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2016年3月5日土曜日

「中高年ブラック派遣 人材派遣業界の闇」 中沢彰吾 2015 ★


電車の中、20代後半と思わしきスーツ姿の若い男女。上司の男性に部下の女性という感じ。身に着けているものは年齢に比べたら少し上等なモノのようだが、なんだか少しチャラチャラした感じ。一体どんな職業なのかと想像を広げていたら、男性がおもむろに電話を取り出し、「終了報告のメールさせとけよ」と指示の電話。そして読んだこの本。なるほど、ああいう彼らが派遣会社の若い社員で、中高年に高圧的に指示を与えては高収入を得ているのかとピンとくる。

つい先日のNHKの「クローズアップ現代|増える“正社員ゼロ職場”~公共サービスを担う現場で何が」でも、この数年で、今までは「公」の機関としてかなり好待遇で正社員として働いていた京都の保育士が、業務を外部の運営会社に委託するに伴い、その運営会社との再契約という契約の切り替えが行われ、今までの半分ほどの給与になったり雇い止めとなったりした話を報じていたばかり。

どこまでが過剰な好待遇で、競争に晒される市場原理から隔離された利権と呼ばれるようなものなのかは難しいところであるが、できるだけ組織をスリム化し、経費を削減して利益を上げていくことを迫られた企業にとっては、固定費として毎月のしかかる人件費は最も手をつけたいところである。だが、同時に従業員の生活と、会社のサービスに直結するところでもあるので、細心の注意を払って精査して「仕分け」していくこと、これはグローバル化し、どんどんと効率という波が押し寄せる現代においては、どうしても避けては通れないことも事実。

そんな中でこの10年近く、長きにわたって問題とされてきた格差問題と非正規労働者の問題。その問題の中にも既に10年以上の時間が流れたためにある種の歴史が生まれており、その概要を知ることと、この問題の現在の状況を把握するために手にした一冊。


第3章 人材派遣の危険な落とし穴―「もう来るなよ。てめえみてえなじじい、いらねえから」の「人材派遣が急拡大した本当のワケ」によれば、1995年に日経連が発表した「新時代の日本的経営」で、今後は働き手を、「長期蓄積能力活用型グループ(正社員の終身雇用)」、「高度専門能力活用型グループ(専門的な能力を要する働き手を期間だけ雇う)」、「雇用柔軟型グループ(パート、派遣労働者などの低賃金不安定労働者)」の三種に分けて、労働力を効率的に使い企業収益を高めようと宣言。つまり、今までの大量に従業員を抱え、組織内部で重い負担を抱えつつやりくりをするのではなく、より効率的に外部の人材も借りながらやりくりをしていきますということである。

しかしそれには「40代以上の社員の削減」という長年の慣行である終身雇用が壁になり困難であった。そこに登場したのが人材派遣業界で、企業が受けていた契約社員やパート労働者の賃金差別訴訟の頻発した状況を受け、労働者を本来の職場から切り離して人材派遣会社が雇用すると言う形にすれば、面倒な訴訟は回避でき、人事責任も負わないという新しい理論を提示する。企業としては「使えない社員」や「お荷物となった社員」に対し、自分たちで会社を辞めてもらう話し合いをすることなく、企業に人減らし合理化を提案するコンサルタントにアウトソーシングし、同時に足りなくなった労働力は派遣会社を通して補充することになる。

リーマンショックによる年越し派遣村など、社会がその問題を現実問題として受け止めるきっかけになったのは2008年。その当時を含め、「2010年頃までの第二時代の人材派遣会社に食い物にされた犠牲者は20代、30代の若年労働者が多かった」という。「だが、2015年の今は違う。2000万人を超えた非正規労働者のうち、6割以上が40代以上の中高年だ」と、5年を経た現在はその様相が変わり、30代だった派遣労働者が正社員になることなく、そのまま派遣労働者として40代に突入したのと、今までは正社員として働いていたがその身分を失って派遣として働かざるを得なくなった40代から50代、そして退職後の生活の為に収入を得るために仕事を求めるがやはり派遣の仕事しか得られない高齢者。これらの人がこの5年の間に数字を伸ばしたのだと想像できる。

「自己責任」だとか、「時代の流れだ」とか言ってしまうのは容易であるが、これが現在の日本の風景であり、多くの人が望んでその状況にいるのではなく、より安定し高収入な正社員として社会に関わりたいと望んでいるが、それがかなわない状況があること。それが「二極化」する世界の中で技能を持ってそれを正当に評価してもらえ、見合った報酬を払ってもらえる職場を見つけられる人はいいが、それ以外の人は生きていくためにこのような決して望ましいとは言えない労働状態に定常しなければいけない。これが今後も当たり前の風景として定着していくのが望ましいのか否か。それを考え、決めていかなければいけない時代に入ってきたのだと良く分かる一冊である。

以下本文より。

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―奴隷労働の現場
人材派遣は「使いたい人数を安価に、必要最低限の時間だけ単純労働に従事させ、人事責任を負わない」という派遣先企業にとって、すこぶる好都合な制度になっている

第1章 人材派遣という名の「人間キャッチボール」
特定労働者派遣と一般労働者派遣
一般派遣のうち労働期間が30日に満たない短期派遣を日雇い派遣という

/政府・財界による労働者の流動化政策
1985年に労働者派遣法が成立

/日雇い派遣でも有給休暇をもらえる
派遣社員は派遣先の福利厚生施設を利用できるのか否か
深夜食を食べようとしたら食堂を使わせてもらえず、外で食べろと追い出された。飲み物も自販機に格安の値段が設定されていたが、これは社員の為に会社が補助している者だから派遣は外のコンビニで買えと指示された

/人材派遣会社20代社員の異常な高収入
合理化を指南するコンサルタント
要するに企業に入り込んで組織改編と人減らしを促す事業

第2章 人材派遣が生んだ奴隷労働の職場
/未登録でも派遣する人材派遣会社がある
人材派遣の要でもあるマージン率の公開を義務付けた。かつては一部で50%にも達していたピンハネ率は30%程度に抑えられている
人材派遣会社にとってピンハネだけが問題だから、子供でも外国人でも誰でもいいのだろう

/就業規則で「おまえ、態度悪いからクビ」
派遣先で他の労働者と会話してはいけません
複数の人材派遣会社が一つの職場に労働者を派遣
派遣先との契約時期や派遣人数、ピンハネ率の違いなどで賃金に差
派遣先への移動に際しての交通費はお支払できません

/就業条件外の過酷負担
横浜市 問題の職権は市内を走る循環バスの乗客の誘導員
トリエンナーレ
/中高年は美術品が似合わない?
広域に広がったイベントであるにもかかわらず、該当に道案内のガイドが全く配置していなかった
頭を使うガイドとなると、自給は2000円に跳ね上がる

/二重帳簿ならぬ二重マニュアル
トリエンナーレのブラックバイトリポート

/ノロウイルス感染者に「食品工場に行け!」
大手製パン会社のクリスマスケーキ

/官公庁と自治体、外郭団体でも非正規労働が拡大
官庁のそれまでの随意契約方式による民間事業委託を否定し、競争入札制度を採用
図書館司書、役所の各窓口、公立学校の教職員、カウンセラー、消費生活相談員、博物館や大ホールの運営スタッフなどが続々と外部の民間業者に委託され、同時に人材派遣会社が低賃金労働者を送り込む仕組みができあがった
最低価格落札方式の場合、提案企業の業務の質、労働者の待遇など事業の中身が問われることは無い

/不正の温床になりかねない危うさ
人材派遣会社が提案する「コストダウン」
知恵が無い。単に派遣労働者の賃金と待遇を最低のレベルに設定するだけ

/恐怖をふりまく正規社員たち
正社員「感情を抑える」「相手の立場を思いやる」といった社会人として必要な節度が欠落している

第4章 悪質な人材派遣会社を一掃せよ
―「二度と仕事紹介してもらえないよ。かわいそう」
/拡大する一方の非正規労働者
雇用者数を押し上げたのは123万人増えた非正規雇用
アルバイト、パート、派遣社員などの日正規社員は2014年 2000万人を超えて2012万人
中高年は45-54歳 387万人
65歳以上141万人
/週5日終夜勤務/従順な派遣労働者
いったん正社員の座から落ちてしまったら、もう絶対に元には戻れないのが日本という国

/人材派遣を推進する識者たち
人材派遣を活用するのは、派遣スタッフの奴隷制、使い捨てに魅力があるから
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■目次
はじめに
―奴隷労働の現場

第1章 人材派遣という名の「人間キャッチボール」
―「いい年して、どうして人並みのことができないんだ!?」
/迷走する労働行政
/元祖はドヤ街の手配師
/政府・財界による労働者の流動化政策
/行政処分された第二世代人材派遣
/衰退と復活の第三世代
/労働内容の説明は虚偽
/派遣はエレベータ使用禁止
/監禁労働のタコ部屋
/悪意の果ての無駄
/人材派遣会社のシステム
/派遣労働者は保護されているか
/派遣元責任者と派遣先責任者
/日雇い派遣でも有給休暇をもらえる
/派遣労働者使い捨ての「待機」
/派遣先責任者によるひどい仕打ち
/一日中倉庫で重さ20キロのスーツケース運び
/人材派遣会社20代社員の異常な高収入
/求人サイトの矜持と責任
/ヤラセだった英会話通勤バス
/日雇い派遣の原則禁止問題
/近年稀に見る悪法
/中高年が職に就けない現実
/「年齢制限なし」の「裏メッセージ」
/「三種の辛技」
/いい加減な「人間キャッチボール」
/労働基準法に刃向う労働者派遣法

第2章 人材派遣が生んだ奴隷労働の職場
/極限まで単純化された派遣労働
/巨大ダンボール箱と格闘した中高年の「善意」
/人材派遣の定番「ピッキング」で実はトラブル続出
/派遣労働者に損害金を請求
/カゴテナーと接触して負傷
/出勤確認連絡
/マニュアルによる効率化は本当か
/予定調和のストーリー
/人材派遣会社が紀勢線を張ったワケ
/マニュアルは金科玉条
/未登録でも派遣する人材派遣会社がある
/就業規則で「おまえ、態度悪いからクビ」
/現代の派遣切り「お父さん、酒臭いよ」
/違法な人材派遣会社との二日間の攻防
/派遣労働者の差別待遇
/困難な業務でも派遣が担当
/就業条件外の過酷負担
/私たちは税金泥棒ではありません
/中高年は美術品が似合わない?
/二重帳簿ならぬ二重マニュアル
/テレビ局派遣で逆立ち強制
/ノロウイルス感染者に「食品工場に行け!」
/人材派遣会社の女性社員が必死なワケ
/東南被害も泣き寝入りの派遣労働者
/疑惑の「登録費」

第3章 人材派遣の危険な落とし穴
―「もう来るなよ。てめえみてえなじじい、いらねえから」
/人材派遣が急拡大した本当のワケ
/官公庁と自治体、外郭団体でも非正規労働が拡大
/時給2000円が900円に
/研修日当なし、交通費なし、最低賃金以下
/人材派遣会社の狡猾な手口
/人材派遣の安値受注が生んだトラブル
/人材を集められない人材派遣会社
/試験監督が逃亡しちゃった
/不正の温床になりかねない危うさ
/給与踏み倒し計画逃散?
/斜塔は元CAで名古屋財界のアイドル
/恐怖をふりまく正規社員たち
/事件の現場は巨大モール
/混乱する運営の尻拭い
/繰返される監視役の無意味な指導
/踏みにじられた買い物客の夢
/無知な派遣先責任者との攻防
/強要、脅迫、監禁
/労働者の救済要請を無視
/奴隷派遣は本当にお得なのか?
/熟練者と素人の差
/無責任体質
/人材派遣活用のリスク
/人材派遣会社に頼ったら事業が行き詰った
/カタカナ肩書き乱発のハレーション
/イベントでの日雇い派遣は業務上横領?
/除夜の鐘が鳴る頃、てんやわんやの大騒ぎ
/若者と中高年との格差
/意気消沈する派遣先責任者
/企業の稼ぐ力を削ぐ無責任人事

第4章 悪質な人材派遣会社を一掃せよ
―「二度と仕事紹介してもらえないよ。かわいそう」
/拡大する一方の非正規労働者
/週5日終夜勤務/従順な派遣労働者
/中高年を殺すな
/従順な派遣労働者
/権利意識に欠ける中高年労働者
/労働環境によるワナ
/現実を直視してほしい
/人材派遣を推進する識者たち
/重要な情報をネグレクト
/欠けている労働者保護の視点
/人材派遣と景気浮揚
/副社長が帰っちゃった!欧州の労働事情
/日本にスウェーデン流を持ち込んだ企業
/欧米先進国比較 ドイツ・米国・フランス

あとがき―すぐにできる改善策の提案
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中沢彰吾

2016年3月4日金曜日

「隠された貧困 生活保護で救われる人たち」 大山典宏 2014 ★★

2008年に起きたリーマンショック。その影響によって顕在化してきた社会の中の格差。その結果年越し派遣村など様々な形で日常を過ごすことが困難な経済状況にいる人たちが世の中に認知されるようになると、大きな格差という括りの中で、「非正規労働者」、「子供の格差」、「女性の格差」、「漂流老人」などと毎年の様に新たなるカテゴリーが登場して世の不安を煽るかのようである。

その流れの中でこの数年特にスポットが当てられているのはシングルマザーなどの女性の貧困と、高齢者の貧困。結局それらは現在の日本が構造的に抱える問題が断片的に光を当てられ、世間に分かりやすいように、「決して人事ではなくあなたもそうなる可能性のある、すぐ横にある問題ですよ」と報じられているだけに過ぎず、それでも決して報道で取り上げられることのない貧困の在り方は別にある。

そんな普段の生活からは見えにくい貧困の在り方に真摯に向き合い光を当てようとするこの一冊。児童養護施設出身者、高齢犯罪者、薬物依存者、外国人貧困者、ホームレス・高齢孤立者、生活保護受給者と、様々な場所で槍玉に挙げられがちな人々をその背景から現状まで詳しく描き、その根本にある原因を描き出そうとする。

まるで受けやすいネーミングをつけて「○○格差」や「○○の貧困」と世間の注目を浴びてそれにより何かを得ようとするある一定の報道のされ方よりは、よっぽど好感の持てる内容だし、問題の在り処もよく分かる内容である。全体的に客観的に物事を伝えようとするために、インタビューを大量に使用しているのが読み物としてやや気になるが、それは真摯な著者の態度の現れであるのだと思われる。

以下本文より。

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メディアで伝えるのは、多くの人が共感する、わかりやすい生活保護者です。

第一章 児童養護施設出身者 
/児童養護施設の現状
約4万7千人

/自立援助ホームとは
義務教育を終えた15歳から20歳までの子供たちが働きながら自立に向けて生活をする場所
基本的には生活のすべてを自分の手で賄わなければなりません

第二章 高齢犯罪者 
/高齢犯罪者大国・日本
諸外国が3%前後 日本だけが10%を超えている

/孤立と貧困が犯罪を生む
犯罪を繰返すことで、家族や仕事、住いを失い、孤立していく高齢者の姿

第三章 薬物依存者
/「ダメ、ゼッタイ。」では防げない
自傷経験のない9割の生徒の多くは、薬物乱用防止講演など聴かなくとも、そもそも薬物には縁のない生活を送り続けるのではないか。そして1割のハイリスク群の生徒は、その様な公園を聴いても結局薬物に手を出す時には手を出すのではないか。

/居場所がない寂しさ
「ヒマだったから」
「淋しさ」や「誰からも必要とされていない感覚」

第四章 外国人貧困者 
約203万人
/同胞のきずな
多くは日本人の男性と結婚をした女性とその子供
母親は「日本人の子の母」として在留資格を取得し、生活保護を利用している

/何が問題なのか
日本人男性と結婚したフィリピンの女性が離婚して生活保護を利用する例が、近年の外国人の生活保護では最も大きな問題


第五章 ホームレス・孤立高齢者
漂流高齢者
/ホームレス地域生活以降事業
緊急一次保護センターと自立支援センター
ホームレスが付き三千円の家賃で入居しながら自立に向けて職を探す

/アウトリーチとハウジング・ファースト
アウトリーチ 職員が困っている人のところに足を運び、サービスを提案するところからかかわりが始まる

第六章 生活保護から見えるもの
/激増する生活保護
2008年 起きたリーマンショック
日比谷公園 年越し派遣村

/求められる自立支援
若い利用者の急増
就職活動に疲れて自宅に引きこもる若者、精神疾患の増加とそれに伴う自殺、崎の見えない中高年男性の再就職活動、アルコールやギャンブルへの依存・・・。中卒、高校中退などの低学歴者 四角や経験もなく、身体のあちこちに不調を抱え、コミュニケーション能力 
生活全体を立て直すところから始めないといけない

三つの対策
生活保護に至る前のセーフティネットを手厚くする
早期に脱却できる体制を整える
貧困の再生産を防ぐための手立てをする

/モノ扱いされる人たち
人をモノとして扱う
冷凍食品に農薬のマラチオンが混入

/承認を巡る闘争
承認という概念「愛・法・連帯」の三つの次元
人から愛されること
認められる経験
役割を与えられる
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■目次  
はじめに

第一章 児童養護施設出身者 「私のことを必要としてくれた」
/ドキュメント=隠された貧困① 児童養護施設出身者
>私のことを必要としてくれた
/家族に黙って家を出る
/乳児院、児童養護施設、そして里親へ
/親権の壁
/自立援助ホームへ
/生活保護は受けたくない
/私のことを必要としてくれた
/実家との和解
/繰返される虐待死
/厳罰化で歯止めを
/児童養護施設の現状
/不十分なケア体制
/施設出身者の厳しい状況
/施設出身者の追跡調査
/自立援助ホームとは
/重なり合う不利
/自立援助ホームと生活保護
/大人のことは信用しないぞ
/共依存の女の子
/死ななきゃいい

第二章 高齢犯罪者 「息子たちに手紙を書いています」
ドキュメント=隠された貧困②  高齢犯罪者
>息子たちに手紙を書いています
/元気をもらいたくて
/病気は大丈夫?
/入院患者に四人の刑務官
/夫と二人で工場を切り盛り
/なぜ刑務所に
/今は天国のようです
/高齢犯罪者大国・日本
/高齢者のモラルが低下した?
/無銭飲食や放置自転車を盗んで刑務所に
/孤立と貧困が犯罪を生む
/困ったら刑務所へ
/累犯障害者
/地域生活定着支援センター
/昔からやっていた
/他に行け
/男物の使用済みトレーニングウェアを盗む男性
/実刑はやむを得ないと考えていた

第三章 薬物依存者 「認めてもらえる場所がある」
ドキュメント=隠された貧困③ 薬物依存者
>認めてもらえる場所がある
/シンナーがあんパンと呼ばれていた時代
/たいしたことじゃない
/逃げ癖がつく
/逮捕されてもやめられない
/あなたが決めなさい
/「分かるよ」と笑われた
/三度目の再使用
/またカネか!
/八王子にもダルクを
/「ダメ、ゼッタイ。」では防げない
/居場所がない寂しさ
/厳罰化で覚せい剤を止められるか
/薬物依存の治療
/ダルク設立のきっかけ
/たった一つのルール
/ダルクの現状
/八王子ダルク
/窓口には自分の足で
/ダルクのこれから
/日本にもドラッグ・コートを

第四章 外国人貧困者 「なぜ、外国人なのに保護が受けられるんですか」
ドキュメント=隠された貧困④ 外国人貧困者
>なぜ、外国人なのに保護が受けられるんですか
/外国人が生活保護をもらえるのはおかしい
/外国人の誰もが受けられる訳じゃない
/同胞のきずな
/ヘルパー資格を取る
/夢は子供のこと
/あなた生活保護でしょ
/日本に根を張る外国人労働者
/リーマンショック後の就労・生活相談の増加
/外国人と生活保護
/何が問題なのか
/ふじみの国際交流センターの活躍
/多岐に渡る生活支援
/二人三脚の相談体制
/変わる外国人支援
/働かせるために呼び寄せる
/ようやく手に入れた普通の生活

第五章 ホームレス・孤立高齢者 「続かないんだよね」
ドキュメント=隠された貧困⑤ ホームレス・孤立高齢者
>元ホームレス
/三千円アパート
/ホームレス地域生活以降事業
/アウトリーチとハウジング・ファースト
/10万円で売れたロレックス
/保護申請はスムーズだった
/落ち着かなくてね
/人間関係はどこにでもある
/静養ホームたまゆらの悲劇
/構造的に生み出される漂流高齢者
/福祉施設からも締め出される
/施設増設は解決の切り札になるのか
/今ある住いを「支援付き」に
/ホームレス支援から始まった
/ケア付き就労とコミュニティビジネス

第六章 生活保護から見えるもの
/忘れ去られた生活保護
/激増する生活保護
/求められる自立支援
/制度の設計では解決できない者
/見えない人間
/モノ扱いされる人たち
/承認を巡る闘争
/インタビューを振り返る
/誰でも生きやすい社会に
/最後のセーフティネットの価値

あとがき
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2014年10月8日水曜日

「「夜のオンナ」はいくら稼ぐか?」 門倉貴史 2006 ★

街中を歩いていると、バスや看板広告で、「短時間、高収入、女性だけのバイト情報」などという文字を良く見かける。誰もが生きていく上でお金が必要で、誰かに養ってもらう以外では、どうにかして自分が生きていけるだけのお金を稼がなければいけない。

労働はつらいものである。ストレスや人間関係、面白くも無い仕事もお金の為に自分を殺して我慢しなければならない。それでも、月末に手にできるのはそれほど自分が欲しいものを勝ったり、好きなものを食べたりできるような余裕のある額ではなく、家賃や生活費を差し引いたら手元に残る額はたかが知れている。

そうなると、どうすれば収入を増やすことができるかと考える。何かの専門知識を身につけ、その特殊技能によって報酬を増やす。つまりは時間単位での収入を増やしていくか、もしくは時間自体を増やしていく。つまり時間ごとの報酬が決まっているのなら、働く時間を増やしていくしかない。昼間と夜で別の仕事を掛け持ちしたり、家に帰っても仕事をしたりと、どんどんと自分の時間を削っていくことになる。

専門知識は資格や免許など、取得するまでに多くの時間の学習が必要となり、同時にそれなりのお金の投資も必要となる。なによりもそこまでの忍耐が必要だ。これはつらい労働時間を増やすのも、体力的にも辛いし、自由にできる時間もどんどん削られる。これは面白くない。

そうなると、今度はどうやってその両方の問題をクリアできるか考える。つまり如何に時間当たりの報酬を増やし、短い時間にて十分な収入を得られるか。

こうなると、通常の経済圏の中でいてはどうにもならない。そこから一歩外にでることで今までの常識を外していくしかないとなる。都市伝説のように実しやかに囁かれる高額バイトの数々。自らの健康をリスクに晒すか、闇社会に足を染めていくか、犯罪に加担するか。

そんな数々の一般社会から外にある経済活動の中でも、極めて普段いる自分たちからの距離が近く感じられ、通常の職業となんら変わらないかのイメージに近づいてきているのが冒頭の広告。つまり水商売や風俗と言った性産業の夜の世界。

女性が様々な形でその性を売り物とすることで、通常では考えられない時間単価を稼ぎ出す。昨今、メディアで何度も繰り返し報じられる現代の「女性の貧困」の問題に関して、一つの繋がりとして一般社会から非常に見えにくくなっているために、その実態が把握しきれない部分が多いからと、手にとってみた一冊である。

しかしどうもこの一冊も統計学の観点から捉えただけであり、この本質を知るためには、なぜ女性達がその世界に入っていかなければいけなかったのか、もしくはあまりにカジュアルに女性がその世界に入っていくことになっている現代社会の現状や、何よりもその産業を裏で操っている様々な闇社会の実態、それらを総合的に描き出すには、社会学者や気骨のあるジャーナリストではないとできなく、とても新書として出版する本で費やせる手間と労力ではないのだろうと思わずにいられない。

このタイトルから世の中が期待するのは、いったいどれだけのお金がそれぞれの風俗や水商売に使われて、その中のどれだけの割合が女性に入り、お店に入り、そこからその裏にいるであろう組織に入り、そのお金がどの様に表社会に戻ってきて使われているのか。
またその業界に従事する女性の数だけでなく、この夜の世界の経済があるからこそ生きていけている人間の数。お店で働く男性スタッフや、運営側の人間、そのお店にスペースを貸す賃貸オーナーなどなど、いったいどれだけの人間が、一般社会とはかけ離れた経済単価の世界に依拠するために、どれだけ恩恵を受けているのか。

街中に当たり前に入り込んでいる性産業の風景がこの街、この国からなくなったとしたら、いったいどれだけの人間が路頭に迷うのか、生活に困るのか。駅前商店街が風俗街に変わってしまった北関東の太田市の様に、一般社会での経済概念から考えたら圧倒的に楽なお金の稼ぎ方をもたらしてくれるこの夜の世界。一度楽なほうに流れたら、二度と苦しみを伴う方へは戻れないのが人間。

女性を商品として自らの利権を守ろうとする運営側。世間体は悪いが自分が楽に稼げるなら見て見ぬ振りを続ける風俗ビルのオーナー達。そして事情はそれぞれであろうが、個人主義が横行し、かつてよりもよっぽどカジュアルに足を踏み入れていく女性達。

これだけの多くの女性が、何かしらの形で夜の世界に関わっているとしたら、自分の周りにも口にはしないけど実はそうだったという人がいるのかもしれないと思いながらも、やはり統計学的に数字で説得力を与えるよりも、自らドロドロとした世界に入り込み、外から見えない世界を描きだす、そんな本を読みたいものだと思いながらページを閉じる。

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序章 「夜のオンナ」のお金の行方
/目的に見合った金額
/ホステスたちの出生経路
/オンナの昼の顔と夜の顔

第1章 あなたが払ったお金は誰の手にわたるのか
/企業の交際費はいくら減ったか
/銀座のホステスの年収は3000万円
/ホステスがもらう大きな「手当」
/キャバクラの儲けはどこへいくか
/セクシーキャバクラという業態
/ホストクラブに使われるお金は1兆円
/ホストクラブの客の過半はホステスと風俗嬢
/芸者とコンパニオンの収入の違い
/夜に働く主婦の儲け
/女性パート・タイマーの稼ぎの総計は3~4兆円
/「昼クラ」へ向かう主婦の稼ぎ
/女性たちとパチンコ産業の関係

第2章 いちばん稼いでいる「夜のオンナ」は誰か
/時給ランキング第一位はあの仕事
/ソープランドで働く女性の取り分
/ソープランド営業はどこまで合法か
/「待ち行列理論」を応用した風俗調査
/ソープランドの個室をつくるためにはいくらかかるか
/日本全国のSMクラブの女性の稼ぎは年間1680億円
/なぜM女のほうが割高なのか
/ストーリー性を求められ始めた夜の仕事
/急成長するデリバリーヘルスの市場規模が2.4兆円に達した理由
/ピンクサロンで働く女性の給料は基本的に時給制
/ビデオ・ボックスの法的な問題点とサービスの中身
/新しいタイプの性風俗店で稼ぐ女性たち
/低迷を続けるストリップ劇場
/女子中高生らの援助交際相場は10万円以上になる
/東南アジアでの自動買春問題

第3章 日本の夜に稼ぐ外国人女性たち
/フィリピンパブは都会より地方で広がる
/アジアンエステでのお金のやりとり
/韓国エステの98%が違法行為
/日本国内での外国人売買春の市場規模
/摘発された外国人女性不法就労者の11%が売春を経験
/「ガラス戸の女」として働いていた外国人女性たち
/母国への送金を担う地下銀行の実態
/外国人不法就労者の増加は日本経済にマイナス
/ラブホテルは儲かっているのか
/1軒あたり20室、1日2.5回転が平均
/夜のビデオ、DVD業界はなぜ「セル」で設けるのか

第4章 外国では「夜のオンナ」はどうしているか
/米国の売春産業は地下ビジネスの5%を占める
/深刻化するキューバの売春問題
/売買春を「完全合法化」した国の狙い
/売春宿が株式上場を実現した国の名前
/公娼制度を廃止した台湾、台北市
/中国の人身売買の相場
/家族に収入の大半を送金するタイからの出稼ぎ女性

終章 日本の「夜のオンナ」をどうするべきか
/働く女性へのサポートが十分にできていない
/売春防止法は有効に機能しているか
/風俗産業に携わる女性の安全確保と福利厚生
/外国人労働者の受け入れ
/未成年の風俗産業からの保護
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「「夜のオンナ」の経済白書 ――世界同時不況と「夜のビジネス」」 門倉貴史 2009 ★

「消えた高齢者」「格差社会」「極点社会」などと不安をあおる様に現代社会の問題点としてNHKから定期的に発信されるメッセージ。

恐らく今年のキーワードは「女性の貧困」なのだと思わなければいけないくらい、今年は年初からいたるところから「シングルマザーの貧困」についてテレビで取り上げられたり、書籍で語られたりしている。

今まではサラリーマンの夫と専業主婦の妻に子供という標準的な家庭像を元に国が運営されてきたが、グローバル化の競争社会、効率向上の為に非正規雇用、女性の社会進出、核家族化の定常化、自由意志による結婚と離婚などなど、様々な要因が重なって世の中の様子は随分様変わりした。

サラリーマンの夫だけの収入ではなかなか家庭を支えられないのにも関わらず、女性側の意識が変わることはなかなか難しく、それでもやはり専業主婦として職場のストレスから離れて生活していきたいと思う人の数はなかなか減ら無い一方、仕事をする女性が増えて、自分で自由にできるお金もあり、自由にできる時間もあり、社会で認められる喜びもあるうちに、加えて自分にふさわしいと思う男性像も右肩上がりで上昇する。

都会にいれば、出会いは腐るほどあるという先入観も手伝って、結婚に踏み切る時期が遅くなるのは止む得ない。そういう層がいる一方、早く結婚して子供もできたが、夫が思ったようには家庭を大切に扱わず、もろもろの理由で離婚などして子供を育てるための十分な経済的余裕を持てない状態に陥る人々もいる。

男性の場合は、非正規労働者やホームレス、ネット難民などとしてすでに分かりやすい形で社会の弱者として何度も取り上げられてきたが、その背後でなかなか見えなかった女性に光を当てて、現代社会の一面として取り上げられる女性の貧困。

都会で一人暮らしする女性の貧困率。子供を抱えシングルマザーとして働きながら子供を育てる女性の現状。低賃金の溜めに親元を離れ、より良い機会をつかむことができない女性達。

そんな女性が、その経済的負担を少しでも軽くしようと、短い時間で高収入を得る方法として飛び込んでいくのが夜の世界。そうなると、この夜の世界の経済状況を理解しなければ、現在の女性の貧困の本質が見えないのではと繋がってくる。

この国ほど、水商売や風俗が当たり前の風景として街の中に入り込んでいる国も珍しいと思うほど、性産業が生活のかなり近い部分に存在する。甘い蜜に吸い寄せられる昆虫のように、夜な夜な闇の中で彷徨う男性の懐から流れ落ちる膨大な金が、どのように夜の世界で流通し、実際どこに消えて、どう使われているのか、そして彼女たちはそれで何を手にしていくのか。

そんなことが理解できる一冊かと思って手にしたが、統計学的な数字が並べられるだけで、本当に見たいドロドロとした闇の世界の支配者の姿。そしてその構造に気づかずにそちらの世界に足を浸していく女性の姿。そして夜の街の風景の裏に隠れる様々な利権構造を炙り出すには程遠い内容で少々がっかりとしてページを閉じることにする。

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■目次
はじめに
第1章 搾取される開発途上国の「夜のオンナ」たち
/開発途上国の男性優位社会が売春を促す
/タイの「夜のビジネス」はベトナム戦争の遺産
/サイクロンの季節になるとミャンマーで売春婦が増える理由
/東南アジア「セックス・ツーリズム」の仕組み
/カリブの買春ツアーの主要目的地ドミニカ
/美しすぎる売春婦には要注意
/ベトナムのカラオケ店は売買春の温床
/児童買春の問題が深刻化するフィリピン
/わずか5万円で売られる脱北者の女性
/中国の経済発展とチベットの売春ビジネスの関係
/中国で建設計画が浮上したセックス・テーマパーク
/インドの売春宿で「性の奴隷」にされるネパールの少女
/スマトラ沖地震に乗じて救済を装った人身売買が横行
/人身売買ビジネスは現代版の「奴隷貿易」
/欧州最大の性奴隷供給国モルドバ
/国際的な人身売買の中継地となるキプロス
/旧ソ連からトルコに流入した「ナターシャ」
/東欧諸国で売春が合法化された理由
/チェコに登場した世界初の「ゼロ円売春宿」
/コンドームの無償配布でHIV感染抑制に成功した国とは?

第2章 合法と規制の挟間で揺れる先進国の「夜のビジネス」
/先進国の「夜のビジネス」の仕組み
/米国デンバーで買春するとテレビで顔と名前が晒される
/「ハリウッドマダム」のスキャンダル
/エイズ対策担当調査官も顧客だった「DCマダム」
/下半身スキャンダルで辞職したニューヨーク州知事
/米国のアダルトビデオ市場は4222億円
/米国のポルノ雑誌市場は1100億円まで縮小
/ネットオークションに処女を出品、3億円の値が付いた女子大生
/英国でブームの「ドッギング」とは?
/合法化されたオランダの「夜のビジネス」はどうなったか?
/売春宿が株式上場したオーストラリア
/03年に売春を全面的に認めたニュージーランド
/「夜のビジネス」への規制強化に乗り出した北欧諸国
/ドイツでオープンした「セックス・アカデミー」とは?
/シニア割引を適用する売春宿が登場

第3章 日本の「夜のオンナ」最新事情
/締め出される「風俗案内所
/わいせつDVD販売に対する規制も強化
/児童ポルノは所持するだけでも罰金の対象に
/人身売買の「監視対象国」に指定された日本
/未成年者売買春の場は、「出会い系」から一般的な「SNS」へ
/無店舗型風俗の低価格競争
/営業禁止地域でも性風俗店が営業できるカラクリ
/お隣韓国では買春男性も摘発されるように

第4章 世界同時不況と「夜のオンナ」
/金融危機が「夜のビジネス」を直撃。エコ割引も登場
/カジノの収入減がセックス関連産業にも影響
/スペインで増加するサブプライム売春婦
/イタリアで増加する外国人売春婦
/ポルトガルとギリシャでも外国人売春婦が急増
/新型インフルエンザで売り上げが半減したメキシコの売春宿
/日本の「夜のビジネス」にも世界不況の影響が及ぶ
/ホステス→キャバクラ嬢→風俗嬢という玉突き現象
/外国人女性が在籍する安価な店に客足がシフト
/「裏ビデオボックス」の価格破壊
/AV女優のギャラもジリ貧
/風俗嬢の給料低下がホストクラブ業界にも波及

第5章 「セックス税」導入のススメ
/「タバコ税」「酒税」のように「ゼックス税」を
/「セックス依存症」という恐ろしい病気
/『カリヴァ旅行記』でも登場した「セックス税」構想
/売春合法化の是非
/「セックス税」をすでに導入しているドイツのケルン市
/1回5ドル。米国ネバダ州の「セックス税」導入案
/日本で「セックス税」を導入すると94億円の税収増

おわりに
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