ラベル コンサート の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル コンサート の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2015年12月3日木曜日

コンサート 「Complete Works of Rachmaninoff I: Mariinsky Theatre Orchestra & Valery Gergiev」 NCPA 2015 ★★★★★


ヴァレリー・ゲルギエフ(Valery Gergiev)
----------------------------------------------
Programme  

Symphony No. 1 in D Minor, Op. 13  / Rachmaninoff 
Piano Concerto No. 1 in F-sharp Minor, Op. 1  / Rachmaninoff 
Soloist: Daniel Kharitonov  
——Intermission—— 
Piano Concerto No. 2 in C Minor, Op. 18  / Rachmaninoff 
Soloist: George Li  
Symphonic Dances, Op. 45  / Rachmaninoff  
——Intermission—— 
Rhapsody on a Theme of Paganini, Op. 43  / Rachmaninoff 
Soloist: Daniel Kharitonov  
——Intermission—— 
Soloist: George Li
----------------------------------------------
2015年最後となるコンサート。選んだのはやはりヴァレリー・ゲルギエフ(Valery Gergiev)。しかも今回は自ら率いるマリインスキー劇場管弦楽団(Mariinsky Theatre Orchestra)を従えての登場。

プログラムに選んだのはセルゲイ・ラフマニノフ(Sergei Rachmaninov)。1873年生まれのロシア人作曲家でありピアニスト。高度な技術を必要とする彼の作曲は数あるピアノ協奏曲の中で最難関の一つとも言われているという。

そんなラフマニノフに挑戦するゲスト・ピアニストとしてゲルギエフから声がかかったのは

ダニール・ハリトーノフ(Daniel Kharitonov) 
ジョージ・リー(George Li,黎卓宇,Lí ZhuóYǔ) 

の二人。

ハリトーノフはロシア出身の非常に若いピアニスト。数々のコンクールでの入賞を果たし、ロシア国外でも活躍する有望なピアニストだけあって、1幕と3幕に登場した彼のピアノ裁きは圧巻もの。

そして二人目のジョージ・リー。こちらは中華系アメリカ人で、今もアメリカと拠点として活躍する非常に若いピアニスト。第15回(2015年)のチャイコフスキー国際コンクールでは、二位に入選するなどこちらも今後の活躍が期待されるピアニスト。

今夜に関してはハリトーノフも凄かったが、なんといってもジョージ・リーの演奏が際立っていた印象は否めない。2幕に登場した彼は、小さな身体からは想像もつかないパワフルな演奏で、ラフマニノフに立ち向かい、そのスピードを凌駕していく。なんとも表現しがたいエネルギーが彼の周囲から立ち上り、コンサートホールを満たしていく。そんな錯覚を覚えるほどの演奏。

3幕が終わった後に、一人で舞台に再度現れた彼は、帰ろうとしていた観客の足を止めるのに十分な存在感で演奏を始めると、さらにその場を支配し始める。観客がいるのすら忘れてしまっているのではと思うほどの没頭。そして素晴らしい演奏。

凄い天才が現れたと思わせるのに十分なパフォーマンス。調べてみると、やはり世界中からコンサートの出演以来が殺到しおり、目標としてコンクールも泣く泣く辞退しているようである。久々にCDを探してみたいと思ったピアニストであるが、まだ若いだけにCDが出ていないのが残念。

彼の作品が発売されるまでに、少しでもラフマニノフに慣れしたんでおこうとAmazonでラフマニノフのCDを購入することにする。ショパンにラフマニノフと、素晴らしいピアノ演奏で一年の最後を締めくくることができなんともいいがたい幸福感に包まれて会場を後にする。
ヴァレリー・ゲルギエフ(Valery Gergiev)
セルゲイ・ラフマニノフ(Sergei Rachmaninov)
ダニール・ハリトーノフ(Daniel Kharitonov)
ダニール・ハリトーノフ(Daniel Kharitonov)
George Li(ジョージ・リー,黎卓宇,Lí ZhuóYǔ)
George Li(ジョージ・リー,黎卓宇,Lí ZhuóYǔ)

2015年12月2日水曜日

コンサート 「Chen Sa Piano Recital」 NCPA 2015 ★★

チェン・サ(陈萨,陳薩,Chén Sà)
横の席に座った女性が、何かをしきりに確認しながら演奏に聞き入っているので気になって覗き見をしたら、手元の楽譜を確認しながら、演奏を追っているようである。その一方ステージの上のピアニストは楽譜を見るどころか、楽譜すら持ち込まずに演奏に没頭している。一体どれだけ人生の中で弾いたのだろうと想像をしてしまう。

そのピアニストは中国人のチェン・サ(陈萨,陳薩,Chén Sà)。1979年生まれなのでほぼ同年代のピアニストである。2000年には今日のプログラムでもあるショパン・コンクールにおいてなんと4位入賞を果たし、その後ずっと国際舞台で活躍するピアニストという訳である。

その彼女が今夜のプログラムとして選んだのはショパンのマズルカ(Mazurkas)。1810年生まれのポーランド出身の作曲家であるフレデリック・ショパン(Frédéric Chopin)。その作曲の多くがピアノ独奏曲で占められ、ピアノと言えばショパンという印象の強い作曲家である。

なかでも、ノクターンやワルツなどは日本でも多くのテレビCMに使用され、無意識のうちにそのメロディに慣れ親しんでいるものが多く含まれる。

そしてそのショパンの名を冠したピアノコンクールがショパン国際ピアノコンクール。クラシックの素人の自分でも聞いたことのあるこのコンクールは世界で最も権威のあるピアノコンクールの一つとされ、 5年に一度ポーランドの首都であるワルシャワで開催される。

ベルギーのブリュッセルで開催されるピアニスト、ヴァイオリニスト、声楽家のための国際コンクールであるエリザベート王妃国際音楽コンクール

ロシアの作曲家ピョートル・チャイコフスキーに因んで名付けられ、4年に一度ロシアのモスクワにて開催され、ピアノ、ヴァイオリン、チェロの各部門を審査するチャイコフスキー国際コンクール

この三つのコンクールをまとめて世界三大コンクールと称し、そこでの入賞者はその後輝かしい演奏家としてのキャリアを積み上げていくことになる。

そんなショパン国際ピアノコンクール。第14回 (2000年) 大会においては中国のユンディ・リ(李雲迪,Yundi Li)が一位を獲得し一気に世界的スターに駆け上がったのも記憶に新しく、最新の第17回 (2015年)大会においては隣国韓国のチョ・ソンジン(Cho Seong-Jin)が一位を獲得するなど、アジア勢の活躍も多く見られるコンクールである。

そしてその舞台を経験してきた今夜のピアニスト・チェン・サが、恐らく血の滲むような練習を繰り返して向き合ってきたであろうショパン。数多ある彼のピアノ曲から選んだのは、マズルカ(Mazurkas )と呼ばれる、ポーランドの各地方の民族舞踊に基づき作曲られた作品群。

一曲一曲は非常にテンポ良くサクサクと演奏が続くのだが、とにかく曲数が多い・・・。恐らく中国人ピアニストとしてこのNCPAで演奏をすることに対しての凱旋的な気持ちもあるだろうし、恐らく多くの親戚や関係者も詰め掛けているために、気合の入り方も凄いものだろうと想像する。

が、二度の休憩を挟んで、それでも続くマズルカ・・・。コンサート終了後妻に電話をし、あまりに終わりが見えなかったマズルカの演奏を、「長すぎのマズルカ」とお笑いのハライチの漫才の様なリズムで伝えて家路につくことにする。
----------------------------------------------
プログラム
Mazurkas Chopin
  Op.6 No.2
  Op.30 No.4
  Op.63 No.3
  Op.59 No.2
  Op.24 No.3
  Op.56 No.1
  Op.56 No.2
  Op.56 No.3
  Op.59 No.1
  Op.6 No.5
  Op.24 No.2
  Op.7 No.3
  Op.7 No.2
  Op.24 No.1
  Op.6 No.3
  Op.30 No.2
    Op.33 No.4  
 ——Intermission——  

  Op.41 No.1
  Op.41 No.2
  Op.63 No.1
  Op.41 No.3
  Op.41 No.4
  Op.6 No.1
  Op.50 No.1
  Op.50 No.2
  Op.50 No.3
  Op.6 No.4
  Op.33 No.1
  Op.33 No.2
  Op.30 No.1
  Op.63 No.2
  Op.24 No.4
  Op.7 No.1
  Op.33 No.3  
 ——Intermission——  

  Op.17 No.1
  Op.17 No.2
  Op.67 No.4
  Op.17 No.4
  Op.17 No.3
  Op.7 No.4
  Op.30 No.3
  Op.59 No.3
  Op.68 No.4
----------------------------------------------
フレデリック・ショパン(Frédéric Chopin)

2015年11月12日木曜日

コンサート 「Myung-whun Chung and Staatskapelle Dresden」 NCPA 2015 ★★★

チョン・ミョンフン (Chung Myung-Whun)
----------------------------------------------
Programme

Piano Concerto No.23 in A major , K. 488
    Soloist: Myung-Whun Chung, Klavier

Mozart 

- Intermission - 

Symphony No.4 in G Major
    Ⅰ. Bedachtig. Nicht eilen—Recht gemachlich
    Ⅱ. In gemachlicher Bewegung; ohne Hast
    Ⅲ. Ruhevoll, poco Adagio 
    Ⅳ. Sehr behaglich 
    (Soprano: Hanna-Elisabeth Muller) 

Mahler 
----------------------------------------------
昨年に続きチョン・ミョンフン(Chung Myung-Whun 鄭明勳)の指揮するコンサートということで、これは見逃せないとかなりの高額であったが、思い切って購入したチケット。

ピアニストであり優れた指揮者でもあるチョン・ミョンフンであるが、昨年のコンサートは指揮者としての姿だけを見るに留まったが、今回はピアニストとしても演奏も行うということで非常に楽しみにしていたコンサートである。

チョン音楽一家のファンだと知っている韓国人のスタッフから贈られたCDをいつも移動の際に聴きながら深い眠りに落ちているので、その生の演奏が聴けるのに興奮してコンサートホールへと向かう。

前半は一部のオーケストラを従えてモーツァルトのピアノ。非常にリラックスした様子で登場したミョンフンは、何気ない様子でピアノ椅子に腰をかけ、オーケストラに向かって無造作に手を振り上げる。何とも楽しげに、まるでリビングルームでくつろいでいるかの様子。

そしてふと身体を反転させ、鍵盤に指をそえて開始された演奏は、まさに彼の名声を納得させる流石と思わせるに十分なもの。流れるようにモーツァルトの音色がピアノから飛び出し、ふわりとコンサートホールを漂って様々な座席に届く様子が糸の様に見えるかのような体験。素晴らしい。本当に素晴らしい。

素晴らしいだけに普段の習性も助け、抗う意志にも関わらず、アルファ波に完全に呑み込まれ、これは楽しまなければ・・・という遠い声を感じながらも深い眠りの中に落ちていく・・・そんなまどろみの中で過ごした前半のお陰で後半は意識もスッキリし演奏に集中する。

後半はソプラノにハンナ=エリザベス・ミューラー(Hanna-Elisabeth Müller)を迎えてグスタフ・マーラー(Gustav Mahler)の交響曲。フル・オーケストラとなり、タクトを振るのを楽しんでいるような指揮者としてのミョンフン。その横でじっと前を見据えてピクリとも動かずまるでアスリートの様な雰囲気を醸し出すソプラノ。

カーテンコールで鳴り止まない拍手を浴びてお辞儀をするミョンフンを姿を見ながら、こちらもかなりの満足度に包まれつつ、それでもやはり前半の彼のピアノの演奏が何といっても素晴らしかったなと、今度は自分で久々にCDを購入してみようと思いながら会場を後にする。
ハンナ=エリザベス・ミューラー(Hanna-Elisabeth Müller)
アマデウス・モーツァルト( Amadeus Mozart)
グスタフ・マーラー(Gustav Mahler)

2015年10月7日水曜日

コンサート 「ハンヌ・リントゥ指揮シベリウス生誕150年記念」 すみだトリフォニーホール 2015 ★★★

ハンヌ・リントゥ(Hannu Lintu)
----------------------------------------------
前半
交響曲第3番 ハ長調 Op. 52 (Symphonie Nr 3)
交響曲第4番 イ短調 Op. 63 (Symphonie Nr 4)

後半
交響曲第2番 ニ長調 Op. 43 (Symphonie Nr 2)
----------------------------------------------
音響設計の豊田さんに誘っていただき、すみだトリフォニーホールにて行われるコンサートに妻とそろって足を運ぶ。

今年はフィンランド出身の作曲家であるジャン・シベリウス(Jean Sibelius)の生誕150周年ということで、同じくフィンランド出身の指揮者であるハンヌ・リントゥ(Hannu Lintu)を招待して、シベリウスの作品を演奏するというもの。その初日に当たる今夜はリントゥが新日本フィルハーモニーを指揮するもの。

豊田さんのご友人の音楽通のご夫婦ともご一緒させていただき、「今夜はアルファ波にやられて寝てしまわないように気をつけよう・・・」と意識を集中して聞き入っていると、その名は良く聞いていたが、しっかりと曲を聴いていたなっただけで、「あれ、この曲知ってるな」というメロディが多く演奏され、非常に迫力のある前半。

幕間に豊田さんにつれていただき、ホール内のあちらこちらの席にいき、それぞれの場所での音響の効果とその原因、そして舞台への視線の状況など、設計に関わった、そしてその後も長い年月このホールに関わってきたプロフェッショナルの経験と言葉によって、非常に濃密な知識を教えていただいた。

演奏終了後、「挨拶に行きましょう」という豊田さんに連れられて、バックステージの指揮者の部屋へと伺い、昨日も一緒にお寿司を食べていたというリントゥに早速今日の演奏の感想を伝えている豊田さんの姿に、世界の一線で活躍し続ける理由を垣間見た気がする。

現在手がけているコンサート・ホールの話をし、いつかそこで演奏をしてもらい、それを鑑賞するのを楽しみにしていると挨拶をして、ホールを後にし、5人そろって近くの居酒屋へと場所を移し、これもコンサートに足を運ぶ大きな楽しみの一つである、時間を共有した人との感想の言い合いに花を咲かせながら、おいしいお酒を酌み交わすことにする。
ジャン・シベリウス(Jean Sibelius)

2015年3月7日土曜日

サン・トゥスタシュ教会(Eglise Saint Eustache) 1637


シテ島を後にしてやっとランニングの折り返し。ここまですでに一時間・・・後半はあまり立ち寄り場所がないからとテンポを速めて走り出す。

そこで迷い込んだのは巨大なショッピングセンターであるフォーラム・デ・アール(Forum des Halles)。そのすぐ脇に位置するのがこのサン・トゥスタシュ教会(Eglise Saint Eustache) 。

建設の開始されたのは1532年で、およそ100年かけて1633年に完成されたこの教会はゴシックとルネサンスが入り混じった様式を纏い、パリでも一番壮麗な教会と呼ばれているらしい。

幅44m、高さ39mとあるように、「どっしり」とした印象を抱かせるこの教会。さらに有名なのは内部にあるパイプオルガン。およそ8000本ものパイプを持つオルガンは、ノートルダムの7800本、サン・シュルピス教会の7500本を押さえフランス最大のものであるといい、その音色もまた格別だという。

ぜひいつか、その音を楽しみにここにコンサートを聴きに戻って来ようと思いながら先を進むことにする。








2014年12月7日日曜日

コンサート 「Ivo Pogorelich Piano Recital」 NCPA 2014 ★

イーヴォ・ポゴレリチ  Ivo Pogorelich 

このまま行けば、今年最後のコンサートとなる今夜のピアノ・リサイタル。いつもの様にメンターに薦められるままに購入した今夜のチケット。当日になってやっと予習を始め、どんなピアニストかとプログラムに目を通して夜に備えることにする。

今夜の主役のピアニスト、イーヴォ・ポゴレリチ(Ivo Pogorelich)は、メンター曰く、現在活躍するピアニストの中でもかなり重要な一人であるという。1958年、クロアチアの首都であるベオグラード生まれの56歳。ロシアに渡り、ピアノの師である年上のアリザ・ケゼラーゼと結婚し、更に才能を開花させ、世界的なピアニストとして活躍するという。

なんら予備知識を持たずに臨んだ演奏だが、前半を終えてメンター夫妻をホールで合流し、感想を言うあう時に、「あまりに強弱の差が激しく、鍵盤を強く打ち付けるので、落ち着いて楽しめる演奏というよりも、緊張してビクビクしながら聴く感じだね」と言い合っていたが、なんと後半のストラヴィンスキーの演奏の途中で、ピアノ線が切れてしまったということで、急遽最後のブラームスの前に予備のピアノが舞台下からせり上がってきて設置されるというアクシデントもあり、観客席の空気もどこか「あまりに強く叩くからだよ・・・」という声がどこかから聞こえてきそうな・・・

帰宅後あらためて調べてみると、やはり「弱音指定の箇所を強打するなど型破りなことでも知られる」と書かれており、「なるほど」となぜか納得してしまう。それでも前半のリストとシューマンでは、俗世からクラシックの世界へ身体を馴染ませる為にどうしても必要な移行期間としてアルファ波に包まれてすっかり眠りの中へ。周囲を見てみても、やはり同じように抵抗することも出来ずにいびきをかきながらウツラウツラとしている男性客の姿も。

まずは1886年、ハンガリー生まれの作曲家でありピアニストであるフランツ・リスト(Franz Liszt)の「ダンテを読んで(After a Reading of Dante Fantasia quasi sonata in d minor)」。

続いてドイツ人作曲家のロベルト・シューマン(Robert Schumann)の「幻想曲 ハ長調 Op. 17(Fantasie for Piano in C major, Op. 17)」。この二曲の前半だけで1時間近く演奏しており、途中からアルファ波の呪縛も解け、曲に集中することができる。コンサートの前半で眠りに落ちると、いつも悩まされている偏頭痛もなんだか楽になったような気がし、少しだけ身体が軽くなって後半を迎えることが出来る。


そんな風に向かえた休憩時間。階下のカフェ前でいつもどおりメンター夫妻に合流し、前半の感想をあーだこーだと話し合う。そんなこんなしているうちに「ゴーン」と後半の始まりを知らせる合図が。

後半の一曲目は昨年末に良く聞いたロシアの作曲家イーゴリ・ストラヴィンスキー(Igor Stravinsky)の「ペトルーシュカ(Petrushka for Piano, three movements)」 。ちなみにペトルーシュカ(ピョートルの愛称)とは、ロシア版のピノキオのことだという。

そしてピアノ線が切れ、観客席がざわつく中断の後に演奏されたのが最後の曲は1833年生まれのドイツ人作曲家、ヨハネス・ブラームス(Johannes Brahms)の「パガニーニの主題による変奏曲(Variations on a Theme of Niccolò Paganini in A minor, Op. 35)」。こちらはどこかの広告か何かで聞いたことのあると思える曲で、周囲を見渡してもやっと心地良くリズムに合わせて身体を揺らしている人の姿を視界に捉えることができるほど、有名な曲である。

演奏を終えると、数度のカーテンコールと繰り返すが、今日はピアノ線の切断というアクシデントもあり時間が長引いてしまったせいもあるのかアンコールの演奏は無しのよう。会場をでて時計を見ると既に夜の22時を回っている。

帰り道なので、車で家まで送っていくメンター夫妻と落ち合って、「コンサートというよりはコンテストで必要以上の強弱をつけた脅迫的な演奏が少々痛々しかった」などと勝手な感想を述べながら、来年はどんな演奏に出会い、どれだけ心地良いアルファ波に包まれることができるだろうかと想像を膨らませながら、夜の街へと車を走らせることにする。

----------------------------------------------
Programme  
 After a Reading of Dante Fantasia quasi sonata in d minor Liszt
 Years of Pilgrimage, No. 7 II G 161 2nd Year: Italy 1858 Liszt
 Fantasie for Piano in C major, Op. 17 Schumann
   
 ——Intermission——  
 Petrushka for Piano, three movements Stravinsky
 Variations on a Theme of Niccolò Paganini in A minor, Op. 35 Brahms
----------------------------------------------

フランツ・リスト Franz Liszt
ロベルト・シューマン Robert Schumann
イーゴリ・ストラヴィンスキー Igor Stravinsky
ヨハネス・ブラームス  Johannes Brahms


2014年5月30日金曜日

コンサート 「チョン・ミョンフン (Chung Myung-Whun) Conducts Verdi Requiem」 NCPA 2014 ★★★


チョン・ミョンフン (Chung Myung-Whun)
----------------------------------------------
Programme
Messa da Requiem Verdi
  I. Requiem & Kyrie Requiem aeternam  
  II. Sequence (Dies irae) Dies irae  
  III. Offertorio Domine Jesu Christe  
  IV. Sanctus  
  V. Agnus Dei  
  VI. Lux aeterna  
  VII. Libera me Libera me-Dies irae  
   Vocalists: Sun Xiuwei, Yang Guang, Li Xiaoliang, Xu Chang
----------------------------------------------
春のヴェルディ祭りの最後を飾るのは、韓国人指揮者・チョン・ミョンフン(Chung Myung-Whun 鄭明勳)によるヴェルディの「レクイエム」。

この「レクイエム」。日本では「新世紀エヴァンゲリオン」の曲と言った方が分かりやすいかもしれないが、あの大合唱による大迫力の曲である。

その為にいつものコンサートとは違い、後部座席が観客に解放されておらず、男女の多くのコーラスのメンバーが陣取っている。そしてオーケストラの一番前には、ソプラノ、メゾ・ソプラノ、テノール、バリトンを担当する中国人の声楽陣。それぞれなかなか個性的な容貌である。特にソプラノは妖怪人間のベラにしか見えない・・・

そして指揮者のチョン・ミョンフン(Chung Myung-Whun 鄭明勳)。韓国人で音楽一家で苗字がチョン。どこかで聞いたことが・・・と思って後日オフィスでそんな話をしていると、韓国人スタッフが、「ああ、その指揮者。Yosukeが好きだって言っていたバイオリニストと兄弟だよ」と。

なるほど。以前見に行ったチョン・キョンファ(Kyung Wha Chung 鄭京和)のお兄さんということらしい。こうして徐々に点が線になって繋がって、音楽体験が面へと広がっていくのだろうとなんだか楽しくなる。

そして今日の主役のヴェルディの「レクイエム(原題:Messa da Requiem)」。カトリックのミサ曲でもあるといい、イタリアの文豪アレッサンドロ・マンゾーニを追悼する目的で作曲されたという。モーツァルト、フォーレの作品とともに「三大レクイエム」の一つに数えれ、その中でも「最も華麗なレクイエム」と評される作品だという。

楽章構成は以下の通り

第1曲: Requiem e Kyrie(レクイエムとキリエ)
第2曲: Dies irae(怒りの日)
第3曲: Offertorio(奉納唱)
第4曲: Sanctus(聖なるかな)
第5曲: Agnus Dei(神の小羊)
第6曲: Lux aeterna(永遠の光)
第7曲: Libera me(私を解き放ってください)

百人近くいるのではと思われるコーラスの大合唱はまさに大迫力。あまり観客が居なかったために中央のいい席へと移動させてくれたため、その音量を真正面から体感することになる。

音楽が身体体験だと理解できる魂に響いてくるコンサート。少しだけヴェルディを理解できた春になったかと高揚感を感じながら家路に付くことにする。


ヴェルディ


2014年3月1日土曜日

コンサート 「Daniel Harding & Yuja Wang and London Symphony Orchestra Concert」 NCPA 2013 ★★★★

今夜のコンサートはいつもと少し違う。というのはいつもの様にメンターのお勧めでチケットを購入したわけでなく、オフィスのスタッフであるイタリア人の勧めで調べたコンサート。

自分がちょくちょくオペラハウスに足を運び、音楽を聴きに行っているのを知っている彼が突然デスクにやってきて、「今度くる中国人のピアニストは、今まで自分が聞いたラフマニノフの演奏で一番良かった」と教えてくれる。「かなりチケットは高いけどもし都合が合えばぜひ見に行ってみては?」と勧めてくれる。

父親が大学教授で、妹が音楽をやっているという相当に文化レベルの高そうな家庭で育ったイタリア北部出身の彼。そんな風に勧められると、この気持ちを無駄にすることはなかなかできない。そして調べるとなるほど680元のチケットしか残っていない。日本円で1万円を超えてくる・・・。妻にも聞くと興味があるというのでそうなると二人で2万円超えかと暫く悩むが、この機会を逃したら一生効くことなく終わるだろうと、「これも出会いだ」と決心しチケット購入。

そんなきっかけで行くことになったコンサート。こんな風に自分が何を好きか知っている人が周りにいて、しかもそれを共有でき、なおかつ自分の素晴らしいと思うものを進めてくれる。極めて個人的体験である音楽を薦めて貰える、そんな贅沢なことは無いかと思う。そして非常にありがたい。いつか自分も「あのピアニストは素晴らしいからぜひ足を運んだほうがいい」と言える様なレベルまで早く達したいものである。

そんな訳で今回のコンサートは「女王陛下のオーケストラ」と呼ばれ、エリザベス2世が名誉総裁(パトロン)に就いているというロンドン交響楽団( London Symphony Orchestra)。かつて住んでいたロンドンを拠点にするオーケストラだが、当時には音楽を聴きに出かける習慣が無かったことが悔やまれる。今ではあの、「バービカンセンター」を拠点にしているという。

そんなオーケストラを率いる指揮者は、若いイケメンのイギリス人、ダニエル・ハーディング(Daniel Harding)。1975年生まれと言うことだから、40歳手前という若さ。ネットで調べると、2012年4月から、軽井沢大賀ホール初代芸術監督の就任となっている。これは軽井沢に足を運ぶ良い言い訳が一つ増えたことになる。

そして今回のゲストは北京出身のこれまた若手ピアニスト、ユジャ・ワン(Yuja Wang、王羽佳)。イタリア人のスタッフが言っていたのは、この女性ピアニストの演奏が素晴らしいということ。相当なエリート音楽家庭で育ち、若い頃からカナダに渡り、今はNYを拠点に世界中で活躍しているようであるが、そんな彼女の凱旋公演となる訳である。

ネットでも色々紹介されているように、その若さが溢れんばかりにかなりのボディコンというか、ミニスカートで登場することでも知られているらしい。もちろん今回も真っ赤なタイトなドレスで登場してきた。そしてもう一つ特徴的なのが、演奏後の挨拶で胸に手を当て会場を見渡し足を交差させて、一気に頭を深く下げるお辞儀の仕方。頭が「ガクン」と音を立てるくらいの勢いである。横を見ると、やはり妻も「・・・」という表情でこちらを見ている。

そしてプログラムはゲストのユジャ・ワンを迎えた前半に、まずはロシアの作曲家であるセルゲイ・ラフマニノフ(Sergei Rachmaninov)作の「ピアノ協奏曲第3番ニ短調作品30(Piano Concerto No. 3)(1909年)」。ピアニストであったラフマニノフ作ということもあり、相当に高度な演奏技術を要求されるピアノ協奏曲だという。技術的・音楽的要求に於いてピアノ協奏曲の中で最難関の一つとも言われており、若いピアニストが挑戦するにはもってこいの曲である。

そんな高度で高速な演奏を要求するだけあり、演奏の途中でユジャ・ワンの指がまるで何本にも増えたような錯覚を覚える場面が何度かあった。それくらいやはり凄い迫力の演奏である。

そして次は同じくロシア出身のイーゴリ・ストラヴィンスキー(Igor Stravinsky)作曲の
「ペトルーシュカ』 (Petrushka)」。ストラヴィンスキーの三大バレエ音楽の一つの作品である。

内容はロシア版のピノキオで、正真正銘の人間ではないにもかかわらず真の情熱を感じ、そのために人間に憧れている感情を表現する。ペトルーシュカは時おり引き攣ったようにぎこちなく動き、人形の体の中に閉じ込められた苦しみの感情を伝える曲だという。これにはオリジナルの1911年版と改訂された1947年版があり、今回はその1947年版。

ゲストが退場し、幕間を挟んだ後半はまたまたロシア出身のセルゲイ・プロコフィエフ(Sergei Prokofiev)作曲による、「ピアノ協奏曲第2番(Piano Concerto No. 2)」。

そして最後はオーストリア出身でウィーンで活躍したグスタフ・マーラー(Gustav Mahler)作曲の「交響曲第1番(Symphony No. 1)」。マーラーの交響曲のなかでは、演奏時間が比較的短いこと、声楽を伴わないこと、曲想が若々しく親しみやすいことなどから、演奏機会や録音がもっとも多いという。

そして何より驚いたのが、アンコールに演奏されたのがまた「スターウォーズ」のテーマ曲。「先週と一緒じゃないか・・・」と思いながらもオーケストラの面々は、「それ、盛り上がるだろ?」とかなりのドヤ顔。

「先週のオーケストラもやってましたよ・・・って」誰かオペラハウスの関係者が教えてあげればいいのに、と思うが、そもそもこの様なアンコールに何を演奏するかは、オーケストラ側からハコ側には伝えないのだろうから、そりゃ分かりっこないかと納得する。しかしこれはかなり珍しいことなのか、それともクラシック業界でスターウォーズが流行ってるのか?

ロシアにスターウォーズ。コンサートの中に散りばめられたキーワードたち。これはなにやら意味深なことだと思いながら素晴らしいコンサートを後にする。

ダニエル・ハーディング(Daniel Harding)
ユジャ・ワン(Yuja Wang、王羽佳)
セルゲイ・ラフマニノフ(Sergei Rachmaninov)

イーゴリ・ストラヴィンスキー(Igor Stravinsky)
セルゲイ・プロコフィエフ(Sergei Prokofiev)
グスタフ・マーラー(Gustav Mahler)



2014年2月23日日曜日

コンサート 「Gürzenich Orchestra Cologne Concert」 NCPA 2013 ★★

久しぶりのコンサート。妻と一緒に早めの夕食を済ませ、スクーターでオペラハウスへ。いつも通りメンター夫妻と合流し、互いの席を確認する。

今回のオーケストラはドイツのケルンを拠点とするギュルツェニヒ管弦楽団(Gürzenich Orchestra Köln)。そしてそれを率いるのは指揮者のマークス・ステンツ (Markus Stenz)。

そして今回のゲストは、ドイツのクラリネット奏者であるザビーネ・マイヤー(Sabine Meyer)。1959年生まれというから現在55歳。とてもそうは見えない若々しさ。音楽家には我々と違った時間が流れているのだろうと想像する。

プログラムはザビーネ・マイヤーをゲストとして招いた前半にアマデウス・モーツァルト( Amadeus Mozart)作曲の『クラリネット協奏曲イ長調K.622』(Clarinet Concerto in A major, K. 622)。

Clarinet Concerto in A major, K. 622 Wolfgang Amadeus Mozart
  1. Allegro  
  2. Adagio  
  3. Rondo: Allegro  
   Clarinet: Sabine Mayer  

1791年に作曲されたクラリネットと管弦楽のための協奏曲であり、モーツァルトの中でもかなりの人気曲ということである。ちなみにモーツァルトが作曲した唯一のクラリネットの為の協奏曲ということで、ゲストのクラリネット奏者に合わせての選曲ということだろう。

幕間を入れて後半は、リヒャルト・シュトラウス(Richard Strauss)作曲の『アルプス交響曲』(An Alpine Symphony)。モーツァルトを崇敬していたというシュトラウスなので、モーツァルトからシュトラウスという音楽的繋がりも楽しめる構成になっている。

An Alpine Symphony(アルプス交響曲), Op. 64 
  1.  Nacht (Night)  
  2.  Sonnenaufgang (Sunrise)  
  3.  Der Anstieg (The Ascent)  
  4.  Eintritt in den Wald (Entry into the Wood)  
  5.  Wanderung neben dem Bache (Wandering by the Stream)  
  6.  Am Wasserfall (At the Waterfall)  
  7.  Erscheinung (Apparition)  
  8.  Auf blumigen Wiesen (On Flowering Meadows)  
  9.  Auf der Alm (On the Alpine Pasture)  
  10. Durch Dickicht und Gestrupp auf Irrwegen  
        (Straying through Thicket and Undergrowth)  
  11. Auf dem Gletscher (On the Glacier)  
  12. Gefahrvolle Augenblicke (Dangerous Moments)  
  13. Auf dem Gipfel (On the Summit)  
  14. Vision (Vision)  
  15. Nebel steigen auf (Mists rise)  
  16. Die Sonne verdustert sich allmahlich  
        (The Sun gradually darkens)  
  17. Elegie(Elegy)  
  18. Stille vor der Sturm (Calm before the Storm)  
  19. Gewitter und Sturm, Abstieg  
        (Thunder and Storm, Descent)  
  20. Sonnenuntergang (Sunset)  
  21. Ausklang (Final Sounds)  
  22. Nacht (Night)

いつもの通り演奏開始と共にどっぷりとアルファ波に引き込まれ、横から冷たい視線を投げてくる妻の視線を感じながらも睡魔と柔らかなる格闘をしながら演奏に身を任せる。二階のサイド席なので、オーケストラを上から見下ろす形になり、チェロ奏者の中になんだか日本人っぽい男性がいるのを見つける。

後々調べると、中国人のチェリストだということが分かる。その演奏している姿を見ながら、恐らく小さい頃から国ではもの凄い才能を認められ、音楽の本場のヨーロッパに渡り、そこでも認められながら、どこかで自らの居場所を探していったのだろうと想像する。恐らく国に帰るか、それともそこで生活を続けるのか、様々な葛藤を抱えながらも今を過ごしているのだろうと勝手な想像が現実と眠りの狭間で持ち上がってくる。

演奏終了後のカーテンコールがとにかく長いのにやや疲れ気味になりながら、やっと始まったアンコールは「スターウォーズ」のテーマ曲。これには観客も大盛り上がり。やはり耳慣れた音楽を大迫力のオーケストラで演奏してもらえると、オーケストラの音の奥行がよく伝わってきて楽しめる。それにしてももう少しカーテンコールをギュッと圧縮してもらえればコンサートの余韻を楽しめるその後の夜の時間が持てるのにな・・・と思わずにいられない。

もしくはオペラハウス内か、もしくは付近に夜遅くまで営業するバーなどを併設すべきだろう。早く寝ないといけない子供はともかく、コンサートで高揚した気持ちを落ち着けるまもなく、とにかく皆出口に向かいすぐに家路につくのも、なんだか味気ない。せめて一杯引っ掛けて、「あれは良かった、これはどうだ」なんていってから帰りたいものである。

そんな訳で、メンター夫妻と相談し、市内中心の胡同エリアにできた美味しいビールを出すバーに行って軽く飲んで帰ることにする。彼らは地下鉄と乗り換えて、我々はスクーターで先乗りして喉を潤す事にする。



マークス・ステンツ (Markus Stenz)
ザビーネ・マイヤー(Sabine Meyer)
アマデウス・モーツァルト( Amadeus Mozart)
リヒャルト・シュトラウス(Richard Strauss)


2013年12月14日土曜日

コンサート 「Hüseyin Sermet Piano Recital Piano Virtuosos」 NCPA 2013 ★★★★

----------------------------------------------
Programme

Papillons, Op. 2 Schumann
Scottish Fantasy in F sharp minor Op. 28   Mendelssohn
   
 ——Intermission——  
Pictures at an Exhibition   Mussorgsky
----------------------------------------------
今年最後のNCPA。

そして何度も足を運んだ中で今年一番だったと思えるコンサートで最後を飾れたのはとても幸福だと思う。

今日はコンサート・ホールにてピアノ・ソロ。なので調べる情報も比較的シンプル。まずは何と言っても、主役であるピアニスト。フセイン・セルメット(Hüseyin Sermet、1955年-)というトルコ人のピアニスト。随分前にメンターが、「NCPAのカレンダーの名前表記が間違っていたから気がつかなかったが、彼は凄いピアニストだからぜひチケットを買ったほうがいい」と強く勧めてくれたピアニストである。

イスタンブール出身というセルメット。日本でも何度も演奏を行っているようで、人気も高いようであるが、とにかくトルコを代表するピアニストの一人だという。

前半一曲目は「Papillons, Op. 2 / Schumann」

シューマンと聞けば有名作曲家の一人だとは知っているがそれ以上は・・・となるとあまりにもあやふやな状態なので調べてみる。ロベルト・シューマン(Robert Schumann, 1810年 - 1856年)はドイツの作曲家で、ピアノ曲の作曲家として世に出たという。その作品番号の1から23番まではすべてピアノ曲。顔を見る限りかなりのイケメンだったようである。

そして今日演奏されるのは、そのシューマンの作曲した「蝶々(Papillons)」。「Op. 2」が何を意味するか良く分からないので放っておくことにする。「蝶々(Papillons)」はシューマンの作曲したピアノ曲で、全12曲からなるという。「曲の中にさらに12曲??」と思ってしまうが、「12曲が合わさって一つの全体を作っている」ということだろうと理解する。


前半二曲目は「Scottish Fantasy in F sharp minor Op. 28   Mendelssohn」

シューマン同様、メンデルスゾーン(Mendelssohn)についても詳しいことは知らない。調べてみるとフェリックス・メンデルスゾーン(Felix Mendelssohn 1809年 - 1847年)、ほとんどシューマンと活動時期が被っている。しかも同じドイツに生まれたユダヤ人作曲家。恐らくライバル関係にあったか、良き親友だったに違いないと想像する。写真を見る限り、シューマンとは打って変わってなんとも優しい顔をしている。

そして演奏されるのは「Scottish Fantasy in F sharp minor Op. 28」とプログラムには書いてあるのだが、これがうまく見つからない。恐らく表記ミスではないかと思う。調べるとメンデルゾーンでは「Fantasy for piano in F sharp minor, Op. 28」というのはあるようだが、それがスコットランド幻想曲(Schottische Fantasie)として呼ばれているのか?それとも、スコットランド幻想曲(Schottische Fantasie)はマックス・ブルッフの作品で、表記の間違いであるだけなのか、こういうのがクラシックを聞くのを億劫にする要因であるのだな・・・と思いながらとにかく先に進む。


そして幕間を挟んでなんといっても今日のメインは後半。「Pictures at an Exhibition   Mussorgsky」

モデスト・ムソルグスキー( Modest Mussorgsky, 1839年 - 1881年)の名は恥ずかしながら今日の今日まで聞いたことが無く、上記の二人に比べてもマイナーなのでは?と思わずにいられないが調べてみるとそうでもないらしい。

ロシアの作曲家であるムソルグスキーはシューマンやメンデルゾーンに遅れること30年。1世代下の作曲家となる。「ロシア五人組」の一人というらしいが、それもまったく知らない。ロシアへの距離の遠さを改めて感じつつ、コンペもやっていることだし、この機会にロシア文化を少し調べないとと心に決める。

そして演奏されるのは代表作であるピアノ組曲「展覧会の絵(Pictures at an Exhibition)」

「タン・タン・タン・タララン・タララン・タ・タン・タン・タン」

何とも心地よいメロディ。どこかで聴いたことがあると思うその調べはやはりコカ・コーラの『紅茶花伝』やキャノンの『IXY600F』など、日本のCMでも多く使われて日本人なら一度は耳にしたことがあるのではないかと思う一曲。これほどメジャーな曲なのに、なぜ今まで作曲家の名前に出くわさなかったのだろうと頭を抱えて写真を見てみると、流石はロシア。凶暴な熊のような風貌で、そのどこにこんな繊細な音楽を生み出す感性があったのだろうと思わずにいられない。

この「展覧会の絵」。特徴的なそのタイトルの通り、ムソルグスキーが友達の画家であるハルトマンの展覧会に足を運び、10枚の絵を歩きながら見て回った時の印象を音楽にしたというピアノ組曲。オープニングで流れる、一番耳に残っている部分でもある「プロムナード(Promenade)」は絵の間を歩いている様子を描写しているらしく、10枚の絵の間を歩くように、曲中に何度も何度も表れて句読点の様に作用する。


以上が本日の基本知識。という訳で何ヶ月振りにオフィスに足を運ばない日曜を過ごし、少し早めの夕食を済ませて妻を後ろに乗せて電動スクーターで中心道路を走っていると、全ての交差点に赤い棒を持った警察が立っている。中心に近づけば近づくほどその数は増えて、ついに停められてしまう。なんでも「車道は走るな。歩道を走れ」と。恐らく超VIPの人物が訪中しており、中心部で会議などをしている為に警戒を高め、少しでもテロなどの恐れがありそうだと思うものは取り締まっているのだろうと想像する。

しょうがないので少し歩道を走って次の交差点に到着するとまた停められて、今度は「スクーターは二人乗りは禁止されているから、下りなさい」と・・・。「はぁ・・・」と思い、妻を降ろし、スクーターを引きながら少々歩く。恐らく重要施設が面する中心道路は、とにかく今日は規制を厳しくしていて、天安門前を通ることは叶わないだろうと判断し、かなり遠回りになるが、天安門を迂回して裏の下町を抜けていく事にする。

暗闇の中に潜む数々の警察官の姿。その行動原理が自分達の常識とは違っていると理解すると、街中に張り巡らされた緊張感が直接身体に伝わってくるようで、風景も違って見えてしまう。なんとか迂回し、無事にオペラハウスに到着したのは予定よりも20分ほど遅れた開演20分前。

いつもの様にメンターご夫妻と合流し、中に入ってみると偶然にも別々に購入したチケットにも関わらず、たまたま隣の席に。「こんな偶然あるんですね」なんていいあっていると徐々に照明が落とされ会場のザワツキが少しずつ小さくなっていく。

日常からコンサートの空間へ変わるこの瞬間。人々がまだお喋りや携帯などをいじっている普段の振る舞いから、コンサートを楽しむ静かな観客へと会場全体が空気を変えていくこの瞬間はなんとも言えない時間である。徐々に緊張感と期待感が会場を包んでいく。それに応えるかのように音楽家が登場する。「さて、今日はどんな音に出遭えるのか?」と。

前半。いつもの様にアルファ波に包まれて半分眠りの中でもなんとか意識の中で音を捉えていたらいつの間にか終わってしまいやってきた幕間。メンターの大好物のジェラートを食べながら後半に備えながら、「寝てたでしょ?」と妻に突っ込まれる。

そして眠気も吹っ飛び、集中して聴けたからではないだろうが、とにかく素晴らしかった後半。ピアニストの鍵盤の下に手を隠すような仕草や、激しく上まで糸を引くように手を持ち上げる様子。空間の中で徐々に小さくなるが、確実に「音」が漂っているのを観客に確認させるようなものすごい「間」。

その自ら創り出した緊張感を会場全体と共有させる。通常数百人の観客がいるのだから、誰かがどこかで咳き込んだり、ガサガサと動いたりとするのが当たり前のコンサート・ホール。そんな中で確実に数十秒間ほどの時間、会場から全てのノイズが消える瞬間が何度も訪れた。錯覚なのかもしれないし、自分が集中していてノイズを聴こえないように脳が働いていたのかも知れないが、全てのノイズが聴こえなくなる。もしくは会場の誰もが緊張感の為に身動きが取れないのか、いずれにせよ凄い瞬間を何度も体験する事ができた。

ビリビリとした会場の緊張感が感じられる、素晴らしい演奏。その度に違った風景が頭の中に見えてくる。「アバター」と「チャーリーとチョコレート工場」、「ビッグフィッシュ」を足したようなオドロオドロシイ風景。巨大な植物が色とりどりに咲き誇るようなジャングルの中を歩いていて、それでいて心地よいファンタジーの世界。

そんな世界を見せられて後にふと訪れる「プロムナード(Promenade)」。まるで現実に引き戻すかのような作用を感じながら次の曲。次の絵に意識を向ける。とにかく素晴らしい演奏。アンコールで披露したのは声が聞き取れなかったので何の曲か分からなかったが、「小さいころに良く演奏した曲」らしく、短いがとても印象的な曲であった。

とても幸せな気分になり、「タン・タン・タン・タララン・タララン・タ・タン・タン・タン」と口ずさんで会場を出ようとすると、横で妻がまたまた悪意のある笑顔で笑っている。「外れてた?」と聴くと、「別に別に」と・・・

厳しい取締りの為に余計な遠回りを強いられた為に、家まで残り3km程のところで残念ながら電池切れ。妻はタクシーに乗って先に帰り、自分はキックボードの様に地面を蹴りながら最後のともし火で動くスクーターを押しながら家に帰って早速インターネットで「展覧会の絵(Pictures at an Exhibition)」を検索。

便利な世の中になったものだと思うが、権利の問題などもクリアしてフリーでダウンロードできるサイトが幾つかあるようで、さっそくパソコンに取り込んで「タン・タン・タン・タララン・タララン・タ・タン・タン・タン」と足湯をしながら口ずさむことにする。



シューマン

メンデルゾーン

ムソルグスキー