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所在地 大分県竹田市直入町大字長湯
設計 藤森照信
竣工 2005
機能 浴場・美術館
規模 地上1階・地下2階
建築面積 350.14m2
延床面積 426.28m2
構造 木造・一部RC造
彫刻 辻畑隆子「オンリーワン」
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早朝の便で大分空港へ。すぐに予約していたレンタカーを借りにいくが、すでにそこにはかなりの行列。看板を見ると、到着便ごとに相当数の人が借りに来る予定となっているらしい。外を見ると、立ち並ぶ他のレンタカー店舗もほぼ同じ状況。LCCなどこれほど移動が簡単になった時代には、レンタカーの需要は今後とも伸びる一方だろうなと思いながら手続きを済ませる。
今日は宿泊先の黒川温泉まで一気に大分を横断する。空港からの高速を飛ばしていくと、大分市手前で街の至るところから温泉の煙が立ち上る風景を見ながら、やはり別府の街の特殊性は際立っているなと思いながら大分市を抜け、山道を登って竹田市へ。昔ながらの雰囲気のする小さな温泉街が目的地の長湯温泉(ながゆおんせん)。非常に珍しいといわれる炭酸濃度の高い温泉で知られる温泉だという。
川沿いに温泉街を進んでいくとすぐに視界に飛び込んでくるのがその特徴的な黒いピラミッドの様な屋根。これが目的地のラムネ温泉館。路上観察学で知られる建築史家で建築家である藤森照信。
1991 神長官守矢史料館 (45歳)
1995 タンポポ・ハウス (49歳)
1997 ニラハウス・薪軒 (51歳)
1997 浜松市秋野不矩美術館 (51歳)
2000 熊本県立農業大学校学生寮 (54歳)
2000 赤瀬川家の墓 (54歳)
2003 矩庵 (57歳)
2004 高過庵 (58歳)
2005 養老昆虫館 (59歳)
2005 ラムネ温泉館 (59歳)
2006 ヴェネツィア・ビエンナーレ 第10回国際建築展 日本館会場構成 (60歳)
2006 ねむの木こども美術館 どんぐり (60歳)
2009 ROOF HOUSE (63歳)
2010 空飛ぶ泥舟 (64歳)
2012 はま松ハウス (66歳)
2014 トタンの家 (68歳)
キャリアの中では中ごろの作品というところであるが、特徴的な屋根の銅板、外壁の焼スギ板張と白漆喰は他の作品でもお馴染みの作風である。合掌造りを思わせる様なプロポーションの屋根を持った受付には暖かそうな石油ストーブの横で数匹の猫たちが丸くなって眠っている姿が楽しめる。そこで受付を済ませ鍵を受け取ると、温泉のある西側の棟まで中庭を通っていくのであるが、程よいスケールの中庭は膝丈ほどの植栽で覆われており、その端っこにまるで案山子のように、明後日の方向を向いて済ましている犬の紳士が。何ともシュールで、なんともかっこいい。
調べてみると、すぐ近くの大分県日出町在住の彫刻家・辻畑隆子の作品「オンリーワン」。なかなか端正な表情である。その脇をそそくさと通り抜け突き当たった建物は今度は水平に広がるような屋根の真ん中に二本の塔が突き出しており、男湯と女湯に分かれているのだろうが、その上に何とも可愛らしい松が植えられている。なんでも長寿の意味を持つ松を「ラムネ温泉が長く栄えるように」と思いを込めて植えたという。
温泉は内湯と外湯があり、ラムネというのが納得のなんともシャワシャワしたこそばゆい感覚を皮膚のいたるところで味わえる。外湯は杉板の塀で囲われており、真っ青な空の下で寝そべりながらラムネの効用を味わうことができる。こんな快適な場所が生活環境のすぐそばにあれば、それこそ週末ごとに通ってしまうのも分からないではないし、それがあちこちにある大分というのはやはり豊かな場所だと再認識。と同時に、都会で毎日時間に終われ、仕事に追われて生活している我々は、このような生活を享受できる地元に人に比べて明らかに幸福度でいったら低いのだろうと思いながら、まぁそんなストレスもこのラムネの炭酸で流れていってくれとしばしリラックスしながら身体を横たえる。
こういう温泉施設は、こうしてその時に新しい意味を持った建築で応えることのできる力量のある建築家にできるだけ仕事を依頼してもらいたいものである。そうすれば、こうして建築を見に行きながら、かつ素晴らしい温泉も味わえるということで、帯同する家族も建築でなくて楽しみが持てるという意味でも非常にありがたい。恐らく建築を目的にこの場所に訪れる人は、温泉を目的に訪れる人の何十分の一なのかもしれないが、それでも、こうしてそれぞれの場所にあった温泉を楽しむ場として面白い建築が増えてくれるのを祈りながらお湯から上がることにする。
辻畑隆子「オンリーワン」
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