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2020年5月17日日曜日

「くっすん大黒」 町田康 1997 ★★★


町田康と辻仁成。どうもこの二人のイメージがいつまでたってもごっちゃになってしまう。

バンドをやっていることや、作家として活動していること、そして同じ年に 芥川賞の候補に挙がり、受賞時期は違えど二人とも芥川賞作家となったことも。これだけ揃えばごっちゃになるのもしょうがないと諦め、楽しみながら読めそうだと手に取った町田康のデビュー作。読み始めると、ダメ男だけども、どこか人の好さと正直さで、なんとも憎めないアラサー男の周囲で起こるドタバタ劇が何とも愛嬌があって、楽しみながらページを捲る。

「くっすん大黒」では、突然毎日ダラダラして生活したいなと思い仕事を辞めてしまい、言葉通り毎日酒を飲んではダラダラと生活する男が、安物の大黒様の人形が気に食わず、捨てようと思うが、捨て場所やそのシチュエーションに拘りながら、街をさまよう。

「河原のアパラ」ではレジに並ぶ時はフォーク並びをするべきと拘りの強めの男が、癖の強い女性と一緒に働くうどん屋で問題が発生し、転がり混んだ居候先で紹介される遺骨搬送の仕事を一緒に手伝うことになる。

共通してるのは、アラサーと思われる少々拘りの強い男が、少し年下であるが、ちょっと抜けていながら一緒に何かを共有して楽しめる連れがいること。

「くっすん大黒」 の菊池と夜の浜辺ではしゃいでいる様子は、なんだか時間を持て余した大学生感満載で、なんとも微笑ましい。

「河原のアパラ」の淀川とすったもんだの末にたどり着く歓楽街を経て、河原に座ってボッーとしている姿などは、楽しいことも無茶も一緒に共有してくれる連れが何人かいれば、人生はそれほど思い悩むことなく進めるものなんだと、そんな気分にしてくれる若々しい一冊であろう。

2013年7月15日月曜日

「弁護士探偵物語 天使の分け前」 法坂一広 2013 ★



このミステリーがすごい大賞受賞作というので購入したまま本棚でほっといていたと思われる一冊。

これもネットの普及による現象の一つかと思うが、最近どうも本職の物書きでなく、現役で他の専門職についている人が、その分野を舞台として描く小説が増えている。

まれに天から二分を与えられ、物書きとしても才能を発揮する作者もいるだろうが、どうも職能としての作家でない人が小説を書く時に陥る事態が目に余る。

素人である作家が取材を重ねて、その分野に深く踏み込んで行き紡いだ物語は、同じく素人である大部分の読者には専門世界の内部を案内する役割を持つ。しかし、もともとその世界のプロフェッショナルである人物が作家の役割を果たすと、どうしても説明的な文章が多くなり、物語を良くするためと言うよりも、こういう専門家しか知り得ない日常が、一般の読者の興味を引くだろうという思い込みの反映する文体として現れる。

物語にリアリティを与えるだろうという期待は、それを読まされる読者にとってはあなたがこの方面に対しての知識があるのは十分に理解できるが物語必要か?と思いながらページをめくる苦痛となる。

つまらない本は読むのに時間がかかる
それは建築の本も一緒
 
とりあえず渋さの代名詞かのように使われるジャズとウイスキー。村上春樹を読んで育った世代にとっては、これを如何に超えていくかが課題ということか。

ちりばめられる余計なウィットらしきもの。その台詞のせいで、話が物切れになり、会話を追っていくのにとても疲れる。海外のハードボイルド小説で英語のままなら成り立つ世界観を、日本語でダイレクトにやろうとしてもなかなかうまくいかないというのは同じく村上春樹を呼んできた世代は既に経験済みだろう。

ただし、物語に深みを与えるというよりも、そのようなウィットの応酬をやりたいが為に増やされるページ数。エコを叫ばれる昨今にこれほどの無駄を強要されるのもまた許容しがたい。

折りしも振り出した嵐のような雨。そのお陰で出発が3時間も遅れた飛行機の中。現代を一番物語る身体を拘束された密室空間にて、一度開いたからという理由で最後までとなんとか読みきった一冊。



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第10回(2011年) 『このミステリーがすごい!』大賞受賞
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2009年8月5日水曜日

「龍の契り」 服部真澄 2001 ★★★★

香港がイギリスから中国へ返還される1997年前夜。世界の一大経済拠点として西洋と東洋の中継地として成長した香港をみすみす中国に渡すのを快く思わなかった英国の中で、「香港を中国に返還しなくて良い」という密約が交わされていたとする秘密文書が見つかったとしたら?

そんな時代の雰囲気を呼んだ国際エンターテイメント小説。著者はこれがデビュー作という服部真澄。それにも関わらず第114回の直木賞候補までなったというからその後の活躍が納得というもの。

時代を遡ると中国からイギリスに香港が譲渡されたのが1842年。戦後の中国の発展により当時の書記長である鄧小平とイギリスのサッチャー首相との交渉により、段階的に香港を中国に返還していくことが決められ、その期日として定められたのが1997年7月1日。

香港におけるイギリス統治の象徴的な存在でもある上海香港銀行(HSBC)。

アメリカ・ハリウッド
イギリス・ロンドン
香港
アメリカ・ワシントン
中国・北京

スポーツヴィジョンという動きの中でも情報を的確に捉える視覚機能の訓練や、速読によって情報を切捨てす術を得た日本の外交官沢木喬が何十にも重なる陰謀と策略の網の中を掻い潜っていく。

その姿を見ると、やはりこれだけ世界が小さくなった現代において、能力のある人間はどんどん世界を駆けめぐりながら日常を過ごしていくのだろうと思いながらページを閉じる。
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東洋の富の一大拠点・香港。その返還を前に、永い眠りから覚醒するかのように突如浮上した、返還に関する謎の密約。いつ、誰が締結し、誰を利するものなのか―。全焼したロンドンのスタジオから忽然と消えた機密文書をめぐる英・中・米・日の熾烈な争奪戦が、世紀末の北京でついにクライマックスを迎えるとき、いにしえの密約文書は果たして誰の手に落ち、何を開示するのか。
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