白河桃子
柳原可奈子のネタを見ていると、「女同士のマウンティング」がいかにして行われているのかとてもよく分かる。
かつては、大人になって付き合うのは、出身大学や勤め先、住んでいる街や子供を通わせている学校などで緩やかに色分けされていた「階級」とまではいかずとも、ある種の生活レベルを反映した所属クラスの中で、似たような家庭環境、育ち方をし、似たような考え方をもった人と付き合っていれば良かった。
しかし、これだけSNSがインフラ化し、今までは考えもしなかったような形で人と知り合い、そして交流を持つようになった現代。それが多様な人間関係をもたらすのと同時に、今までなら付き合う必要のなかったタイプの人間とも向き合っていかなければいけないことになる。
かつては、限られた人間関係の中で、教養の多寡や地域の中での人望など、時間をかけて養われてきた暗黙の了解で互いの関係性やポジションなどが理解でき、それをやんわりと保持しながら関係性を守っていたが、今は西部劇のように撃つか撃たれるか、もしくは江戸時代の果し合いのように、背景の分からない人とひょんなことで付き合うことになり、しかもその中でどうにか上下関係をはっきりさせるために作り出された様々なルール。
男性のように社会の中でどんな職業に就いているか、また会社の中でどのようなポジションについているのかが明確に分かるのく対して、女性はまたそれで様々なコミュニティの中で様々な人間関係の中でこの格付けが発生し「ルールを作ったもの勝ち」というゲーム理論同様に、様々なルールが決められていく。
そのなんとも生きにくい空気が完全に日本を埋め尽くした現代。学歴や仕事という自分の能力によって決定される要素ではなく、「結婚」という選んだ相手の社会的ステイタスによっていきなり「リボーン」と呼ばれる逆転現象が起こりうるのが女性の性。それによって得られるもの、自分が人生の中で一つずつ得てきたものでないからこそ、相対的に自らの立ち位置を確認し、周囲からの承認によって欲求を満たしていく。
SNSに頻繁にアップする子供の写真。
素敵なレストランで美味しそうな料理を旦那と楽しむ様子。
優雅な海外旅行の写真。
ママ友といくランチの値段。
子供を乗せるベビーカーのブランド。
様々なところで、少しだけ満足感を得ながら日常を生きるなかで生み出されていく多様な「女子カースト」。そんなのは昔からあったことで、ネットのお陰でより外に見えやすくなっただけとも思えるし、ネットの出現によって今までの限られた交友関係から開放され、エゴとうまく付き合えない人間が迷惑を撒き散らしている、とも思える現状。
「生きにくさ」を感じるのは間違いなく、それはネットの出現で今までになかった「便利さ」を得た人類の宿命なのかと受け入れるのか、それともこれはネットの出現によって開拓された新たなる人間の社会的行動であり、あくまでもそれは一過性のものであり、徐々に「生きにくさ」を軽減する方向に収束していく何かしらの方策があり、既に社会の中にその発芽が見えているのかどうか。
そんなことを知ることを期待して手にした一冊であるが、どうも社会に起こる現象を紹介するにとどもあり、言葉にはしないが、誰もが感じていたもやもやした感じを、「ああ、こういうことか」と言葉にしてくれて、納得するための「共感」を世の中にもたらしているのだろうと理解する。
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■目次
はじめに
第1章 なぜ女性は格付けをしたがるのか?
/見えない線が引かれる時
/「女子カースト」とは何か
/「女子カースト」のものさし
1-恋愛カースト/彼氏がいる、いない。また、どんな彼氏か。
2ー外見カースト/どれだけ自分に手をかけているか
3-社会的ステータス/自分だけでなく夫や子供
/女同士のマウンティング
/「女子カースト」が生まれる四つの原因
1-ヒマがある集団
2-狭くてぬるい均質な集団
3-逃れられない集団(会社、ママ友など)
4-「悪の種」が集団に紛れ込んだ場合
/外資金融で経験した悪の種
第2章 「女子カースト」の実態
/ママカースト
・同じような年収・同じような家庭で集まる「ママ友」
・「子供が人質」の交友関係
・夫から生まれるカースト
・ママ達の苦しさの根本にあるものは自分の武器で戦えないこと
・評価されづらい専業主婦の仕事
・独身女性との比較
・「VERY」見て焦る
・ママカーストとは別の世界がある
・いずれは滅びる専業主婦というカースト
/恋愛・婚活カースト
・早く結婚する人、遅く結婚する人
・待ちうけ20代男子と恋愛しない女子大生
・決めきれない40代「センミツ女」
・40代はミスマッチゾーン
・年上女性X年下君の「格差婚」は普及するか
・理想のタイプと現実の相手のギャップ
・100対100のお見合いの婚活カースト
・年齢で振り分けられるお見合いサイト
・婚活カーストにおけるカーストは女子同士じゃない!?
・本当のミスマッチの原因
・女子会は恋愛カーストの確認の場?
/女子大生カースト
・女子大生カーストを決めるのは「コミュ力」
・周囲から浮かないファッションが第一
・SNSの振る舞いもチェックされる
・恋愛経験の有無
・女子会でのカースト
・金銭感覚の違いによる序列
・ブランドによる女子大間カースト
・SNSの利用法
・女子大生カーストは就活の「勝ち負け」につながる
・高学歴女子大生はなぜカーストを感じないのか?
・今の女子大生はいじめとスクールカースト経験世代
・女子高から共学へ「男子に重いモノを持ってもらえない」
・世間に出た後の同窓会の息苦しさ
・女子たちの分岐点
/オフィスカースト
・ワーキングマザーが作る、新しい働き方
・時短で広がる様々な働き方
・働くママでも、スタイルに差が出る
・ダメなのはママではなく上司
・仕事の評価とは違うところにあるオフィスカースト
・立場を守るための威嚇行為
・業務でマウンティングするな!
・男性社員のヒエラルキーとはどう違う?
・従来の上下関係に「男性からの目線」が絡む
・美人が出生すると必ず出る陰口は?
・働く女性は二重の土俵に乗せられている
・カーストに苦しむのは、女性自身に罪がある!?
第3章 今の日本は多様性社会への過渡期
/人を許せない国
/多様化の作法
・すでに多様性は始まっている
・女子のカーストをサバイバルするための三つの技術
1-複数の足場を持つこと
2-問題解決能力を持つこと
ー集団の居心地に敏感になる
3-自分を肯定すること
ー自分を嫌いな人とは仕事できない
第4章 「女子カースト」のその先に
/なぜ女同士はつながれないのか?
/自分の子育て観を否定されると傷つく
/女性は自分の生き方を否定できない
/たとえば、女子と言う可能性
/鍵は多様性と未来志向
/生きやすい社会とは何か?
おわりに
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