2012年12月23日日曜日

「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」ジョン・マッデン 2011 ★★



年末に近づき、忙しないといってもいつもの週末と同じ様にオフィスに出っ放しで、妻を一人にする。なんてことはできるだけ避けようと思っていたが、やはりなんだかんだで出なければいけなくなるが、それでもいつもよりも早めに家に帰って、ささやかなクリスマスケーキを二人で食べて、たまにはゆっくりと映画を見ることに。

明日のクリスマス・イブは恒例の「ラブ・アクチュアリー」を見るようなので、恐らくそれに近いのでは?と匂ってくるようなパッケージのイギリス映画をチョイスしてみる。

結局どこの国も同じように、第二次大戦後の数年間に産まれた多くの子供達が引退の時期を迎える2010年問題。日本では団塊世代と呼ばれるが、同じような世代がイギリスにもまた存在するんだと思わずにいられない。

それにしても、こんなにお金の心配をしなくていい世代なのかと、生きることに心配をしなくていい豊かな人たちなんだと思いながら、なかなか盛り上がりのかける序盤を我慢して見続ける。

流石にこの映画は日本では決して流行らないな・・・と思いながらも最後まで見終えると、引き返すことのできない人生の下り坂に入った一人の人間としての哀愁が様々な形で描かれて、途中でやめなくて良かったと思わされる。

映画とは出会いと同じで、パッケージを手にした時に抱いた期待から、どんなに最初の印象が悪くても2時間付き合うというのは最低限のマナーであろう。どんなに最初の印象が悪くても初めてのデートくらいは最後まで終わらせるべきなのと同じように、思っても見なかった一面が徐々に見え出して、次第に興味をひかれる、何てことは往々にして起こり、そんなに安易に判断せず少しの忍耐が人生の豊かさには必要だと再認識。

今日を生きるための経済的心配をしなくて良くなると、人は「どう生きるか」に向き合わなければいけないが、それが誰にとっても幸せかというとそうでもなく、そんな余裕もなく毎日必死に生きている、そんな時間の中にいつづけ、突然自分の人生、生き方に自己評価を下して考えることを求めるのは、きっと少なくない人にとっては酷なこと。

登場するある夫婦の奥さんはとにかく何に関しても否定的。自分で行動をすることもないのに、わかったつもりで否定し、言うことなすことすべてがネガティブ。これではどんどん自分が孤立し、惨めになると自分でも分かってはいるが優しい旦那のお陰で自分を止められない、戻れない。分かっていても、生きてきしまった時間は取り戻せない。初めは些細な偏差だったが、何十年という時間の中でそれが遥かな距離になり、矯正できない自らの性格となる。

これと同じことは現代に沢山あって、「引きこもり」なんていうのも初めはちょっとした甘えから始まって、自己の肯定するためにどんどん考え方が偏り、個人、家族という小さな単位に隠れることで護られ、本当は護るほど大切なものか?も判断つかないが、社会から偏差すればするほど、自らの価値観を護ることが唯一絶対の存在意義になってしまう。

そんな状況に陥った家庭は恐らく恐ろしいほどいっぱいいるんだろうと想像を巡らす。「⚪⚪ちゃんは悪くないのよ」と我が子のその瞬間だけを肯定し人生を台無しにしてしまう。結婚しない大人たちの心の中でエコーする「きっと合う人が見つかるはず」と終わりなき自分探しの旅。

本当に大切ならば、人間が社会という多数の他人と生きていかなければいけない存在であるなら、傷つけようが、関係が壊れようが、反発されようが、どうしようとも否定をし、社会の中での立ち位置を示してあげること、思い上がりを壊してあげること、それこそが本当の愛情だと再度思い知らされる。

それにしてもやはり25歳くらいまでに遠藤周作の「深い河」に影響されて、ガンジス川に身を浸して「生と死」に思いを馳せるというパターンに間に合わなかったら、やはりインドはハードルが高いな・・・と思わずにいられない。

「スラムドッグ・ミリオネア」のデブ・パテルの相変わらずな演技に懐かしさを感じ、ビル・ナイのロックンロールな姿を明日の「ラブ・アクチュアリー」でまた目にするのかと思い、特徴的なインド美人の女優さんに、ロンドンでもあるパーティーで男性陣が騒然となったのはあるインド人だったことをふと思い出す。

きっと多くの団塊世代もこの映画を目にし、「これからの時間」に想いを馳せることになるのだろう。
--------------------------------------------------------
スタッフ
監督ジョン・マッデン
製作グレアム・ブロードベント
ピート・チャーニン
製作総指揮ジェフ・スコール
リッキー・ストラウス
ジョナサン・キング
原作デボラ・モガー
脚本オル・パーカー
キャスト
ジュディ・デンチ
ビル・ナイ
トム・ウィルキンソン
マギー・スミス
デブ・パテル
--------------------------------------------------------
作品データ
原題The Best Exotic Marigold Hotel
製作年2011年
製作国イギリス
上映時間124分
--------------------------------------------------------

0 件のコメント: