶対垂直を表す鉄骨のオーダー。その上にのる木組みの伝統屋根組。案内された室内の階段を下りると静寂に包まれる荘厳なプライベート空間。スケールを引き伸ばされた鉄板の構造物。いやがおうにも面を意識されられる空間を巡ると一枚の鉄板だと思っていた部分が厚みを持つマッスであることに気付かされる。
先ほど降りてきた階段を振り返ると、壁から張り出し、上部から吊られて、すれすれのところで縁を切ってあるディテール。同様に上部の人工地盤との縁ももちろん切断されている。その階段の横には地形の力に抗らうように屹立する錆によって赤く陽を受けて輝く一枚の面。半屋外となっているために、
「冬にはこの犬走りに雪が積もって、とっても美しいんですよ」
と巫女さん。
外部という自然に晒されて、現代という流れの時間とは全く異なる時間軸を空間に取り組みながら、静かに佇む一枚の鉄の絵。中は見せていただけなかったが、巫女さんの個室には大きな鏡が設けられていて、踊りの練習や、着物を着るときに非常に重宝しているとのこと。その巫女さんの個室の間には、切り取られた琴平の街が眼下に広がる。風景から視線を上に巡らせると、人工地盤に切り込まれたガラスのスリットからの自然光が柔らかく、そして荘厳に室内に落ちてくる。
巫女さんにお礼を言い、地上に戻って、今度は全面の大階段へ。自然の曲線に重ねられた人口の絶対的水平線。そこに落ちる影。階段から見る、クスの木を囲う永遠に続く現場の様な中庭ごしに再度建物を眺める。絶対的な精度を求める為に、H型鋼を切断して作られたという特殊金物に支えられるガラス・スラブ。
石と鉄とガラスと木。伝統と現代に、絶対的な精度と素材で挑んだ力作。2005年度村野藤吾賞、2007年度日本芸術院賞受賞も当然の、世界に誇るべき日本の現代のあり方がここにある。