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2017年6月19日月曜日

The Church of the Immaculate Conception, Farm Street(Farm Street Church) Joseph John Scoles 1849 ★



安藤忠雄のSilenceのあるコノートホテルから南を向くと、なんとも雰囲気のある教会のファサードが目を引く。その敷地内に広がる心地良さそうな庭園とその中心に陣取る巨木の姿に惹かれ、折角だからと内部を参観させてもらうことに。

1849年に竣工したその建物の設計はJoseph John Scoles。様式としてはゴシック・リバイバルという。月曜の朝ということもあり、教会の内部は周囲の賑やかなロンドン中心部とは思えないほどの静かさ。何といっても、教会の西に広がるマウント・ストリート・ガーデンズ(Mount Street Gardens)の巨木の枝が作り出す陰の下、ベンチに座りながら新聞を広げる老紳士の姿が如何にもロンドンらしく、その質の高い生活空間をうらやましく思いながら西へと足を向けることにする。













2016年2月6日土曜日

Apple Store 表参道 Bohlin Cywinski Jackson 光井純 2014 ★★


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所在地  東京都渋谷区神宮前6-13-3
設計   Bohlin Cywinski Jackson、光井純
施工   竹中工務店
竣工   2014
機能   商業施設
建築面積 623m2
延床面積 1968m2
規模   地下2階,地上1階
構造   S造一部RC造
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もう二年前にできているはずなのに、あまり気にすることの無かったのがこのApple Store 表参道。世界中で一気にリニューアルされて増殖している旗艦店の一つ。基本的に前面ガラス張りで背の高いワンルーム空間を徹底的に追求し、透明度の高いファサードを作るために、構造や設備、そしてディテールなども徹底して排除され、ミニマルに、ガラスの面だけの存在に還元する。その為に最高峰の技術が駆使されるのは、まさにiPhoneに代表される最先端のプロダクトに通じるものを感じさせる。

建物は表参道に面する長手のファサードだけでなく、両サイドのファサードも含めて3面総ガラス張り。これだけの透明度と横の分割なしで一枚パネルでいくために、何枚もの厚いアクリルを重ねて成立させているのだが、同じものを普通のプロジェクトで要求すると、まぁコストや構造やらいろんな問題が起きる起きる。

そしてその上には後部から12mも張り出したキャンティレバーの薄い鉄骨屋根。一体どうやったら室内空間に対しての天井設備、構造、屋根としての排水や防水などの様々な機能層を確保できるのか本当に不思議に思ってしまうその薄さ。

ある程度建築の実務をこなして、実際このような透明度の高く、ミニマルなディテールを纏った設計をやろうとしては様々な問題にぶち当たっている建築家にとっては、これがいかにすごい技術の結晶か感動してしまうのだが、その内部で最新のiPhoneを手に取っている人たちにとっては、そこはただの存在感の消えた背景としての空間になっているのだろうと想像する。

しかし、これだけ技術を駆使して、たどり着くのが世界中に繰り返され、現地での技術が足りなければ全ての素材をアメリカから輸入するほどの徹底されたクオリティ・コントロール。そこには、まさに世界どこでも同じ質のものが手に入るグローバリゼーションの中のプロダクトと同じ考え方が見え隠れする。この様な技術的に素晴らしい建築がこの様にして、その敷地や地域性とどんどんと乖離していく姿は、現代のある一つの方向性として否定できないのだろうと思いながら坂をあがっていくことにする。



2015年10月5日月曜日

ルイ・ヴィトン松屋銀座リニューアル 青木淳 2013 ★


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所在地  東京都中央区銀座
設計   青木淳
竣工   2013
機能   店舗改装
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いくら先行きが怪しくなったといえども、それでも中国人の爆買いの勢いは衰えを見せず、朝早くというのにこの街には見たところ中国人だという団体客で溢れている。そんな人の流れの向かう一つの先がこの建物。

「そういえば、いつの間にかリニューアルされていたな・・・」

と思い立ち、せっかくだからと見にいってみることに。デザインは元々の店舗を手がけた青木淳。2000年に設計された最初の店舗は二次元の店舗ファサードに何とも不思議な三次元の奥行きを持った魅力的なデザインでその後の銀座での有名建築家による有名ブランドのファサード・デザイン合戦の口火を切ったものである。

ネットで見ると、「なんだか元々の方が良かったのでは?」と思ってしまったが、判断は実際に見てからということで、元々は下層部のみで建物の角を覆うファサードだったのに対して、今度は8階建てのまるで独立した一つの建物の様な高さのあるファサードへと大きく変化した。

その横にあるティファニーやItoyaと比較しても、まさに銀座でのペンシルビルと言って過言で無いポロポーション。しかしそれはあくまでも松屋の一部分。なんだかこの時点でどうにも腑に落ちない感はたっぷりだが、そこには世界的ブランドの何かしらの事情があるのだろうと想像する。

デザインとしてはルイ・ヴィトンの代表的なパターンであるという「ダミエ・パターン」をスケールを変え、また三次元的なやわらかさを持った金属パネルにて表現しているという。これならば同じ銀座にあり、2004年に人工大理石にガラスを埋め込んで、同じ「ダミエ・パターン」をよりシンプルにファサードに採用した「ルイ・ヴィトン銀座並木通り店」の方が個人的にはよっぽど良かったのではと思いながら、中に吸い込まれている買い物客にの中のどれだけの人が、この店舗のファサードを記憶に留めて帰っていくのだろうかと想像すると、経済に翻弄される建築の悲しさを思わずにいられない。



2015年3月5日木曜日

Kaufhaus Tyrol Department Store David Chipperfield 2010 ★★★


素晴らしい広場を体験し、せっかくだからと旧市街へと足を向ける。一歩足を踏み入れるとこの通りがこの街目抜き通りだと一発で分かる人の賑わいを見せるメインストリート。

その中心に位置しているのがこの街の象徴的な百貨店であるKaufhaus Tyrol Department Store。そのリノベーションを2010年にDavid Chipperfield(デイヴィッド・チッパーフィールド)が手がけたというからぜひとも訪れることにする。

こうした密度の高い歴史的な街並みにおいては、建物の四面性を出すことは難しく、どうしても「ファサード」のデザインが主題となる。その時になんら派手な手法を用いるのではなく、インスブルックらしく品の良い街並みのリズムとスケールを踏襲しつつ、素材の使い方と壁、柱、床と分割された建築エレメントに開口部として二次的な要素がまとわり着くのではなく、それらをすべて同次元にて処理することで非常にミニマルに統一されたファサードを作り出す。

そこまで白紙還元してから、再度街路に合わせて少しだけファサードを折り曲げることによって、後部に隠れた残り二つのボリュームを前面に醸し出す。非常に品の良い手法である。

なんといっても目を引くのは、最近チッパーフィールドが多用するテラゾ(terrazzo)の様に見える石や大理石の砂利を含んだプレキャスト・コンクリートで覆われた床や柱。継ぎ目がないために、「まるで一体の大きな石から切り出してきたのでは・・・」というなんとも優雅な表情を見せてくれる。

ニュートラルなファサードに、結構ビビッドな色の照明が使われていても、全体としての品の良さは決して失われない。後ろに回って、今度は酸化アルミニウムを使って全く違った表情を纏ったもう一つのファサードを見て、その豊かな設計手法に感心して旧市街の中心へと足を進めることにする。










2015年3月4日水曜日

ブランドホルスト博物館 (Museum Brandhorst) Sauerbruch Hutton 2009 ★★


ピナコテーク・デア・モデルネを見学し、これで予定をしていた建築をすべて見たかなと思っていたら、視線の先になにやらカラフルな建物が。ガイドが言うにはこれも近年オープンした現代美術の美術館だという。

どうやらこちら側は裏側にあたり、サービス用のエントランスがあるようである。丁度搬入用のゲートが開いて、トラックが出てくるところのようである。美術館を設計していながら、なかなかこのような美術館のサービス側の搬入がどのようにして行われるのかを見る機会はなかなか貴重であるので、走り出してパチパチと写真に収める。

「何がそんなに見たいのだろう?」と怪訝な顔をする美術館のスタッフを横目に、ゲートが閉じるとそこに扉があるとは分からない一枚のファサードとしてデザインされた手法に、「これだけパブリックに見られる面であればそうするよな・・・」と思いながら今度はその特徴的なファサードをじっくり見る。

どうやらミュンヘン在住のガイドの中国人はこのファサードがお気に入りのようで、随分とその良さを説明してくれる。ネットで調べてみると、設計において遮音や断熱、雨水利用など一通りの環境設計については考慮されているようで、その上でいくつかのグループに分けて色づけされた細長い陶磁器の角柱がルーバーとして建物に取り付けらている。

建物の外周をぐるりとしてみるとやっと分かるのだが、この色合いは入り口から始まって反時計回りにグラデーションになっているようで、どの場所からこの建物を見るかによって色合いが変わって見えるという仕掛け。

この歴史的な街並みの中でこれだけカラフルな色合いを使いながらも、ポップや商業主義的に見えないところでうまくバランスを取り、上品に仕上げているという印象。

外形はシンプルであるが、その中に様々なデザインを取り込むこと。それがこの地の建築家の優れた能力なのだと理解して内部を見学することにする。










2015年2月20日金曜日

ルイヴィトン高知店 乾久美子 2003 ★★


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所在地  高知県高知市はりまや町
設計   乾久美子
竣工   2003
機能   商業施設 
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日の高いうちに訪れるべき建築と寺社をなんとか回りきり、市の中心に位置する繁華街にあるホテルにチェックインし、ホテルの人に地元の情報を手に入れ付近の街並みを散策することに。

その前に立ち寄るのがこのルイ・ヴィトン高知店。現在日本の建築業界において、世界的に活躍するSANAAの妹島和世は別格として、女性と建築家というキーワードですると恐らく一番上位にくるのではと思われるのが設計者である乾久美子。

青木淳事務所出身で、独立後すぐに有名ブランドの商業施設を手がけ、銀座のディオールにて、表層的な建築デザインにおいて現代日本を代表するポジションに手をかけながらも、しっかりと住宅や美術館など他の建築タイポロジーにおいてもしっかりと活動の幅を広げながら、審査員や建築教育、講演会など様々な場面でも引っ張りだこの建築家といってよいであろう。

そんな彼女が独立してはじめて手がけたのがこのルイヴィトン高知店。その後のキャリアを追ってみると

2001年 独立(32歳)
2003年 ルイ・ヴィトン高知店(高知県高知市)(34歳)
2003年 ヨーガンレール丸の内店(東京都千代田区)(34歳)
2004年 LOUIS VUITTON OSAKA HILTON PLAZA(大阪府大阪市北区)(35歳)
2004年 ディオール銀座(東京都中央区)(35歳)
2005年 新八代駅前モニュメント(熊本県八代市)(36歳)
2007年 アパートメントI(東京都渋谷区)(38歳)
2009年 スモールハウスH(群馬県)(40歳)
2009年 日比谷花壇日比谷公園店(東京都千代田区)(40歳)
2011年 共愛学園前橋国際大学4号館(群馬県前橋市)(42歳)
2012年 みずのき美術館(京都府亀岡市)(43歳)

当初は内部も含めて建築全体の提案だったらしいが、最終的にはファサードのデザインで落ち着いたようであるこのプロジェクト。高知市の中心繁華街であるはりまや橋の喧騒が広がる玄関口に、落ち着いた表情を作り出すダブルスキンは、外側に小さなライムストーンを千鳥状に重ねる、その奥行きの為に角度によって後ろまで透けて見えたり、一面の壁に見えたりとするモアレの効果を使いながら、後ろに設置した照明の効果も手伝って非常にエレガントな灯篭のような風景を夜の街に作り出している。

すでに閉店したお店の壁を写真におさめている姿を訝しげに眺めて横を通り過ぎている地元の人の視線を受けながら、この街の夜の世界はいかがなものかと楽しみに思いながら商店街の奥へと足を向けることにする。