ラベル ★★ の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル ★★ の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2020年5月11日月曜日

「ツァラトゥストラはこう言った」ニーチェ 1885 ★★


20代の時には「読んでおかねければいけないのでは・・・」と思い手にとりあっさり挫折し、30代に本棚にある背表紙を見て、「そろそろ読めるようになったかな・・・」と思うがやはりてんで分からず本棚に戻し、40を超えて「再チャレンジ」と自らを鼓舞して手に取るが、やはり分からないのは相変わらずであるが、「まぁそんなもんだろう」と思えるくらいに歳を重ねたのも手伝って、流し読みながら最後まで読んでみた一冊。

というのも、どこかで「自分の価値観を貫いて成功したものに対し、それができないルサンチマンを抱えた大衆は徳という価値観を作り出し、それで自らを慰めているだけだ」というような本の解説を目にし、これはまさに今の自分に必要なだと思うことで読みきることができた。

何度読んでも空で発音できない「ツァラトゥストラ」は確かムハマンドか誰か宗教者のことをさしているはずで・・・という曖昧な情報を妻に説明するが、調べるとゾロアスター教の開祖のザラスシュトラでそれをドイツ語読みにするとツァラトゥストラとなるとのこと。それは発音できない訳だと納得。

産業革命によってもたらされた新しい社会においては、今までのように宗教が社会の指針として働くことが弱くなり、より個人が何を持って生きていくのか、何を信じ毎日を過ごすのかを考えていかなければいけないという背景から「神は死んだ」という言葉を生んだニーチェが、その生涯の思索をまとめたと言われる一冊。

山にこもり、思索を繰り返し、溢れ出る考えを太陽のように人々に分け与えたいと山を下りるツァラトゥストラが様々な人々に出会い、議論とやりとりの中で複雑な比喩の中でその考え方を表明していくのだが、なぜもう少し直接的に語らないのかと思うほどに複雑な言い回しは、やはり翻訳という理由もあるのだろうが、哲学というものはそういうものなのだろうと思いつつ、文脈がなかなか繋がらない文をなんとか進めることになる。

「神は死んだ」「ルサンチマン」「おしまいの人間」「超人」「永遠回帰」

分かったような分からないような気持ちで解説を読むと、「うーん、なるほど、そういうことか・・・」と思ってしまうから、やはりこのような哲学書を読むにはまだまだ基盤が足りないということか。

結局、今を生きていく上で、どのようにルサンチマンを克服できるのかを求めて手にしたが、どの時代でも、そしてニーチェのような思索の人でも、人は同じようなことで日々を悩み、苦しみながらも、それでもやはり生きていくのだということ。そして20代と30代の自分に、なんとかリベンジは果たしたと心の中で伝えながら、そっと本棚に戻しておく。

2020年4月25日土曜日

「初恋温泉」吉田修一 2006 ★★


もう何年も、読むことを楽しみながらページを捲るというよりも、年齢と共にこれくらいの本は読んでおかなければいけない、メディアで取り扱われている話題の本は読んでおかなければいけない、というなんとも言えない思いに押され、内容よりも読んだということを追いかけるなかで、かつてワクワクしながらページを捲っていた子供時代の読書の楽しさをまるで失ってしまった気分に苛まれ、なんとかあの時に気持ちを取り返せるかと実家で片付けをしている中で見つけた本が詰め込まれた段ボールの中から見つけ出した一冊。

一時期随分気に入って読み漁っていた作家の作品で、納められている5編の物語は、それぞれ年齢も置かれた状況も異なる5組のカップルがそれぞれ違った場所の温泉地の温泉宿を訪れる様子を描いているため、一日一篇と決めて読みすすめる。

初恋温泉が熱海の「蓬菜」
白雪温泉が青森の「青荷温泉」
ためらいの湯が京都の「祇園 畑中 」
風来温泉が那須の「二期倶楽部」
純情温泉が黒川の「南城苑」

レストランで成功した経営者夫妻が訪れる旅館では、温泉に浸かっていると入っている他の宿泊客の「こういう高級旅館というものはね・・・」というセリフに感じられるように、高級旅館から鄙びた温泉宿、お忍びで訪れるような宿から有名温泉街の心地よい宿まで、登場人物が人生の中で如何にもチョイスしそうな宿がうまいことマッチングされている。

温泉と旅館。

日本人なら誰もが想像できる、特別な時間とくつろぎの非日常。

そんな中でも雪深い青森の風景で、一瞬音が消えたような錯覚から始まる「白雪温泉」はとても印象深い内容で、音なく降り注ぐ雪のように、少しだけ読む楽しみが手の中にまた戻ってきたような感触をもってページを閉じる。

2019年9月14日土曜日

「プラハを歩く」 田中充子 2001 ★★


チェコのプラハで行われるreSITEという都市・建築のシンポジウムに参加するために、初めてプラハに出向くことになった。そんなことは話していたら、ちょうど夏休みにプラハとウィーンを回ったという友人から、「戻ってきてから存在を知って、手にしたら結構面白かったので、プラハに行く前に読めばよかった」と言われて借りた一冊。

著者は建築史を専攻し、京都精華大学で建築を教えていらっしゃる田中充子さん。どっぷりプラハにハマった様子が伝わってきて、実際にその街で時間を過ごした人らしい視点と、そして歴史を学んだ専門家の二つの視線を交えてプラハという一つの都市をじっくり解説している。

プラハといえば、世代的に浦沢直樹の漫画「モンスター」の舞台としてのイメージが強いが、本で紹介された様々な時代の建築を廻り、「建築博物館」や「百塔の街」と呼ばれるその歴史を少しでも感じてこれればと想いを馳せながら、あわよくばとミュラー邸やトゥーゲントハット邸に足を運べることを祈ることにする。

2019年8月24日土曜日

「線は、僕を描く」砥上裕將 ★★

週末に書の稽古に通うようになった為か、新聞の書評で紹介されていた時に同じ墨の文化として気になっていた一冊。

先日札幌に出張に出かけた際に、せっかくだからと北海道大学のキャンパスの雰囲気を見に行こうと夜の散歩に出かけ、正門前でとても良い雰囲気を出していた古本屋に吸い込まれるようにして立ち寄ったら、ちょうど棚にこの本を見つける。きっと多感な年頃の大学生が買って、売りに出したのだろうと想像しながら、何かの縁だと購入してみる。

心に傷を負い自分の世界に閉じこもっていた大学生が、ひょんなきっかけで出会った水墨画を通し、水墨の世界の大家と呼ばれる先生や同年代の絵師など、様々な人との交流を経て、徐々に水墨画の魅力にとりこまれ、そして周りの世界との関りを取り戻していく物語。


墨を磨り、筆を浸して白紙に描く。どれだけイメージをしても、どうしても思うように書くことは叶わず、次の白紙に向かうことになる。何百年前にも同じように、この文字を悔しい思いをしながら書き続けていた人がいたのだろうと、邪な想像を膨らませると、また文字のバランスを崩してしまい、また白紙を重ねることになる。
そんな墨と筆が与えてくれる書の時間は、詰まるところ、自分自身と向き合う時間なのだと徐々に気づき始めた時に出会う、また別の墨の世界の物語。大学前の古本屋に並んでいたのにふさわしく、とても爽やかな読み心地をもたらしてくれたために、読み終えた後の最初の書の稽古にて、先生に紹介すると、ぜひとも読んでみたいとおっしゃっていただいた。

毎週末、学ぶものとして足を運べる場所があるということ。「日日是好日」 のお茶のお稽古の世界の様に、先生がいて、共に学ぶ人がいる。長い道のりの学びではあるけれど、季節の移ろいを感じながら、去年より少しだけ前に進んだ自分を感じられながら進む人生は、やはり日本人に合っているのだろうと思いながら、今週末に書く文字に思いを馳せる。

砥上裕將 

2018年5月27日日曜日

「「ラクして速い」が一番すごい 」 松本利明 2018 ★★

松本利明 

「生産性と効率化だけを求めると、人はいつか燃え尽きます。」

この本の中でも言われるように、いかに効率を上げて仕事をこなそうとしても、現代のような情報社会の中で、生身の身体で向かっていけば、おのずとそこには限界があり、行き着く先は身体を壊すか、精神をやられるかのどちらかになるのは間違いない。

それが頭で分かっていても、一日に処理しなけばいけない事象は加速度的に増えていき、行わなければいけない判断と、それに伴う指示というコミュニケーションも数年前とは比べ物にならないほどに多くなってきている。

「限界」が訪れるのはそう遠くない未来だなと思うからこそ、根本的に仕事への取り組み方を考え直さなければと考え始めてこの数年。その一環としてふと手にした一冊。

まずは、物事の整理整頓をしっかりし、必要ないものを抱え込まず、残ったものに優先順位をつけて、どうにかなるさと小さな失敗に捉われることなく前に向かうこと、それを繰り返すのみということのようである。
-------------------------------------------------------
目次
1章 一発で決める
2章 スパッと割り切る
3章 抱え込まない
4章 組織の「壁」を利用する
5章 自分で「できる」ようになる
おわりに
----------------------------------------------------------

2017年12月16日土曜日

「オリエント急行殺人事件」 ケネス・ブラナー 2017 ★★


--------------------------------------------------------
スタッフ
監督:  ケネス・ブラナー( Kenneth Branagh )   
脚本: マイケル・グリーン(Michael Green)
原作: アガサ・クリスティ 「オリエント急行の殺人」
--------------------------------------------------------

ひたひたと今年の終わりが忍び寄るようにして近づいてくるのを感じると、どうしても「今年の一本」はなんだったろうかと焦りを感じる。そんな折に、テレビでやたらとプロモーションをしているのを目にしたのが、イギリス人俳優で映画監督でもあるケネス・ブラナー( Kenneth Branagh ) によって、リメイクされた「オリエント急行殺人事件」。言わずと知れたイギリスのミステリー作家、アガサ・クリスティ (Agatha Christie)によって書かれたミステリー小説。

1974年にも映画化され世界中で大ヒットとなったが、今回は豪華キャストでリメイクということで、大々的なプロモーションも手伝い、「これはぜひとも映画館で」と思い立ち妻を誘って映画館へ向かうことに。

立ち往生する列車に限られた乗客。その中で起こる殺人事件という典型的なクローズド・サークルはややもすれば、古臭いミステリーに感じでしまうが、それは 1934年の原作を忠実に守ったということで目もつぶり、随所に使われるドローンによるカットも有効的に使われて、キャストに負けないほどの豪華な衣装や内装も、古き良き時代のヨーロッパの雰囲気を充分に楽しませてくれる一本。

ケネス・ブラナー( Kenneth Branagh )

エルキュール・ポワロ(世界一の名探偵): ケネス・ブラナー
エドワード・ラチェット(2号室,アメリカ人 実業家. ギャングで富豪) : ジョニー・デップ 
キャロライン・ハバード夫人  (3号室,アメリカ人,未亡人): ミシェル・ファイファー  
メアリ・デブナム(11号室,イギリス人,家庭教師,アーバスノットと近しい): デイジー・リドリー 
ドクター・アーバスノット(15号室,イギリス人黒人の医師,デブナムと近しい)  : レスリー・オドム・Jr  
ドラゴミロフ公爵夫人(14号室,ロシア人):ジュディ・デンチ
ヒルデガルデ・シュミット(8号室,ドイツ人,ドラゴミロフ公爵夫人のメイド): オリヴィア・コールマン
ゲアハルト・ハードマン(16号室,アメリカ人,教授): ウィレム・デフォー
ヘクター・マックイーン(6号室,アメリカ人,ラチェットの秘書): ジョシュ・ギャッド 
ルドルフ・アンドレニ伯爵( 13号室  ,ハンガリー人外交官)  : セルゲイ・ポルーニン  
エレナ・アンドレニ伯爵夫人(12号室,ハンガリー人): ルーシー・ボイントン

ピラール・エストラバドス(10号室,宣教師): ペネロペ・クルス
ビニアミノ・マルケス(自動車のセールスマン): マヌエル・ガルシア=ルルフォ
ピエール・ミシェル(オリエント急行の車掌):マーワン・ケンザリ

2017年11月12日日曜日

新宿御苑 旧御凉亭 森山松之助 アンリー・マルチネー 1906 ★★



---------------------------------------------------
所在地  東京都新宿区内藤町  
機能   都市公園・庭園
庭園形式 池泉回遊式庭園
作庭年代 明治時代初期
作庭    アンリー・マルチネー  
---------------------------------------------------
日本の庭園100選 
---------------------------------------------------
秋の東京。見逃す前にと都内の紅葉スポットに足を運ぼうと到着したのは新宿御苑。朝ごはんを食べずに出てきたので、小腹が空いてるという妻が思い出したのは、先日「じゅん散歩」で高田純次が食べていて美味しそうだったというハンバーガー屋さんを探しで見つけた「CHATTY CHATTY」

「これを食べるのはやはり若者じゃないと・・・」と思うほどのボリュームでなんとか平らげ、腹ごなしにちょうどよろしいと200円の入場料を支払って58.3ヘクタールという広大な都市公園の中へと向かう。

この新宿御苑は元々徳川家康が家臣の内藤清成に授けた江戸屋敷跡地が元となっており、それを明治時代に当時の責任者であった福羽逸人がフランス人でベルサイユ園芸学校教授であったアンリー・マルチネーに巨大な庭園とする設計を依頼する。そして生まれたのは、イギリス式庭園、フランス式庭園、日本庭園を組み合わせた巨大な都市公園という訳である。

入り口近くの温室を越えると、全体が輝くような黄色に色づいた銀杏の巨木の下には多くの人が集まり写真を撮っている姿が見えてくる。どうやらその多くは外国人観光客のようであり、その先に広がるキューガーデンを思わせるイギリス式庭園の広い芝生の上には、多くの人がシートを広げ気持ちよい秋晴れの休日を楽しんでいる姿が見えてくる。

迷わないようにと地図を確認しながら目的の日本庭園へ足を向ける。玉藻池を中心として西側には中国様式の建物が池に張り出すようにして建っているのが見えてくる。この建物は旧御涼亭(台湾閣)と呼ばれ、当時の皇太子で後の昭和天皇が御成婚される際の記念として1927年に当時台湾在住の日本人有志により贈呈された建物であり、その設計を担当したのは森山松之助という当時の台湾で活躍した日本人建築家という。

この旧御涼亭のバルコニーからは玉藻池越しに緩やかな傾斜を持つ日本庭園が見渡すことができ、所々赤や黄色に色づく木々の姿の後ろには、暴力的な風景が逆に新宿御苑のランドマークともなっている背景のNTTドコモ代々木ビル。

旧御涼亭 を離れ今度は外苑方向に足を向け、イギリス式庭園を抜けるとそこに見えるのはフランス式庭園を形作るプラタナスの並木。こちらも多くの観光客が写真を納めに来ているが、残念ながら紅葉のピークは過ぎ去ってしまったようで、木々の葉がややスカスカな感は否めない・・・そのすぐ横にあるバラ花壇を眺めながら、千駄ヶ谷出口に向かい、「御苑でここが一番気持ちいいのでは?」と思える大きな木に覆われた森の中を歩きながら、こうした公園に足を運ぶ時間が日常の中にある人というのは、とても豊かな日常を過ごしているのだなと思いうことになる。




イギリス風景式庭園
イギリス風景式庭園



旧御涼亭(台湾閣)
旧御涼亭(台湾閣)

玉藻池
プラタナス並木のフランス式庭園

2017年10月26日木曜日

「江戸東京の聖地を歩く」 岡本亮輔 2017 ★★


東京生まれの宗教学者による東京論。1979年生まれというから、ほぼ同年代でということになるので楽しみにしてパリ行きの機内で読みきるが、帰りの機内でバックの中に本が無いのに気がつき、おろおろと探してみるが結局見つからず。お気に入りのブックカバーとともに、パリのどこかに忘れてきたのだろうと諦める。  

東京からパリへ、オリンピックと同じように聖地の魂も置いてきたことと自らを納得させることにするが、やはりこういう東京論は「アースダイバー」の様に、建築畑の人間でもヒリヒリするような緊張感を感じる内容を求めてしまうが、この本やどちらかというとより一般向けの東京論というところだろうか。



2017年10月20日金曜日

烏鎮東区(乌镇东栅,Wuzhen Dōngzha,ドンジャー) ★★



西地区を出ると、目の前の駐車場にはひっきりなしに大型の観光バスが到着し、多くの人が吐き出される姿に、現在の中国における観光業のパワーの凄まじさを感じながら、そそくさと東に向かう。

少し歩くと目の前に飛び込んでくるのは、中国で田舎に行けばどこにでも目にするような小さな目抜き通り。小さな食堂が軒を並べ、色とりどりの電飾広告が連なる。道を走るバイクが土ぼこりを巻き上げ、小さな通りなので、信号は無く、車と歩行者が互いを気にしながら行き来する。

歴史地区以外はすべて近代に建てられた建物かというとそうでもなく、街のあちこちに見られる運河の脇には、いかにも古そうな建物が残っており、その住民と思われる人々が、運河脇で洗濯をしたり野菜を洗ったりという風景が普通に見る事が出来る。

歩いて15分ほどで烏鎮東区(乌镇东栅,Wuzhen Dōngzha,ドンジャー) 周辺に到着し、一番の観光スポットということもあり、朝早いというにも関わらず、いかにも地方から来た団体客という集団が大挙して入り口に群がっている。

東地区の方が住民がそのまま残って生活している率が高いようで、西区に比べてよりローカルの生活が感じられるが、あまりに多い観光客と狭い通路でとてもじゃないがゆっくり見て周ることは出来ず、さっさと諦めてエリア外へと退避して、近くにあるかつての質屋だった建物を見て回る。

付き添いの子はさすが歴史地区を運営する会社に勤めているだけあり、建物の歴史や逸話などにやたらと詳しく、いろいろと説明してくれる。質入れする際に、外から顔が見えないようにと内部は一段高くなっており、そこに作業員が座る様になっていたり、物を預かるから、火事と鼠の被害に会わないように火神と号神が祀られている等々、ものすごい早口で説明してくれるのだが、流石に細かいところまでは理解しきれず、イベントに間に合うようにと、西区へと足を向けることにする。









かつての質屋

内部は一段高くなっている