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2019年1月1日火曜日

ナンバー11 (Number 11/ House No 11)_ジェフリー・バワ (Geoffrey Bawa)_1960-1970 ★★★★


スリランカを代表する建築家ジェフリー・バワ (Geoffrey Bawa)。自然と融合するような建築を作り続けたバワの作品は現代においても多くの人に愛され、建築だけに留まらず様々なライフスタイルに関連して日本でも多くの雑誌やメディアで取り上げられ、その名を知っている人も増えてきているようである。

そんなバワが首都コロンボにおいて、住居として小さな家を買い、横の家が売りに出れば徐々に買い足して、事務所を兼ねながら30年近く住み続けたのがこのナンバー11  (Number 11/ House No 11)。11番は住所から来ているのだが、写真からではなかなか理解できないこともあり、ぜひとも足を運んでみたいと思っていたのが2019年の元旦に実現する。

バワ財団が運営する見学ツアーに申し込み、指定された時間に現地に到着すると、気持ちの良い住宅街の、車が一台通れるだけの細い道の突き当りが目的の11番地のようで、家の前には同じツアーに参加するとみられる人がすでに数名待っている。

時間になるとガイドの人が家の中に招き入れてくれて、まずはホールで説明のビデオを鑑賞し、バワがどのような人物で、この家がどのように使われ、拡張されていったのかなどの説明を受ける。そして再度入口に戻り、ガレージに停めてあるバワの愛車であったというロールスロイスを見ながら、ツアーの開始。

この道路に面した部分が一番最初に購入した住宅部分で、この部分だけ3階建てとなっており、2階にはゲストルーム、3階には屋上テラスとなっており、予約をすると、一日二組のみ宿泊することが可能という。

ロビーから長く続く白い通路の途中には、天窓からの光を受けたフクロウのオブジェが飾られており、その付近には小さな椅子などが置いてあり、廊下と言えども、単調な通路にすることなく、少し折れ曲がったところに小さな「場」を設ける意図が本当に様々なところに感じられる。ちなみにこのフクロウは友人であったアーティストのラキ・セナナヤケの作品。

通路の突き当りには小さな中庭を通して日の光が差し込み、その下には、小さな水盤が設けられ、デザインされた注ぎ口からチョロチョロと水が流れ落ちる音が、空間に色合いを付けている。

友人のアーティストが描いたドアや作品などが飾ってあるコーナーにも、しっかりと異なったデザインの椅子やテーブルが置かれており、ここにも小さな’場’。

その先はバワのプライベート空間ということで、ここからは撮影禁止となるのだが、寝室、リビング、ダイニングと、様々なところには、小さなころからオランダ系の裕福な家庭で育ったバワが世界中様々なところを旅し、気に入った雑貨や家具をわざわざ船で送って収集したというコレクションが、とても感じよくレイアウトされており、モノが多いのだが、それでも全体が統一され、とても心地よい生活空間となっている。

ダイニングからは一番東側にとられた中庭に出られるようになっており、大きな木を見ながら食事をとることができるようになっていたりと、nLDKのような現在の日本の住宅とは違い、家の中の様々な場所に座ってくつろげる場所があり、それがそれぞれ違った空間となっており、さらに外部に中庭を持っていたり、天窓で光が入ってきたりと、それぞれの場所が光の変化とともに雰囲気を変える、豊かな空間となっている。

一階部分だけでも数えると、15か所以上の中庭か天窓のある空間があるようで、それぞれの場所にはそれぞれの空間にあった椅子やテーブルが置かれ、場所によっては小さな水盤が設置されていたり、水の入った大きな桶が置かれていたりと、光、水、風、緑が組み合わされた空間になっている。

ロビーに戻り二階に上がっていくのであるが、建築を学んでいるものであれば、この階段はどこかで目にしたことがあるだろうというくらい有名な階段。非常にシンプルに、踏板も壁も天井も、白一色で塗装されているのであるば、手が触れるところは絶妙に縁を落として曲線にしてあったr、スティール製の手すりも端部がぐるぐると円を描いていた、床と壁、壁と天井の一部分もシームレスで繋がられていることで、光が滑らかに落ちてきたり、上がっていくと見えてくる窓からは外の緑が切り取られていたりと、この小さな空間でもどれだけ心地よい空間として設計できるか、機能を超えてこの場がどうしたら自分の性活を豊かにしてくれるか、それを考えて考えて、何度も変えながら作っていったのが非常に伝わるようになっている。

そして到着する二階は現在は宿泊客がゲストルームとして使える場所。壁一面に張られたタペストリーの前には大きなラグが二枚敷かれており、それぞれ雰囲気の異なるソファーセットが置かれている。このタペストリーがかけられている西側と北側の壁には開口部は取られておらず、デスクが置かれている東側と、テラスに向けた南側の開口部から光が入っているようになっている。この二つの開口部からの光がほぼ室内の光の質を決めてくれ、大きな部屋の中に明るい場所と暗い場所と差異のある空間を作り出している。

もちろんテレビなんかなかった時代であろうし、たとえテレビがあったとしても生活空間に置くような人でもなかったであろうが、そんなときに家具のレイアウトをどう決めていったのかと考えると、これは結構面白いスタディになりそうであるが、一か所のラグには大きなソファとその前に置かれた高さの抑えられたソファーテーブル、その周りにバワ設計だという木製の椅子。もう一か所のラグは、南側の窓にむけて丸テーブルを囲むように少しモダンな椅子が置かれる。

天井には一切照明は設置されておらず、部屋のあちこちに置かれた照明によって夜はそれぞれの場所が照らされるようになっており、その日のその時の気分によって、いろいろな場所を選びながら、椅子に座って、本を読んだりしながら、疲れるとたまに外の緑を眺めていたりしたのだろうかと想像を膨らませる。

さらに階段を上がると屋上テラスに出る。こちらも場所によってことなった家具達が置かれ、それぞれに異なった時間を過ごせるようになっている。こんなテラスで朝食を食べたら、さぞかし素晴らしい気分で一日を過ごせただろうと想像しながら、階段を下りてツアーを終える。

一時間程度のツアーであるが、とても多くの場所とそれぞれにバワの思い入れのある設計と、雑貨や家具などがあるために、とても密度の高い内容となっている。住まう場所はやはり広さではなく、光や風を意識し如何に外部とそして自然とつなげた空間をいくつも作り、一日の中で自分で場を選んで時間を過ごせるかどうかが、豊かさなのだと改めて学ぶことができるとても良いツアーであろう。




















2017年6月19日月曜日

Silence 安藤忠雄 2011 ★★



ロンドンの中心地メイフェア(Mayfair)に建つ古い歴史を持つコノートホテル(Connaught Hotel)。その前の三叉路の中心に二つの大きな樹を抱え込むようにして立ち上がる黒い御影石の基壇。これがこの地域の行政府が、区内の幾つかの重要な「通り」を再整備しようと進めている計画の一環で、コノートホテルとの共同出資で安藤忠雄に依頼されたプロジェクト。

建物よりも、「通り」こそが街を作り出してきた重要なエレメントで、現代においてどのような「通り」の経験をつくれるか?

という問いに対して安藤忠雄が出した答えが、水が縁より常に溢れ出し、ついつい触れたくなる高さに水面が設置された水盤。水盤のそこにはガラス盤と照明が仕込まれ、夜にはまた違った風景をつくりだすという。更に15分毎に霧が吹き出し、「通り」を冷やす効果を兼ねつつ、不思議な風景をつくりだす。

ちょうど通りがかった母親に連れられた小さな子供が、楽しそうに手を水面に触れながら、広がる波紋を追いかけるように歩いていくのが印象的。











コノートホテル(Connaught Hotel)

2016年2月9日火曜日

狭山湖畔霊園管理休憩棟 中村拓志 NAP 2013 ★★★★


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所在地  埼玉県所沢市大字上山口
設計   中村拓志 NAP
竣工   2013
機能   霊園施設・事務所
規模   地下1階・地上1階
建築面積 458.89m2
延床面積 490.36m2
構造   S造・一部RC造・一部木造
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狭山湖のほとりに位置する霊園。その中の二つの施設を中村拓志(NAP)が設計し、なかなか良さそうなので見に行きたいなと思っていた場所である。まずは驚くのがそこへのアクセス。相当に細い住宅街の中の道を、急勾配であがっていく。一方通行で無いようなので、「この段階で対向車がきたら詰むな・・・」とビクビクしながら何とか坂を上っていくと、途中から霊園に入った模様で、坂の途中に目的地の一つである狭山湖畔霊園管理休憩棟が左に見てくる。

次に驚くのが、なんといっても霊園内の緑の豊かさ。なんというか、元々豊かな自然の中で住宅地に好まれないところに霊園があるのは当然といえば当然で、そのために周囲に緑が多いのはもちろんであるのだが、ここでは各お墓のスペースの中に小さなスケールの木々がしっかりと生きているという印象。あまりに印象的だったので、対応してくれた霊園の方に、「お墓を購入する際の条件として各スペースに緑を保たなければいけないというのがあるのですか?」と聞いたが、そういう決まりは無いが、ご家族が皆さん自分で手入れをされているとのこと。

そう考えると、恐らく一つ一つのお墓のスペースもやや広めに設定してあるのだろうし、木々が育ちやすい工夫は何か知らされているのだろうが、それにしてもこうして同じ場所に霊園を持つ人々が、ある種同じような意識を共有し、自然と緑の多い風景が作り上げられ、保たれていく。すごいことだと思わずにいられない。

さて、建物。これもまた素晴らしい。想像以上に素晴らしい。霊園の方も非常に丁寧に対応してくださり、コンペから設計者選定、そして設計過程といろいろとお話を聞かせていただいた。生と死に向き合う場所に建つ建築ということで、建築家なら一度は挑戦してみたい条件であるが、その際にやはり「光」や「水」といった要素をどう使うかが設計者の腕の見せ所になる。

その使い方次第では、「ああ、あの作品からの引用ね・・・」などと、使い古された元ネタが見え隠れしてしまいがちであるが、いやはや、斜面に建つ建築、水盤への日の光の反射の室内への取り込みによる揺らぎの挿入、大屋根に覆われた水平な空間、屋根を伝う水が水盤に落下してできる波紋と音の反響、低く抑えた家具の座ったときの視線が水平に拡がり周囲の風景が反射する水盤に永遠の世界を感じ取るなどなど、まぁ小さな空間に様々なアイデアが盛り込まれ、それが建築的にしっかりと作りこまれているのが体験できる。

奥の喫茶スペースの照明も、「アクリルの球の中のどれだけ気泡が入るかまでこだわってつくられていましたよ」と説明してくださったように、他の作品でも見るように、しっかりと素材と向き合い、そして自分たち独特の表現まで押し上げようとするそのグリグリとしたしつこさがいい感じにデザインになっており、非常に好感を持てた。「ぜひどうぞ」と勧められて、「それでは」と一人楽しみに霊園の中にある礼拝堂へと足を向けることにする。