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2016年3月5日土曜日

「中高年ブラック派遣 人材派遣業界の闇」 中沢彰吾 2015 ★


電車の中、20代後半と思わしきスーツ姿の若い男女。上司の男性に部下の女性という感じ。身に着けているものは年齢に比べたら少し上等なモノのようだが、なんだか少しチャラチャラした感じ。一体どんな職業なのかと想像を広げていたら、男性がおもむろに電話を取り出し、「終了報告のメールさせとけよ」と指示の電話。そして読んだこの本。なるほど、ああいう彼らが派遣会社の若い社員で、中高年に高圧的に指示を与えては高収入を得ているのかとピンとくる。

つい先日のNHKの「クローズアップ現代|増える“正社員ゼロ職場”~公共サービスを担う現場で何が」でも、この数年で、今までは「公」の機関としてかなり好待遇で正社員として働いていた京都の保育士が、業務を外部の運営会社に委託するに伴い、その運営会社との再契約という契約の切り替えが行われ、今までの半分ほどの給与になったり雇い止めとなったりした話を報じていたばかり。

どこまでが過剰な好待遇で、競争に晒される市場原理から隔離された利権と呼ばれるようなものなのかは難しいところであるが、できるだけ組織をスリム化し、経費を削減して利益を上げていくことを迫られた企業にとっては、固定費として毎月のしかかる人件費は最も手をつけたいところである。だが、同時に従業員の生活と、会社のサービスに直結するところでもあるので、細心の注意を払って精査して「仕分け」していくこと、これはグローバル化し、どんどんと効率という波が押し寄せる現代においては、どうしても避けては通れないことも事実。

そんな中でこの10年近く、長きにわたって問題とされてきた格差問題と非正規労働者の問題。その問題の中にも既に10年以上の時間が流れたためにある種の歴史が生まれており、その概要を知ることと、この問題の現在の状況を把握するために手にした一冊。


第3章 人材派遣の危険な落とし穴―「もう来るなよ。てめえみてえなじじい、いらねえから」の「人材派遣が急拡大した本当のワケ」によれば、1995年に日経連が発表した「新時代の日本的経営」で、今後は働き手を、「長期蓄積能力活用型グループ(正社員の終身雇用)」、「高度専門能力活用型グループ(専門的な能力を要する働き手を期間だけ雇う)」、「雇用柔軟型グループ(パート、派遣労働者などの低賃金不安定労働者)」の三種に分けて、労働力を効率的に使い企業収益を高めようと宣言。つまり、今までの大量に従業員を抱え、組織内部で重い負担を抱えつつやりくりをするのではなく、より効率的に外部の人材も借りながらやりくりをしていきますということである。

しかしそれには「40代以上の社員の削減」という長年の慣行である終身雇用が壁になり困難であった。そこに登場したのが人材派遣業界で、企業が受けていた契約社員やパート労働者の賃金差別訴訟の頻発した状況を受け、労働者を本来の職場から切り離して人材派遣会社が雇用すると言う形にすれば、面倒な訴訟は回避でき、人事責任も負わないという新しい理論を提示する。企業としては「使えない社員」や「お荷物となった社員」に対し、自分たちで会社を辞めてもらう話し合いをすることなく、企業に人減らし合理化を提案するコンサルタントにアウトソーシングし、同時に足りなくなった労働力は派遣会社を通して補充することになる。

リーマンショックによる年越し派遣村など、社会がその問題を現実問題として受け止めるきっかけになったのは2008年。その当時を含め、「2010年頃までの第二時代の人材派遣会社に食い物にされた犠牲者は20代、30代の若年労働者が多かった」という。「だが、2015年の今は違う。2000万人を超えた非正規労働者のうち、6割以上が40代以上の中高年だ」と、5年を経た現在はその様相が変わり、30代だった派遣労働者が正社員になることなく、そのまま派遣労働者として40代に突入したのと、今までは正社員として働いていたがその身分を失って派遣として働かざるを得なくなった40代から50代、そして退職後の生活の為に収入を得るために仕事を求めるがやはり派遣の仕事しか得られない高齢者。これらの人がこの5年の間に数字を伸ばしたのだと想像できる。

「自己責任」だとか、「時代の流れだ」とか言ってしまうのは容易であるが、これが現在の日本の風景であり、多くの人が望んでその状況にいるのではなく、より安定し高収入な正社員として社会に関わりたいと望んでいるが、それがかなわない状況があること。それが「二極化」する世界の中で技能を持ってそれを正当に評価してもらえ、見合った報酬を払ってもらえる職場を見つけられる人はいいが、それ以外の人は生きていくためにこのような決して望ましいとは言えない労働状態に定常しなければいけない。これが今後も当たり前の風景として定着していくのが望ましいのか否か。それを考え、決めていかなければいけない時代に入ってきたのだと良く分かる一冊である。

以下本文より。

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―奴隷労働の現場
人材派遣は「使いたい人数を安価に、必要最低限の時間だけ単純労働に従事させ、人事責任を負わない」という派遣先企業にとって、すこぶる好都合な制度になっている

第1章 人材派遣という名の「人間キャッチボール」
特定労働者派遣と一般労働者派遣
一般派遣のうち労働期間が30日に満たない短期派遣を日雇い派遣という

/政府・財界による労働者の流動化政策
1985年に労働者派遣法が成立

/日雇い派遣でも有給休暇をもらえる
派遣社員は派遣先の福利厚生施設を利用できるのか否か
深夜食を食べようとしたら食堂を使わせてもらえず、外で食べろと追い出された。飲み物も自販機に格安の値段が設定されていたが、これは社員の為に会社が補助している者だから派遣は外のコンビニで買えと指示された

/人材派遣会社20代社員の異常な高収入
合理化を指南するコンサルタント
要するに企業に入り込んで組織改編と人減らしを促す事業

第2章 人材派遣が生んだ奴隷労働の職場
/未登録でも派遣する人材派遣会社がある
人材派遣の要でもあるマージン率の公開を義務付けた。かつては一部で50%にも達していたピンハネ率は30%程度に抑えられている
人材派遣会社にとってピンハネだけが問題だから、子供でも外国人でも誰でもいいのだろう

/就業規則で「おまえ、態度悪いからクビ」
派遣先で他の労働者と会話してはいけません
複数の人材派遣会社が一つの職場に労働者を派遣
派遣先との契約時期や派遣人数、ピンハネ率の違いなどで賃金に差
派遣先への移動に際しての交通費はお支払できません

/就業条件外の過酷負担
横浜市 問題の職権は市内を走る循環バスの乗客の誘導員
トリエンナーレ
/中高年は美術品が似合わない?
広域に広がったイベントであるにもかかわらず、該当に道案内のガイドが全く配置していなかった
頭を使うガイドとなると、自給は2000円に跳ね上がる

/二重帳簿ならぬ二重マニュアル
トリエンナーレのブラックバイトリポート

/ノロウイルス感染者に「食品工場に行け!」
大手製パン会社のクリスマスケーキ

/官公庁と自治体、外郭団体でも非正規労働が拡大
官庁のそれまでの随意契約方式による民間事業委託を否定し、競争入札制度を採用
図書館司書、役所の各窓口、公立学校の教職員、カウンセラー、消費生活相談員、博物館や大ホールの運営スタッフなどが続々と外部の民間業者に委託され、同時に人材派遣会社が低賃金労働者を送り込む仕組みができあがった
最低価格落札方式の場合、提案企業の業務の質、労働者の待遇など事業の中身が問われることは無い

/不正の温床になりかねない危うさ
人材派遣会社が提案する「コストダウン」
知恵が無い。単に派遣労働者の賃金と待遇を最低のレベルに設定するだけ

/恐怖をふりまく正規社員たち
正社員「感情を抑える」「相手の立場を思いやる」といった社会人として必要な節度が欠落している

第4章 悪質な人材派遣会社を一掃せよ
―「二度と仕事紹介してもらえないよ。かわいそう」
/拡大する一方の非正規労働者
雇用者数を押し上げたのは123万人増えた非正規雇用
アルバイト、パート、派遣社員などの日正規社員は2014年 2000万人を超えて2012万人
中高年は45-54歳 387万人
65歳以上141万人
/週5日終夜勤務/従順な派遣労働者
いったん正社員の座から落ちてしまったら、もう絶対に元には戻れないのが日本という国

/人材派遣を推進する識者たち
人材派遣を活用するのは、派遣スタッフの奴隷制、使い捨てに魅力があるから
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■目次
はじめに
―奴隷労働の現場

第1章 人材派遣という名の「人間キャッチボール」
―「いい年して、どうして人並みのことができないんだ!?」
/迷走する労働行政
/元祖はドヤ街の手配師
/政府・財界による労働者の流動化政策
/行政処分された第二世代人材派遣
/衰退と復活の第三世代
/労働内容の説明は虚偽
/派遣はエレベータ使用禁止
/監禁労働のタコ部屋
/悪意の果ての無駄
/人材派遣会社のシステム
/派遣労働者は保護されているか
/派遣元責任者と派遣先責任者
/日雇い派遣でも有給休暇をもらえる
/派遣労働者使い捨ての「待機」
/派遣先責任者によるひどい仕打ち
/一日中倉庫で重さ20キロのスーツケース運び
/人材派遣会社20代社員の異常な高収入
/求人サイトの矜持と責任
/ヤラセだった英会話通勤バス
/日雇い派遣の原則禁止問題
/近年稀に見る悪法
/中高年が職に就けない現実
/「年齢制限なし」の「裏メッセージ」
/「三種の辛技」
/いい加減な「人間キャッチボール」
/労働基準法に刃向う労働者派遣法

第2章 人材派遣が生んだ奴隷労働の職場
/極限まで単純化された派遣労働
/巨大ダンボール箱と格闘した中高年の「善意」
/人材派遣の定番「ピッキング」で実はトラブル続出
/派遣労働者に損害金を請求
/カゴテナーと接触して負傷
/出勤確認連絡
/マニュアルによる効率化は本当か
/予定調和のストーリー
/人材派遣会社が紀勢線を張ったワケ
/マニュアルは金科玉条
/未登録でも派遣する人材派遣会社がある
/就業規則で「おまえ、態度悪いからクビ」
/現代の派遣切り「お父さん、酒臭いよ」
/違法な人材派遣会社との二日間の攻防
/派遣労働者の差別待遇
/困難な業務でも派遣が担当
/就業条件外の過酷負担
/私たちは税金泥棒ではありません
/中高年は美術品が似合わない?
/二重帳簿ならぬ二重マニュアル
/テレビ局派遣で逆立ち強制
/ノロウイルス感染者に「食品工場に行け!」
/人材派遣会社の女性社員が必死なワケ
/東南被害も泣き寝入りの派遣労働者
/疑惑の「登録費」

第3章 人材派遣の危険な落とし穴
―「もう来るなよ。てめえみてえなじじい、いらねえから」
/人材派遣が急拡大した本当のワケ
/官公庁と自治体、外郭団体でも非正規労働が拡大
/時給2000円が900円に
/研修日当なし、交通費なし、最低賃金以下
/人材派遣会社の狡猾な手口
/人材派遣の安値受注が生んだトラブル
/人材を集められない人材派遣会社
/試験監督が逃亡しちゃった
/不正の温床になりかねない危うさ
/給与踏み倒し計画逃散?
/斜塔は元CAで名古屋財界のアイドル
/恐怖をふりまく正規社員たち
/事件の現場は巨大モール
/混乱する運営の尻拭い
/繰返される監視役の無意味な指導
/踏みにじられた買い物客の夢
/無知な派遣先責任者との攻防
/強要、脅迫、監禁
/労働者の救済要請を無視
/奴隷派遣は本当にお得なのか?
/熟練者と素人の差
/無責任体質
/人材派遣活用のリスク
/人材派遣会社に頼ったら事業が行き詰った
/カタカナ肩書き乱発のハレーション
/イベントでの日雇い派遣は業務上横領?
/除夜の鐘が鳴る頃、てんやわんやの大騒ぎ
/若者と中高年との格差
/意気消沈する派遣先責任者
/企業の稼ぐ力を削ぐ無責任人事

第4章 悪質な人材派遣会社を一掃せよ
―「二度と仕事紹介してもらえないよ。かわいそう」
/拡大する一方の非正規労働者
/週5日終夜勤務/従順な派遣労働者
/中高年を殺すな
/従順な派遣労働者
/権利意識に欠ける中高年労働者
/労働環境によるワナ
/現実を直視してほしい
/人材派遣を推進する識者たち
/重要な情報をネグレクト
/欠けている労働者保護の視点
/人材派遣と景気浮揚
/副社長が帰っちゃった!欧州の労働事情
/日本にスウェーデン流を持ち込んだ企業
/欧米先進国比較 ドイツ・米国・フランス

あとがき―すぐにできる改善策の提案
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中沢彰吾

2014年4月8日火曜日

ロシア外務省 セブンシスターズ ★★★ 1953




昨日の夜に、再度中心繁華街まで地下鉄で出て行って街を少し歩いてみるが、やはりこのモスクワ。観光客が地図を片手に歩くのはそうそう簡単ではないようである。

そうなると明日の建築巡礼も予定通りにスムースに巡れるという訳でははなさそうなので、食事をとってからさっさとホテルに戻り、グーグル・マップとIndesignを開いて、それぞれの出発地から目的地までどのように歩き、どのような交通手段を利用して、何個目のなんという頭文字の駅で降りて、それからどうやって歩いていけば到着できるかを地図に表示して項目ごとにまとめていく。

こちらで地図アプリが使えればいいが、ローミングに気を使いながら切ったり接続したりするのも忙しないので、朝から晩までの予定をびっしりPDFにして、それをiPadに入れてナビとすることにする。そんな訳でその作業に時間を取られ、就寝するのは午前3時。「明日も迷惑でなければ着いていこうかな」というオーストラリア人との予定も合わせなければいけないので、朝早くおきて一つ目のセブンシスターズポイントだけでも終わらせてしまおうと思っていたが、やはりそんなに早くは目覚めることができず、9時過ぎからモスクワ建築めぐりを開始する。

このプレゼン出張の前に、ロシア人のスタッフにモスクワで見ておいたほうが良い建築を教えてもらい、それを地図上で示してもらい、どのように巡ったほうがいいかを教えてもらうが、その後自分で調べるとやはりロシア構成主義の建築がかなり残っているらしく、それを見逃す手はないとグーグル・マップにマッピング。それをもとに、昨晩新たなるルートを作成したという訳である。

市内をぐるりと時計回りに巡っていくルートの最初の目的地は、セブンシスターズと呼ばれるスターリン・ゴシックの7つの建物の一つ、ロシア外務省。「青色から茶色へ・・・」、「乗り換えたら最後がEみたいな頭文字の方向へ・・・」となんとも原始的なナビゲーションをしながら、途中途中で進められていた地下鉄の駅の内装を写真に収めつつ目的地の駅へ到着。

地上に出たところで、今度は地図を眺めながら東西南北を確認して進む方向を決めていくのだが、こういうときにアイコンとなる建物や広場がある都市計画はありがたい。この時も駅をでたらすぐに明らかに異様な高さを誇る建物が見えて、それが目的地だと把握でき、その建物の位置関係から地図の方位を確認することができた。

このロシア外務所の建物。昨晩夜の赤の広場から周囲を見渡し、頭一つでている各地のセブンシスターズの中でも、シンデレラ城のように上に向かって上昇しながらも、次第に細くなっていく繊細な姿が一番印象的だった建物である。

建築家はゲルフレイクとミンクスで、1953年に完成している。27階建てで170mというその高さ。戦後すぐに立てられたというその時期を考えると、当時のソ連の国力を思わずにいられない。建物のに近づくと余りに高すぎその姿を十分に視界に納めるためには恐らく数百メートルは引きをとらないといけないが、都市の中にそれだけの引き空間をとることはできるはずもなく、全体像を感じることなく、面を捉えることになる。

ロシア外務省ということで、☆のモチーフがあちらこちらに掲げられている。ソビエト時代にはこの赤い星(レッドスター、 five-pointed red star)のモチーフは共産主義や社会主義などのシンボルとして使われ、五つの頂点は、労働者の手の五本の指また世界の五大陸を表すとされる。または五つの頂点がそれぞれ共産主義を指導する五つの社会集団(青年、兵士、産業労働者、農業労働者、インテリゲンチャ)を表すとも言われるという。

中国では同じ星でも「黄金の星」(ゴールドスター、Gold Star)と呼ばれる黄色の星をシンボルとして使っており、今回のロシアのコンペでも星型を採用したいたのだが、当初は5角の星型を採用していたのだが、中国人が「五角の星は社会主義国家において余りにも象徴性が強いので避けたほうがいいのでは・・・」ということで最終的に六角の星型に変えた経緯があったが、やはりこういうところで国の成り立ちが感じられるというものである。

その赤い星が掲げられた重厚な扉を入っていくと、床にも星がかたどられているのが見られる。上部に上昇するゴシックの教会建築の様な縦長の空間が見られるのかと期待していたが、どうやらロビーはせいぜい2層吹き抜け程度の空間のようである。セキュリティチェックがあり、パスを持っていないと入れないようなので、諦めて外へ。

横に回ってみてみるが、やはりここまでくると「塔」としての認識よりも、都市の中の量塊、マッスとしての認識に変わってしまうようである。そんなことを思いながら近くに位置する「プーシキンの家博物館」へと向かっていく。そこまでの通りは、なかなか活気がありつつ落ち着いていて、モスクワに到着して始めて歩いていて心地の良い道だと感じることができた。

案内が出ていないので少々苦労しながらやっと見つけたプーシキンの家博物館。ロシアで最も愛されるという詩人・作家であるアレクサンドル・プーシキンは、先日観に行ったオペラ「エフゲニー・オネーギン (Eugene Onegin)」 の作者でもある。

やっと自分の中でのロシア文学へのつながりが少しずつ出始めたので期待していたのだが、なんと今日は休館日。「ネットではそんなことは書いてなかったのに・・・」とジェスチャーで係のおじさんに伝えるが、「明日戻って来い」と言われ、ガックリ肩を落としながら、次の目的地である「メルニコフの自邸」へと歩を進めることにする。















アレクサンドル・プーシキン











2014年1月26日日曜日

ブラック企業規制

政府によってブラック企業の規制への動きが叫ばれて久しい。

こういうニュースを見るとどうも違和感を感じ得ない。小泉内閣の規制緩和が非正規労働者の増加を招いた訳ではないのだろうが、少なくともグローバル社会を迎えた新自由主義経済を受け入れて、世界の経済の循環の中に飛び込むことを決めた日本政府。

その時から世界規模でアウトソーシングされる業務の波は、世界規模での仕事の奪い合い、それに伴うコストカット、さらに価格の下落をもたらすことになる。それを避けるには他者の追随を許さない付加価値を追求していかなければいけない企業と、同時に自ら企業に対して提供する労働にも他者との差別化をしていかなければいけない労働者。

それが出来ない企業も競争の中で下位に転落し、同じくそれができない労働者は世界水準で考えられる低い対価しか払われることの無い単純労働に甘んじることになる。それほど冷徹で厳しい世界こそがグローバル社会がもたらしたもの。

あなたよりも的確でなおかつ迅速に仕事をこなす人により安価で発注でき、業務の遂行になんら問題の無いネット環境が構築された現代においては、全ての労働者その現実を深刻に理解する必要があるのだろう。

アクセスのグローバル化が終了した現在。既に始まっているのは物理的なボーダーレス化。生産拠点を移動するのも、また労働者の流出入もまたより簡易になっていく。アジア、アフリカ、南米からより良い機会を求めてやってくる労働者。

日本の安穏とした環境の中で低賃金と思われる報酬でも、彼らにとってはどうしても手に入れたい仕事かもしれない。そういう彼らと戦っていかなければいけないし、どうにかして優位性を保っていかなければいけない。それがフラット化した世界の現実。

ブラック企業問題は、その現象の一断面に過ぎないだろうし、恐らくこれからもっとシビアに、もっと絶望的な現実がまっているかもしれない。もちろん不当な労働環境を強いる企業は淘汰すべきだと思うが、同時に安易に国民を慰安するようなことでは、事の本質は解決されていかないのだろうとも思わずにいられない。