2016年2月8日月曜日

洞察力とフィードバック

建築家という職業は、たとえば素晴らしいホテルや旅館に泊まること、そこで空間を体験すること、どのようなサービスや空間で人は快不快を感じるのかと理解することが、ただの楽しみではなく、日常の業務に直結する経験や知識として蓄積され、それが次の仕事へとフィードバックを与えることができる、非常に稀有な職業だとつくづく思う。

定年退職をして、時間と経済的に余裕があるからと高級ホテルに宿泊する高齢者の過ごし方ではなく、現役の時にこそ、そういう場所に訪れて豊かな空間体験と、高級なサービスや空間とは何かを身をもって理解する。そしてそれを次の糧にしていくのが大切なのだということ。

そんなにいくつも宿泊することはやはり経済的に難しいが、だからこそ前もっとリサーチをし、今年はぜひここに泊まってみたいと目的を持って訪れる。宿泊することは何よりもその宿を理解する上で一番であるが、それが叶わないのであれば、食事やドリンクだけでも、一人のゲストとしてその場所に訪れる、そういうことを比較しながら意識を持って積み重ねていく。

そういうことがいつか素晴らしいホテルを設計する強い土台になるのだろうと思うながら、これはホテルなどの宿泊施設だけでなく、レストランや映画館、図書館や病院、すべての場所が生きた教科書であり、いいところ、悪いところを身をもって体験し、観察し、そして吸収する。そういう態度こそが、職業人として求められるものなのだと、改めて感じる年齢になってきたのだと痛感する。

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