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2016年2月22日月曜日

「ももへの手紙」 沖浦啓之 2012 ★

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スタッフ
監督 沖浦啓之
原案 沖浦啓之
脚本 沖浦啓之
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宮浦もも:美山加恋
宮浦いく子:優香
イワ:西田敏行
カワ:山寺宏一
マメ:チョー
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「人狼 JIN-ROH」の沖浦啓之が12年ぶりに手がけた長編アニメーションということで手にした一作。父を亡くした少女が、母と二人で田舎に引越した際にひょんなことで見えるようになってしまった妖怪たちとの交流を通して、最後に書きかけの手紙を残した父親への気持ちの整理を描いていく作品である。

映像がどうのこうの以前に、母親役の優香の違和感のなさに比べ、メインででてくる3匹の妖怪の一つ「イワ」役の声優の西田敏行の声の存在感が強すぎて、なかなか物語りに入り込めないのは否めない・・・

キャラクターの動きの細かさや背景など、アニメーターとしてのこだわりは至る所に感じるが、全体的に間延びした感は否めなく、また原案と脚本も監督が行ったということで、物語や各キャラクターの設定がそれほど深く詰められていたかといえば、疑問を感じずにいられず、一つのテーマに対して、二つ三つのアイデアで立ち向かったという薄さは否めない。











2015年11月15日日曜日

「天然コケッコー」 山下敦弘 2007 ★★★★

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スタッフ
監督 山下敦弘
原作 くらもちふさこ
脚本 木田紀生
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キャスト
右田そよ:夏帆
大沢広海:岡田将生
右田一将:佐藤浩市
右田以東子:夏川結衣
田浦美都子:大内まり
松田先生:黒田大輔
田浦重民:廣末哲万
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この作品も原作が漫画の実写化ということであるが、原作を知らないものにとっては非常に新鮮に写った一作である。

しかしそれよりも、ここ最近邦画を立て続けに見ている中で、どうやら縮小社会が叫ばれ久しい折、人口現象に悩む地方自治体が広告代理店と上手いこと手を組み、映画のロケ地として全面的に協力をし、その後ネットなどで積極的にロケ地として使われたことをアピールすることで観光収入へと繋げる露骨な戦略が多く見て取れる気がする。


これも一つ、ステルスマーケティングと括られてしまうのか、それとも地方の魅力を多様なメディアを活用して人々に伝えていく広報活動の一環と捉えるのか評価は分かれるであろうが、そんなことよりも何よりも、ロケでとんでもない田舎として描かれるロケ地の島根県浜田市を中心とした石見地方の風景が美しい。

そして同じくらい、石見弁で自分の事を「わし」と言う主演の夏帆(かほ)が可愛らしい。「どこかで見たことある女優だな・・・」と思って見ているが、途中から完全に彼女の演技にはまってしまい、鑑賞後すぐにネットで主演の女優の名前を調べ、「あぁ、この子が夏帆か・・・」と納得することになる。

その夏帆に負けず劣らず、恋人役の岡田将生(おかだまさき)もまた素晴らしい。ここ数年、様々な作品に引っ張りだこな俳優だなと思っていたが、その片鱗は映画2作目のこの作品で既に圧倒的な演技力。そしてイケメンぶり。今の人気もその演技力に支えられているのだと十分に納得させられる。

クラスには40人ちかいクラスメイトがいて、多くて10クラス以上、少ないところでも3クラスはあるという「学校」のイメージ。人数が大きく「マンモス校」と呼ばれるところほど「都会」だというイメージを持っていた子供時代。学級を構成する人数が足りないというのは、離島の学校などテレビの向こう側のことだと思って育ち、小中高、そして大学と進学するに連れて、その「学校」の枠組みは大きくなり、より多くの人とかかわりを持って成長していく。

そんな当たり前だと思っていた時間の重ね方。その与えられた「枠組み」の中で、自分なりの人間関係を構築し、誰かを好きになったり、誰かと仲良くなったりしながら成長していく。人の多さがイコールで関係性の豊かさ、多様さだと信じきってしまい、その母数が少なければ少ないほど、限られた閉じられた世界であると思ってしまう。


映画で描かれるような明るいところばかりではないが、ニュースで流される暗い事件がそのほとんどだと思う必要もなく、こんなほのぼのとした風景が当たり前の地方のあり方としてしっかりと根付いていくのもまた人口減少の日本の未来の一つの理想風景なのかも知れないと思わせてくれる良い作品である。

何といってもそれを納得させるだけの美しい風景の数々。春に巡った島根の温泉津温泉江津辺りでロケが行われたと知り何だか納得してしまう。またこんな豊かな風景に出会うために山陰に足を運びたいなと思いながら、「あ、すっかり冒頭のステルスマーケティングにやられているのか?」と自問自答しながら画面を閉じることにする。












2015年3月6日金曜日

シュツットガルト(Stuttgart) ★★


ミュンヘンがBMWならこのシュツットガルト(Stuttgart)はメルセデスにポルシェにダイムラー。一度オーストリアまで南下したのちわざわざドイツに舞い戻ったのは、この街の代名詞でもあるメルセデス・ベンツの博物館を見学するため。

ドイツ人の友人がこのシュツットガルト出身で、如何にも素晴らしい街だとことあるごとにアピールされ、田舎感を残しつつも程よい都会というイメージを植え付けられているが、建築を生業とするものにとってはなんといってもベンツ博物館とミースの取り仕切ったヴァイセンホフ・ジードルングに訪れるために足を運ぶ都市であろう。

ドイツのバーデン=ヴュルテンベルク州の州都であり、人口は約60万人のドイツ南西部の世界都市である。60万人と言えば、日本では都市人口ランキングで22位の鹿児島市(60万人)、23位の八王子市(58万人)、24位の川口市(56万人)、杉並区(55万人)と同程度。

そう考えると、決して人口的には多くはないのにも関わらず世界で十分に認知度の高い世界都市として渡り合っているのには驚くばかりである。逆に言えば、八王子市程度の規模にも関わらず、メルセデス、ダイムラー、ポルシェやボッシュなどドイツを代表する世界的な企業の本社が置かれ、ヨーロッパ中につながる国際空港を持ち、地上でもSバーン(都市近郊電車)にて連結される近隣都市とあわせて100万人以上の都市圏を作り出している。



これは東京一極集中で地方創生と言いながらもまったくビジョンが見えてこない国とは全く違った国づくりをし、各都市に多様な価値を守りながらも、21世紀の都市間競争の中でも十分に世界で闘っていける都市をいくつも持つドイツの国の先見性を感じずにいられない。

中世の都市の成り立ちとして多く見られるようにネッカー川沿い位置し、ドイツを代表する工業都市として非常に豊かな地域を形成している。豊かな財政に支えられ、優秀な大学を持ち、ミュンヘンのオリンピックスタジアムを設計したフライ・オットーもまたこの都市出身である。

19世紀にヴュルテンベルク王国の都となり、19世紀後半より街の工業化が進み、第二次大戦後には、アメリカ欧州軍の司令部が置かたということから、この都市がドイツの中でどれだけ重要な意味を持っていたのかがみてとれる。

そんな自然と都市の日本にはない豊かなバランスを成し遂げているこのシュツットガルトで、少しでもどうすればこの様な国の中の一点集中ではない多様な都市が共存しながらそれぞれの豊かさを実現する社会のあり方を理解すべく街へと入っていくことにする。

2014年2月22日土曜日

「東京家族」山田洋次 2012 ★

小津安二郎の「東京物語」(1953)へのオマージュとして、設定のほとんどは踏襲し、舞台を震災後の現代に置き換えて撮影されたこの山田洋次による「東京家族」。

ネットでもさんざん叩かれているようであるが、確かに何の為にリメイクしたのか良く分からない。田舎の離島に住まう老夫婦が成人して田舎を離れ東京で生活を送る3人の子供達に会いに来るが、既に家庭を持ち、東京での生活も長くなった長男と長女は、東京に住まうものとしての価値観で少々の煩わしさを感じながら両親に良かれと思う事をしてもてなす。

開業医を営む長男は、両親を東京観光に連れて行こうとする早朝に緊急の患者が入る為に出かけられなくなり、案内をキャンセルしなければいけない。美容院を営む長女は狭い家に両親を泊めて息苦しい思いをするくらいなら、少々高くても高級ホテルに泊まってもらって、美味しいご飯でも食べてもらおうと両親に勧める。昔からの旧友は息子が出生し大きな家に住んでいるといっていたが、それが見栄であり実は全然うだつの上がらない息子を情けなく思いながら、逆に田舎から出てきた男に「お前はいいな。息子が立派になって」と愚痴を言う。

ホテルの高級な料理が田舎から出てきた両親にとっては東京で望んで来た物ではなく、子供達が自分達との間に感情のズレを感じる両親だが、どうしてもそのズレは埋まる事が無い。そこに訪れる母親の急死。家族にとっての一大事においても、長女と長男にとってはあくまでも東京での自分の生活が基本にあり、そこから年老いた父親をどう助けるかの視点のみ。

それに対して父親と馬の合わなかった次男が彼女を連れて帰省をし、父親の身の回りのことを手伝うのだが、そこで少しだけ父親が子供に対する気持ちを語る。

つまりは、現代社会における家族がいかにバラバラになり、それぞれの生活、それぞれの住まう場所が基本として物事を捉え、家族を思う気持ちはあってもそれはあくまでも一方的な捉え方であり、それが如何に相手側にとっては痛みを伴うかを描こうとしているのだろうと想像する。

形を変えても、恐らく日本中のどこの家庭でもあるようなこと。成長する子供をいつまでも子供として、親の考え方から捉える両親。自分も家庭を持ち立派に都会で生活を持つものとして親を分かってあげようとする子供達。そして東京と地方という距離の問題。

はたから見れば十分に幸せな家族のはずが、それぞれのメンバーは不幸だと思わないにしても、恐らく外から見えてるような感情を持ってはいない。大家族が減り、忙しない日常を生きる現代人。同じ場所で同じ時間を過ごさない限り必ず起こるギャップ。家族よりも、日常を共有するもの同士の価値観が影響しあうのが人間である限り、家族といえばとも感情のすれ違いは当然ながら起こってくる。

その微妙なすれ違いを表現するためには、崩壊しきっている家族でも、逆に近すぎる家族でもダメで、仲はいいのだが、それでも各人が望むような完璧な関係にはなっていないそこそこの家庭が舞台である必要があったという訳だろう。

自分が望むと望まないに関わらず、両親と過ごせる時間には限りがある訳で、できることは少しでも共に時間を過ごし、それを自らが楽しむ事でしかないのだろうと思わずにいられない。

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スタッフ
監督 山田洋次
脚本 山田洋次
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キャスト
橋爪功 平山周吉
吉行和子 平山とみこ
西村雅彦 平山幸一
夏川結衣 平山文子
中嶋朋子 金井滋子
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作品データ
製作年 2012年
製作国 日本
配給 松竹
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2014年1月21日火曜日

デフレにならない都市

長期休暇が近づいてくると、その段取りに忙しくなる。

数日間ホテルを渡り歩くわけだから各都市でできるだけ安くホテルを探すことになる。そんなことを何度もやって、日本の各地方で同じような事をしていると地方ごとの比較が良く見えてくる。

観光客が多く訪れ、常に人気を保つ京都などの観光都市。
ビジネス客が常に出入りする東京や大阪などの経済の中心都市。
地方の経済活動の中心となりつつ、一定の規模を保つ熊本や仙台などの地域拠点都市。
各地域の拠点近くに位置し、温泉や観光資源が保たれる都市。
それらよりも更に周縁に位置し、数少ない観光資源を糧にして生き延びる地方都市。

中心では常に人が行き来するため価格も高めに設定されるが、その分競争原理も働くので、ある程度低い価格のホテルも見つけることが出来る。これは地方の拠点都市でも同じで、ある程度の地域での経済規模を持ちながら、外からの観光、ビジネス客が常にでいるする都市において、健全な競争原理が働き、ある程度の価格の幅が存在する。

しかし、国全体の経済の発展の枠内からやや取り残され、それでも地場の産業でなんとかやりくりをしている都市においては、新規参入による競争原理が働く事もなく、決して全体的に見て適正価格ではないが、ほかにチョイスが無い為に高い価格に据え置かれているという都市も多く存在する。

逆に自らが周縁に位置する事を十分に自覚し、低価格に抑えられた生活コストを反映するかのように、低価格で多くのものを提供してくれる様な都市もある。

そういう様々な都市を実際見てみると、やはり競争原理が働か無いにも拘らず、地元の富裕層はそのまま裕福なままで今を過ごし、外部との循環は徐々に途切れ、ローカルなガラパゴスを形成しているようにしか映らない。

駅前商店街に歯抜けのように現れるエイリアンのような立体駐車場。その脇で怪しく光る「代行」の広告。

デフレ脱却と声高に叫んだアベノミクス。しかしデフレが起こるのは競争原理が働くからであり、マーケットが競争に値すると値踏みをした土地での事。

そこにはデフレからも見放された都市が多くあり、大手は徐々に撤退し、コンビニすら簡単には見つけられなくなっている。

それが田舎ではなく都市であること。

かつて一度はその土地の持つ力、分相応な規模よりも遥かに大きく発展しようとしたツケが、スカスカの現在を作っている。ハコ物の公共建築と同じくらいに肥大した地方都市。

それらの都市にもう一度人の流れをつくり、活気を取り戻し、より大きなスケールの一部に取り込みながら、徐々に適正な規模に修正していく。その途中には既得権益を保持する側からのとてつもない反抗が起こるのは想像に難くない。

大きな大きな不良債権を抱えたような現代日本。30年後はどんな地方都市の風景が広がっているのか楽しみだ。