数ヶ月前の中華新年を前にしたオフィスでの忘年会。そこでスタッフを前にして簡単なスピーチをするのだが、その時に何を題材とするかも悩みの種となるが、それと同時にどうやって締めくくるのかに思いを馳せる。
その時に読んでいたこの本の中のケネディの一節を思い出す。重要なのは明るさを示すこと。明るい未来への見通しを示すことが組織を率いる大きな力になるということ。
そういう風に人生の中のあるシーンにおいて、ふと思い出すことが読書の功績なのだと思う。読み終えてすぐに考え方が変わる訳でもなく、時間の過ごし方や行動に影響が出ることよりも、ふと思い出したフレーズが自らの行動を決定していく。その積み重ねで人生が決まっていく。それを感じさせてくれた一冊である。
まえがきで語られる
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人間を泳ぐことに喩えるなら、人間関係は水である。水が抵抗になる
人間関係は、人生を生きていく上での最大の抵抗力である。私達がストレスを感じる時の多くは、人間関係が絡んでいる。
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はまさに現代社会に生きる全ての人に共通の事項であり、だからこそその抵抗となる人間関係を如何にスムースに泳いでいけるか、そのヒントを過去の偉人の生き方に読み取ろうとする良き導入である。
仕事に対して徹底して効率主義者であったエジソンは効率的な生活リズムが効率的な仕事に繋がる年、「食事の量と、睡眠時間を極力少なくし、血管をまったく圧迫しない衣服を着た」という。「休むことは、錆び付くことだ」という言葉。伝えたいと思う顔が何人も浮かんでくる。
高橋是清の段では、如何に「自分に重きを置くことをしないこと」が仕事の本質に向かわせてくれるかを示す。「元来無一物で世の中に出で来たのだから、いくら貧乏して困ったといっても、以前の境遇に戻ったと思えば辛抱もできよう」と言う言葉こそ、現代の日本の全ての政治家が再度思い起こす言葉であるだろう。
チャップリンの段では「ええ、私に必要なのはチャンスだけです」という彼の言葉が、日常に溢れる「仕事をください」という言葉とどう違うかを示し、準備ができていてなおかつ上昇しようとする勢いを持つことの大切さを示す。
夏目漱石においては、年の離れた奇妙な友情関係を持ち上下関係を「水平関係」に変換した彼の姿勢に、10代20代の若者と、対等に話すことは骨が折れるものではあるが、そこに未熟だけど気概だけはあると見抜いて対等に付き合うことの大切さを説く。
黒澤明の段の「批判は、誰にでも云える。しかし、その批判の上にたって、具体的に改訂して見せることは、並大抵の才能で出来ることではない」という言葉。
ジョン・F・ケネディにおける、大統領に不可欠な資質として6つの能力として人格と判断力、活力、知的好奇心、歴史感覚、未来に対する強力な見通し。将来への明るい見通しと姿勢に人は惹きつけられる。
杜甫の様に10歳以上年上の離れた友人を作ること。親友と呼び合えた2大詩人である李白44歳と杜甫33歳。真面目な杜甫に豪快な李白、年齢が離れているからこそ生まれる刺激。
与謝野晶子では「女は恋をするにも命がけです」とし、「老いることは肉体より先に精神と心情がとが硬化」することとする。精神的に老いない人には、「可塑性」がある。
マキャベリの段では、「私は悪評に弱い」とし「私のように「いい人」と周囲から思われたいと願い続けている人は、やはり組織のトップには立てない。評判ばかり気にする人は、最後は破綻してしまう。」と自らを分析し、「よい人間」が良い国(会社)を作るかといえばそうではないとする。
孔子の段では「我を知るものは其れ天か」という言葉から「自分を見てくれている存在、を作ると、不思議なことに逆境に強くなるのである」とする。その為に家族の存在が大きいのだろうと実感をする。
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こうして幾つか纏め今は言葉として残っているが、またいつかケネディのケースではないが、人生のある場面に置いてふと思い出して行動を決定することがこのメモの中にも隠されているのだろうと期待する。
目次
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まえがき
第一章 ビジネスに効く人間関係力
仕事関係に振り回されてばかりだ - 回答者/宮本武蔵
仕事で悩んでいる部下になんと声をかければいいか - 回答者/エジソン
最近仕事の愚痴が多く、つまらない - 回答者/高橋是清
会社でもっと重要なポジションに就きたい - 回答者/チャップリン
出来の悪い新入社員とは口も利きたくない - 回答者/夏目漱石
出来る年下の部下とどう接すればいいのか - 回答者/劉備玄徳
若手の社員を一人前に育てたい - 回答者/黒澤明
部下の士気が一向に上がらない - 回答者/アレキサンダー大王
心の狭いイヤな上司に当たってしまった - 回答者/三遊亭円朝
もっとリーダーシップを発揮したい - ジョン・F・ケネディ
無責任な上司、無能な部下の板挟みだ - 回答者/孫子
部下からいいアイデアが上がってこない - 回答者/松尾芭蕉
どうすれば部下の信頼が得られるか - 回答者/ナポレオン
第二章 プライベートを円滑にする人間関係力
出会いが少なく、仲間もいない - 回答者/寺山修司
なぜあの人は不機嫌なんだろう - 回答者/モーツァルト
「人の話を聞かない」といわれる - 回答者/宮本常一
人生に刺激を与えてくれる友人を得体 - 回答者/杜甫
キレやすい自分を持て余している - 回答者/新渡戸稲造
誰も本当の自分を見てくれていない - 回答者/マーク・トウェイン
子どもをどう教育すればいいか - 回答者/勝小吉
あんな女とは結婚しなければよかった - 回答者/サルバドール・ダリ
夫婦間の危機にうろたえている - 回答者/与謝野晶子
世間の評判が気になって仕方がない - 回答者/マキャベリ
第三章 他人に頼らない人間関係力
女性にモテるにはどうしたらいいか - 回答者/坂口安吾
逆境に経ち、途方に暮れている - 回答者/孔子
仕事関係者とプライベートまでつきあいたくない - 回答者/渥美清
すべてがうまく行かず何もかもイヤになった - 回答者/種田山頭火
他人から尊敬されたい - 回答者/モハメド・アリ
人から「存在感が薄い」とよく言われる - 回答者/一休宗純
マンネリ感を脱したい - 回答者/ヒッチコック
他人の中で自分を見失ってしまった - 回答者/道元
友情と保身、どっちを取るべきか - 回答者/司馬遷
人間関係にほとほと疲れ果てた - 回答者/釈迦
あとがき
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