やはりビエンナーレといえば、こちらのジャルディーニ(Giardini)という感じが強い。会場も広く、多くの人で賑わっているので全体的な雰囲気も華やかである。
こちらジャルディーニ(Giardini)に展開する各国パヴィリオンの統一テーマは「近代化の吸収:1914-2014(Absorbing Modernity)」。世界を覆ったグローバリゼーション時代において、それでも地域的な「ナショナル」なものをどう捕らえるのかを各国に投げかける趣旨となっている。
各国がキュレーターを中心となり二年もの長い年月をかけて頭を悩まし、それでもって様々な関係者を動員して手がける展示なだけに、展示趣旨を少し読んだだけではとてもじゃないがその内容の本当に意味するところは理解できない。なので、各パヴィリオンに足を運んでも、その展示関係者から説明を受けなければ、その展示が一体何を意味しているのかさっぱり分からないということになる。
そんな訳で、まずはメインエントランスをくぐって、殆どの人がこの動線を通るだろうと思われる右回りに添っていくと一番手前に見えてくるのが
スイス館。建築に関わっている人間にとって夏の風物詩となっているロンドンのサーペンタイン・ギャラリー。そのダイレクターを勤めるハンス氏(Hans Ulrich Obrist, co-director of London’s Serpentine Gallery)がキュレーションに携わり、セドリック・プライス(Cedric Price)など建築の発展に大きく寄与した建築家達の残した図面などを展示し、同時に二日間に渡り様々な建築家が参加する「マラソン」という討論会を行うという。
お隣のベネズエラ館はひっそりとしており、今回は参加していないようである。ちなみにこの建物もカルロ・スカルパ設計によるもの。
その奥にはロシア館。先日足を運んだロシアのコンペでも関わっていたStrelka Institute for Mediaと、オフィスの最初の出版物となった「MAD Dinner」の編集を勤めてくれたブランドン(Brendan McGetrick)がキュレーションを勤めていることもあり、まだ準備中だというが中に入れてもらい、ブランドンから直々に説明をしてもらいながら中を見て回る。まさにエキスポのフェア会場に来ているように、説明をしているスタッフもあたかも各企業から派遣されたような熱の入りよう。「役者を雇っているのか?」と聞きたくなるくらいの熱演ぶりである。
Golden Lion for Best National Participation to Korea
Crow’s Eye View: The Korean Peninsula
キュレーションは
マス・スタディーズ(Mass Studies)のチョウ・ミンスク(Minsuk Cho)。1966年生まれなので、現在48歳で、元OMAのスタッフである。彼も様々な機会で一緒になることもあり、パートナーの二人もすっかり仲良しということで、挨拶をしにいくと、手短に展覧会のコンセプトを紹介してくれる。話を聞いていると後ろから覗いてくるのはアラップ(ARUP)のローリーさん(Rory McGowan)。いろんな建築家と組んでは世界中の様々なコンペを手がけているアラップの主要メンバーだけ会って、ミンスクとも仲が良さそうな様子である。
ミンスクによれば、今回のビエンナーレの為に、北朝鮮の建築関係者に正式に招待状を送り、一緒に参加しようと呼びかけたがなんの返事ももらえなかったという。パヴィリオンの中のある一角がどうもゆがんでいるんだと熱心に話してくれるその姿は、相変わらずエネルギーに溢れている。
そのお隣にあるのが日本館。今回の
日本館はこちらも元AMOの太田佳代子氏がキュレーションを担当し、「日本建築の近代化100年の歴史」として日本館を「倉」に見立て、図面、模型、スケッチ、手紙、構造図面などを集め、日本の近代建築の経てきた100年をモノを通して展示するとの意図のようで、会場はとにかくモノで溢れている。
建築家だけでなく、建築史家、作家、写真家、映画監督も含め、日本で育ち日本で建築を学んだ人間にとっては通念的に身に着けている認識を、改めて総体として外国に向けて発信するという試みで、これを海外の人がどう受け止めるのかとやや疑問に思わずにいられない。
その後奥のドイツ、イギリス、北欧館と見て周り、中心に用意されたカフェエリアで休憩を挟んで、目の前に大きな「ドミノ・モデル」が展示されたメイン館へと足を運ぶ。ちょうど入り口でクールハースとすれ違う。床、天井、開口部など細分化され過ぎ建築家の手からコンサルタントの手へと移ったしまった数々の建築の要素。それらを再度見つめなおすことで、建築の本質をあぶりだそうとする展示。途中であったOMAのスタッフによると、この展覧会の為にOMAから50人のスタッフが借り出されたという。
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三日目の午後、前日見切れなかったパヴィリオンを訪れる。ここら辺になると、「どのパヴィリオンが面白い」という噂が耳に入ってくる。その内の一つであるアメリカ館は「オフィス」をテーマに抱え、これまた「面白い」と噂を聞いたイスラエル館はレーザーカッターが砂の上に都市計画のパターンを描いては消していく姿を展示する。
スペイン館を巡ってデンマーク館前にたどり着くと、現在のグローバル化した建築世界の申し子といってよい、BIGのビャルケ・インゲルス(Bjarke Ingels)達に出くわす。なんでも、アゼルバイジャンの大統領を待っているのだという。ちなみにこちらも元OMA。
そろそろアーセナーレに移動しようと、徒歩にて住宅地の中の公園を歩いていると、前方から建築写真家の
イワン・バーン(Iwan Baan)がやってくる。足を止めて少しの挨拶。ビエンナーレに来るということは、元気にやっているということを知り合いと確認しあう場所でもあるのだと思わずにいられない。
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