2012年5月3日木曜日

ミネルバのフクロウは夕暮れに初めて飛び始める


先日早稲田大学芸術学校の卒業生の謝恩会にて、校長先生が最後の学生に向けて送られた言葉の中で出てきたヘーゲルのフクロウ。

「懐かしいくだりだな・・・」と思いながら、訳もわからずとにかく建築をやる上では何でかは分からないが哲学の知識も必要だと軽く洗脳されて、乱読していた学生時代を思い出す。

この早稲田大学芸術学校というのは、夕方から授業が行われる社会人学校ということもあり、ギリシャ神話の中で女神アテナがその日一日巷ではどのようなことが行われたか、情報を集めるために夜空に解き放った梟。暗いところでも良く見える眼の為にその大役を担わされる梟だが、赤い鼻の為にクリスマスの予定がこの先ずっと埋まったトナカイとなんだかだぶるのは自分だけでないはずだ。

一日の生活でさまざまな経験をして、朝よりも少しだけかもしれないが賢くなった人々の知恵をかき集め、帰ってたフクロウは確実に成長を重ねる。

そのイメージより、人の知性は夜に養われるというメタファー。

フクロウと同じく、昼間はそれぞれの仕事に汗を流し、夜になるとアテナではなく高田馬場に降り立つ学生たちは、爛々と輝かせるその瞳をギッと見開いて毎日何かを身につける。そしていつかは、ここで養った知性を抱えて、また別の森へと大きく旅立っていく。

自分もそうだったが、先生の名前や授業の内容などは、数年もしたらあっという間に忘れてしまうが、その人が放った強烈な印象を持つ言葉はどんなに年月が経とうが記憶の奥に残っているものである。

恐らく今年の卒業生も、何年経っても自分はフクロウなんだと思い出すときが来るんだろうと思いながら案外怖いフクロウの顔を想像する。

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