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所在地 京都府京都市南区九条町
別称 左大寺(さだいじ)
山号 八幡山
宗派 東寺真言宗
寺格 総本山
創建 796
開基 桓武天皇
機能 寺社
文化財 金堂、五重塔、御影堂(国宝)
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百寺
世界遺産
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「タラタ、タラタ、タラタタン♪ タラタタラタター♪」と、JR東海のCM、「そうだ 京都、行こう。」キャンペーンのテーマ曲を口ずさんでいると、横で妻がにやりと笑い、「ハモらなくても、主旋律を歌っていいんだよ」と如何にも悪意のある言葉を投げかけてくる。
音痴を自覚していてもどうしても口ずさみたくなってしまうのがこの東寺(とうじ)。京都と言えばまず出てくるこの寺の境内の風景。上記の「そうだ 京都、行こう。」キャンペーンでも既に4度も取り上げられているほどのメジャークラスの名所。荘厳ささえ感じられるあのしだれ桜越しの五重塔の風景は、日本人なら誰でも一度は眼にしたことがある風景であるはずだ。
そんな訳で、妻の嘲笑に耐えながら、逸る気持ちで境内へ。この東寺。正式には教王護国寺(きょうおうごこくじ)と呼ばれ、その名前から分かるように、王と国を護る為のお寺である。そしてその任を任されるのは日本の仏教界のスーパースター・空海。
呪いに呪われた長岡京から逃げるようにして遷都してきたこの平安京。なんとしてでもこの遷都は成功させたいと願う時の桓武天皇。頼りになるならどんな力でも縋りたかったその時に、候補にあがったのは、旧来仏教勢力である奈良仏教ではなく、当時の最先端の国際国家である唐から、新しい仏教である密教たるやを持ち帰ってきたという空海。
新しい仏教をもって、新しい都を護ろうと、東寺は平安京鎮護のための官寺として建立され、嵯峨天皇より空海に下賜され、東寺真言宗の総本山として真言密教の根本道場として栄えた。
「東」があれば、「西」もあるのが当然で、平安京の都市計画としては、京の正門にあたる羅城門の東西に「東寺」と「西寺」の2つの寺院が建立された。それぞれ平安京の左京と右京を守る王城鎮護の寺、さらには東国と西国とを守る国家鎮護の寺という意味合いを持った官立寺院とされた。
と言うわけで中心軸となるのは羅生門だが、ここよりやや西に羅城門跡が在り現在は碑のみが存在する。中心軸をはさんで対象位置には西寺が在った訳だが、今は西寺公園として整備されている。1200年も前のこの場所の記憶をとどめるとても貴重な歴史的遺産である。
ちなみにこの左京と右京であるが、街を歩いていると気がつかないが、地図を見てみるとおかしなことに気がつく。北を上にして地図を広げると、左にあるのが右京区。右にあるのが左京区。このカラクリは御所で南を向いて座られる天皇から見て右にあるか左にあるかで決まっており、北を上にして物事を見るという現代の視点からは離れたところから決められているのもまた京都の都市計画の面白さであろう。
中世以後の東寺は後醍醐天皇や足利尊氏など、多くの歴史的人物からの庇護を受け栄えてきたという。南大門・金堂・講堂・食堂(じきどう)が南から北へ向けて一直線に整然と並ぶ伽藍配置や、各建物の規模は平安時代のままという非常に貴重な寺である。
この寺の見所は不二桜と呼ばれる美しいしだれ桜とその奥に見える五重塔。この塔は高さ54.8メートルを誇り、木造塔としては日本一の高さとなっている。現在の塔は5代目で、1644年に徳川家光の寄進で建てられたものだという。
そしてもう一つ見逃すことが出来ないのが、真言宗の根本道場として空海がどうしても作りだそうとした立体曼荼羅。講堂の中に入ると、中央の大日如来を中心に五如来、右手に金剛波羅蜜多菩薩を中心に五菩薩、左手に不動明王を中心に五大明王、東西に梵天と帝釈天、四隅に四天王像。5+5+5+2+4で計21体の彫像によって表現されるのは羯磨曼荼羅。密教世界の真理を描く曼荼羅を、立体的に表現したものである。
「これこれ」と意気揚々と中に入るとして後ろを振り向くと、炎天下の気候に既にグロッキーな妻の姿。先ほど音痴をバカにしていた様子は微塵も見られない。このままでは午後の旅程に影響が出るなということで、出来るだけ日差しを避けて木々の陰を通りながら境内を回り、手短に参拝を済ませることにする。
思った以上に大きな京都のスケールに、相当早いペースで写真を撮ってきたために既にカメラの充電が残り一メモリ。午後の名庭園で電池切れは悔やんでも悔やみきれないということで、ホテルに置いてきてしまった予備の電池を取りに行くために急遽予定を変更。妻の体力回復も期待して、ホテル近くの老舗の蕎麦屋に向かう提案をし、少々回復した妻のテンションにややホッとしながら境内を後にする。
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