蒸せるようなバンコクの湿気から逃げるようにロンドンに。
かつて建築の世界の中での自分の立ち位置を確認しようと思って飛び込んだヨーロッパの地。そして本当にいろんなことを教えてくれた街・ロンドン。
その第二の故郷の風景を妻に見せようと、
その地でどんな友人に囲まれて時間を過ごしたかを妻と共有しようと、
その友人達に人生のパートナーとして選んだ女性を紹介してしようと、
そんな想いでこのグランドツアーの本当の開始点に相応しい都市・ロンドン。
住んでいる時には日常に埋没してしまってか、あまりに近視的になっていたのかでその良さが分からなかった建築や、行くことがなかった場所に、今回は予習をしっかりし、行きたいリストをしっかりと友人達に事前に通知しパンパンの行程表と
「ロンドン縦断―ナッシュとソーンが造った街」を片手に降り立つヒースロー空港。
そこで可愛らしい看板を手にして待っていてくれたのは大学院時代を同じチームとして共に過ごした香港人のサイリル。「ロンドンに来るなら絶対に家に泊まってくれ!」と言い張るが、別の友人に既にお世話になることが決まっているので・・・と伝えると、「ならば、せめて車で迎えに行く。」と言い、教えている大学が夏休みということもあり、変わらない笑顔と溢れ出るホスピタリティーで、長距離フライトの疲れも吹っ飛ぶ。ARUPで照明デザイナーとして働く奥さんのメリッサも、会社を早退してくれてわざわざ一緒に迎えに来てくれる。この二人のホスピタリティには今も昔も学ぶとこばかり。
「ラブ・アクチュアリー」でも描かれるように、この空港には沢山の出会いと別れがしっかりと共存できている。他の国でもそうであるが、誰かが訪れてくる到着口のゲートで友人や家族がそれを待ちうけ、笑顔と共に家に帰ってくる。そんな空港の風景は日本の空港ではあまり見かけられない気がする。
友人や家族も空港まで迎えに行くには仕事を休んだり調整しなければいけない。楽なようにと車で行こうとすれば、車を所持していなければいけない。他の国に行ったときにも「私は仕事でいけないから、代わりに弟を迎えに行かせるよ。」と会ったこともない弟さんが車でピックアップしてくれたこともあったが、日本以外には空港での時間がより生活の中にしっかりと取り込まれているんだと思わずにいられない。そしてそれを可能にする、人間らしい人との繋がり、時間の使い方を可能にする「ゆとり」が社会にちゃんと根付いているんだと理解する。日本の社会がその「ゆとり」を持つ為に、果てしない時間と努力が必要だと思わずにいられない。
飛行機の中で学生時代にどんな風に一緒に時間を過ごしていたかは長々と妻に話してあったので、早速、妻を彼らに紹介してとにかく車にということで、相変わらず多国籍で異国情緒溢れるヒースローの風景を抜けながら駐車場へ。
妻にとってはこれが始めたのロンドンとなるので、それならば絶対電車でセンターに行くのではなく、車で郊外から徐々に中心に向かって、テムズ川沿いを夕日を見ながら走ってビックベンの足元を走ってトラファルガー広場から北上するという、オールド・ロンドンの街の骨格が分かるルートがいいんじゃないかと言う事になり、時差もすっかり忘れながら一日の終わりに向けて暮れていく街並みを楽しむ。
テムズに移りこむバターシー発電所を眺めて、ウィリアムとケイトの結婚式で沸いたウェストミンスター寺院を抜けてビック・ベンへ。ところどころで止めて貰ってはダッシュして写真撮影へ。アドミラルティ・アーチを抜け、トラファルガー広場のライオンを眺め、暗くなる前に数日間お世話にならせて貰う日本人(徹さん)とスペイン人(クリスティーナ)の建築家カップルの家のあるキングス・クロスへと向かうことに。
ロンドンでジェエリー・デザイナーとして活躍するナオ君も来てくれていてサプライズに喜が増す。もちろん皆顔見知りということもあり、久々の再会を喜び、とりあえず荷物を置かせてもらうと、用意していてくれたタパスとワインで久々の再開とよいグランド・ツアーに乾杯。
話すことはつきないが、明日からのグランド・ツアーの予定について詳しく詰めないといけない!とワイワイ言いながら久々のロンドン一日目が暮れていく。