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2013年8月31日土曜日

「利休 [RIKYU]」 勅使河原宏 1989 ★★★★

随分前にその脚本は読んでいたのでいつかは見ないとと思っていたこの映画。野上彌生子の原作に監督は勅使河原宏。そして脚本は赤瀬川原平となんとも豪華な顔ぶれ。

「詫び・寂び」という概念は、どんなに長く海外に住んでいても、同じ文化体験を経ていない人間に伝えるのはとても難しい。自分の語学能力の低さのせいもあるが、ほぼ無理なのではと思い始めている。

そういう時にこのような映像というメディアがあるのは非常に助かる。どんなアブストラクトな言葉よりも、暗い茶室の中で一輪の花を生け、一杯の茶碗を中心にして向き合う茶の湯。見えないものを見えるものにする茶の湯の世界。それを視覚体験でも見てもらう事はとても意味がある。

そういう意図ではないのだろうが、あくまでも最初から外に向けて深い日本の文化を伝えるようなつくりになっている。そして画面を彩るのは押しも推される名優ばかり。

その中でも千利休の三國連太郎と豊臣秀吉の山崎努。以後どんな本を読んでも恐らく自分の頭の中にはこの二人に姿が思い浮かんでしまうと思えるほどの名演。両者共に、静と動、巣晴らしい対比を見せる迫力の演技。
  
この映画の素晴らしいところは、長い一人の一生を描くのに1時間半や2時間という映画というメディアの持つ宿命として時間の束縛を受けるのだが、監督が勇気を持って十分な「間」を持たせているところ。恐らく利休という人は、本当にこういう自分の時間の流れ、ゆったりとした動作で生きた人なんだろうと思えてきてしまう。

前編にわたる緊張感。いつの世も文化と権力の距離感は難しく、信念を曲げない文化人の生き方と、文化を庇護する為に権力との距離感を保つそのバランス感覚。

ほんの少しのボタンの掛け違いから、どちらも引くことができない場所まで行ききってしまう。利休と秀吉。どちらも天下を取った人間同士。引くよりは、信念に沿って綺麗に散る。それだからこそ、人の一生と言う時間の枠を声、現代まで何百年も美しき所作として残るものを作り上げる事が出来た。

目の前の事。一生の事。そんな個人の時間スパンに縛られてしまう現代。その中でも、何かの道の上を歩き、この世に何かを残そうとする人間はどれだけ遠くを見て時間を過ごせるかと問われているような気分になれる名作。


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スタッフ
監督 勅使河原宏
脚本 赤瀬川原平・勅使河原宏
原作 野上彌生子
製作総指揮 奥山融
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キャスト
三國連太郎 千利休
山崎努   豊臣秀吉
三田佳子  りき
松本幸四郎(9代目) 織田信長
中村吉右衛門(2代目) 徳川家康
田村亮  大納言秀長
岸田今日子  北政所
井川比佐志  山上宗二
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作品データ
製作年 1989年
製作国 日本
上映時間 135分
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2013年7月22日月曜日

「銀色の髪のアギト」杉山慶一 2005 ★

ここ10年くらいのジャパニメーションをざーっと見ることにしている今年だが、その中でどうしてもリストの中に入ってくるようであるこの一作。なんとも深い意味が込められているのかと期待してしまうそのタイトルに重い腰を上げて見始める。

なんでも、300年後の未来の世界は人間の遺伝子操作の失敗によって自然が意思を持ち、人と都市を襲うようになってしまったという設定で、その中でも森と対峙することなく友好的に暮らしているある都市が舞台。

そんなある日、森の中でかつての自然と人類が対立する前の時代に生きた人間が、未来に向けて送り込む希望として冷凍睡眠状態で保存されていた美少女が目を覚まし、そこから自然をコントロールしようとする人間のエゴと、自然と共存しようとする人々との争いがテーマとして描かれていく。

が、様々なところで書かれているように全編を通してどうも既視感が拭えない。科学技術によって自然を支配しようとする人間のエゴと、その反作用としての森の反抗。時間を越えて蘇る高度な技術を持った古代の文明。自然とどうかしてパワーアップし髪の毛の色を変えて飛び回る主人公。

アニメの世界にまったく新しい世界観を生み出した宮崎駿。その影響を受けて思春期を過ごし、アニメの世界に入ってきたであろう製作者達。しかし、宮崎アニメがかつて見せてくれたように、実写でなくてアニメだからこそ描けるファンタジーの世界の魅力である、「誰も見たことのない世界」というのが、とてつもない創造力が下敷きになっていたということを返って浮き彫りにしている。

建築の世界でもそうであるが、まったく新しいことを始めるのは確かに難しい。新しいことがいいのかどうか、それは別にして、誰も見たことのない新鮮な価値観を想像することは、まさに天才のひらめきが必要であろう。

それでも想像された新しい価値観の上の延長線上でも、何かを更新していくこと。やり続けることのその先にきっと何か新しいことがあるのだろうと信じていること。外から見れば、小手先のパクリや、真似事の様に見られても、自分の中で新しい何かを見ていればそれはそれでいいのだと思う。

が、その何かがこの物語の中に、この映像の中にあるのかと問われれば言葉に窮する。同じように建築を設計しても、一度完成すれば必ず社会性を持ってしまう建築物だけに、背間は好き勝手にものを言い始める。その時に同じように自分達の中で見えている何かを持っているかどうか、そのことに思いを馳せずにいられなくなる一作。

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スタッフ
監督 杉山慶一

キャスト(出演(声))
勝地涼 アギト(声)
宮崎あおい トゥーラ(声)
遠藤憲一 シュナック(声)
古手川祐子 ヨルダ(声)
大杉漣 アガシ(声)
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作品データ
原題 Origin Spirits of the past
製作年 2005年
製作国 日本
上映時間 95分
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2011年1月21日金曜日

「ソーシャル・ネットワーク」 デビッド・フィンチャー 2010 ★★★

極東の国ではネットが受験に不正使用され、中東ではネットを使っての革命の勢いが止まらない。

そんな現代を代表するのが世界最大のソーシャルネットワーキング、つまりSNSとなったFacebook。その若き創設者マーク・ザッカーバーグの半生を描いた映画ということでとにかく話題になっている一作。

あのデビッド・フィンチャーがメガホンを取ったことでも話題だが、なんと言ってもまだ現在進行形の一会社の社長の半生がすでに映画化されるということで、その創造力によって世界にもたらされた世界への影響力を物語っているかのようである。

ハーバード大学在学中の主人公が、好きな女の子の興味を引くために特異なプログラミングで学生同士のソーシャル・サイトを開設するところから始まる。何ごろのきっかけは、「もてたい」という根源的な欲望から。

そして「知ってる人の写真だから興味がある」という「知り合いの知り合い」という繋がり感が爆発的に受け、あっという間に急成長をし、ファイル共有サイト「ナップスター」創設者であるショーン・パーカーとの出会いを経て、社会現象を巻き起こすほどの巨大サイトへと急成長するなかでの、摩擦や葛藤を描きながら物語は展開する。

ハーバードというアメリカを代表するアイビー・リーグの伝統が良く描かれているのも楽しめる。フラタニティとソロリティという男子・女子学生サークルによって護られるエリート主義。イエール大学出身のパートナーは構内でKKKのサークルも見かけたことがあるといっていたが、やはりどんなところでも若者は気の会う一生の仲間を見つけていくものであろう。

見終えて感じる少なからぬ危険性。

何かを成し遂げる人は目的がお金じゃなく、ただやりたいから我武者羅にやっているのが、結果的に抜き出ている。毎日、毎時間、ずっとそのことばかりを考えてる。毎日やらなければいけないこと、こなさなければいけないこと、そんなことは考えない。

そういう生き方が出来るのは、ある種の才能を持った人間だから。その準備ができている人だから。

そうではなく、向上するために緊張感を持ってではなく、ただただ惰性と共に日常を過ごしている人間も同じく、「自分もこういうまっすぐな生き方ができるのかも」と思い始めたら、この社会は成り立たない。

創造的活動には、それを支える経済という下部構造が必要だとマルクスも言うように、自由な創造活動を行うためには、その為の下地が必要で、大学というのはまさにその時間的余裕を与えてくれるところ。生きることに必死になって過ごす必要は無く、自分のやりたいことに必死になって向き合う時間。

それが本来の大学のあるべき姿なのだろうと思わずにいられない。それに比べ日本の大学の風景といったら、社会という砂漠にでるまでの猶予期間としてカウント・ダウンされる時間を貪るように刹那的に生きる。

SNSの中で退屈な日常に手を加えて知り合いの知り合いに「素敵な一日だね」と言われて喜ぶような今を過ごすのではなく、今の自分のやれることを必死になって過ごすことが大切なのだと矛盾を孕みながらも突きつけられるような一作であろう。
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スタッフ
監督 デビッド・フィンチャー

キャスト
ジェシー・アイゼンバーグ;マーク・ザッカーバーグ
アンドリュー・ガーフィールド;エドゥアルド・サベリン
ジャスティン・ティンバーレイク;ショーン・パーカー
ジョセフ・マッゼロ;ダスティン・モスコヴィッツ
ルーニー・マーラ;エリカ
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作品データ
原題 The Social Network
製作年 2010年
製作国 アメリカ
配給 ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
上映時間 120分
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