2016年2月4日木曜日

六甲枝垂(ろっこうしだれ) 三分一博志 2010 ★★★


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所在地  神戸市灘区六甲山町五介山1877-9
設計   三分一博志
竣工   2010
機能   展望台
規模   地上1階
建築面積 127.23m2
延床面積 66.50m2
構造   木造
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「有馬温泉に泊まるなら、ひょっとしてこれ近いのでは・・・」

と急遽立ち寄り地として候補に挙がってきたのがこの施設。数年前から相当気になる建築としてチェックはしていたがと地図で調べてみると、なるほど六甲山の頂上に位置し、有馬温泉からは少し道を迂回してすぐという位置関係。ここまでニアミスして見ていかないのは後で後悔すると、前日に日が落ちる前にそこまで上がれるか、それとも翌日相当早い時間に立ち寄っていくか、そうなるとまだ施設が空いてないので内部は入れないか・・・などと他の予定とすり合わせて、結局早朝7時前に宿をでるという結論にいたることになる。

そんな訳で宿の人に少々驚かれながら、霜の降りたフロントガラスを拭きとって、痺れるような寒さのなか朝の六甲山の山道を飛ばし、行き交う車もほとんど無いままに30分近くで到着したのが六甲山から神戸の街並みを見下ろす展望台である六甲ガーデンテラス。

展望台という雰囲気に似つかわしくなく、園内は資材を運び出すために集ったみられる何台ものトラック。まるで工事中の為に入れないのかという雰囲気であるが、その脇をすり抜けて駐車場に車を滑り込ませる。

小高くなった丘の上に鎮座するのが目的の「六甲枝垂(ろっこうしだれ)」。広島をベースとする建築家・三分一博志の作品。広島での作品が多い中、「犬島精錬所美術館」や「直島ホール」など瀬戸内海に浮かぶ島々での作品でも広く知られる非常に気になる建築家である。

「枝垂れ(しだれ)」という言葉自体馴染みがなかったが、植物や木々の枝が垂れ下がる様子を表すようで、その枝垂れをイメージし中央の筒の頭頂部から枝が垂れるようにして小さくスケールを変えてつくられて繊細なフレームがシェルの様に全体を覆うようになっている。写真からはこのフレームの材がてっきり鉄でできていると思っていたが、よくみるとこれも中央部同様ヒノキにてできているようである。

なんといっても印象的なのは、その細く隙間の空いた外部のフレームを構成するヒノキ材に、冬場は樹氷が張り付いてギザギザした何ともいえない表情を作り出す、自然を取り込んだディテールとその美しさが印象的。

あまりに朝早いために施設が開いてなく、内部に入ってそのヒノキのシェルの中に包まれ、降り注ぐ光を感じる体験をしたかったが、次の目的地が多く待っているために後ろ髪を引かれながらも、東の空に昇った朝日に照らされる神戸の街並みを見下ろしながら、よい一日なることを祈ってこの場所を後にする。






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