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2017年10月26日木曜日

「江戸東京の聖地を歩く」 岡本亮輔 2017 ★★


東京生まれの宗教学者による東京論。1979年生まれというから、ほぼ同年代でということになるので楽しみにしてパリ行きの機内で読みきるが、帰りの機内でバックの中に本が無いのに気がつき、おろおろと探してみるが結局見つからず。お気に入りのブックカバーとともに、パリのどこかに忘れてきたのだろうと諦める。  

東京からパリへ、オリンピックと同じように聖地の魂も置いてきたことと自らを納得させることにするが、やはりこういう東京論は「アースダイバー」の様に、建築畑の人間でもヒリヒリするような緊張感を感じる内容を求めてしまうが、この本やどちらかというとより一般向けの東京論というところだろうか。



2017年10月19日木曜日

「演劇入門」 千田是也 1966 ★★



烏鎮演劇祭(乌镇戏剧节,Wuzhen Theatre Festival)で、「建築と演劇」について話をしなければいけないということで、本棚に眠っている演劇関係の本を引っ張り出し、その中で「入門」という訳で手にしたが、今から50年以上も前に出されて本ということもあり、行きの飛行機だけではとても読破することができずに、帰りの飛行機と合わせて読みきった一冊。

著者である千田是也(せんだこれや)という日本の舞台芸術の歴史を語る上で欠かせない演出家の存在も、恥ずかしながらこの本を手にするまで知らなかったが、書かれている内容もまた昭和の知識人に相応しい濃密なもので、本棚に眠っている同名タイトルの平田オリザの一冊もまた読み比べしてみようかと思わせてくれる一冊である。

2017年8月8日火曜日

「沖縄の歴史と文化」 外間守善 1986 ★★


プロジェクトがきっかけで、今までまったく縁の無かった場所に関わることができることは建築というものを生業にしているものとしての喜びであると同時に、その土地の歴史や文化、そして現在の人々の生活を少しでも理解することが、少しでも場所に根付く建築を作るための基礎であり、建築家としての責任でもあるだろう。

そういう訳で縁ができそうな沖縄の地。米軍基地や観光地としての側面だけではなく、日本の最南端として独特の文化を培ってきたその歴史を文化を少しでも基礎知識として持っておくために何冊か手にとった中の一冊。

様々な場所の地名として残るグスクの意味や、琉球王国時代と明などの周辺諸国との関係、そして薩摩藩による侵攻と江戸幕府による取り込み政策、戦場となった近代と、戦後における統治時代と本土返還後。

本土における日本史という教育ではまったく捉えきれないその歴史は、やはり馴染みの無い言葉が多く、改めて日本人として知っておくべき事なのだと思わされる。

オモロや御嶽(ウタキ)など、信仰や世界観などもその起源や流れを説明し、如何に日本の中でも独特の文化を形成してきたのか、そして現在にどう残されているのかというのが見て取れると同時に、このような土地に染み付いた文化というのは、融合政策によって簡単に消し去られるものではなく、また多中心に移りつつある現代においてこそ、じっくりと見つけなおし、伝承していくことが大切なのだろうと思わされる。

ぜひともこの知識を元に、次回はより深く、沖縄の辿ってきた時間や歴史を感じられるような場所に足を運び、現地の人の話を聞くことができればと思わずにいられない。

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目次
序章 太平洋文化圏の中の沖縄
沖縄文化のマクロ的視野
従来の沖縄文化系統論

第一章 沖縄歴史のあゆみ
1.先史沖縄
 旧石器時代
 新石器時代(貝塚時代)
 グスク時代(前半)

2.古琉球
 グスク時代(後半)
 第一尚氏時代

3.海外交易の発展
 明
 南方
 日本
 朝鮮
 16c以降の貿易の衰退

4.近世琉球
 ・第二尚氏時代(後期)

5.近代沖縄
 琉球処分(明治12年)
 奈良原県政
 そてつ地獄(大正末~昭和初め)
 沖縄戦

6.戦後沖縄
 米軍統治時代

第二章 沖縄の言語と文化
1.日本語の中の沖縄語
 沖縄語の歴史
 沖縄語の特徴的音韻変化

2.沖縄文学の全体像
 古代文学
 近代文学
 古代文学の分類

3.オモロとウタの世界
 オモロ
 琉歌(ウタ)

4.神観念と世界観
 創世神話
 『おもろさうし』にみる神観念と世界観
   (1)ニライ・カナイ
   (2)アマミヤ・シネリヤ
   (3)オボツ・カグラ
 祭祀と年中行事
   (1)御嶽
   (2)年中行事
 各地の祭り
   (1)シヌグ
   (2)ウンジャミ
   (3)イザイホー
   (4)祖神祭り
   (5)プーリィ(豊年祭)
   (6)アカマタ・クロマタ
 民俗芸能
   (1)ウスデーク
   (2)エイサー
   (3)クイチャー
   (4)巻踊
   (5)アンガマ
   (6)京太郎

5.宮廷芸能
 古典音楽
 古典舞踊
 古典劇(組踊)

6.沖縄の美とかたち
 美学
 美術

第三章 神歌にみる宮古・八重山の歴史
1.宮古島の歴史と英雄たち
 開闢伝説
 先史時代~古代
 宮古の英雄たち
 14c末~15cの宮古と八重山
 王府の宮古支配と人頭税

2.八重山の歴史と英雄たち
 創世の説話~先史時代
 八重山の英雄たち
 八重山統治と人頭税
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外間守善

2017年4月23日日曜日

「フリーライダー あなたの隣のただのり社員」 河合太介 渡部幹 2010 ★★


河合太介
なんで自分はこんなにまじめに、こんなに沢山仕事をして、こんなに長時間働いているのに報われず、それに対してあの人はまともに仕事などせず、就業時間でも遊んでいて、上司の前だけいい面して、それで仕事をがんばっている、成果をあげたと評価され、昇進していてき、給料もあがっていく。なんて不公平なんだ。

どうせ報われないのなら、自分だってがんばって仕事をする必要は無い。できるだけうまくやって、サボって時間を過ごせばいい。


仕事をせずに周囲の人に「ただのり」する社員を「フリーライダー」と呼び、なぜそういう人が発生するのか、そこにはどんなタイプがいるのか、そしてその対処法は?などを描くもの。

恐らくこういう人は規模がある一定レベルを超えた大きな会社においては、いつの時代でも必ず一定割合存在したのであろうが、かつてはもう少し社会全体、会社全体がおおらかで、そういう人にも存在理由があるんだと、「働かないアリに意義がある」のように許容する余裕があったのが、競争主義が導入され、会社全体に効率化が求められ市場で勝ち抜いていかなければならない現代においては、一人一人がフルで働かなければいけない状況が続く中、余計に「フリーライダー」が目に付くようになったのもまた事実であろう。

ただ組織側としては、どうやって「フリーライダー」の意識を発生させないか、そしてそれが伝染しないようにするのかは非常に重要な生命線であり、やはり最後は給料を得る場所としてではなく、一職業人として自分の将来にとってどのような有益なスキルを身につけることができるか。またその手段が多種多様あると思える場所にすることが、一番の解決法なのだろうと読み終えて改めて思うことになる。

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目次
第1章 ただのり社員に苛立つ職場
第2章 フリーライダーの分類―日本の職場にいる四種類のフリーライダー
第3章 なぜフリーライダーが生まれるのか
第4章 組織としての問題解決―勤勉な社員が夢を見られる会社づくり
第5章 個人として取るべき行動
第6章 新たな課題
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2016年12月16日金曜日

「働かないアリに意義がある」 長谷川英祐 2010 ★★★


長谷川英祐
ハチやアリに代表される「コロニー」と呼ばれる群れを成して、それ全体がまるで一つの生物の様にして活動する特殊な集団特性を持つ生物を「真社会性生物」という。

個別の視線で見たら、決して生存に有利に働かないのにもかかわらず、コロニーという全体で見ると種の繁栄にプラスに働く「利他行動」を取ることが、真社会生物とその他の社会生物を区別する点である。

働き者と言われるアリのコロニーをよく観察してみると、いつも働いているアリがいる一方で、ほとんど働かないアリが見つかる。なぜ彼らは何もしないのか?なぜ何もしない彼らを必死に働いているアリたちが文句を言ったり、コロニーから追い出したりしないのか?

「個」の視点から考えていても決して辿りつかないその答えは、アリにとっては「個」よりもより重要なもの、つまり「コロニー」をいかに次の世代に残していくかの方が、より社会にとって重要であるから。

そしてその為に、皆が皆、いつも必死に限界まで働いている状態よりも、常に集団の中に余力を残し、想定外のことが起きたときに対応できるようにしていくことの方が、より「群」として生存率が高くなることを、アリはその遺伝子レベルで理解しているということ。

そして集団の中に、仕事をするアリと、しないアリ。それらのサボっているように見えるアリも、ある一定のレベルを超えた仕事量がコロニー全体に降りかかると、突然働くようになるという性質、「反応閾値」=「仕事にたいする腰の軽さの個体差」を持つことで可能としている。

守備の上手い選手ばかりや、足の速い選手ばかり集めても強いチームができないように、多様性がチーム全体の力をあげるのに役立つように、人間社会においても職業人として基本的な能力は保持しつつも、多様な個性の集合体の方が組織として強くなるということ。

皆が皆、性善説に沿うようにまっすぐに原理原則に従うのが社会ではなく、個が貢献してコストを負担することで回る社会があれば、今度はそのシステムを利用して、社会的コストの負担をせずに自らの利益だけをむさぼる「裏切り行為」を行う「フリーライダー」。が出現するのはヒトもアリでも同じこと。

不公平に思えるサボる社員もひょっとして、より高次の視線から見ると、長期的な組織の存続に何かしら寄与しているのかも・・・と期待を込めて観察してみるが、やはり疑問符だけが心の中に残るだけ。

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■目次  
序章 ヒトの社会、ムシの社会
第1章 7割のアリは休んでる
第2章 働かないアリはなぜ存在するのか?
第3章 なんで他人のために働くの?
第4章 自分がよければ
第5章 「群れ」か「個」か、それが問題だ
終章 その進化はなんのため?
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2016年11月7日月曜日

「アートは資本主義の行方を予言する」 山本豊津 2015 ★★★



アートの世界で生きる友人と食事に行くと、如何に世界の各国が文化やアートを国家的戦略として見据えて育てているか、そして世界を俯瞰した際に現代におけるアート市場がどの都市を中心として回っているのかが話題にあがる。

そんな彼が「山本さんの本、読み終えたからどうぞ」と貸してくれた一冊。著者は日本で最初に現代アートを扱い始め、「もの派」などを世界に紹介した画廊として知られる銀座の東京画廊のオーナー。東京画廊は現在のように経済の過熱する前から中国でのアート市場とアーティストの可能性を信じ、世界に先駆けて北京の798アート地区にBTAPとしてギャラリースペースをオープンした画廊でもあり、世界を俯瞰する視点を持った数少ない画廊の一つでもある。

自分も東京画廊には縁があることもあり、ぜひとも読んでみたいものだと思っていたタイミングであったので、早速読み進めることにするが、ポイントとしては一般的にはよくその価値が分かりづらいと囚われがちなアートの世界が、実は非常に資本主義の本質を体現しており、希少性がいかに価値を決めていくか、そして中心に対する周縁の意味など、才能を持った限られた人間によって作り出される今まで存在しなかった作品に、いかに資本が流れていくのかをとてもわかりやすく解説する。

その脇で、東京で初めて現代アートを扱うようになった初代オーナーである自らの父親と、黎明期の画廊と社会の姿、そして海外から日本へ、そして日本から海外へと様々なアーティストが自らの画廊を通して社会に知られていくようになった様々な展覧会の意味。現在のアートの世界を動かす力までなった中国人アーティストとその市場にいち早く参与し、その現在の姿などなど、画廊という視点を通して見えてくる社会の姿を描いていく。

「美」とはなにか?

という喉元に突きつけられるような厳しい自問自答を毎日繰り返して長年過ごしてくる画廊主であるからこそ、最後は文化と美の本来的な意味に立ち返り本を締めくくるが、年々加速するネットショッピングのなかで見受けられる値下げ競争の姿に対し、まったく対極にあるように見えるアートの世界がいかに同じ資本主義の概念で説明でき、かつ存続しうるのかをすんなりと消化できるようになる、現代を生きる上でとても意味のある一冊であろう。

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■目次
第1章:資本主義の行方と現代アート――絵画に見る価値のカラクリ
第2章:戦後の日本とアート――東京画廊の誕生とフォンタナの衝撃
第3章:日本発のアートと東京画廊の歩み――脱欧米と「もの派」
第4章:時代は西欧からアジアへ――周縁がもたらす価値
第5章:グローバル化と「もの派」の再考――世界と日本の関係
第6章:「武器」としての文化――美の本当の力とは?

あとがき
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2016年3月5日土曜日

「中高年ブラック派遣 人材派遣業界の闇」 中沢彰吾 2015 ★


電車の中、20代後半と思わしきスーツ姿の若い男女。上司の男性に部下の女性という感じ。身に着けているものは年齢に比べたら少し上等なモノのようだが、なんだか少しチャラチャラした感じ。一体どんな職業なのかと想像を広げていたら、男性がおもむろに電話を取り出し、「終了報告のメールさせとけよ」と指示の電話。そして読んだこの本。なるほど、ああいう彼らが派遣会社の若い社員で、中高年に高圧的に指示を与えては高収入を得ているのかとピンとくる。

つい先日のNHKの「クローズアップ現代|増える“正社員ゼロ職場”~公共サービスを担う現場で何が」でも、この数年で、今までは「公」の機関としてかなり好待遇で正社員として働いていた京都の保育士が、業務を外部の運営会社に委託するに伴い、その運営会社との再契約という契約の切り替えが行われ、今までの半分ほどの給与になったり雇い止めとなったりした話を報じていたばかり。

どこまでが過剰な好待遇で、競争に晒される市場原理から隔離された利権と呼ばれるようなものなのかは難しいところであるが、できるだけ組織をスリム化し、経費を削減して利益を上げていくことを迫られた企業にとっては、固定費として毎月のしかかる人件費は最も手をつけたいところである。だが、同時に従業員の生活と、会社のサービスに直結するところでもあるので、細心の注意を払って精査して「仕分け」していくこと、これはグローバル化し、どんどんと効率という波が押し寄せる現代においては、どうしても避けては通れないことも事実。

そんな中でこの10年近く、長きにわたって問題とされてきた格差問題と非正規労働者の問題。その問題の中にも既に10年以上の時間が流れたためにある種の歴史が生まれており、その概要を知ることと、この問題の現在の状況を把握するために手にした一冊。


第3章 人材派遣の危険な落とし穴―「もう来るなよ。てめえみてえなじじい、いらねえから」の「人材派遣が急拡大した本当のワケ」によれば、1995年に日経連が発表した「新時代の日本的経営」で、今後は働き手を、「長期蓄積能力活用型グループ(正社員の終身雇用)」、「高度専門能力活用型グループ(専門的な能力を要する働き手を期間だけ雇う)」、「雇用柔軟型グループ(パート、派遣労働者などの低賃金不安定労働者)」の三種に分けて、労働力を効率的に使い企業収益を高めようと宣言。つまり、今までの大量に従業員を抱え、組織内部で重い負担を抱えつつやりくりをするのではなく、より効率的に外部の人材も借りながらやりくりをしていきますということである。

しかしそれには「40代以上の社員の削減」という長年の慣行である終身雇用が壁になり困難であった。そこに登場したのが人材派遣業界で、企業が受けていた契約社員やパート労働者の賃金差別訴訟の頻発した状況を受け、労働者を本来の職場から切り離して人材派遣会社が雇用すると言う形にすれば、面倒な訴訟は回避でき、人事責任も負わないという新しい理論を提示する。企業としては「使えない社員」や「お荷物となった社員」に対し、自分たちで会社を辞めてもらう話し合いをすることなく、企業に人減らし合理化を提案するコンサルタントにアウトソーシングし、同時に足りなくなった労働力は派遣会社を通して補充することになる。

リーマンショックによる年越し派遣村など、社会がその問題を現実問題として受け止めるきっかけになったのは2008年。その当時を含め、「2010年頃までの第二時代の人材派遣会社に食い物にされた犠牲者は20代、30代の若年労働者が多かった」という。「だが、2015年の今は違う。2000万人を超えた非正規労働者のうち、6割以上が40代以上の中高年だ」と、5年を経た現在はその様相が変わり、30代だった派遣労働者が正社員になることなく、そのまま派遣労働者として40代に突入したのと、今までは正社員として働いていたがその身分を失って派遣として働かざるを得なくなった40代から50代、そして退職後の生活の為に収入を得るために仕事を求めるがやはり派遣の仕事しか得られない高齢者。これらの人がこの5年の間に数字を伸ばしたのだと想像できる。

「自己責任」だとか、「時代の流れだ」とか言ってしまうのは容易であるが、これが現在の日本の風景であり、多くの人が望んでその状況にいるのではなく、より安定し高収入な正社員として社会に関わりたいと望んでいるが、それがかなわない状況があること。それが「二極化」する世界の中で技能を持ってそれを正当に評価してもらえ、見合った報酬を払ってもらえる職場を見つけられる人はいいが、それ以外の人は生きていくためにこのような決して望ましいとは言えない労働状態に定常しなければいけない。これが今後も当たり前の風景として定着していくのが望ましいのか否か。それを考え、決めていかなければいけない時代に入ってきたのだと良く分かる一冊である。

以下本文より。

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―奴隷労働の現場
人材派遣は「使いたい人数を安価に、必要最低限の時間だけ単純労働に従事させ、人事責任を負わない」という派遣先企業にとって、すこぶる好都合な制度になっている

第1章 人材派遣という名の「人間キャッチボール」
特定労働者派遣と一般労働者派遣
一般派遣のうち労働期間が30日に満たない短期派遣を日雇い派遣という

/政府・財界による労働者の流動化政策
1985年に労働者派遣法が成立

/日雇い派遣でも有給休暇をもらえる
派遣社員は派遣先の福利厚生施設を利用できるのか否か
深夜食を食べようとしたら食堂を使わせてもらえず、外で食べろと追い出された。飲み物も自販機に格安の値段が設定されていたが、これは社員の為に会社が補助している者だから派遣は外のコンビニで買えと指示された

/人材派遣会社20代社員の異常な高収入
合理化を指南するコンサルタント
要するに企業に入り込んで組織改編と人減らしを促す事業

第2章 人材派遣が生んだ奴隷労働の職場
/未登録でも派遣する人材派遣会社がある
人材派遣の要でもあるマージン率の公開を義務付けた。かつては一部で50%にも達していたピンハネ率は30%程度に抑えられている
人材派遣会社にとってピンハネだけが問題だから、子供でも外国人でも誰でもいいのだろう

/就業規則で「おまえ、態度悪いからクビ」
派遣先で他の労働者と会話してはいけません
複数の人材派遣会社が一つの職場に労働者を派遣
派遣先との契約時期や派遣人数、ピンハネ率の違いなどで賃金に差
派遣先への移動に際しての交通費はお支払できません

/就業条件外の過酷負担
横浜市 問題の職権は市内を走る循環バスの乗客の誘導員
トリエンナーレ
/中高年は美術品が似合わない?
広域に広がったイベントであるにもかかわらず、該当に道案内のガイドが全く配置していなかった
頭を使うガイドとなると、自給は2000円に跳ね上がる

/二重帳簿ならぬ二重マニュアル
トリエンナーレのブラックバイトリポート

/ノロウイルス感染者に「食品工場に行け!」
大手製パン会社のクリスマスケーキ

/官公庁と自治体、外郭団体でも非正規労働が拡大
官庁のそれまでの随意契約方式による民間事業委託を否定し、競争入札制度を採用
図書館司書、役所の各窓口、公立学校の教職員、カウンセラー、消費生活相談員、博物館や大ホールの運営スタッフなどが続々と外部の民間業者に委託され、同時に人材派遣会社が低賃金労働者を送り込む仕組みができあがった
最低価格落札方式の場合、提案企業の業務の質、労働者の待遇など事業の中身が問われることは無い

/不正の温床になりかねない危うさ
人材派遣会社が提案する「コストダウン」
知恵が無い。単に派遣労働者の賃金と待遇を最低のレベルに設定するだけ

/恐怖をふりまく正規社員たち
正社員「感情を抑える」「相手の立場を思いやる」といった社会人として必要な節度が欠落している

第4章 悪質な人材派遣会社を一掃せよ
―「二度と仕事紹介してもらえないよ。かわいそう」
/拡大する一方の非正規労働者
雇用者数を押し上げたのは123万人増えた非正規雇用
アルバイト、パート、派遣社員などの日正規社員は2014年 2000万人を超えて2012万人
中高年は45-54歳 387万人
65歳以上141万人
/週5日終夜勤務/従順な派遣労働者
いったん正社員の座から落ちてしまったら、もう絶対に元には戻れないのが日本という国

/人材派遣を推進する識者たち
人材派遣を活用するのは、派遣スタッフの奴隷制、使い捨てに魅力があるから
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■目次
はじめに
―奴隷労働の現場

第1章 人材派遣という名の「人間キャッチボール」
―「いい年して、どうして人並みのことができないんだ!?」
/迷走する労働行政
/元祖はドヤ街の手配師
/政府・財界による労働者の流動化政策
/行政処分された第二世代人材派遣
/衰退と復活の第三世代
/労働内容の説明は虚偽
/派遣はエレベータ使用禁止
/監禁労働のタコ部屋
/悪意の果ての無駄
/人材派遣会社のシステム
/派遣労働者は保護されているか
/派遣元責任者と派遣先責任者
/日雇い派遣でも有給休暇をもらえる
/派遣労働者使い捨ての「待機」
/派遣先責任者によるひどい仕打ち
/一日中倉庫で重さ20キロのスーツケース運び
/人材派遣会社20代社員の異常な高収入
/求人サイトの矜持と責任
/ヤラセだった英会話通勤バス
/日雇い派遣の原則禁止問題
/近年稀に見る悪法
/中高年が職に就けない現実
/「年齢制限なし」の「裏メッセージ」
/「三種の辛技」
/いい加減な「人間キャッチボール」
/労働基準法に刃向う労働者派遣法

第2章 人材派遣が生んだ奴隷労働の職場
/極限まで単純化された派遣労働
/巨大ダンボール箱と格闘した中高年の「善意」
/人材派遣の定番「ピッキング」で実はトラブル続出
/派遣労働者に損害金を請求
/カゴテナーと接触して負傷
/出勤確認連絡
/マニュアルによる効率化は本当か
/予定調和のストーリー
/人材派遣会社が紀勢線を張ったワケ
/マニュアルは金科玉条
/未登録でも派遣する人材派遣会社がある
/就業規則で「おまえ、態度悪いからクビ」
/現代の派遣切り「お父さん、酒臭いよ」
/違法な人材派遣会社との二日間の攻防
/派遣労働者の差別待遇
/困難な業務でも派遣が担当
/就業条件外の過酷負担
/私たちは税金泥棒ではありません
/中高年は美術品が似合わない?
/二重帳簿ならぬ二重マニュアル
/テレビ局派遣で逆立ち強制
/ノロウイルス感染者に「食品工場に行け!」
/人材派遣会社の女性社員が必死なワケ
/東南被害も泣き寝入りの派遣労働者
/疑惑の「登録費」

第3章 人材派遣の危険な落とし穴
―「もう来るなよ。てめえみてえなじじい、いらねえから」
/人材派遣が急拡大した本当のワケ
/官公庁と自治体、外郭団体でも非正規労働が拡大
/時給2000円が900円に
/研修日当なし、交通費なし、最低賃金以下
/人材派遣会社の狡猾な手口
/人材派遣の安値受注が生んだトラブル
/人材を集められない人材派遣会社
/試験監督が逃亡しちゃった
/不正の温床になりかねない危うさ
/給与踏み倒し計画逃散?
/斜塔は元CAで名古屋財界のアイドル
/恐怖をふりまく正規社員たち
/事件の現場は巨大モール
/混乱する運営の尻拭い
/繰返される監視役の無意味な指導
/踏みにじられた買い物客の夢
/無知な派遣先責任者との攻防
/強要、脅迫、監禁
/労働者の救済要請を無視
/奴隷派遣は本当にお得なのか?
/熟練者と素人の差
/無責任体質
/人材派遣活用のリスク
/人材派遣会社に頼ったら事業が行き詰った
/カタカナ肩書き乱発のハレーション
/イベントでの日雇い派遣は業務上横領?
/除夜の鐘が鳴る頃、てんやわんやの大騒ぎ
/若者と中高年との格差
/意気消沈する派遣先責任者
/企業の稼ぐ力を削ぐ無責任人事

第4章 悪質な人材派遣会社を一掃せよ
―「二度と仕事紹介してもらえないよ。かわいそう」
/拡大する一方の非正規労働者
/週5日終夜勤務/従順な派遣労働者
/中高年を殺すな
/従順な派遣労働者
/権利意識に欠ける中高年労働者
/労働環境によるワナ
/現実を直視してほしい
/人材派遣を推進する識者たち
/重要な情報をネグレクト
/欠けている労働者保護の視点
/人材派遣と景気浮揚
/副社長が帰っちゃった!欧州の労働事情
/日本にスウェーデン流を持ち込んだ企業
/欧米先進国比較 ドイツ・米国・フランス

あとがき―すぐにできる改善策の提案
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中沢彰吾

2016年3月4日金曜日

「隠された貧困 生活保護で救われる人たち」 大山典宏 2014 ★★

2008年に起きたリーマンショック。その影響によって顕在化してきた社会の中の格差。その結果年越し派遣村など様々な形で日常を過ごすことが困難な経済状況にいる人たちが世の中に認知されるようになると、大きな格差という括りの中で、「非正規労働者」、「子供の格差」、「女性の格差」、「漂流老人」などと毎年の様に新たなるカテゴリーが登場して世の不安を煽るかのようである。

その流れの中でこの数年特にスポットが当てられているのはシングルマザーなどの女性の貧困と、高齢者の貧困。結局それらは現在の日本が構造的に抱える問題が断片的に光を当てられ、世間に分かりやすいように、「決して人事ではなくあなたもそうなる可能性のある、すぐ横にある問題ですよ」と報じられているだけに過ぎず、それでも決して報道で取り上げられることのない貧困の在り方は別にある。

そんな普段の生活からは見えにくい貧困の在り方に真摯に向き合い光を当てようとするこの一冊。児童養護施設出身者、高齢犯罪者、薬物依存者、外国人貧困者、ホームレス・高齢孤立者、生活保護受給者と、様々な場所で槍玉に挙げられがちな人々をその背景から現状まで詳しく描き、その根本にある原因を描き出そうとする。

まるで受けやすいネーミングをつけて「○○格差」や「○○の貧困」と世間の注目を浴びてそれにより何かを得ようとするある一定の報道のされ方よりは、よっぽど好感の持てる内容だし、問題の在り処もよく分かる内容である。全体的に客観的に物事を伝えようとするために、インタビューを大量に使用しているのが読み物としてやや気になるが、それは真摯な著者の態度の現れであるのだと思われる。

以下本文より。

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メディアで伝えるのは、多くの人が共感する、わかりやすい生活保護者です。

第一章 児童養護施設出身者 
/児童養護施設の現状
約4万7千人

/自立援助ホームとは
義務教育を終えた15歳から20歳までの子供たちが働きながら自立に向けて生活をする場所
基本的には生活のすべてを自分の手で賄わなければなりません

第二章 高齢犯罪者 
/高齢犯罪者大国・日本
諸外国が3%前後 日本だけが10%を超えている

/孤立と貧困が犯罪を生む
犯罪を繰返すことで、家族や仕事、住いを失い、孤立していく高齢者の姿

第三章 薬物依存者
/「ダメ、ゼッタイ。」では防げない
自傷経験のない9割の生徒の多くは、薬物乱用防止講演など聴かなくとも、そもそも薬物には縁のない生活を送り続けるのではないか。そして1割のハイリスク群の生徒は、その様な公園を聴いても結局薬物に手を出す時には手を出すのではないか。

/居場所がない寂しさ
「ヒマだったから」
「淋しさ」や「誰からも必要とされていない感覚」

第四章 外国人貧困者 
約203万人
/同胞のきずな
多くは日本人の男性と結婚をした女性とその子供
母親は「日本人の子の母」として在留資格を取得し、生活保護を利用している

/何が問題なのか
日本人男性と結婚したフィリピンの女性が離婚して生活保護を利用する例が、近年の外国人の生活保護では最も大きな問題


第五章 ホームレス・孤立高齢者
漂流高齢者
/ホームレス地域生活以降事業
緊急一次保護センターと自立支援センター
ホームレスが付き三千円の家賃で入居しながら自立に向けて職を探す

/アウトリーチとハウジング・ファースト
アウトリーチ 職員が困っている人のところに足を運び、サービスを提案するところからかかわりが始まる

第六章 生活保護から見えるもの
/激増する生活保護
2008年 起きたリーマンショック
日比谷公園 年越し派遣村

/求められる自立支援
若い利用者の急増
就職活動に疲れて自宅に引きこもる若者、精神疾患の増加とそれに伴う自殺、崎の見えない中高年男性の再就職活動、アルコールやギャンブルへの依存・・・。中卒、高校中退などの低学歴者 四角や経験もなく、身体のあちこちに不調を抱え、コミュニケーション能力 
生活全体を立て直すところから始めないといけない

三つの対策
生活保護に至る前のセーフティネットを手厚くする
早期に脱却できる体制を整える
貧困の再生産を防ぐための手立てをする

/モノ扱いされる人たち
人をモノとして扱う
冷凍食品に農薬のマラチオンが混入

/承認を巡る闘争
承認という概念「愛・法・連帯」の三つの次元
人から愛されること
認められる経験
役割を与えられる
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■目次  
はじめに

第一章 児童養護施設出身者 「私のことを必要としてくれた」
/ドキュメント=隠された貧困① 児童養護施設出身者
>私のことを必要としてくれた
/家族に黙って家を出る
/乳児院、児童養護施設、そして里親へ
/親権の壁
/自立援助ホームへ
/生活保護は受けたくない
/私のことを必要としてくれた
/実家との和解
/繰返される虐待死
/厳罰化で歯止めを
/児童養護施設の現状
/不十分なケア体制
/施設出身者の厳しい状況
/施設出身者の追跡調査
/自立援助ホームとは
/重なり合う不利
/自立援助ホームと生活保護
/大人のことは信用しないぞ
/共依存の女の子
/死ななきゃいい

第二章 高齢犯罪者 「息子たちに手紙を書いています」
ドキュメント=隠された貧困②  高齢犯罪者
>息子たちに手紙を書いています
/元気をもらいたくて
/病気は大丈夫?
/入院患者に四人の刑務官
/夫と二人で工場を切り盛り
/なぜ刑務所に
/今は天国のようです
/高齢犯罪者大国・日本
/高齢者のモラルが低下した?
/無銭飲食や放置自転車を盗んで刑務所に
/孤立と貧困が犯罪を生む
/困ったら刑務所へ
/累犯障害者
/地域生活定着支援センター
/昔からやっていた
/他に行け
/男物の使用済みトレーニングウェアを盗む男性
/実刑はやむを得ないと考えていた

第三章 薬物依存者 「認めてもらえる場所がある」
ドキュメント=隠された貧困③ 薬物依存者
>認めてもらえる場所がある
/シンナーがあんパンと呼ばれていた時代
/たいしたことじゃない
/逃げ癖がつく
/逮捕されてもやめられない
/あなたが決めなさい
/「分かるよ」と笑われた
/三度目の再使用
/またカネか!
/八王子にもダルクを
/「ダメ、ゼッタイ。」では防げない
/居場所がない寂しさ
/厳罰化で覚せい剤を止められるか
/薬物依存の治療
/ダルク設立のきっかけ
/たった一つのルール
/ダルクの現状
/八王子ダルク
/窓口には自分の足で
/ダルクのこれから
/日本にもドラッグ・コートを

第四章 外国人貧困者 「なぜ、外国人なのに保護が受けられるんですか」
ドキュメント=隠された貧困④ 外国人貧困者
>なぜ、外国人なのに保護が受けられるんですか
/外国人が生活保護をもらえるのはおかしい
/外国人の誰もが受けられる訳じゃない
/同胞のきずな
/ヘルパー資格を取る
/夢は子供のこと
/あなた生活保護でしょ
/日本に根を張る外国人労働者
/リーマンショック後の就労・生活相談の増加
/外国人と生活保護
/何が問題なのか
/ふじみの国際交流センターの活躍
/多岐に渡る生活支援
/二人三脚の相談体制
/変わる外国人支援
/働かせるために呼び寄せる
/ようやく手に入れた普通の生活

第五章 ホームレス・孤立高齢者 「続かないんだよね」
ドキュメント=隠された貧困⑤ ホームレス・孤立高齢者
>元ホームレス
/三千円アパート
/ホームレス地域生活以降事業
/アウトリーチとハウジング・ファースト
/10万円で売れたロレックス
/保護申請はスムーズだった
/落ち着かなくてね
/人間関係はどこにでもある
/静養ホームたまゆらの悲劇
/構造的に生み出される漂流高齢者
/福祉施設からも締め出される
/施設増設は解決の切り札になるのか
/今ある住いを「支援付き」に
/ホームレス支援から始まった
/ケア付き就労とコミュニティビジネス

第六章 生活保護から見えるもの
/忘れ去られた生活保護
/激増する生活保護
/求められる自立支援
/制度の設計では解決できない者
/見えない人間
/モノ扱いされる人たち
/承認を巡る闘争
/インタビューを振り返る
/誰でも生きやすい社会に
/最後のセーフティネットの価値

あとがき
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2016年2月23日火曜日

「日本人はなぜ美しいのか」 枡野俊明 2014 ★



海外でもその庭園作品が知られ、随分とさまざまな場所で講演に呼ばれたり、作品を手がけていることで、建築に関わる人間であれば、禅僧というよりは、ランドスケープデザイナー、作庭家として認識している著者。いつか一緒にプロジェクトに関わることができたら良いなと思っている一人でもある。

そんな著者の名前を本屋で見かけ、「これは手にとっておかないと」と購入した一冊。京都などでよく見ることができる枯山水と呼ばれる庭園は、室町時代の禅宗寺院で発展された世界観であり、そのために禅僧であり、かつ作庭も手がける著者が何を語っているのかぜひ知ることができればと期待した一冊。

「日本人の美しさとは、しなやかな強さである」という著者。具体的な作庭への思想や方法論がかかれているかと思ったが、どちらかというと「日本人がどれだけ巣晴らしか」ということが主なトピックを占めているので、「あれ?」と思い調べてみると、驚くほどの著書を出版している著者・・・

個人のクライアントへの庭園プロジェクトが多いようであるが、一度ぜひその作品を実際に体験してみたいものである。

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■目次  
はじめに-「禅の庭」から見える、日本の美

第1章 外国から見たときの、日本の圧倒的な美しさとは
/なぜ私の仕事が海外から求められるのか
/スティーブ・ジョブズも、ビル・ゲイツも、禅に傾倒していた 
/贅沢と真反対の「禅」こそが、心の癒し
/西洋人の日本文化への憧れの根源とは
/「禅」と日本文化の密接な関係
/禅文化が花開いたのは、中国ではなく、日本だった
/西洋が好むのは完全な美、日本が好むのは不完全なる美
/移ろうのか、壊れるのか
/墨絵と油絵ー’その瞬間’を描くのはどっち?
/墨一色で、世界は無限に広がる
/いけばなとフラワーアレンジメント。何故ここまで違うのか?
/自我を形にする西洋の庭、無我をかたちにする「禅の庭」
/枯山水とは何か
/’自然を借りる’という、庭園の発想
/日本家屋の、理にかなった美しさ
/光と風を読みきった日本家屋ー京都の町家に見る
/日本家屋は「狭い」からこそ、凄い
/「椅座」ではなく、「床座」の文化が思索を深めた

第2章 まわりにある日本の美を再確認すべし
/食のシーンは、四季を感じるのにベスト
/食材の「添え物」には、日本人の知恵が詰まっている 
/四季に応じて、住いに季節を取り入れる
/企業は日本の美しさに目をむけよ
/禅の思想に最先端の技術を載せた・・・アップルにしてやられた!
/一品にこだわるがゆえに生まれる美
/日本人は繊細である
/味覚の鋭さも、日本人ならでは
/見えないところはど手を抜かない
/家事を機械まかせで、その間ダラダラする時間は美しくない

第3章 「禅の美」とは何か
/京都の庭はなぜ美しいのか
/日本の庭は「おもてなしの心」からできている
/「禅画とは、禅僧が描くもののこと」はまちがい
/禅文化の歴史と変遷に、「武士」の存在あり
/禅の美しさとは①-均斉がとれたときは、「終わり」である
/禅の美しさとは②-簡素であるからこそ、豊か
/禅の美しさとは③-「悟っている」自分に酔う人は美しくない。「枯高」を目指す
/禅の美しさとは④-たくまない。あるべきように。自然に
/禅の美しさとは⑤-「間」や「余白の空間」がなければ、日本の美は完成しない
/禅の美しさとは⑥-こだわらず、自由な心で生きる
/禅の美しさとは⑦-騒音や情報が消える、「静かな心」を持つ瞬間を得る
/日本人は美しい’遺伝子’を持っている
/美しさに理由を探しても意味がないー龍安寺石庭が教えてくれること
/「禅の庭」の正しい見方とは?
/’最高の贅沢’とは、何も持たないこと!?
/時代の流れや変化を取り入れてこそ、’本質’は守られていく

第4章 日本人の「心」とは
/日本人は、死後に「無形のもの」を受け継いできた
/古きよき風景を、子どもや孫に語り伝える。それだけでも日本の力になる
/茶の湯にみる「おもてなしの心」
/利休の発明
/和菓子や伝統工芸品にあらわれる、日本人の繊細な美意識
/日本人の「おもてなし」は、「無私の実践」である
/’白黒つけない’という美学
/「お蔭様」「お天道様」という言葉を見直すと気づくこと
/真摯さ、精密さ、正確さとともに「融通」が利くのが、日本人の美
/かつて日本人は、「質素」が心を満たしてくれることを知っていた
/四季の変化は日本最高の宝
/「月を愛でる」日本人の完成の豊かさ
/禅では「月は悟り」
/水の様に生きる
/無言の所作にこもるおもてなしの心

おわりにー日本人の美しさとは、しなやかな強さである
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2016年2月17日水曜日

「格付けしあう女たち: 「女子カースト」の実態」 白河桃子 2013 ★★


白河桃子
柳原可奈子のネタを見ていると、「女同士のマウンティング」がいかにして行われているのかとてもよく分かる。

かつては、大人になって付き合うのは、出身大学や勤め先、住んでいる街や子供を通わせている学校などで緩やかに色分けされていた「階級」とまではいかずとも、ある種の生活レベルを反映した所属クラスの中で、似たような家庭環境、育ち方をし、似たような考え方をもった人と付き合っていれば良かった。

しかし、これだけSNSがインフラ化し、今までは考えもしなかったような形で人と知り合い、そして交流を持つようになった現代。それが多様な人間関係をもたらすのと同時に、今までなら付き合う必要のなかったタイプの人間とも向き合っていかなければいけないことになる。

かつては、限られた人間関係の中で、教養の多寡や地域の中での人望など、時間をかけて養われてきた暗黙の了解で互いの関係性やポジションなどが理解でき、それをやんわりと保持しながら関係性を守っていたが、今は西部劇のように撃つか撃たれるか、もしくは江戸時代の果し合いのように、背景の分からない人とひょんなことで付き合うことになり、しかもその中でどうにか上下関係をはっきりさせるために作り出された様々なルール。

男性のように社会の中でどんな職業に就いているか、また会社の中でどのようなポジションについているのかが明確に分かるのく対して、女性はまたそれで様々なコミュニティの中で様々な人間関係の中でこの格付けが発生し「ルールを作ったもの勝ち」というゲーム理論同様に、様々なルールが決められていく。

そのなんとも生きにくい空気が完全に日本を埋め尽くした現代。学歴や仕事という自分の能力によって決定される要素ではなく、「結婚」という選んだ相手の社会的ステイタスによっていきなり「リボーン」と呼ばれる逆転現象が起こりうるのが女性の性。それによって得られるもの、自分が人生の中で一つずつ得てきたものでないからこそ、相対的に自らの立ち位置を確認し、周囲からの承認によって欲求を満たしていく。

SNSに頻繁にアップする子供の写真。
素敵なレストランで美味しそうな料理を旦那と楽しむ様子。
優雅な海外旅行の写真。
ママ友といくランチの値段。
子供を乗せるベビーカーのブランド。

様々なところで、少しだけ満足感を得ながら日常を生きるなかで生み出されていく多様な「女子カースト」。そんなのは昔からあったことで、ネットのお陰でより外に見えやすくなっただけとも思えるし、ネットの出現によって今までの限られた交友関係から開放され、エゴとうまく付き合えない人間が迷惑を撒き散らしている、とも思える現状。

「生きにくさ」を感じるのは間違いなく、それはネットの出現で今までになかった「便利さ」を得た人類の宿命なのかと受け入れるのか、それともこれはネットの出現によって開拓された新たなる人間の社会的行動であり、あくまでもそれは一過性のものであり、徐々に「生きにくさ」を軽減する方向に収束していく何かしらの方策があり、既に社会の中にその発芽が見えているのかどうか。

そんなことを知ることを期待して手にした一冊であるが、どうも社会に起こる現象を紹介するにとどもあり、言葉にはしないが、誰もが感じていたもやもやした感じを、「ああ、こういうことか」と言葉にしてくれて、納得するための「共感」を世の中にもたらしているのだろうと理解する。


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■目次  
はじめに 

第1章 なぜ女性は格付けをしたがるのか?
/見えない線が引かれる時
/「女子カースト」とは何か
/「女子カースト」のものさし
1-恋愛カースト/彼氏がいる、いない。また、どんな彼氏か。
2ー外見カースト/どれだけ自分に手をかけているか
3-社会的ステータス/自分だけでなく夫や子供
/女同士のマウンティング
/「女子カースト」が生まれる四つの原因
1-ヒマがある集団
2-狭くてぬるい均質な集団
3-逃れられない集団(会社、ママ友など)
4-「悪の種」が集団に紛れ込んだ場合
/外資金融で経験した悪の種

 第2章 「女子カースト」の実態
/ママカースト
・同じような年収・同じような家庭で集まる「ママ友」
・「子供が人質」の交友関係
・夫から生まれるカースト
・ママ達の苦しさの根本にあるものは自分の武器で戦えないこと
・評価されづらい専業主婦の仕事
・独身女性との比較
・「VERY」見て焦る
・ママカーストとは別の世界がある
・いずれは滅びる専業主婦というカースト

/恋愛・婚活カースト
・早く結婚する人、遅く結婚する人
・待ちうけ20代男子と恋愛しない女子大生
・決めきれない40代「センミツ女」
・40代はミスマッチゾーン
・年上女性X年下君の「格差婚」は普及するか
・理想のタイプと現実の相手のギャップ
・100対100のお見合いの婚活カースト
・年齢で振り分けられるお見合いサイト
・婚活カーストにおけるカーストは女子同士じゃない!?
・本当のミスマッチの原因
・女子会は恋愛カーストの確認の場?

/女子大生カースト
・女子大生カーストを決めるのは「コミュ力」
・周囲から浮かないファッションが第一
・SNSの振る舞いもチェックされる
・恋愛経験の有無
・女子会でのカースト
・金銭感覚の違いによる序列
・ブランドによる女子大間カースト
・SNSの利用法
・女子大生カーストは就活の「勝ち負け」につながる
・高学歴女子大生はなぜカーストを感じないのか?
・今の女子大生はいじめとスクールカースト経験世代
・女子高から共学へ「男子に重いモノを持ってもらえない」
・世間に出た後の同窓会の息苦しさ
・女子たちの分岐点

/オフィスカースト
・ワーキングマザーが作る、新しい働き方
・時短で広がる様々な働き方
・働くママでも、スタイルに差が出る
・ダメなのはママではなく上司
・仕事の評価とは違うところにあるオフィスカースト
・立場を守るための威嚇行為
・業務でマウンティングするな!
・男性社員のヒエラルキーとはどう違う?
・従来の上下関係に「男性からの目線」が絡む
・美人が出生すると必ず出る陰口は?
・働く女性は二重の土俵に乗せられている
・カーストに苦しむのは、女性自身に罪がある!?

第3章 今の日本は多様性社会への過渡期
/人を許せない国
/多様化の作法 
・すでに多様性は始まっている
・女子のカーストをサバイバルするための三つの技術
1-複数の足場を持つこと
2-問題解決能力を持つこと
ー集団の居心地に敏感になる
3-自分を肯定すること
ー自分を嫌いな人とは仕事できない

第4章 「女子カースト」のその先に
/なぜ女同士はつながれないのか?
/自分の子育て観を否定されると傷つく
/女性は自分の生き方を否定できない
/たとえば、女子と言う可能性
/鍵は多様性と未来志向
/生きやすい社会とは何か?

おわりに 
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2016年2月13日土曜日

「日本の大問題 「10年後」を考える ─「本と新聞の大学」講義録」 一色清 姜尚中 佐藤優 上昌広 堤未果 宮台真司 大澤真幸 上野千鶴子 2015 ★★


現役世代の人口減少、地方の衰退、東京への一極集中、少子高齢化、老人の貧困、子供の貧困、女性の貧困、中高年の引きこもり、ブラック企業、消費税の引き上げ、社会保障問題、コミュニティの分断、エネルギー問題、不安定化する天候、いつくるか分からない首都直下型地震。

あげればきりが無い現代日本の直面する問題。それぞれの問題は複雑に絡み合う社会の要因によって引き起こされており、簡単に解決方は見つからない。そしてそれらは目の間の問題を見ていても、根本的な解決には至らず、何十年というタイムフレームを踏まえて、将来この国がどの様な社会となるのが適切なのか?その将来ビジョンを明確に捕らえ、そこから逆算的に現在の問題に向き合うことが必要であるのは間違いない。

その時に、遠すぎず、そして近すぎない10年という時間単位は現在の社会が抱える問題を顕在化させるのに十分な長さを持ち、それでいながら手の届く未来として十分に想像でき、かつ自らの問題として捉える場所にいるのであろう。


「第1回 基調講義 一色清×姜尚中」にあるように、
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グローバル化と日本社会の問題
国境を低くして海外の「ヒト・モノ・カネ」を利用するしか生きていけない
グローバル化を進めていけば、一人ひとりの働き手が非常に激しい競争に晒されることは間違いありません 
ほどほどということがなくなります
競争に勝ったものは豊かになるものの、多くの敗者が出ることは確実
グローバリゼーションの波 英語とIT
世界で本当にグローバルな人材になろうと思えば、リベラルアーツ、教養教育がとても大事
幅広い教養のある人が英語やプログラム言語もできて初めてグローバル人材と呼べる
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内に留まっていても、外から押し寄せる圧力は止められず、移動が活発化するこれからの世の中では、否が応でも育ってきた背景の違う外国人とともになって社会の中で生きていかなければいけない。世界でも最高クラスに心地よい日本で育つ人にとっては、外との摩擦はそれだけで負担となるだけに、国として今後どのように若者の教育に取り込んでいくのか非常に興味深い。


「第2回 反知性主義との戦い 佐藤優」
それにしても、よく本読んでるなぁと思うが、「闇金ウシジマくん」でお金がどれくらい怖いものなのかを知るというのには、大変説得力を感じる。

「第3回 高齢化社会と日本の医療 上昌広」
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愛知県では名古屋市に医師が偏在する
医師不足の問題は、どこに医学部のある大学を作ったかということに非常に影響される
愛知県は江戸時代まで尾張と三河 戊辰戦争で、徳川御三家だった尾張藩が真っ先に官軍側に寝返った一方、やはり徳川譜代の三河諸藩は最後までまとまることができず、その結果、尾張には医学部が四つもつくられた、三河にはゼロ
旧三河には、日本でもっとも豊かな自治体の一つである豊田市があるにも関わらず、医学部が無いために医師を養成することができない

明治維新時における藩のポジションが影響。
江戸時代、現在の兵庫県に当たる地域の中心は姫路で、維新時、ここの施政者は徳川四天王筆頭である酒井宗家
それを理由に、明治以降、姫路は冷遇され続ける。いまだに姫路には医学部や工学部を持つ総合大学が無く、もちろん医学部も無い
和辻哲郎や柳田国男が出た 江戸時代の蓄積
最近では、姫路出身者でこれはという人物は出ていない
一県一医大構想 つまり、国土の均衡ある発展のための政策が国土の高度な不均衡をもたらしてしまった

これからの世代が生きていくうえで鍵となるのは、「自分の頭で考えられるかどうか」ということ。自分が今まで知らなかった環境で学び、働く機械は、自分の頭で考える人間を育てるためには非常に大切
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三河出身地だけに非常に興味深いこの話。そしてこれだけ予測の難しい世の中では、知識を持っているのだけでは十分でなく、それを組み合わせ、目の前の問題にどう対応できるかを自分で考えていける人。そんな人をどうやって育てていくのか。


他の章でも問題は、大きなフレームをなっているのはやはりグローバルな世界の中での日本の立ち居地と、そして日本人としてそこにどう関わりを持っていくか。多様性が混在することで、世界中に混乱が起きている現代。10年くらいでその多様性を許容する社会が世界中に出来上がるとはとてももじゃないが思えることはできず、それでもガラパゴスとして心地よい場所を国内に確保しつつ、そこから出て行かないということがよりいっそう価値を増すのとともに、それでもそこから外にでて、世界の中で太刀打ちしていく人材には、会社単位だけではなく、できるだけ国として大きなサポートを与えていくようにしていかないと、ほとんどの人が国内に留まる椅子の奪い合いになるのだろうと、なんだかぐったりしたように本を閉じることにする。


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■目次
第1回 基調講義 一色清×姜尚中
第2回 反知性主義との戦い 佐藤優
第3回 高齢化社会と日本の医療 上昌広
第4回 沈みゆく大国アメリカと、日本の未来 堤未果
第5回 一〇年後の日本、感情の劣化がとまらない 宮台真司
第6回 戦後日本のナショナリズムと東京オリンピック 大澤真幸
第7回 二〇二五年の介護:おひとりさま時代の老い方・死に方 上野千鶴子
第8回 総括講義 一色清×姜尚中
あとがき
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2016年2月3日水曜日

「子どものまま中年化する若者たち 根拠なき万能感とあきらめの心理」 鍋田恭孝 2015 ★★


鍋田恭孝

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子供の頃思っていた、「大人になったらどうなっているんだろう?」という問い。漠然と、大人になるということは、いろいろなことができるようになり、知識も増え、様々な責任も受けながら、忍耐強く、自分のことは我慢してでも家族を優先し、社会の中で立派な人間として認められる。そんな漠然としたイメージを持っていた。

その時想定していた「大人の年齢」をはるかに超える歳になっているにも拘らず、当時の想定からは大きく離れた未熟なままであるが、それでもなんとかそのギャップを埋めようと意識は持つようにしている。

しかし、どうも世の中ニュースなどを見ていると、そうでもない人が多いようである。電車の中で周囲の人が見てようがお構いなしでマンガ雑誌を見入ったり、携帯でゲームにふける。そんな「公と私」の境目が曖昧なままに都市の中に垂れ流されている人々や、自らの欲求を理性によって押さえるなどして適正に制御しきれないまま周囲に撒き散らす人々の様子は、ニュースや書籍でいくらでも目にすることができる。

そんな明らかに「大人としての自覚」をもって「成長しなければいけない」という思いと焦りを持って日常を過ごすのではなく、刹那的に今の快楽を求め、短期的に生きている人たちが増えているのは間違いないであろう。それが若者に限ったことではなく、中高年と呼ばれる「いい大人世代」の中にも、いまだにそのような人がいる。

ひょっとしてどの時代もそんなもので、大人としての適正がないままに成長している人というのはある程度の割合いたのかも知れないが、それでも自己中心的な振る舞いで、小さい子がおもちゃ売り場で駄々を捏ねている様を見ているようないい大人の見苦しい振る舞いが日常のあちこちで見受けられる、そんな時代になってきている。

その変化がいったいどこから来ているのか?社会のどのような変化がその子供のまま大人になる人々を増加させているのか?それを少しでも知り、できるだけそこから距離を取るために手にした一冊。


以下本文より、
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/何もかもあるのに何もない世界
何もかもあふれるほどにそろっているのに、手ごたえのあるもの、信ずるもの、理想や希望、守るべき規範などが失われた世界

/子供のまま中年化する若者たち
いつまでも親離れせず、遊び気分を抱き、ファンタジーの世界を好み、未熟な自己中心性を抱き、友達からの承認を求め続けるなど、子供のままの生き方をする。その一方でリスクを避け、今の生活レベルを守り、家族だけを大切にし、上から言われたことには反抗せず、与えられて狭い世界に順応し、ワクワクすることよりも、ゆったりできることを望み、何よりも居心地の良さを大切にする。

第1章 いま若い世代に起きていること
/買い物に行っても選べない、選びたくない
心地よい刺激に対しても、量が多すぎると反応しなくなる
幼児が喜ぶあやす行為をすると、途中までは喜ぶが、ある一定の頻度を超えると反応しなくなる

/思い付き・遊び感覚の犯罪の増加 
代わって増えたのが、「いきなり型」「暴発型」の犯罪
「思い付き型」「遊び感覚型」の犯罪
川崎の13歳の少年 遊び感覚

第2章 精神科臨床30年の現場から
山竹伸二「認められたい」
コミュニケーション能力が重要になり、「空虚な承認ゲーム」
「社会の承認」が不確実なもの、コミュニケーションを介した、「身近な人間のしょうんん」の重要性が増している
多少、不本意なキャラでも、承認を失わないように演じ続ける
キャラからはみ出すことは許さない

/社会の規範・役割にぶち当たって途方にくれる
わが国においては、大学までは学生は大切にされる。会社は、何といっても生存競争の中にある。

第3章 悩めない、語れない若者たち
/「コミュ障」とは何が問題なのか
斉藤環 現代のコミュニケーション・スキルにおいて、好ましいとされる属性は、「メッセージ内容の軽さと短さ、リプライの即時性、頻繁かつ円滑なやり取り、笑いの要素、顔文字などのメタメッセージの多用、キャラの明確さなど」
短く、浅く、身近な内容
コミュ障
語れなさ 自分の思いや考えをイメージ化して言葉にする能力 自分の体験を物語として語れない
語りの乏しさとともに反射的活主観的で一方的なコミュニケーション

/心の中からも村社会が消えた
親が優しくなった
何とか社会(村社会ともいえよう)に参入しなくてはならない
親からの働きかけもなくなっている
共同体感覚が消失した

/植物化とクラゲ化の二極化が進む
培養植物化 クラゲ化

第4章 「青春」がなくなった人と世界
/生きる力のベースとなる枯渇感と満足感
枯渇感が消えた
ものも情報も、多すぎてはいけない

/人間関係も時間軸もフラットなバーチャル世界
世の中の厳しさを知り、大人として生きるためのしつけや訓練も、与えられなくなった

/10歳までの育てられ方が一生のペースをつくる
今後養育格差社会が生まれる
子供を健やかに安定した人物に育てるのは家族だけ
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■目次  
プロローグ
/何もかもあるのに何もない世界
/「それは無理です」
/植物化する男子、クラゲ化する女子 
/ワンパターンでモノトーン
/子供のまま中年化する若者たち
/他国とは異なる変化が起きている?

第1章 いま若い世代に起きていること
・もはや動物でなくなりつつある-学童期の子供たちの変化
/さまざまな身体機能の低下
/物事を統合して把握できない
・あきらめ、流されて生きるー思春期の若者たちの変化
/多くの調査結果から見えてくる思春期像
/反抗期の減少ーいつまでも親が大好き
/買い物に行っても選べない、選びたくない
/思い付き・遊び感覚の犯罪の増加 
・言われたことはまじめにやる ー青年期の変化
/学生たちとの驚くべき経験
/車はほしくない、コスパには敏感
/将来は不安だけれど現在には満足
/親元から離れない、無理しない
・群れになれない世代ー学童期から青年期まで一貫している変化
/グループ活動が成り立たない
/自分ひとりの小さな世界で

第2章 精神科臨床30年の現場から
・思春期・青年期の心の病の変容
/古典的な神経症の対人恐怖症は軽症化
/摂食障害・BPD・不登校は70年代から増加
/90年代半ばからすべての疾患の病像が変化
・古典的な対人恐怖症から「ふれあい恐怖」「承認不安」へ
/わが国の伝統的な葛藤を抱えた若者・K君
/2011年に受信したR君ー現代型対人恐怖症
/「身近な他者」の承認を求めて汲々とする
・摂食障害の変化ー激しい拒食から、漂う過食へ
/「完璧な良い子」の強烈な自己主張・A子さん
/親・治療者への拒否的エネルギーが弱いB子さん
・苦しむ不登校から葛藤なき不登校へ
/優等生の息切れ型不登校・J子さん
/葛藤なきタイプ・語れないタイプの増加
・沈静化した家庭内暴力
/開成高校生殺害事件のT君
/川崎金属バット殺人事件のI君
/高学歴神話が生んだ悲劇
/ネット回線を切られて暴れたG君ー最近の家庭内暴力
・増加する若者のうつ病ー現代型うつ病の登場
/典型的な従来型うつ病のY君
/現代型うつ病(新型うつ病)とは何なのか
/「うまくいかないのは会社のせい」のX君
/やさしく、素直すぎ、周囲にあわせすぎのW君
/社会の規範・役割にぶち当たって途方にくれる

第3章 悩めない、語れない若者たち
・すべてにおいてエネルギーが低下ー元気のない若者たち
/飛行も病気もおとなしくなった
・反射的・断片的なコミュニケーション
/「わからない」「別に」「何となく」「びみょう」 
/「コミュ障」とは何が問題なのか
・自分から動けないー主体性の低下
/少し困るとすぐに固まる
・社会参加へのモチベーションが低下
/心の中からも村社会が消えた
・理想を追い求めない
/理想の自己像がないから葛藤もない 
・脆弱な子供のままの若者たち
/根拠なき万能感ゆえの、傷つきやすい自己愛 
・「症状が出せない」「病みきれない」若者たち
/症状を出すだけの力がない
/様々な症状が断片的に出てくるU子さん
/リストカットを続けて死んでしまった南条あやさん
・自分の世界にこもる若者・状況に漂い続ける若者
/植物化とクラゲ化の二極化が進む
/多くを望まなければ生きていける

第4章 「青春」がなくなった人と世界
・世の中から失われたもの
/明治維新以来の成長神話の終焉
/世の中から理不尽が消えた
/親に反抗し、異性に恋い焦がれる「青春」が消えた 
/生きる力のベースとなる枯渇感と満足感
/群れて進化してきた人間から「群れ」が消失
・新たに、我々の環境に溢れてきたもの
/自分は有能で評価に値する人間だという思い込み 
/生活の隅々まで行き渡った巨大システム
/人間関係も時間軸もフラットなバーチャル世界
/世界のスピード化は人間をどう変えるか

第5章 日本人はこのまま衰退するのか
/「ワクワクするのは疲れます」24歳L君
/「もう人に気を遣うのに疲れました」23歳Hさん
/子供のまま諦めの中年期を生きる
/「成熟社会の宿命」だけでは説明がつかない
/若者の亜スペルがー傾向が進んでいる?
/不幸ではないが、ぼんやりと不安
/狭い世界の身近な理不尽が押し寄せる
/10歳までの育てられ方が一生のペースをつくる
/経済格差より深刻な養育格差
/親は子をどうのうに育てればよいのか

エピローグ
/新しい若者・新しい頑張り方
/植物的な生き方こそが時代に遭う
/やっと足元を見るようになった

あとがき
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「辺境生物はすごい! 人生で大切なことは、すべて彼らから教わった」 長沼毅 2015 ★★


長沼毅

「生物と無生物のあいだ」の大ヒット以降、こうした物理化学の世界の非常に専門性の高い学問の話から、どうにかして一般社会にも通じる美しい物語を引き出そうとする出版社の意図を感じずにいられず、それは普段あまり一般の人の目に留まりにくい様々な分野の研究を広く世に広める役割はあるとは分かりながらも、その分野を淡々と紹介するのを超えて、なんとか一般化しようとする意図が透けてみえてしまうようである。

もちろん研究者というのは、ある分野の研究を生業としており、誰もが「生物と無生物のあいだ」の福岡伸一の様に作家顔負けの文才があるとは限らず、また専門分野のある事象をまったく異なるスケールや角度からみることによって、社会や一般生活に適応できるある種の生物界の真理を描き出す、そんな業を磨くために日々の時間を過ごしている訳でもなく、職業人としての能力の高さが、それを物語として本にまとめ、世間に伝える能力と比例するのではないと、誰でも本を出すような時代に我々は改めて気がつかないといけないのだろう。

本来なら普段知ることのない、また知り合うことのない特殊な分野の研究者の研究内容や、その世界の不思議を、懇切丁寧に小学生でも分かるような言葉で説明するような本が、一番真摯にその世界を世に伝えることになるのだろうが、編集者の意図が介在するのか、どうもそこから啓蒙的な内容や、一般社会に適応しうる事柄へとリンクさせようとするくだりがどうしても気になってしまう。そんな印象が否めない。そんな風に思わせてしまうほど、「生物と無生物のあいだ」がもたらした衝撃は強かったのだろうと改めて思うことになる。

「辺境」という生命の限界である場所に生きる生物を見ることで、逆に生命の強さや神秘を知り、そこから生物や地球の根源的な意味を探ろうとする著者の研究と、始めの方の章に書かれる内容は非常に興味深い。「餌の少ない環境では、ライフサイクルの遅い生き物のほうが生き残りやすい」や、「クジラから大腸菌まで、どんな大きさの生物でも、その身体を構成する細胞のサイズがほぼ同じ」という内容は、生命の神秘の根源につながりそうなヒントを十分に孕んでいるように聞こえてくる。

「環境に合わせるのではなく、環境に合った形質を持って生まれた者が生き残る 生物の進化」という現代の進化論である「ネオ・ダーウィニズム」。それは環境を受け入れ、いかに環境に適応していくのか。それが生命としての生存に深く関わる問題だとする。どんな場所にいようとも、自分の心持によってはそこが「辺境」の意味を持ってくることもある。安穏として時間を過ごさず、生命の存在する意義と自らを包括する環境を意識しながら、日々を生きることが大切ということだろう。