--------------------------------------------------------
所在地 岐阜県岐阜市司町
設計 伊東豊雄
構造 arup
家具 藤江和子
竣工 2015
機能 図書館・公益複合施設
規模 地下1階、地上2階
建築面積 7,363m²
延床面積 15,295m²
構造 RC造・S造・木造
--------------------------------------------------------
今日の岐阜行きの最終目的地は昨年オープンしたばかりのこのみんなの森 ぎふメディアコスモス。伊東豊雄が「環境に力を入れていく」と設計に当たった地域図書館である。「つかさのまち夢プロジェクト」という岐阜市中心部の再開発プロジェクトの一環で、かつてここにあった岐阜大学医学部とその附属病院の跡地を利用して地域の拠点となる施設をというプロジェクトである。
敷地のすぐ北には長良川が東西に流れ、それに沿って少し東に移動すると、頂上に岐阜城をいただく金華山。その南には伊奈波神社。そして南には岐阜駅と、まさに市の中心地。この中心地を現在の社会にあったコンパクトで市民に開かれた街にしていくための再開発が「つかさのまち夢プロジェクト」。
その第一期が岐阜大学医学部跡地に市の中央図書館の立替と、市民の交流センターや展示ギャラリーなどの文化施設が入る複合施設であるメディアコスモス。それで中心部へ人の流れを作り出し、第2期ではメディアコスモスの南に取られている駐車場に岐阜市役所新庁舎を建設し、それで空き地となる現在の庁舎跡地に第3期として市民文化ホールを建設し、全体として岐阜駅から長良川河川敷までを緑の回廊でつなぐという壮大な計画である。
ポロポーザルとして行われた設計コンペでは、70人が応募し最終候補として伊東豊雄、槇文彦、藤本壮介というそうそうたる面々が選ばれ、その中で伊東豊雄案が圧倒的に支持されて選らばという。
他の二人の提出案が見れないのが残念であるが、最優秀案である伊東豊雄案を詳しく見てみると、環境に配慮した多面的な自然エネルギー利用を積極的に設計に反映されており、全体としては年間の消費エネルギーを「1990 年の同規模建物」と比べて1/2 まで軽減しているという。
具体的にその方式を見ていくと、安定した温度を保ち豊富な地下水源を熱源とし、床面から輻射させる冷暖房システムを採用。日照時間が長い特性を活かし、照明をできるだけ使わず自然採光を最大限取り入れ消費電力を低減。「グローブ」と呼ばれる小さな囲いの頂部に自動で開閉する開口部を設け、夏季と冬季の異なる熱環境においても効率的な自然喚起を内部にもたらす。内部およびうねる屋根に全面的に採用された木材は、地元岐阜産の「東濃ひのき」を利用。
などなど、環境系の教科書に書いてあるようなポイントが見事に網羅されている。問題はそれらが実際に一つの建物、そして心地よい空間としてどう設計の中に融合されているか。と思って足を運んだのであるが、確かに外部は非常にシンプルな矩形の箱であり、なんら面白みを語りかけるそぶりも無いが、中に入ると非常に開放的で、かつ明るい。そして上記のことを情報を知ってしまっているからかもしれないが、確かに温度や湿気もうまくコントロールされていて心地よい気がしてくる。
残念ながら2階部で、この建物の肝であるグローブに覆われている図書館が、本棚の移動ということで臨時休業・・・。「そりゃないだろう・・・」と思いながら、吹き抜け部分からなんとか二階とその上を覆ううねる屋根をチラチラと覗く。
1階の床には視線をさえぎることなく、どこになにがあるのかが非常に分かりやすくデザインされたサインが埋め込まれており、至る所に家具の設計を担当したという藤江和子の椅子に座る多くの市民が寛いでいるのが見渡せる。その一角には、こうした公共施設に当たり前のように入っていると思っているが、公共図書館としては全国でも3番目の出展となるというスタバがあり、こちらも多くの若者が利用しているようである。
「大きな家と小さな家を組み合わせることで、にぎわいのある「まち」のような建築をつくります」
というように、大きな箱の中に、都市における様々な活動があり、そのために様々な年齢層の人々が共存し、新しい賑わいを作り出すことに成功しているのであろう。まるで地方都市におけるイオンのように、郊外の巨大なショッピングセンターに来たかのように、隣接する広大な駐車場から、なんの空間的操作もなく内部に入っていくアプローチのあり方に対し、非常に疑問を持っていたが、家に戻って調べて、「つかさのまち夢プロジェクト」の全体計画を理解すると、また別の見え方ができるようになり、それよりもこうして驚異的な速度で来場者数が増えており、間違いなく新しい市の中心の風景となりつつあるということは、これこそ現代の地方都市が必要としている建築の在り方であるのだろうと理解しつつ、この建物を理解する為に再度訪れないといけないと心に決めて岐阜を後にする。
0 件のコメント:
コメントを投稿