2015年3月7日土曜日

ケ・ブランリ美術館(Quai Branly Museum) ジャン・ヌーベル 2006 ★★★


パリで進めるプロジェクトの打ち合わせの為に、クライアントの住まう高級マンションにて打ち合わせをし、その帰りがてら寄っていくことにしたのがケ・ブランリ美術館(Quai Branly Museum) 。

夜の21時まで開館しているというその開館時間の為に可能となった夜の美術館訪問。ことごとく18時には閉館してしまう日本の公共美術館を思うと、「平日のその時間帯に来れるのは一体誰だと想定しているのだろう?」と嘆きたくなり、社会の為というよりも定時に終わって帰宅する生活の方がよっぽど大事なのかと悲しくなる。


さてこの美術館。

「古い作品はルーヴル美術館。20世紀初頭あたりの作品がオルセー美術館。そして現代美術がポンピドゥー・センター」

となんとなしに東に重心が傾いていたパリの美術地図に対してエッフェル塔脇のセーヌ川のほとりに、今度は「原始美術」(プリミティブ・アート)をテーマとする美術館を誘致することでパリの美術重心のバランスを修正した。

元大統領のジャック・シラクの肝いりプロジェクトとして知られており、ポンピドゥー・センターを完成させたジョルジュ・ポンピドゥ大統領のように、ケ・ブランリ美術館を完成させた大統領として記憶されるのは如何にも文化大国フランスを物語るようである。

建物自体というよりも、まるで熱帯の温室が街の一角を覆ったような印象を作り出す美術館周辺の庭園などを手がけたランドスケープ・デザインのジル・クレモン(Gilles Clément)と「Living Wall」と呼ばれる緑化壁を手がけた造園家のパトリック・ブラン(Patrick Blanc)の作品でなんとも温帯的な雰囲気が特徴的である。

さすがに暗くなってきた中をアプローチしていくと、上部に浮かぶ建物の床下を照らす魅惑的なライティングが見えてくる。これはアーティストのヤン・ケルサレ(Yann Kersalé)の作品。

エントランスまでの結構な距離をスロープであがりながら到着すると、「もう閉館間近だから料金はいらない」となんとも気風の良い台詞を現場の人の裁量で発することができるのも、このフランスならではの光景かと思いながら、そとからのアプローチが続くように内部の展示空間へと伸びるスロープをさらに上がっていくことにする。


















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