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2015年11月27日金曜日

「虹色ほたる 〜永遠の夏休み〜 」 宇田鋼之介 2012 ★★

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スタッフ
監督 宇田鋼之介
原作 川口雅幸
脚本 国井桂
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ユウタ:武井証 / 櫻井孝宏(大人)
さえ子:木村彩由実 / 能登麻美子(大人)
ケンゾー :新田海統 / 中井和哉(大人)
青天狗: 大塚周夫
蛍じい:石田太郎
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作品の中で、高畑勲 の「かぐや姫の物語」 の映像に似た、アニメーションでしか出来ないような絵が流れるような表現がされているのに気になって調べてみると、やはり作画にはCGは一切使用しなかったという。

CGの技術がここまで高度になり、使用するコンピューターの能力と投入する人員や時間によってそのクオリティが決まってしまうこの時代。その中で同じ土俵に立つことなく、独自の表現を模索する。どの世界でも同じように、様々な葛藤の末に新しい表現や価値が生まれてくるのだと改めて感心する。

それはさておき、ネットで公開された小説が人気となり、アニメ化、映画化となった背景もまた如何にも現代らしい作品である。

突然30年以上も前にタイム・トラベルして現代ではダムの底に沈んだ村でひと夏を過ごす少年の物語。まさに夏休みの大冒険という少年の永遠の憧れのファンタジーもの。長閑な風景の舞台となっているのは、埼玉県秩父市の二瀬ダム(秩父湖)ということらしい。

30年という時間と、美しかった自然を繋ぐ道具として重要な役割を演じるのがタイトルにもなっている「ホタル」。見終わった後に、今でもホタルの見える場所がどこなのかとついつい調べたくなる一作である。









2015年4月5日日曜日

「鬼神伝」 川崎博嗣 2011 ★

現代に住まう中学生が、ある日謎の鬼に追われ、そこを救ってくれた僧侶に連れられ時空を超えて1200年前の平安の都である京都にタイム・トラベルし、そこで人と鬼の戦いに巻き込まれる。

というストーリー。

最初の「鬼」の描き方が何かもやもやとして気になったので見てみたが、ことごとくつくりが浅い一作。平安の都の描き方がアニメーションだからこそできる特別な表現になっているかといえばそうでもなく、「鬼」として虐げられる部族と貴族の戦いで何が正義かを悩む主人公の姿も「どこかで見た設定・・・」と思わされるだけ。

なぜこの主人公がわざわざ時空を超えて平安から現代までやってきて呼び寄せられたかの深い設定も感じられず、平安という文献がそれほど残されていないだけにまだ不思議な世界観が通用する距離感とそこにアニメの手法を被せることでの期待感は分からなくも無いが、それがうまく融合されなかったという感じだろうか。

八百万の神々がもっと身近であったはずの日本の日常を、ぜひともアニメの力で説得力を持って描き出す。そんな作品を期待せずにいられない。
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スタッフ
監督 川崎博嗣
著者 高田崇史
脚本 荒川稔久、川崎博嗣
イラスト 村上豊
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キャスト
天童純:小野賢章
水葉:石原さとみ
源雲:中村獅童
源頼光:近藤隆
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2014年12月16日火曜日

「オール・ユー・ニード・イズ・キル」 ダグ・リーマン 2014 ★★★★

あと少しで2014年も終わりということで、あちこちで2014を統括する記事が目立ってきた。その中の一つとして、「2014年ベストSF映画10本」も発表されたようである。

「LUCY ルーシー」が入っていないのはやや疑問が残るが、確かに今年は今までとは次元の違うSF映画に恵まれた年と言っていいほど、今まで見たことのない未来のイメージが映像として描かれた作品が多かった。

そして見事その1位に選ばれたのがこの映画。原作が桜坂洋のSFライトノベル「All You Need Is Kill」ということで、日本でもかなり話題にあがっていたが、如何にも「マンガ」的な未来を向上したCG技術にて実写化した作品なのだろうと想像していたが、そんな想像を吹き飛ばすくらいの衝撃を与えてくれる。

「ギタイ」と呼ばれる謎の侵略者と人類との戦いが続く近未来が部隊。その前線にかなり地位の高い広報担当官であるトム・クルーズ扮するケイジ少佐が配置されそうになるが、臆病風に拭かれその命令を反故しようとしたところ、兵士として前線に送り込まれる羽目になり、なれない戦闘の中で、偶然にも「アルファ」という中ボスを倒してその返り血を浴びたことで、タイムループを起こせる能力を実につけてしまう。

状況が把握できないままに、何度も戦闘に参加するのを繰り返しては見事に殺され、ループによってまた最初からやり直すのを繰り返すなか、かつて自らもループの能力を手にした戦場の女神と呼ばれる女兵士・リタと出会い、その能力を利用して人類へ勝利をもたらすべく特訓を開始する。

何度何度も戦場で様々なパターンを繰り返すことにより、「先に進める」行動パターンを見つけ出し、死んではリセットを繰り返す往年のRPGゲームのような体験をしながら、「アルファ」の後ろに潜んでいる「オメガ」を倒すべく糸口を見つけていくという内容。

「ボーン・アイデンティティー」の監督を務めたダグ・リーマンのスピード感のある映像と、文官から何度も戦闘と特訓を繰り返すことにより、屈強な戦士へと成長を遂げていくトム・クルーズ。そして、その脇で彼の成長を見守る最強の女戦士に「プラダを着た悪魔」のエミリー・ブラント(Emily Blunt)。アン・ハサウェイも今年を代表する「インターステラー」で主演を演じたことを考えると、8年の時間を感じずにいられない。

タイム・トラベルを題材にした物語は古今東西、使い古されてきた感があったが、「タイム・トラベラーに取っても、知らない未来はあるのだ」ということを描き、それを知っていくためには何度も何度もタイムループを繰り返さなければいけないという、まさに暗黙の中に隠されていた部分に光を当て、それをゲーム感覚で描き出す手法は、今まで見たことのない未来の姿として十分に評価できる。

もちろん、「インターステラー」の様に、ハリウッドで映画にするために各分野の専門家を集め、裏を取りながら詳細を詰めて、一寸の隙もない物語にされたものとは違い、日本の一人の小説家の想像に生み出された物語であるだけに、人類とギタイの戦いの背景や、アルファの返り血を浴びることでタイムループの能力が移ってしまうという安易な設定と、それならば何人もの人間が同時にその能力を持ってしまう可能性と、その時にいくつもの時間が同時進行的にループをしてしまう時にどこに戻ってくるのかという問題点など、細かな詰めが行われない無い感は否めないが、それがこの物語の主題を弱めているかといえばそうでないこともまた事実である。

始めの30分は、「なんて詰めの甘い映画なのだろう・・・」と不安を感じながら見ていくが、そのうちにこのタイムループの妙が分かりだし、映画というか、何かのアトラクションを体験しているような気分に浸れる。ぜひともDVDでじっくりを見直したい映画である。
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スタッフ
監督 ダグ・リーマン
原作 桜坂洋
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キャスト
ウィリアム・ケイジ  トム・クルーズ
リタ・ヴラタスキ  エミリー・ブラント
ファレウ軍曹  ビル・パクストン
ブリガム将軍  ブレンダン・グリーソン
カーター博士 ノア・テイラー 
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作品データ
原題  Edge of Tomorrow
製作年  2014年
製作国  アメリカ
配給  ワーナー・ブラザース映画
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2014年6月3日火曜日

「アバウト・タイム 愛おしい時間について」 リチャード・カーティス 2013 ★★

これだけ飛行機での移動が日常的になってきた世界においては、映画を見る機会が最も多いのは飛行機の中なのではないかと思わずにいられない。人が映画を見る機会の最も多い場所は一体どこなのか?同じ映画を映画館で見た人、DVDで自宅で見た人、そして飛行機の中で見た人の割合をぜひともどこかの調査会社で調べて見て欲しいものである。

つまりは映画を作る側としても、こうして飛行機の中で見られることをある程度前提として映画を作ることも起こってくるだろう。一体それが映画業界にどんな変化をもたらすのだろうかと思いを馳せる。

北京からベニスで行われる建築ビエンナーレに参加するために、スイス航空で乗り換え地のチューリッヒに向かう長距離フライト。手元には建築の専門書を2冊、新書を2冊、そして文庫本を1冊と移動時間を有効活用するために普段なかなか読み進められない読書の準備をして、そしてフライト時間から考えて何が見れるかを映画のリストから探し出す。

「ラブ・アクチュアリー」の監督で、舞台がロンドン、そしてビル・ナイが出てるとなるとこれは見逃せないと選んだのがこの一本。そのほのぼのとした雰囲気からは想像できないが、タイム・トラベル系の内容。過去に戻れることで、人生の中でよりよい選択を積み重ねることができる主人公。

それでも描かれるのは時間をやり直すことができるからこそ理解できる、一回きりの人生のすばらしさ。そしてその人生の中で一回きりで出会った大切な人々。過去に戻れるから、時間をやり直せるからかどうかではなくて、誰でも自分の人生がどれだけ価値のあるもので、それが一回きりしか得ることのできない時間なのだと意識して「今」を過ごすこと。「今」を積み重ねること。そんなメッセージを感じながらも、役は変われど演技は変わらないビル・ナイに癒されながら見終えることができる一作である。

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スタッフ
監督 リチャード・カーティス
脚本 リチャード・カーティス
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キャスト
ティム・レイク  ドーナル・グリーソン
メアリー  レイチェル・マクアダムス
父さん (ティムの父)  ビル・ナイ
キット・カット (ティムの妹)  リディア・ウィルソン
ハリー  トム・ホランダー
シャーロット  マーゴット・ロビー
母さん (ティムの母)  リンジー・ダンカン
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作品データ
原題 About Time
製作年 2013年
製作国 イギリス
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2013年6月4日火曜日

「ねじの回転 FEBRUARY MOMENT 上・下」 恩田陸 集英社文庫 2002 ★★★★


タイム・トラベルという言葉が刺激する人類の想像力。何度も何度も描かれきた物語の中で、それでもまだ手付かずだったスペースがあったのかとまずは驚愕するこの作家の想像力。

人が過去に戻れるようになれば、現在の自分達に有利なように過去の歴史に手を加える。それは容易に想像がつく。では、今度はそれを防止する側、監視する側が現れる。国家レベルを超えて、人類全体としての組織がそれに当たる。まさに国連のような組織。

そして過去に戻って歪められた歴史を修正することになるだろうが、完全に一致させずとも、押し寄せる波のように、歴史も長い年月をかけて自分自身を修正するように振舞うという過程を作り出す。これは斬新。

しかし、その上を行くのは、過去に戻って歴史に手を入れるのはオリジナルの歴史を歪めることになるのだが、ではどこまでをオリジナルの歴史を定義するのか?つまりは、こうして人類が過去に戻って歴史に手を加えることすれ、それはオリジナルの歴史の一部なのではないかというクラインの壷の様な設問。まさに禅問答。

こうして設定されたタイム・トラベルの新たなる地平線に絶対の自信があるために、物語の最初の3分の1は、2.26事件というかなり思い昭和の歴史をただ淡々と描き、一体何が行われているのかといういかにも説明的な文章は一切書かないその潔さ。

タイム・トラベル小説に新たなる一石を投じることになる名作ではないだろうか。

2013年4月4日木曜日

「千年女優」 今敏 2001 ★


演じることは時間を飛び越えることなんだと改めて思い知る。
それはある種のタイム・トラベルに違いない。

一人の女優の生き様を彼女の人生と、その中で演じてきた役の人生を横断しながら、ドキュメンタリーとして客観的な第三者を介入させる。その後に展開する監督の夢と現実の横断を先取りするかのようなストーリー。

「彼女が追い続けた男は誰か?」
「どこに行ったのか?」

という軸では、次から次へと変わる設定が「またか・・・」の繰り返しに陥るのを避けられるかと言えば少々辛い印象。「演じる」ことが「タイム・トラベルなんだ」という軸に匹敵するくらいのもう一つ大きな軸が必要だった気がせずにいられない。


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スタッフ
監督 今敏
原案 今敏
脚本 村井さだゆき

キャスト
荘司美代子 藤原千代子(70代)
小山茉美   藤原千代子(20~40代)
折笠富美子  藤原千代子(10~20代)
飯塚昭三  立花源也
津田匠子  島尾詠子
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2013年3月17日日曜日

「時をかける少女」細田守 2006 ★★★



「タイム・トラベル」と言えば、ミステリーかSFというのが王道だと思っていたら、そこにまさかの「恋愛」と「青春」を絡ませるところは流石の筒井康隆というとこか。

「もし、過去に戻れたら・・・」

という質問に対して、様々な立場の人が様々な思惑を持ってその恩恵を受け取るというのを非常によく描き出したのが「リピート」 を経験した後では、どうしても誰もが打算的な動きをするものだと思いがちだったが、毎日そこそこに楽しい青春真っ只中の悩みも可愛いらしい程度の高校生が過去に戻れるとなったら、こんなに話が変わるのかと非常に納得してしまう。

「妹に食べられてしまった、取っておいてプリンが食べたい。」
「仲いい友達が急に切り出した告白を聞かなかったことにしたい。」

なんて、とても単純な目的になんだかほのぼのさせられる。

と、同時に、「好き」とか「付き合いたい」とかが毎日のすべてであり、副次的に「部活」とか「勉強」が彩りを加える高校時代の時間の過ごし方が、とても自然に描かれて、それがとっても懐かしく感じられるシーンばかり。

テレビやドラマで何度も実写化されてきた原作の持つ魅力が、アニメという世界で細田守という才能によって映像化され、新たなる世界観が足されたような一本。「サマーウォーズ」につながる様な、「時間」の描き方が覗き見れるような一作である。


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監督 細田守
原作 筒井康隆

キャスト
仲里依紗 紺野真琴
石田卓也 間宮千昭
板倉光隆 津田功介
原沙知絵 芳山和子
谷村美月 藤谷果穂
垣内彩未 早川友梨
関戸優希 紺野美雪
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2013年1月18日金曜日

「バブルへGO!! タイムマシンはドラム式」馬場康夫 2006 ★



誰かが「結構面白いよ」、と言ったいたのが耳に残っていて、ランニングしながらだから日本語の映画の方が楽かもな・・・と思って見たこれまたタイム・トラベル系の一作。

タイム・トラベルが可能であれば何をするか?

を大きく分類すると、現在に不満を持っており、過去に戻って行った選択を修正し、自分にとってより良い現在へと修正するか、それとも現在に十分満足しており、知的好奇心などから過去へ戻って実際に知ることの出来なかった世界を見てくるかの二つに分かれるのが普通かと思うが、欲望で出来ている人間世界、どうしても前者のものが多くなるの人の性というものか。

海外のタイム・トラベル系のものに比べると、洗濯機、バブル崩壊を防ぐなど非常に設定のしょぼさが目に付くが、壮大かつ緻密に世界観を構築し膨大な予算をかけて映画を撮るというのではなく、娯楽作品の範疇でクスリと笑えてホトリとできる脚本で、そこそこ客が呼べそうなキャスティングをし、レインボー・ブリッジのCGに随分お金をかけました的な内容は否めない。

海外でも評価されるような渋い作品は沢山でてくるようになった日本の映画界だが、一本くらいハリウッドや中国の度肝を抜く様な壮大な世界観を持った一作を出してもらいたいものだと思う。

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スタッフ
監督 馬場康夫

キャスト
阿部寛
広末涼子
薬師丸ひろ子
吹石一恵
伊藤裕子
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製作年 2006年
製作国 日本
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2013年1月16日水曜日

「ミッション:8ミニッツ」ベン・リプリー 2011 ★★★★



年末に購入したIPadの有効利用のためにと、ジムでのランニング時を使って、中国版YouTubeである优酷であれこれ映画を探してみる。そんな訳で、数日間で見終えた一作。

乾くるみの「リピート」を思い出さずにいられなくなるタイム・トラベル系の内容。村上龍の傑作「五分後の世界」の様な完全に平行して存在していくパラレル・ワールドではなく、あくまでも一本の時間軸をベースとした世界の中で、その時間軸を移動しながら徐々にパラレル・ワールドへと偏差していくという感じ。

想像力豊かな小説家、映画監督によって様々な未来の姿が描かれてきたが、「こんな考え方があったか!」と衝撃を持って迎えられる作品が徐々に減ってきたフラットなグローバル社会のなか、久々に現れた衝撃作。

タイム・トラベルとして、物理的な存在の身体を送り込むのではなく、ソース・コードとして限られた時間だけ過去に挿入される神経。その論理的背景や技術的裏づけ。何よりもソース・コードとして送られる人物が、どのような状態の人物であるかという極めて現実的な描写。

「リピート」の様に、何度も何度も、求める結果が得られるまでは繰り返し過去へと送られる。そのクローズド・サークル。そのクローズド・サークルが壊れた瞬間に立ち上がるパラレル・ワールド。あったことが無かったこととして成立するその世界のなかで、タイム・トラベラーは生きていくこと。その成立条件。最後の最後までしっかりとロジックの破綻が無いかとしっかり練られたその世界観に感服する一作。

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監督  ダンカン・ジョーンズ

キャスト
ジェイク・ギレンホール
ミシェル・モナハン
ベラ・ファーミガ
ジェフリー・ライト
マイケル・アーデン
キャス・アンバー
ラッセル・ピーターズ

原題 Source Code
製作年 2011年
製作国 アメリカ
配給 ディズニー
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2013年1月12日土曜日

「Looper ルーパー」ライアン・ジョンソン 2012 ★★



タイムマシンに関する話は限りないほど作られてきたが、実際問題タイムマシンが使えたら一体どの様に使うのか?

起こったはずの事をその原因からなくしてしまえば、現在がまったく違ったものになってしまうというパラレル・ワールド。そうすれば世界の秩序は守られず、なんでもありの混沌に陥るために、厳しく政府がその使用を制限する。しかしどの時代にもテクノロジーを使って暴利を貪る社会の闇が存在し、では彼らは一体何をするのか?というところに行き着く。

組織の邪魔になる相手を、未来から過去に送り、予め未来から送られた仲間によって率いられた組織の手によってそのものを始末する。一見道理的に見えているが、よくよく考えると、現在に邪魔な存在を、過去に遡って消すことで、現在の存在もなかったことにしてしまう。というのが一般的な想像力だと思うのだが、いまいちそのロジックがつかめない。

通常こういうタイム・トラベル系の話だと、パラレル・ワールドが交錯しないようにと、未来から来た自分が現在の自分に出会わないようにというのが、バック・トゥー・ザ・フューチャーからの常識であるはずだが、それをあっさり裏切り、二人そろって事の収集にあたるという設定もなかなか興味深い。

日常の本当に些細な選択で分かれた二股が、未来の世界で大きな違いとなって現れる。そして現在に生きるすべての人間のすべての行動が、未来の源泉となる可能性を含み、その様々な事象が複雑に絡み合いながら未来に向かって進んでいく。それを見ると、人がどんなに抵抗しようとも、どんなに踏ん張ろうとも、少々の揺らぎを含みながらその進化の道は歪むことなく同じ方向に向かっているのだろうと思わずにいられない。恐らく存在するパラレル・ワールドもそんなに距離を持って存在するのではなく、ほんのちょっと、よく見ると違っているというレベルの差で存在しているはずであろう。

未来を描く映画の楽しみは、未来の都市がどのように描かれるかであるが20年後の近未来の上海は、高密度で密集する高層ビルの高層部分での接合が増えて、下層部はより流線的なデザインと、極めて現実的な都市として描かれている。これだけの都市を設計するには、建築の知識のある人物かある程度の設計図や、パースを起こしているのだろうが、コンピューターの画面の中だけに存在するという、建築が持ちうる他の様々な与件を無視することが可能な中で表現された未来の都市への想像力が、あまりにも刺激にかけて、現在を作り出す建築家達に新たなるイマジネーションを想起させないのはどうにも寂しい思いに駆られてしまう。

衝撃のクライマックスがあるわけでもなく、やっぱりいつになっても、未来を作るのは人間であり、その人間は家族や恋人という他の人間との関係性の中で育ち、どれだけ愛情を注がれて育つかによって、描く未来もまた違ってくるということへの主題の移行が唐突すぎる感はいなめない。


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監督ライアン・ジョンソン

キャスト
ブルース・ウィリス
ジョセフ・ゴードン=レビット
エミリー・ブラント
ポール・ダノ
ノア・セガン

作品データ
原題 Looper
製作年 2012年
製作国 アメリカ
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