2015年9月25日金曜日

月の花 9月 彼岸花


子供の頃、彼岸花(ヒガンバナ)を見ると、何かあの世との入り口ひ咲く花で、まるで死者がその美しさに吸い寄せられてくるような、なんともいえない怖さを感じていた。「暑さ寒さも彼岸まで」と言われるように、夏のうだるような暑さの記憶が薄らいだころにやってくる秋のお彼岸。秋分の日の前後であの世である彼岸(ひがん)に思いを馳せ、そこで暮らすであろう先祖を偲び供養をする仏教の儀式。

そんな時期に合わせて彼岸と此岸(しがん)の間に開くトンネルを祝うかのように、田んぼの縁や墓地などに真っ赤に咲きほこるのがこの彼岸花(ヒガンバナ)。別名をサンスクリット語に由来する曼珠沙華(マンジュシャゲ)と呼ばれ、なんとも不思議な、別の世界から舞い降りたような印象を与える特別な花である。

その妖しさは、毒を含み、モグラや野ネズミから土葬を守るために墓地に埋められたり、田畑の周辺に植えられたという、先祖たちの知恵と生息地域の関係性などもこの花の別名「毒花(どくばな)」「痺れ花(しびればな)」から感じ取ることができる。

花言葉は「悲しい思い出」というなんとも言えない宿命をそってしまったこの花。真っ赤に染まるように咲くその姿を見つけ、秋の深まりを感じる。そんなこの国に根ざした長月をすごしたいものである。

1月 / 水仙
2月 梅 / 椿 / シクラメン
3月 桃 / 沈丁花 / 白木蓮 
4月
5月 バラ
6月 紫陽花 / 花菖蒲 
7月 向日葵 / 朝顔 / 蓮
8月 コスモス / 向日葵
9月 彼岸花  / 金木犀
10月 シクラメン / 山茶花 / 金木犀
11月 菊
12月 水仙


2015年9月17日木曜日

「黒衣の刺客(刺客 聶隱娘)」 侯孝賢(ホウ・シャオシェン) 2015 ★★


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スタッフ
監督 侯孝賢(ホウ・シャオシェン)
原作 裴鉶(ハイ・ケイ) 「聶隱娘」
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聶隠娘(ニエ・インニャン);舒淇(スー・チー)
田季安(ティエン・ジィアン);張震(チャン・チェン)
鏡磨きの青年);妻夫木聡
青年の妻;忽那汐里
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2015年第68回カンヌ国際映画祭 監督賞
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オフィスのマネージャーはかつて映画産業で働いていたこともあり、どうやらそちら関係の仕事をしている友人が多いようである。トコトコやってきて、「カンヌで賞をとったとてもアーティスティックな映画が今日まで上映しているので、スタッフに鑑賞させてあげるのはきっと仕事にとってもいい影響があると思う」というので、「なら午後に行こう」ということで、興味のあるというスタッフ計15人ほどで映画館へと足を運ぶ。せっかくなので、妻にも連絡をしてみると「興味ある」ということなので途中で拾って映画館へ。

台湾人監督によって、中国では有名な時代小説の映画化で、舞台は唐の時代ということらしい。プロットとしては幼いころに融解された少女が、暗殺者として教育されて地元に戻ってきて、暗殺を企てる相手はかつての許婚ということらしい。全体的に台詞が少なく、しかも発せられる台詞は漢詩のように非常に詩的な表現をとっているらしく、とても外国人が用意に理解できるものではなく、なんとなく雰囲気と後ろの席に座ったオフィスのマネージャーが英語にて耳元で説明してくれるのに耳を傾けながらなんとなく物語を理解していく。

日本でも、妻夫木聡と忽那汐里が出演したということで話題になったようであるが、妻夫木聡は物語上重要な登場人物として広く画面に現れるが、忽那汐里に関してはどうやっても見つけることができず、後々調べてみると彼女は日本版だけでの登場ということになっているらしい。上映場所によって微妙に編集を変えていく現代の映画産業においては、良くありがちなプロモーションの一環ということであろう。

とにもかくにも言葉を発せず、すり足で近づき、華麗な殺陣を立ち回り、それでいて人としての感情に揺れ動かされる主人公を中心に、全体に非常に詩的な雰囲気のある映像で構成される。カンヌで監督賞を受賞したというのも納得できる作品であるが、これを本当の意味で理解するには相当レベルの中国語の能力が必要であり、それが無ければやはり表面の美しさや雰囲気だけで理解して気になってしまうだけだろうと思いながら映画館を後にする。