2015年3月6日金曜日

シュトゥットガルト市立図書館(Stadtbibliothek,Stuttgart City Library) Yi Architects 2011 ★


「未来的な空間の図書館」として様々なサイトでも紹介されているのが2011年に開発の進むマイレンダー広場に完成したシュトゥットガルト市立図書館(Stadtbibliothek,Stuttgart City Library) 。

真っ白に漂白されたかの様な未来的な空間に、システマティックに階段がつく内部空間と、中が何の機能を持っているのか一切のヒントも与えないいくつもの正方形を積み重ねた巨大なキューブとしての外部。

それだけで世間の注目を浴びるのに十分なこの建築は1999年にコンペによってドイツに留学して建築を学んだ韓国人建築家のイ・ウンヨン(Yi Eun Young)によって勝ち取られたという。イ・ウンヨン(Yi Eun Young)はその後Yi Architectsという設計事務所をドイツのケルンにて設立し、この建物の設計に取り組んできたという。

写真では疑問に思わなかったが階段がまっすぐ降りているということは、それだけ下の階がせりだしているということであり、そのイメージを見ているとどうしてもこれは1階部分から徐々に上にいくにつれて床の張り出しが少なくなるのだろうと思ってしまう。

しかしこの建物の構成は非常に明確で、大きなキューブの中にはややサイズを小さくしたもう一つのキューブが一階の中心に位置しており、そこはまったく機能を与えられない空間となっている。

その周辺には階段が壁の後ろに隠されており、さらにその外には外壁に面して書架と読書室が設置されている。4階まで達するこのキューブの上の5階に上気したステップしてせりだしを減らしていく白い空間が設置されており、5階から9階まで逆さのピラミッドのような空間を作り出している。

つまり1階部分では4階分の高さを感じ、5階においては5階分の吹き抜けを体験するという、一つの建物を縦方向に二つに分断したように、まるで二つの建物を体験しているような感じである。

外壁に埋め込まれたガラスブロックは内部を半透明とし、また内部においては外部からの光をやわらかく内部まで届ける。銀座のレンゾ・ピアノによるエルメスと同じ効果である。

これだけ象徴性が高い立方体という言語を何重にも入れ子にし、かつ具体的な物語を表さず、内部と外部の関係性を分断し、ただただ四方の方位が重要かのように迫ってくるデザインだけに、きっとイスラム出身の建築家による設計で、アラブ文化に関する図書館なのだろうと思っていたが、調べてみると韓国人建築家による市立図書館ということでやや肩透かし。

それにしてもこれだけ徹底的に装飾をそぎ落とし、キューブに還元していく建物は、まさに1997年の映画「Cube」の世界を彷彿とさせる。どこまで行っても、上に行っても下に行っても、ひたすら同じ「Cube」。そしてその全体像もまた「Cube」。

やはり外部の環境との関係性が伺えない建築は、どんなに未来的でもあまり受け付けないなと思いながら、開発が進み、多くの若者がたむろするマイレンダー広場を急ぎ足で車へと戻ることにする。






















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