2013年7月19日金曜日

近江八幡 ★


かつて学校で建築学生の卒業設計を指導する際に、ある学生が敷地として選んできたのが近江八幡。なんでもかつて一年ほど住んでいたことがあり、昔の街並みの残るとてもよい街並みの中、障害を持っている方による芸術作品の制作を手伝っていたという。

担当した学生が今まで生きてきた時間の中から、学生時代を締めくくるに相応しい場所を選び出して数ヶ月の時間を傾けるのが卒業設計なので、できるだけその想いを共有するためにできるだけ敷地には足を運ぶようにしていたが、この近江八幡は結局足を運べずにいた街である。

そんな訳で近江商人と安土城という魅惑的なキーワードと共に、随分と妄想が膨らみ、昔ながらのよい街並みが残りながらいい地方都市のあり方があるのあだろうと事前に期待値が上がってしまっていた。

日牟禮八幡宮を早朝に参拝し、水郷めぐりでも有名な八幡山に沿うようにして流れる八幡堀の風景を眺め、軽自動車でもかなり厳しい狭い道を入っていく、現代の町割りよりもかなり小さなスケールの古い街並みや、新町通りを散策する。

部分部分に写真を切り取れば、それこそかつての街並みが残るよい地方都市となるのだろうが、実際にその中を歩いてみると、やはり新しい時代の中心地からは距離があり、新しい社会に古い街並みがうまく適応し、中心を変えることなく更新されていくなかで、古い街並みが活気を持って生きている、という印象には程遠い。

先日訪れた郡上八幡や、飛騨高山にはそれが感じられたので、きっとやり方によっては現代におけるその場所の風景と言うのはきっと作ることが可能なのだと思う。

近江八幡の総人口が82,073人。高山市が91,233人。郡上市が42,967人。規模的にもほとんど変わらない。そういう風景を作り出すためには、政治家や街に住む人とともに、古い街並みの価値を理解し、そのポテンシャルを理解し、現代社会の中にどう変容して意味を更新していくか?その知恵と技術をもった建築家もまた必要なのだと改めて理解する。





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