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第5回(2004年) ホラーサスペンス大賞受賞
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そんな言葉を何度も頭に浮かべながらページをめくったこの一冊。非常に嫌な感じのする、全編を通して付きまとうネットリした性の気配。
登場人物がその年齢や役割に関係なく、常に「男と女」というむき出しの欲望を社会性という表面のすぐ下に隠し持ちながら役割を演じているような気にさせるほど、「性」の気配が常に見え隠れする。
「グロテスク」なものが、その差異性の為に何からしらの「魅力」を携えてしまうように、痛みを感じる描写やえぐいほどに壊れやすい美しい登場人物達は、不思議な魅力を持っているのは確かであろう。
それがいいのか悪いのか、小説として何か心に残るのかどうかは別にして、それでも目を覆う指の間から、「グロテスク」をちらりと見てみたい人間の欲望の様に、先のページに何が待ち受けるのか気になって読み進めてしまう。
よりグロテスクなものを求める。それが人間の本性だと言わんばかりに。
登場人物は決して多くは無いがその中で複雑にそしてドロドロに絡み合う人間関係。41歳のバツイチの主人公を中心にして、一見普通に見えながら、何とも心に闇を抱えた登場人物たちに絶対的に惹きつけられしまう。現実にもいる、そこに居るだけで周りをひきつけてしまう人間達。
「グロテスク」と言えば、東電OL殺人事件を元にした桐野夏生の小説を思い出すが、それとはまた違った意味の「グロテスク」の魅力と恐ろしさを描いた内容で、新しいだけにどう消化するのに戸惑う一冊。