「とんびがたかを生む」。突然変異体である。
では、鷹は何を産めばよいのか?「たかがたかを生む」のか?いや、産むのではない。鷹からは鷹が作られる。もしくは鷹がブタを産む。しかもただのブタではない。キメラ・ブタである。
と、これがES細胞のとりあえずの目指す先とのこと。ヒトES細胞を持つキメラ・ブタ。そしてヒト臓器を持つキメラ・ブタへ。そこからのヒトへの臓器移植。ヒトの免疫システム内のブタ遺伝子に対する反応遺伝子をノック・アウトしてやり、サイズもほぼ等しい体外体内とも呼べる非自己的自己からの先祖がえりする臓器。
外来遺伝子をもって誕生した動物は「遺伝子を導入された動物」を意味するトランスジェニック動物と呼ばれる。トランスジェニック人間の先は免疫システムを騙す必要のない完全なる自己からの臓器移植。その供給元となる非自己はES細胞によって生み出されるクローンの身体。
遺伝子文字のDNAの主役、A(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)という4種類の化学物質によってなずけられた映画『GATTACA』。ヒトゲノム計画終了とES細胞の発見によって、「近未来」の意味すら組み替えられてしまうのだろう。
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目次
第1章 ES細胞の前史―ひっぱりだこの胎児細胞
第2章 ES細胞の発見―あらゆる器官をつくる始原細胞
第3章 ES細胞の利用―トランスジェニック・マウス
第4章 ヒトES細胞の発見―競争・規制・促進
第5章 事業化への発想―クローン動物とES細胞技術
第6章 人工臓器―器官のオーダーメイド承ります
第7章 ヒトゲノム計画の展開とES細胞―悪夢か福音か
終章 危機感と倫理観と―あとがきにかえて
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