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2016年2月9日火曜日

なかまちテラス(小平市立図書館・公民館) 妹島和世 2013 ★★


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所在地  東京都小平市仲町
設計   妹島和世
施工   大成建設
竣工   2013
機能   図書館・公民館
規模   地下1階,地上3階
構造   S造
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この三多摩の旅の目的でもあるのがこのなかまちテラス。妹島和世設計による地域図書館と公民館を兼ね備えた施設。コンペによって選ばれた案のようであるが、そのコンペの情報はなかなか見つからない。なんでも、妹島氏が学生時代に小平に住んでいた縁からコンペに参加したとのこと。

外装は青山にある「ルーチェ・トーヨーキッチンスタイル」と同様に、アルミのエキスパンドメタルで覆われているが、あちらが青山という密集地で地価の高さから最大面積を求められる条件からか矩形だったのに対し、こちらは小平の穏やかな街並みに対応し、なおかつ公共性の高い建物の性格を表現するかのように不整形な形を持つ。

「ルーチェ・トーヨーキッチンスタイル」が2012年の竣工で、こちらが2013年ということはほぼ同時期に設計が行われており、その中で同じ外装材を使いディテールをつめていきながら、異なる表現に分化させていったのだろうと想像する。

雑誌やインターネットで見ていたらもう少し大きな建物を想像していたが、実際に見ると周囲の住宅街のスケールと非常にマッチしており、ちょっと大きめの住宅という雰囲気。上階で結合するボリュームが下の階ではいくつかのボリュームに分割され、かつその外形もさらに小さなスケールに分割されているので、恐らく延床面積に比べたら非常に快適な身体スケールが街並みに溶け込んでいるのだろう。

アルミのエキスパンドメタルも角度によっては非常にマッシブに見えるが、中から外を見ても、非常に透過性が保たれており、まったく違和感は無く、二次曲面にはできないためにどこかに無理が生じているだろうと外部を巡ってみるが、思ったよりも破綻してなく、ほとんど平面で処理されているようである。

入り口周辺はがんばってガラスもかなりの角度をもって設置されているが、ほとんどの部分はかなりシンプルに仕上げられ、挑戦するところが明確にしているからこそ実現できたのであろう。内部もこじんまりとしているが、非常に心地よく日の光が差し込んで、数時間ほど本を読んで過ごすのにはとても気持ちの良い場所であるという印象。

しかしこの様な挑戦的な建築が、こうした自治体の文化施設として選ばれて実現するというのもまた、日本の建築文化のレベルの高さを感じずにいられないなと思いながら、恐らく現場が動いている際には事務所のスタッフも通ったであろうと思われる、お隣の蕎麦屋さんで少し遅めのお昼をとることにする。



























狭山の森礼拝堂 中村拓志 NAP 2013 ★★★


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所在地  埼玉県所沢市大字上山口
設計   中村拓志 NAP
竣工   2013
機能   霊園施設・納骨堂
規模   地下1階・地上1階
建築面積 69.32m2
延床面積 110.49m2
構造   RC造・一部木造
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霊園の真ん中あたりから右手の森の方へと歩いていくと、森と霊園の境界辺りに森にまぎれるかのように建っているのがこの狭山の森礼拝堂。近い敷地に似たような規模の作品を同時期に手がけることで、まったく違うものにならないようにしつつ、かつあまりに同じ様なものにもならないようにと、うまく距離を保つのは難しそうであるが、そのバランス感覚も絶妙といわざるを得ない。

構造的にも扠首(さす)構造といって、白川郷の合掌造りに代表されるような、頂部で交差するようにして木柱を立て掛けあい全体を構成する日本に古くからあった木造の構造方式を、足元にて曲線を導入して下から上へと構造体に柔らかな変化を創り出しつつ、三角形の方向性を持った開口部にて外部を切り取り、光を取り込むなど、まったく新しい表現の方法として現代に生き返らせる挑戦。

森に同化するように、経年変化をする流紋の付いたアルミ鋳物板を外装材として使い、なおかつ後ろの木々の葉っぱの様に、乱葺きにすることで自然的な表現とスケールをつくりだす。

そして礼拝堂ということで、背の高い空間に6方向の開口部が時間の流れとともに異なる光の状態を作り出し、まぁ非常にうまくいっていると言わざるを得ない。地上の礼拝堂と、地下の納骨堂ということで、長時間の滞在をしないことから断熱などの機能的な要求の特殊さもあるだろうが、それら全てを考慮して、そして何に挑戦をするのかという明確な意図が見事にうまくいっている印象を受ける。

やはりこれくらいの規模の、かつ良質な建築が街中のあちこちに散らばっている。そんな日本の建築レベルの高さは世界でも誇るべきものだと改めて思いながら、「では、自分だったらどうするか・・・?」などと考えながら、緑溢れる霊園を後にする。