三寒四温というのが、ゴールデン・ウィーク前にして使う言葉だったかと頭を悩ませていた、冬の寒さが戻ってきたある日の地下鉄のプラットホーム。
「人の身体というのは、三つの首を冷やさない様にしてやればいいらしいですよ」と、横にいたサラリーマン風の人が話してた。三つの首・・・なるほどと思いジャケットの襟を立てる。
「寒い話が書きたかった」
と作者がいう様に、この話はとにかく冷える。裾から入ってくる粉雪や、凍傷寸前迄いった手先、足先に血液が再度巡った時の激しい痛み。キリキリとした痛みを伴う雪国の中にある、本当の寒さ。
終戦から戦後、ソ連・朝鮮・中国と海を挟んだ日本、それぞれの民族という様々な境界線を横断して、過去を清算し、未来を見つめる眼差し。春を願う気持ちの様に、初めの100頁を越えればあっという間に読み切れる。