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2013年6月12日水曜日

「素行調査官」 笹本稜平 2011 ★

ダブル主役かのような小松刑事の視点から物語が始まる。管轄内で発生した殺人事件。その現場に一番に到着し見つけた不審な名刺入れ。その裏に見え隠れする、警察トップの不祥事の臭い。

一方、勤めていた探偵事務所が倒産し、参加したクラス会で再会した警察官僚になっている入江よりリクルートされて警視庁監察係という、警察内部の不祥事を取り締まる部署への就職が決まった本郷。

日本でビジネスを展開する美人中国人経営者。殺されたその妹。中国人経営者と不倫の関係を続ける公安刑事。その裏の見え隠れする蛇頭の姿。そして警察官僚の出世争いと様々な謀略。

ハードボイルドを書かせたら横に出るものがいない大好きな作者だが、警察モノと言う使い古された枠組みの中で、更に期待に応えるような物語になったかといえば疑問符が残るような内容で、大きなトリックを無しにクライマックスを迎える一作。

やはり海か山という、自然の中で苦闘する男を書き続けてほしいと願わずにいれれない。

2013年5月30日木曜日

「砂の器 上・下」 松本清張 1961 ★★★


これまた家の本棚に長年埋もれていた一冊。読んだものだとばかり思っていたが、改めて手にとってみると、恐らくテレビや映画で目にしていたその有名なタイトルのイメージから読んだ気になっていただけで、決してちゃんとは読んでいないと理解し改めて手に取ることにした。

そんな訳でオーストラリアまでの長い機内でさらっと読み切れてしまうが、その内容はとても50年以上も前の作品とは思えないくらい、細かいところに伏線が敷いてあり、それが後半にしっかりと回収されていてなんともお見事としか言いようが無い。

冒頭から明らかにこいつらの中の誰かが犯人だろうとは暗示されているが、まさか二人の犯人だとは思いもよらない。そしてその生い立ちに込められた複雑な事情と、それを隠すための経歴。

ゲームではなく何もないところからヒントを見つけ、自ら過程を構築していき、実際にその場に足を運んで追っていく。徐々に自ら描いた物語を具体化し、その中の人物像を見つけていく。まるで靄の中に手を伸ばし、人影らしきものを捕まえるかのように。

ミステリー好きならできるだけ早い時期に手にする一冊であろう。

2009年8月21日金曜日

「時の渚」 笹本稜平 2001 ★★★★

「夏が終わろうとしていた」

と始まる相変わらずのハードボイルド小説。今回の舞台はいつもの山岳小説ではなく、事故で妻と息子を亡くし職を失った元刑事が、ホスピスで人生の最後の時間を過ごす老人から、35年前に生き別れた息子を探して欲しいと頼まれるとこから始まる。

老人が赤ん坊を託した女性を追うことで生き別れた息子へと辿りつこうとしやってくるのは信州の鬼無里村(きなさむら)。同時にかつて自分の妻子をひき殺した犯人を追う主人公。その家庭で向き合う様々な家族の絆。

しっかりと練られたプロットに、育ってきた背景まで見えてきそうな登場人物たち。35歳という年齢で交差する登場人物達のそれぞれの人生をその年齢にあと少しの時期に読むことができ幸せだと思える一冊である。
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第18回(2001年)サントリーミステリー大賞
第18回(2001年)サントリーミステリー読者賞
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