北宋時代の開封はその首都として当時世界最大規模の都市として賑わいを見せたといわれる。その当時の様子を現在に伝えてくれるのが、北宋末期の画家である張択端(张择端,Zhāng Zé duān,ちょうたくたん) の手による画巻である清明上河図(清明上河图,Qīngmíng Shànghé Tú,せいめいじょうがず) 。長い巻物に描かれた水景と共にある当時の開封の様子は、その中に細かく描かれた様々な人々の様子を伴って非常に雰囲気まで伝わってくるもので、当時の街並みから人々の服装や風習などを伝えるものとして貴重な資料となっている。
オリジナルは北京の故宮博物館に所蔵されているというが、この絵は人気が高いようで、街のあちこちで様々な大きさのレプリカを購入することが出来る。建築の仕事をしていると、仕事の中で中国人が中国の風景として参照に出すこともよくあることからも、東洋らしい空間を描き出しているものとして中国国内でも親しまれている作品だということだろう。
その清明上河図に描かれた風景を再現し、北宋時代の街並みを体験できるというのがこの清明上河園(清明上河园,Qīngmíng Shànghé yuán,せいめいじょうがえん)という訳で。
そんな訳でこの開封に来たら一度は立ち寄らなければいけないような場所であり、入場料が100元とかなり高い気がするが、開場と共に多くの団体観光客が入口に並ぶ姿を見ても、現在の中国における人気スポットの一つであることは間違いない。
中に入ると、基となった「清明上河図」が壁に大きく石彫りで描かれており、その前にはジオラマでその風景を展示してあり、何となくこれから見る風景を理解できるようになっている。
ふむふむと思っていたら、あちらこちらで太鼓や銅鑼の大きな音が聞こえてくる。北宋時代の衣装に身を包んだスタッフが、あちこちで様々なパフォーマンスを披露しているようで、とにかくその音が大きい。「少し静かに観覧したいな」などとはここでは望めるはずもなく、どこにいっても「ジャラーン、ジャラーン」と「音が大きければ大きいほどいいだろう」と言わんばかりの顔で銅鑼を鳴らす若い踊り子や、その音に負けないくらい大声で話をしながら練り歩く団体客から逃げるようにそそくさと奥のほうへ向かう。
東京と呼ばれたころの開封では海上交通が盛んだったため街のあちこちにあった船着場である東京埠頭や、赤い太鼓橋で絵の中心でもある虹橋など、なんとなく絵に描かれた雰囲気は分かるのだが、やはりテーマパーク。なんといっても数年前に作られたコンクリートの建造物。そこには長い年月を経た時間の蓄積は感じられるはずもなく、もしてやそこで過ごした人々の息吹も皆無で、園の一番奥までたどり着いてはやっと静かな場所を見つけるが、期待していたような高揚感は発見できず、次に向かおうと出口を聞くが、掃除のおばさんに「入ってきたところからじゃないと出れないよ」と、広大な園を再度、引き返しながらどっと押し寄せる疲労を感じて次なる鉄塔へのバスを待つことにする。
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