2015年12月5日土曜日

「コキーユ-貝殻-」 中原俊 1998 ★★★

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スタッフ
監督 中原俊
原作 山本おさむ
脚本 山本耕大
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浦山達也:小林薫
早瀬直子:風吹ジュン
谷川次郎:益岡徹
テ藤崎君枝:吉村実子
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日本中どこにでもありそうな地方都市の風景。そこで開催された中学の同窓会。集まったのは中年に差し掛かった面々。それぞれに結婚し、子供ができて、すっかりおじさん、おばさんになりつつも、かつて共に過ごした時間のままに、若かりし頃の自分に戻ったような時間を過ごす。

いかにもありそうな、地方の少しよさげな食事どころ。座敷で20人近くが一部屋で食事を取りながら、各々に一年に一度の昔話に花を咲かせ、かつては話せなかった同級生とも互いに大人になったことで片意地はることなく話ができ、つかの間の非日常を楽しむ風景。

そんな中に、少し陰のある女性の姿。余り思い出せないが、聞く所によると結婚し東京に出て行った同級生。なんでも離婚して娘と二人で地元に戻ってきて今は、「コキーユ」というスナックを待ち外れて営んでいるという。

特別な思いはなしに会社の上司を連れてそのスナックに足を運び、それをきっかけに徐々に一人でもたまに寄るようになっていく。お店の名前の「コキーユ」はフランス語で貝殻を意味し、ジャン・コクトーの詩の一節から取ったものだと教えられ、それは中学の時にプレゼント交換で自分が渡したプレゼントがそのコクトーの詩集だったことを思い出し、糸を繋ぐように記憶の室から徐々に当時の風景を思い出していく。

メーカーの地方の工場に務め、主任としてチームを纏める主人公の浦山達也に小林薫。そして「コキーユ」を営み、中学時代と変わらずに今でも浦山に思いを寄せる早瀬直子に風吹ジュン。

中学の卒業式に浦山への想いを伝えたと思っていた直子であるが、時間を経て再会した今、浦山の右耳が聞こえなく、当時耳元で伝えた告白が届いていなかったことを知ることになる。

浦山が家族揃って東京へと転勤する前に、二人揃って直子の彼岸であった里山へのハイキングを結構する。家族へ東京への出張だと嘘をついて、スーツに鞄といういでたちに、山ガールの様に気合の入った不釣合いな二人の姿。山頂での用意してきたランチを頬張り、山をおりると、帰りのバスを逃してしまったことに気がつき、近くの温泉旅館に宿泊することに。

共に湯につかり、長年の願いを果たす直子。そしてそれを静かに受け止める浦山。

東京への引越しが落ち着いた後に、他の同級生から届けられたのは、直子がトラックに轢かれ亡くなったこと。それを知り、一人故郷に戻り墓を参りに行くが、そこで出会うのは中学時代の直子そっくりな彼女の娘。そして彼女が自分のことを母が常日頃口にしていた「浦山君」だと理解する。

月日が流れ、再度開催された同窓会。そこにいない直子の姿に一人涙を流す浦山の姿で物語りは終える。なんとも切ないが、恐らく多くの人の心を掴む一作であろうと想像する。この国に生まれ育った人なら誰でも経験する同窓会。かつて多感な同じ時間を過ごした仲間が月日を隔てて互いに大人になった後に集い、また言葉を交わす。一緒に過ごしていなかった時間に、どんな変化を経ているのか。かつて好意を寄せていた異性がどんな大人になっているのか。かつてあまり言葉を交わさなかったクラスメイトと思わぬ共通点を持つようになっていたりとか。

同級生という根っこが一緒という安心感があるからこそ話せることもある。日常に追われ、新しい人間関係の中で生きていようとも、だからこそこのような同窓会と同級生の存在は貴重であり、何もしなければすぐに断ててしまう地縁をかろうじて繋ぎ止めるそんな役割を果たしてくれる。

こうして深い人間のドラマ、一人の人間が過ごしてきた濃密な人生にひと時でも触れることが出来るそんな素敵な時間。それを期待してまた次の自分達の同窓会の準備に取り掛かることにする。


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