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2015年11月12日木曜日

コンサート 「Myung-whun Chung and Staatskapelle Dresden」 NCPA 2015 ★★★

チョン・ミョンフン (Chung Myung-Whun)
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Programme

Piano Concerto No.23 in A major , K. 488
    Soloist: Myung-Whun Chung, Klavier

Mozart 

- Intermission - 

Symphony No.4 in G Major
    Ⅰ. Bedachtig. Nicht eilen—Recht gemachlich
    Ⅱ. In gemachlicher Bewegung; ohne Hast
    Ⅲ. Ruhevoll, poco Adagio 
    Ⅳ. Sehr behaglich 
    (Soprano: Hanna-Elisabeth Muller) 

Mahler 
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昨年に続きチョン・ミョンフン(Chung Myung-Whun 鄭明勳)の指揮するコンサートということで、これは見逃せないとかなりの高額であったが、思い切って購入したチケット。

ピアニストであり優れた指揮者でもあるチョン・ミョンフンであるが、昨年のコンサートは指揮者としての姿だけを見るに留まったが、今回はピアニストとしても演奏も行うということで非常に楽しみにしていたコンサートである。

チョン音楽一家のファンだと知っている韓国人のスタッフから贈られたCDをいつも移動の際に聴きながら深い眠りに落ちているので、その生の演奏が聴けるのに興奮してコンサートホールへと向かう。

前半は一部のオーケストラを従えてモーツァルトのピアノ。非常にリラックスした様子で登場したミョンフンは、何気ない様子でピアノ椅子に腰をかけ、オーケストラに向かって無造作に手を振り上げる。何とも楽しげに、まるでリビングルームでくつろいでいるかの様子。

そしてふと身体を反転させ、鍵盤に指をそえて開始された演奏は、まさに彼の名声を納得させる流石と思わせるに十分なもの。流れるようにモーツァルトの音色がピアノから飛び出し、ふわりとコンサートホールを漂って様々な座席に届く様子が糸の様に見えるかのような体験。素晴らしい。本当に素晴らしい。

素晴らしいだけに普段の習性も助け、抗う意志にも関わらず、アルファ波に完全に呑み込まれ、これは楽しまなければ・・・という遠い声を感じながらも深い眠りの中に落ちていく・・・そんなまどろみの中で過ごした前半のお陰で後半は意識もスッキリし演奏に集中する。

後半はソプラノにハンナ=エリザベス・ミューラー(Hanna-Elisabeth Müller)を迎えてグスタフ・マーラー(Gustav Mahler)の交響曲。フル・オーケストラとなり、タクトを振るのを楽しんでいるような指揮者としてのミョンフン。その横でじっと前を見据えてピクリとも動かずまるでアスリートの様な雰囲気を醸し出すソプラノ。

カーテンコールで鳴り止まない拍手を浴びてお辞儀をするミョンフンを姿を見ながら、こちらもかなりの満足度に包まれつつ、それでもやはり前半の彼のピアノの演奏が何といっても素晴らしかったなと、今度は自分で久々にCDを購入してみようと思いながら会場を後にする。
ハンナ=エリザベス・ミューラー(Hanna-Elisabeth Müller)
アマデウス・モーツァルト( Amadeus Mozart)
グスタフ・マーラー(Gustav Mahler)

2014年10月29日水曜日

韓国からのCD


韓国人のスタッフが「韓国に戻ったときに見つけたから」とCDをプレゼントしてくれた。

「以前に、バイオリニストのチョン・キョンファ(Kyung Wha Chung 鄭京和) のコンサートが良かったって言ってたから」とその弟に当たるチョン・ミョンフン (Chung Myung-Whun 鄭明勳) のピアノのCDを買ってきてくれたようである。

今年の初夏に指揮者でもあるチョン・ミョンフンのコンサートに行ったこともあり、「ピアニストだという彼の演奏がどんなものか気になっていたんだ」と喜びを伝える。

こうして身近にいる人が、自分が何を好むのかを知っていてくれて、さらにその世界に広がりを持たせようとしてくれることは、なんとも表現しがたい喜びだと痛感する。

国籍も会社での立場も関係なく、一個人としてどんなものを好み、それを共有することができること。SNSで「いいね」と押し合う関係よりも、決して多くは無くとも、こうして深いところで感性を共有してくれる人間とどれだけ付き合っていけるのかが、人生の豊かさに繋がるのだと信じながら、朝の出勤時に車の中で静かなピアノの音に耳を傾けることにする。

2014年5月30日金曜日

コンサート 「チョン・ミョンフン (Chung Myung-Whun) Conducts Verdi Requiem」 NCPA 2014 ★★★


チョン・ミョンフン (Chung Myung-Whun)
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Programme
Messa da Requiem Verdi
  I. Requiem & Kyrie Requiem aeternam  
  II. Sequence (Dies irae) Dies irae  
  III. Offertorio Domine Jesu Christe  
  IV. Sanctus  
  V. Agnus Dei  
  VI. Lux aeterna  
  VII. Libera me Libera me-Dies irae  
   Vocalists: Sun Xiuwei, Yang Guang, Li Xiaoliang, Xu Chang
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春のヴェルディ祭りの最後を飾るのは、韓国人指揮者・チョン・ミョンフン(Chung Myung-Whun 鄭明勳)によるヴェルディの「レクイエム」。

この「レクイエム」。日本では「新世紀エヴァンゲリオン」の曲と言った方が分かりやすいかもしれないが、あの大合唱による大迫力の曲である。

その為にいつものコンサートとは違い、後部座席が観客に解放されておらず、男女の多くのコーラスのメンバーが陣取っている。そしてオーケストラの一番前には、ソプラノ、メゾ・ソプラノ、テノール、バリトンを担当する中国人の声楽陣。それぞれなかなか個性的な容貌である。特にソプラノは妖怪人間のベラにしか見えない・・・

そして指揮者のチョン・ミョンフン(Chung Myung-Whun 鄭明勳)。韓国人で音楽一家で苗字がチョン。どこかで聞いたことが・・・と思って後日オフィスでそんな話をしていると、韓国人スタッフが、「ああ、その指揮者。Yosukeが好きだって言っていたバイオリニストと兄弟だよ」と。

なるほど。以前見に行ったチョン・キョンファ(Kyung Wha Chung 鄭京和)のお兄さんということらしい。こうして徐々に点が線になって繋がって、音楽体験が面へと広がっていくのだろうとなんだか楽しくなる。

そして今日の主役のヴェルディの「レクイエム(原題:Messa da Requiem)」。カトリックのミサ曲でもあるといい、イタリアの文豪アレッサンドロ・マンゾーニを追悼する目的で作曲されたという。モーツァルト、フォーレの作品とともに「三大レクイエム」の一つに数えれ、その中でも「最も華麗なレクイエム」と評される作品だという。

楽章構成は以下の通り

第1曲: Requiem e Kyrie(レクイエムとキリエ)
第2曲: Dies irae(怒りの日)
第3曲: Offertorio(奉納唱)
第4曲: Sanctus(聖なるかな)
第5曲: Agnus Dei(神の小羊)
第6曲: Lux aeterna(永遠の光)
第7曲: Libera me(私を解き放ってください)

百人近くいるのではと思われるコーラスの大合唱はまさに大迫力。あまり観客が居なかったために中央のいい席へと移動させてくれたため、その音量を真正面から体感することになる。

音楽が身体体験だと理解できる魂に響いてくるコンサート。少しだけヴェルディを理解できた春になったかと高揚感を感じながら家路に付くことにする。


ヴェルディ


2013年10月18日金曜日

コンサート 「チョン・キョンファ(Kyung Wha Chung) バイオリン(violin) 」 NCPA 2013 ★★★★

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プログラム
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第5番 ヘ長調 「春」 Op. 24
グリーグ:ヴァイオリン・ソナタ第3番 ハ短調 Op. 45

モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ第27番 ト長調 K. 379
セザール・フランク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調
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幾つになっても、ある分野に関して圧倒的な知識を持っていて、しかもそれを楽しんで生きている人から影響を受けるのはとても楽しいものである。そういうメンターを持つ人生は豊かだと思わずにいられない。

北京に住むようになってから知り合ったご夫婦のサンタクロースの様な容姿をしたスコットランド人の旦那さんはオペラや音楽といった方面への造詣がとてつもなく深く、残念ながら音楽を嗜むという高尚な家庭で育ってこなかった自分にとっては、聞いていてゾクゾクするなど心地のよさは理解できるが、音の細さや正確さなどといった鑑賞の仕方はいまだ良く分からないが、それでも「芸術の秋だ」と言わんばかりに、足しげく中心地のオペラハウス(NCPA 国家大剧院)まで通っては今シーズンのプログラムをチェックし、お勧めの演目を教えてくれる。

そんな訳で秋の夜長を少しでも楽しむために、彼らのお勧めからとまた以前から見てみたかった演目などいくつかをピックアップし、先日の日曜日にオペラハウス(NCPA 国家大剧院)まで電動車を飛ばしてチケットが残っているかと願いながら購入できた今日のコンサート。

本来は昨日もPinchas Zukermanというバイオリニストのコンサートを聴きにくるはずだったが、急にオフィスでクライアントさんを踏まえてディナーに行くことになり、そちらに顔を出すためにチケットを無駄にしてしまっていたが、「今日こそは・・・」と19時あたりにオフィスを抜け出そうと画策してはいたものの、金曜日ということもあり、毎月一度行われているオフィスでのハッピー・アワー。オフィスを去るメンバーへのフェアウェルと新しくオフィスにやってきたメンバーの紹介を兼ねた簡単なパーティーが突然行われることになり、「早く始まれ・・・」と心の底から願いながらも、インターン含め各スタッフがここでどんな時間を過ごしたかというスピーチに懐かしい時間を思い出しながら時間を見たら既に19:30・・・

スピーチも終えて、各人が好き好きにビールを飲みながらスナックを摘んでいる間を「オペラに視察だ!」とかけ抜けて、何とか間に合えと電動スクーターを飛ばす。

オペラハウス(NCPA 国家大剧院)について、地下の自転車置き場にスクーターを置いて中に入るが、残念ながら最初の曲が始まってしまっていてインターミッションまで入れられないという係りの女の子の言葉に従い、ホワイエに設置されているモニターで中の様子を伺うと、なかなか熱の入ったベートーヴェンを演奏しているようである。

さて、本日のコンサートだが、チョン・キョンファ(Kyung Wha Chung 鄭京和) という韓国人の女性ヴァイオリニストのコンサート。後ほど、スコットランド人のメンターから教えてもらった内容によると、何でも指の怪我によっての5年近いブランクを経て昨年から再度表舞台に帰ってきた有名ヴァイオリニストだという。ハッピーアワーの時にも韓国人のスタッフに彼女を知ってるか?と聞いたところ、「もちろん知っている。しかし10年前が彼女のピークだった」などと教えてくれた。

そう考えると、日本人ヴァイオリニストの名前を言われ、彼女のキャリアがどうなっているかなんてとっさに答えられるかと思うとなんとも自らの音楽的教養の低さにげんなりするが、今出来るのは一刻も早く中に入り、迫力のありそうな演奏を生で体験すること。

一時間弱でインターミッションとなり、一番安かった3階席の自らの席を確認し、コートを置いて友人夫妻に電話して階下で合流する。「建築家として生きていたら19:30に軽く軽食を済ませてプログラムを見ながら演奏を待ちわびる、なんていう日常はいつまでたっても成し遂げられないだろう」ととりあえず遅刻が個人ではなく職業に起因することを伝え、前半の感想を聞いてみると、「とにかくベートーヴェンが素晴らしかった。始めは拍手を止めない観客に対して機嫌が悪かったようだが、徐々に演奏も乗ってきたらしい」と教えてくれる。

後半もぜひ素晴らしい演奏を続けて欲しいと願いながら、後ほど再度ここでの合流を誓って自分の席へとかけ戻る。オーケストラと違って、ステージにピアノとその横に寄り添うように一人立つヴァイオリニスト。何百人もの観客の期待と視線を一手に受け止め、そして自らの身体を使って発せられる高貴な音色で彼らを唸らせる。

正直、こういうコンサートで何がいいのかはまだよく分からないが、それでもフランクはとても力強く、グイグイと会場を巻き込むかのようなダイナミックな演奏に久々にゾクゾクする感じを味わえた。その後、寄せては返す波の様に何度も出ては戻るアンコールの拍手と演奏。見た感じ機嫌も随分よくなってきたようで、笑顔で「では、シューベルトを」といいながら、日本人の自分にもCMで馴染みのある曲を披露しとても楽しめた。

そんなこんなを繰り返し、「これが本当の最後よ」と最後の1曲が終わった時にはすっかり会場は彼女の虜となっているのが感じられた。大きな大きな拍手の嵐の中に消えていく二人の音楽家。これはいいものを見せてもらったとなんとも言えない幸福感に包まれる。

荷物をまとめ、合流するために階下に下りていくと前方に見知った顔が。プラハ・フィルハーモニーの時にも一緒になった有名中国人建築家の知り合いであるURBANUSのワン・フイ(Wang Hui)。今回はお母さんと来ていたらしく、お母さんにも挨拶をさせてもらっていると、「VIPカードを持っているから安くチケットを買えるので、行きたい演目があったら教えてよ!」と声をかけてくれる。

「この時間にお母さんを連れてコンサートに来れる建築家も居るんだな・・・」

と少々感心しながら、それでもそのレベルになるには相当時間がかかりそうだと改めて思い直して二人に「良いコンサートでよかったですね」と挨拶をして別れ、知り合いの夫婦と合流する。

各々興奮気味に感想を言い合いながら、持って来てくれたプログラムを一緒に見ながら、次はどれに足を運ぶかと相談しようとするが、流石に11時近くなってしまっているので、改めて週末にディナーでもしながら相談しようということで別れ、頭の中で何度も音楽を復唱しながら靄がかかってきた天安門の前を電動スクーターで飛ばして家に向かうことにする。