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2015年12月3日木曜日

コンサート 「Complete Works of Rachmaninoff I: Mariinsky Theatre Orchestra & Valery Gergiev」 NCPA 2015 ★★★★★


ヴァレリー・ゲルギエフ(Valery Gergiev)
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Programme  

Symphony No. 1 in D Minor, Op. 13  / Rachmaninoff 
Piano Concerto No. 1 in F-sharp Minor, Op. 1  / Rachmaninoff 
Soloist: Daniel Kharitonov  
——Intermission—— 
Piano Concerto No. 2 in C Minor, Op. 18  / Rachmaninoff 
Soloist: George Li  
Symphonic Dances, Op. 45  / Rachmaninoff  
——Intermission—— 
Rhapsody on a Theme of Paganini, Op. 43  / Rachmaninoff 
Soloist: Daniel Kharitonov  
——Intermission—— 
Soloist: George Li
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2015年最後となるコンサート。選んだのはやはりヴァレリー・ゲルギエフ(Valery Gergiev)。しかも今回は自ら率いるマリインスキー劇場管弦楽団(Mariinsky Theatre Orchestra)を従えての登場。

プログラムに選んだのはセルゲイ・ラフマニノフ(Sergei Rachmaninov)。1873年生まれのロシア人作曲家でありピアニスト。高度な技術を必要とする彼の作曲は数あるピアノ協奏曲の中で最難関の一つとも言われているという。

そんなラフマニノフに挑戦するゲスト・ピアニストとしてゲルギエフから声がかかったのは

ダニール・ハリトーノフ(Daniel Kharitonov) 
ジョージ・リー(George Li,黎卓宇,Lí ZhuóYǔ) 

の二人。

ハリトーノフはロシア出身の非常に若いピアニスト。数々のコンクールでの入賞を果たし、ロシア国外でも活躍する有望なピアニストだけあって、1幕と3幕に登場した彼のピアノ裁きは圧巻もの。

そして二人目のジョージ・リー。こちらは中華系アメリカ人で、今もアメリカと拠点として活躍する非常に若いピアニスト。第15回(2015年)のチャイコフスキー国際コンクールでは、二位に入選するなどこちらも今後の活躍が期待されるピアニスト。

今夜に関してはハリトーノフも凄かったが、なんといってもジョージ・リーの演奏が際立っていた印象は否めない。2幕に登場した彼は、小さな身体からは想像もつかないパワフルな演奏で、ラフマニノフに立ち向かい、そのスピードを凌駕していく。なんとも表現しがたいエネルギーが彼の周囲から立ち上り、コンサートホールを満たしていく。そんな錯覚を覚えるほどの演奏。

3幕が終わった後に、一人で舞台に再度現れた彼は、帰ろうとしていた観客の足を止めるのに十分な存在感で演奏を始めると、さらにその場を支配し始める。観客がいるのすら忘れてしまっているのではと思うほどの没頭。そして素晴らしい演奏。

凄い天才が現れたと思わせるのに十分なパフォーマンス。調べてみると、やはり世界中からコンサートの出演以来が殺到しおり、目標としてコンクールも泣く泣く辞退しているようである。久々にCDを探してみたいと思ったピアニストであるが、まだ若いだけにCDが出ていないのが残念。

彼の作品が発売されるまでに、少しでもラフマニノフに慣れしたんでおこうとAmazonでラフマニノフのCDを購入することにする。ショパンにラフマニノフと、素晴らしいピアノ演奏で一年の最後を締めくくることができなんともいいがたい幸福感に包まれて会場を後にする。
ヴァレリー・ゲルギエフ(Valery Gergiev)
セルゲイ・ラフマニノフ(Sergei Rachmaninov)
ダニール・ハリトーノフ(Daniel Kharitonov)
ダニール・ハリトーノフ(Daniel Kharitonov)
George Li(ジョージ・リー,黎卓宇,Lí ZhuóYǔ)
George Li(ジョージ・リー,黎卓宇,Lí ZhuóYǔ)

2015年12月2日水曜日

コンサート 「Chen Sa Piano Recital」 NCPA 2015 ★★

チェン・サ(陈萨,陳薩,Chén Sà)
横の席に座った女性が、何かをしきりに確認しながら演奏に聞き入っているので気になって覗き見をしたら、手元の楽譜を確認しながら、演奏を追っているようである。その一方ステージの上のピアニストは楽譜を見るどころか、楽譜すら持ち込まずに演奏に没頭している。一体どれだけ人生の中で弾いたのだろうと想像をしてしまう。

そのピアニストは中国人のチェン・サ(陈萨,陳薩,Chén Sà)。1979年生まれなのでほぼ同年代のピアニストである。2000年には今日のプログラムでもあるショパン・コンクールにおいてなんと4位入賞を果たし、その後ずっと国際舞台で活躍するピアニストという訳である。

その彼女が今夜のプログラムとして選んだのはショパンのマズルカ(Mazurkas)。1810年生まれのポーランド出身の作曲家であるフレデリック・ショパン(Frédéric Chopin)。その作曲の多くがピアノ独奏曲で占められ、ピアノと言えばショパンという印象の強い作曲家である。

なかでも、ノクターンやワルツなどは日本でも多くのテレビCMに使用され、無意識のうちにそのメロディに慣れ親しんでいるものが多く含まれる。

そしてそのショパンの名を冠したピアノコンクールがショパン国際ピアノコンクール。クラシックの素人の自分でも聞いたことのあるこのコンクールは世界で最も権威のあるピアノコンクールの一つとされ、 5年に一度ポーランドの首都であるワルシャワで開催される。

ベルギーのブリュッセルで開催されるピアニスト、ヴァイオリニスト、声楽家のための国際コンクールであるエリザベート王妃国際音楽コンクール

ロシアの作曲家ピョートル・チャイコフスキーに因んで名付けられ、4年に一度ロシアのモスクワにて開催され、ピアノ、ヴァイオリン、チェロの各部門を審査するチャイコフスキー国際コンクール

この三つのコンクールをまとめて世界三大コンクールと称し、そこでの入賞者はその後輝かしい演奏家としてのキャリアを積み上げていくことになる。

そんなショパン国際ピアノコンクール。第14回 (2000年) 大会においては中国のユンディ・リ(李雲迪,Yundi Li)が一位を獲得し一気に世界的スターに駆け上がったのも記憶に新しく、最新の第17回 (2015年)大会においては隣国韓国のチョ・ソンジン(Cho Seong-Jin)が一位を獲得するなど、アジア勢の活躍も多く見られるコンクールである。

そしてその舞台を経験してきた今夜のピアニスト・チェン・サが、恐らく血の滲むような練習を繰り返して向き合ってきたであろうショパン。数多ある彼のピアノ曲から選んだのは、マズルカ(Mazurkas )と呼ばれる、ポーランドの各地方の民族舞踊に基づき作曲られた作品群。

一曲一曲は非常にテンポ良くサクサクと演奏が続くのだが、とにかく曲数が多い・・・。恐らく中国人ピアニストとしてこのNCPAで演奏をすることに対しての凱旋的な気持ちもあるだろうし、恐らく多くの親戚や関係者も詰め掛けているために、気合の入り方も凄いものだろうと想像する。

が、二度の休憩を挟んで、それでも続くマズルカ・・・。コンサート終了後妻に電話をし、あまりに終わりが見えなかったマズルカの演奏を、「長すぎのマズルカ」とお笑いのハライチの漫才の様なリズムで伝えて家路につくことにする。
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プログラム
Mazurkas Chopin
  Op.6 No.2
  Op.30 No.4
  Op.63 No.3
  Op.59 No.2
  Op.24 No.3
  Op.56 No.1
  Op.56 No.2
  Op.56 No.3
  Op.59 No.1
  Op.6 No.5
  Op.24 No.2
  Op.7 No.3
  Op.7 No.2
  Op.24 No.1
  Op.6 No.3
  Op.30 No.2
    Op.33 No.4  
 ——Intermission——  

  Op.41 No.1
  Op.41 No.2
  Op.63 No.1
  Op.41 No.3
  Op.41 No.4
  Op.6 No.1
  Op.50 No.1
  Op.50 No.2
  Op.50 No.3
  Op.6 No.4
  Op.33 No.1
  Op.33 No.2
  Op.30 No.1
  Op.63 No.2
  Op.24 No.4
  Op.7 No.1
  Op.33 No.3  
 ——Intermission——  

  Op.17 No.1
  Op.17 No.2
  Op.67 No.4
  Op.17 No.4
  Op.17 No.3
  Op.7 No.4
  Op.30 No.3
  Op.59 No.3
  Op.68 No.4
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フレデリック・ショパン(Frédéric Chopin)

2015年11月21日土曜日

ダンス 「St. Petersburg Eifman Ballet Anna Karenina」 NCPA 2015 ★★

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A ballet by Boris Eifman
Based on the novel by Leo Tolstoy 
Music: Pyotr Tchaikovsky 
Sets: Zinovy Margolin 
Costumes: Vyacheslav Okunev 
Light: Gleb Filshtinsky 
Premiere: March 31, 2005 
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ボリス・エイフマン(Boris Eifman)率いるロシアのバレエ団・St. Petersburg Eifman Ballet。演じるのはロシアの文豪トルストイの有名な同名小説を、ロシア・バレエ界の鬼才と呼ばれるボリス・エイフマンがバレエ化した「アンナ・カレーニナ」。

二週続けてロシアのダンスというのもなんだか冬の到来を感じるのに丁度いいかと足を運んだ一作。オーケストラじゃないから大丈夫かと思いきややはり一幕では耐えがたき睡魔に襲われあっさり撃沈。

気を取り直して第二幕から集中して観劇に励むが、「アンナ・カレーニナをちゃんと読んだっけな?」と思いながら、あやふやな記憶を辿りながらなんとか物語についていく。それでも終盤には独特な演出が見られ、「これがエイフマンらしい振り付けなんだろうな」と勝手に理解して今年最後のダンス鑑賞を終えることにする。

Eifman Ballet

2015年11月14日土曜日

ダンス 「Mariinsky Theatre Ballet Mixed Programme」 NCPA 2015 ★★

5 Tangos
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Part 1 – Scotch Symphony
Kristina Shapran – Konstantin Zverev 

Part 2 - '5 Tangos'
NadezhdaBatoeva – Vladimir Shklyarov 

Part 3 – In the Night 
1st couple – Anastasia Matvienko – Filipp Stepin 
2nd couple – Viktoria Brileva – Evgeny Ivanchenko 
3rd couple – Uliana Lopatkina – Andrey Yermakov 
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世界5大バレエ団と呼ばれるのは

パリ・オペラ座バレエ(フランス)
英国ロイヤル・バレエ団(イギリス)
ボリショイ・バレエ(ロシア)
アメリカン・バレエ・シアター(アメリカ)
マリンスキー・バレエ(ロシア)

その中でも最高峰と称されるのがロシアはサンクトペテルブルクのマリインスキー劇場を拠点とするマリインスキー・バレエ(Mariinsky Theatre Ballet、キーロフ・バレエ) 。旧称をロシア帝室バレエ団と言い、ロシアのバレエ文化を体現するバレエ団である訳である。

そんな世界最高峰のダンスを見るチャンスだということで相当高額なチケットであったが、「一生モノの経験だ」と自分を説得して足を運んだ作品。

3幕それぞれ趣の違いながらも、とてもエレガントなその舞に心を洗われ、「いつかは本場サンクトペテルブルクで観てみたい」と心に決めて劇場を後にする。
Scotch Symphony
In the Night
Mariinsky Theatre

Mariinsky Theatre

2015年11月12日木曜日

コンサート 「Myung-whun Chung and Staatskapelle Dresden」 NCPA 2015 ★★★

チョン・ミョンフン (Chung Myung-Whun)
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Programme

Piano Concerto No.23 in A major , K. 488
    Soloist: Myung-Whun Chung, Klavier

Mozart 

- Intermission - 

Symphony No.4 in G Major
    Ⅰ. Bedachtig. Nicht eilen—Recht gemachlich
    Ⅱ. In gemachlicher Bewegung; ohne Hast
    Ⅲ. Ruhevoll, poco Adagio 
    Ⅳ. Sehr behaglich 
    (Soprano: Hanna-Elisabeth Muller) 

Mahler 
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昨年に続きチョン・ミョンフン(Chung Myung-Whun 鄭明勳)の指揮するコンサートということで、これは見逃せないとかなりの高額であったが、思い切って購入したチケット。

ピアニストであり優れた指揮者でもあるチョン・ミョンフンであるが、昨年のコンサートは指揮者としての姿だけを見るに留まったが、今回はピアニストとしても演奏も行うということで非常に楽しみにしていたコンサートである。

チョン音楽一家のファンだと知っている韓国人のスタッフから贈られたCDをいつも移動の際に聴きながら深い眠りに落ちているので、その生の演奏が聴けるのに興奮してコンサートホールへと向かう。

前半は一部のオーケストラを従えてモーツァルトのピアノ。非常にリラックスした様子で登場したミョンフンは、何気ない様子でピアノ椅子に腰をかけ、オーケストラに向かって無造作に手を振り上げる。何とも楽しげに、まるでリビングルームでくつろいでいるかの様子。

そしてふと身体を反転させ、鍵盤に指をそえて開始された演奏は、まさに彼の名声を納得させる流石と思わせるに十分なもの。流れるようにモーツァルトの音色がピアノから飛び出し、ふわりとコンサートホールを漂って様々な座席に届く様子が糸の様に見えるかのような体験。素晴らしい。本当に素晴らしい。

素晴らしいだけに普段の習性も助け、抗う意志にも関わらず、アルファ波に完全に呑み込まれ、これは楽しまなければ・・・という遠い声を感じながらも深い眠りの中に落ちていく・・・そんなまどろみの中で過ごした前半のお陰で後半は意識もスッキリし演奏に集中する。

後半はソプラノにハンナ=エリザベス・ミューラー(Hanna-Elisabeth Müller)を迎えてグスタフ・マーラー(Gustav Mahler)の交響曲。フル・オーケストラとなり、タクトを振るのを楽しんでいるような指揮者としてのミョンフン。その横でじっと前を見据えてピクリとも動かずまるでアスリートの様な雰囲気を醸し出すソプラノ。

カーテンコールで鳴り止まない拍手を浴びてお辞儀をするミョンフンを姿を見ながら、こちらもかなりの満足度に包まれつつ、それでもやはり前半の彼のピアノの演奏が何といっても素晴らしかったなと、今度は自分で久々にCDを購入してみようと思いながら会場を後にする。
ハンナ=エリザベス・ミューラー(Hanna-Elisabeth Müller)
アマデウス・モーツァルト( Amadeus Mozart)
グスタフ・マーラー(Gustav Mahler)

2015年1月24日土曜日

オペラ 「アイーダ」 NCPA 2014 ★★★★★

久々に足を運ぶオペラハウス。今日は朝からオフィスに出て作業を進め、夕方から一緒にオペラを観に行くメンターご夫妻の家で早めの夕食をご馳走になり、彼らの中国語の先生と4人で車でオペラハウスへと向かう。

「アイーダ」はオペラ初心者の自分でも知っているくらいメジャーなオペラの演目。ジュゼッペ・ヴェルディ(Giuseppe Verdi)による作曲で、1871年に初演された140年以上もの歴史をもつオペラである。

メンターによれば、人間の根源的な悩みを描いているから非常に分かりやすいし、また入り込みやすい演目だという。その話の通り、古代エジプト時代のエジプトとエチオピアの争いの間で、恋に落ちながらも祖国を思う男女の姿を描きだす。

いつもどおり第1幕は努力の甲斐なく、あっさりとアルファ波にやられて完全に眠りに落ちながら薄めで舞台を追う形となり、幕間の15分の休憩でなんとか眠気を吹き飛ばし、そこからが勝負とばかりに集中する。

何でもこのオペラのために、ズービン・メータ(Zubin Mehta)というインド出身の世界的な指揮者を招待し、イタリアからセットと衣装のスペシャリストを呼び寄せ、膨大な費用を投入して容易されたこの北京での「アイーダ」。壮大な物語と音楽と反響しあうように、素晴らしいオペラ体験となったのは間違いない。恐らく自分の今まで観たオペラの中で、一番の舞台であったと言えるであろう。

エジプトに奴隷として拘束されているエチオピアの王女であるアイーダ(Aida)役には、現在世界でアイーダを演じされえたら3本の指に入るといわれている、フイ・ハ(Hui He、和慧)。その恋人である若きエジプトの将軍であるラダメス(Radames)にはスペイン人のJorge de Leon。アイーダの恋敵でありエジプトの王女であるアムネリス(Amneris)にはロシア人のMarina Prudenskaya。

壮大なコーラスで歌われる有名なの「凱旋行進曲」など、ところどころに「あ、この曲、アイーダの曲だったんだ」と思われる曲も盛りだくさんで、今後チャンピオンズリーグを観るときにはアイーダを思い出さずにいられないと思いながら観劇を楽しむ。


ズービン・メータ(Zubin Mehta)
フイ・ハ(Hui He、和慧)
Jorge de Leon
Marina Prudenskaya
ヴェルディ

2014年12月7日日曜日

コンサート 「Ivo Pogorelich Piano Recital」 NCPA 2014 ★

イーヴォ・ポゴレリチ  Ivo Pogorelich 

このまま行けば、今年最後のコンサートとなる今夜のピアノ・リサイタル。いつもの様にメンターに薦められるままに購入した今夜のチケット。当日になってやっと予習を始め、どんなピアニストかとプログラムに目を通して夜に備えることにする。

今夜の主役のピアニスト、イーヴォ・ポゴレリチ(Ivo Pogorelich)は、メンター曰く、現在活躍するピアニストの中でもかなり重要な一人であるという。1958年、クロアチアの首都であるベオグラード生まれの56歳。ロシアに渡り、ピアノの師である年上のアリザ・ケゼラーゼと結婚し、更に才能を開花させ、世界的なピアニストとして活躍するという。

なんら予備知識を持たずに臨んだ演奏だが、前半を終えてメンター夫妻をホールで合流し、感想を言うあう時に、「あまりに強弱の差が激しく、鍵盤を強く打ち付けるので、落ち着いて楽しめる演奏というよりも、緊張してビクビクしながら聴く感じだね」と言い合っていたが、なんと後半のストラヴィンスキーの演奏の途中で、ピアノ線が切れてしまったということで、急遽最後のブラームスの前に予備のピアノが舞台下からせり上がってきて設置されるというアクシデントもあり、観客席の空気もどこか「あまりに強く叩くからだよ・・・」という声がどこかから聞こえてきそうな・・・

帰宅後あらためて調べてみると、やはり「弱音指定の箇所を強打するなど型破りなことでも知られる」と書かれており、「なるほど」となぜか納得してしまう。それでも前半のリストとシューマンでは、俗世からクラシックの世界へ身体を馴染ませる為にどうしても必要な移行期間としてアルファ波に包まれてすっかり眠りの中へ。周囲を見てみても、やはり同じように抵抗することも出来ずにいびきをかきながらウツラウツラとしている男性客の姿も。

まずは1886年、ハンガリー生まれの作曲家でありピアニストであるフランツ・リスト(Franz Liszt)の「ダンテを読んで(After a Reading of Dante Fantasia quasi sonata in d minor)」。

続いてドイツ人作曲家のロベルト・シューマン(Robert Schumann)の「幻想曲 ハ長調 Op. 17(Fantasie for Piano in C major, Op. 17)」。この二曲の前半だけで1時間近く演奏しており、途中からアルファ波の呪縛も解け、曲に集中することができる。コンサートの前半で眠りに落ちると、いつも悩まされている偏頭痛もなんだか楽になったような気がし、少しだけ身体が軽くなって後半を迎えることが出来る。


そんな風に向かえた休憩時間。階下のカフェ前でいつもどおりメンター夫妻に合流し、前半の感想をあーだこーだと話し合う。そんなこんなしているうちに「ゴーン」と後半の始まりを知らせる合図が。

後半の一曲目は昨年末に良く聞いたロシアの作曲家イーゴリ・ストラヴィンスキー(Igor Stravinsky)の「ペトルーシュカ(Petrushka for Piano, three movements)」 。ちなみにペトルーシュカ(ピョートルの愛称)とは、ロシア版のピノキオのことだという。

そしてピアノ線が切れ、観客席がざわつく中断の後に演奏されたのが最後の曲は1833年生まれのドイツ人作曲家、ヨハネス・ブラームス(Johannes Brahms)の「パガニーニの主題による変奏曲(Variations on a Theme of Niccolò Paganini in A minor, Op. 35)」。こちらはどこかの広告か何かで聞いたことのあると思える曲で、周囲を見渡してもやっと心地良くリズムに合わせて身体を揺らしている人の姿を視界に捉えることができるほど、有名な曲である。

演奏を終えると、数度のカーテンコールと繰り返すが、今日はピアノ線の切断というアクシデントもあり時間が長引いてしまったせいもあるのかアンコールの演奏は無しのよう。会場をでて時計を見ると既に夜の22時を回っている。

帰り道なので、車で家まで送っていくメンター夫妻と落ち合って、「コンサートというよりはコンテストで必要以上の強弱をつけた脅迫的な演奏が少々痛々しかった」などと勝手な感想を述べながら、来年はどんな演奏に出会い、どれだけ心地良いアルファ波に包まれることができるだろうかと想像を膨らませながら、夜の街へと車を走らせることにする。

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Programme  
 After a Reading of Dante Fantasia quasi sonata in d minor Liszt
 Years of Pilgrimage, No. 7 II G 161 2nd Year: Italy 1858 Liszt
 Fantasie for Piano in C major, Op. 17 Schumann
   
 ——Intermission——  
 Petrushka for Piano, three movements Stravinsky
 Variations on a Theme of Niccolò Paganini in A minor, Op. 35 Brahms
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フランツ・リスト Franz Liszt
ロベルト・シューマン Robert Schumann
イーゴリ・ストラヴィンスキー Igor Stravinsky
ヨハネス・ブラームス  Johannes Brahms


2014年10月25日土曜日

ダンス 「Cloud Gate Dance Theatre Pine Smoke」 NCPA 2014 ★★★★★

恐らく現代において見るべき価値があるものが在るとすれば、間違いなくそのトップクラスに入るであろうこのステージ。そう思えるほどに美しい舞台であった。

かつてアルモドバルの「トーク・トゥ・ハー」を見た時に、映画の内容よりも、冒頭の印象的なモダンダンスの舞台と、それを観客席で見ながら、一人涙を流す中年の男。その舞台が世界的ダンサーであり振付師であるドイツのピナ・バウシュによる「カフェ・ミュラー」だと知るのは後になってのことだが、いつか大人になって自らも一人週末の夜に劇場に足を運び、自分の心を向き合うように言葉語らぬ美しい舞と向き合う、そんな時間を過ごしたいと誓った若かりし頃。

その思いを成就させてくれるような舞台にはなかなか出会うことは無かったが、今夜の舞台こそ、かつての思いと見事にリンクする素晴らしい時間と空間を体験させてくれた。

クラウド・ゲート・ダンス・シアター(Cloud Gate Dance Theatre 雲門舞集)は台湾を拠点として活躍する世界的振付師であるリン・ホァイミン(Lin Hwai-Min 林懐民)が率いるカンパニーで、中国語圏での初のコンテンポラリー・ダンス・カンパニーだという。

クラウド・ゲート(雲門)とは、中国で最も古いダンスの名前で約5千年前の古代の舞の様式を指すという。ダンサーは皆が氣功や書道などのトレーニングを受け、その動きもやはりどこかアジア的なしなやかさを感じさせる。

そしてなんといっても、このクラウド・ゲートはあのピナ・バウシュが愛してやまないといわれているカンパニーであり、どこかしら共通する雰囲気を感じ取らずにいられない。

今回の演目は「松烟(Pine Smoke)」と呼ばれ、舞台に繰り広げられるのは、常に形を変えて空気を一体化する煙の様に動きの速度を速めては緩めるダンサー達の舞。一時間強の上演時間は、その動きに圧倒されるうちにあっという間に終演時間を迎えることになる。

大人になるというのは、恐らくそれぞれの中に自分なりの大人の像を作り、いかにその像から偏差することなく過ごせるかが、その人の充実度に比例する。そして自らが作り出す像というのは、人生の中で見聞きした様々な小説や映像での断片をコラージュしてできるものと、現実の生活との間での平衡状態で作り出される。

日常の忙しなさと、汲々とする生活とストレスの中で、なかなか定常状態に落ちつかないそのバランス。そんな中このような素晴らしい夜を体験できることは、人生を過ごす上で心の中で貴重な楔となるだろうと思いながら席を後にする。

 Lin Hwai-min 林懷民 リン・ホワイミン


2014年5月30日金曜日

コンサート 「チョン・ミョンフン (Chung Myung-Whun) Conducts Verdi Requiem」 NCPA 2014 ★★★


チョン・ミョンフン (Chung Myung-Whun)
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Programme
Messa da Requiem Verdi
  I. Requiem & Kyrie Requiem aeternam  
  II. Sequence (Dies irae) Dies irae  
  III. Offertorio Domine Jesu Christe  
  IV. Sanctus  
  V. Agnus Dei  
  VI. Lux aeterna  
  VII. Libera me Libera me-Dies irae  
   Vocalists: Sun Xiuwei, Yang Guang, Li Xiaoliang, Xu Chang
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春のヴェルディ祭りの最後を飾るのは、韓国人指揮者・チョン・ミョンフン(Chung Myung-Whun 鄭明勳)によるヴェルディの「レクイエム」。

この「レクイエム」。日本では「新世紀エヴァンゲリオン」の曲と言った方が分かりやすいかもしれないが、あの大合唱による大迫力の曲である。

その為にいつものコンサートとは違い、後部座席が観客に解放されておらず、男女の多くのコーラスのメンバーが陣取っている。そしてオーケストラの一番前には、ソプラノ、メゾ・ソプラノ、テノール、バリトンを担当する中国人の声楽陣。それぞれなかなか個性的な容貌である。特にソプラノは妖怪人間のベラにしか見えない・・・

そして指揮者のチョン・ミョンフン(Chung Myung-Whun 鄭明勳)。韓国人で音楽一家で苗字がチョン。どこかで聞いたことが・・・と思って後日オフィスでそんな話をしていると、韓国人スタッフが、「ああ、その指揮者。Yosukeが好きだって言っていたバイオリニストと兄弟だよ」と。

なるほど。以前見に行ったチョン・キョンファ(Kyung Wha Chung 鄭京和)のお兄さんということらしい。こうして徐々に点が線になって繋がって、音楽体験が面へと広がっていくのだろうとなんだか楽しくなる。

そして今日の主役のヴェルディの「レクイエム(原題:Messa da Requiem)」。カトリックのミサ曲でもあるといい、イタリアの文豪アレッサンドロ・マンゾーニを追悼する目的で作曲されたという。モーツァルト、フォーレの作品とともに「三大レクイエム」の一つに数えれ、その中でも「最も華麗なレクイエム」と評される作品だという。

楽章構成は以下の通り

第1曲: Requiem e Kyrie(レクイエムとキリエ)
第2曲: Dies irae(怒りの日)
第3曲: Offertorio(奉納唱)
第4曲: Sanctus(聖なるかな)
第5曲: Agnus Dei(神の小羊)
第6曲: Lux aeterna(永遠の光)
第7曲: Libera me(私を解き放ってください)

百人近くいるのではと思われるコーラスの大合唱はまさに大迫力。あまり観客が居なかったために中央のいい席へと移動させてくれたため、その音量を真正面から体感することになる。

音楽が身体体験だと理解できる魂に響いてくるコンサート。少しだけヴェルディを理解できた春になったかと高揚感を感じながら家路に付くことにする。


ヴェルディ


2014年5月24日土曜日

オペラ 「イル・トロヴァトーレ Il Trovatore」 NCPA 2014 ★★★★


最近二回続けて購入しておいたオペラが、仕事が終わらず観にいけなかったために、何としても今回は・・・と気合を入れて会場に向かったオペラ。

恐らく今まで見た中で一番良かったオペラとなったかもしれない。恐らく多くの舞台を見ているメンター夫妻にとっては、あまりよくないプロダクションだというのかも知れないが、まだまだ素人の域を出ない自分にとっては、舞台と衣装と役者の歌声によって何度も身体がゾクゾクする瞬間を感じることが出来た。

今回は前回ほど仕事が立て込んでいなかったこともあり、開幕前にオフィス近くの中華料理屋で好物の辣子鸡とビールをいただいていたので、第一幕は完全に睡魔に負けてしまう。3階席の最後部で、少しでも身体を平行に出来るようにと足を投げ出しながら、楽な体勢を探しながら横目で舞台を追う。

恐らく少なく無い人がオペラの発するアルファ波によって眠気に抵抗することが出来ないのだろうと想像するので、幾つかのシートをもうフラットに出来るような仕様にすればいいのに、という訳の分からない思いを巡らしながら普段の生活では感じることの出来ないリラックスを身体中で感じながら一幕を終える。

なんといっても主演の男の役者が素晴らしい。恐らく声量でいったら、他の役者のほうが素晴らしかったり、テクニック的にはうぐれていたりするのだろうが、この主役の歌声はなんとも心に響く。そして会場も盛り上がる。

ヒロインもそのビブラートや声量は、主演に勝るとも劣らぬ技量なのだろうということは、自分でもなんとなく分かるが、それはあくまでも技術の一部。技に思えてしまう。如何にも「どう、私凄いでしょ?」と言わんばかりに聞こえてくるが、どうも響いてこない。これだけの役者がそれぞれの見せ場を繰り広げるが、それでも会場が「ブラボー!」と送る役者は決まっている。それが舞台芸術の面白さなんだろうと思わずにいられない。

幕間の20分の間に、目覚めの為にとレモンのアイスを食べてみると、急に腹痛を感じ、トイレに駆け込むことになる。しかしトイレの中では中国人が電話をしていて、一向に出てくる様子はない。腹を立てながら、しょうがないので一つ下の解へと向かう。損なこんなをしていたら、後半が始まってしまい、暗闇の中を足元を気にしながら席へと戻る。

その後半が特に良かったかと思われる。ストーリー時代は何度も複雑なので追いきれなかったが、舞台セットも美しく、衣装も綺麗である。恐らく過剰な演出だったところもあるのだろうが、それも含め気持ちを向上させてくれる都市の文化だと思わせてくれるに十分である。日常では感じられない高揚感。フワフワした気持ちを感じて家路に着く。それが巨大都市のみが持つことを塗るされる文化施設の魅力。

「イル・トロヴァトーレ(Il Trovatore )」はヴェルディがが作曲したオペラであり、ヴェルディがの中期の傑作の一つとして数えられている。日本語訳は「吟遊詩人」。幼い頃にゲームのファイナルファンタジーでこの言葉に出会った頃は、一体何が凄いのか良く分からない職業だと思っていたが、こうして舞台で見るとこのオペラに相応しい魅惑的な職業名だと思ってしまう。

こうして今夜も少しだけフワフワした高揚感を感じ、来た時よりも少しだけ身体を軽く感じながら家路につくことにする。




Lu Jia
ヴェルディ