2015年3月7日土曜日

フィルハーモニー・ドゥ・パリ(Philharmonie de Paris) ジャン・ヌーベル 2015 ★★


オフィスで進めるコンサート・ホールのプロジェクトの参考にと足を伸ばしたのがこのジャン・ヌーベル設計によるフィルハーモニー・ドゥ・パリ(Philharmonie de Paris)。

10年以上も前にデザインは決定しており工事が始まったのが2006年。その間に当初予定よりも費用がかかりすぎてしまい、建築家と発注者であるパリ市との間でデザイン変更に非常に激しいバトルが繰り返されたことで有名な建築である。

とにかく建物を完成させたいパリ市と、VE設計によってチープにさせられているデザインに対して、「すでに自分が設計した建物ではないので、完成後に自分の名前を冠するのは許さない」と鼻息荒く抗議する建築家。

そんな話を頭に入れて建物を訪れると、建物の至る所に「なるほどなぁ」と思える箇所を発見する。外装工事は前面からのアプローチから見えるところはなんとか終わっているが、少し脇に回ると手付かずのまま下地がむき出しにされた箇所をいくつも発見する。ファサードがどうつくられているのか、下地の施工を知るために喜んでみるのは建築関係者くらいで、一般の人にはどう考えてもいい印象は与えないだろう。

内部に入ると、「お金を稼がなきゃ」という意図なのか「デヴィッド・ボウイ」の展覧会を開催しているらしく、多くの人が列を作っている。その脇を通って奥のトイレに行くと、その脇には資金不足の為か手作りのゴミ箱が・・・日本では決して見かけることの無い風景だと、その涙ぐましい姿に少なくない感動を感じて外にでる。

コンサートホールと言う音楽専門の空間の設計に関わると、目に見えない音響設計の重要さを理解することになる。そしてこれだけ多くのコンサートホールが生み出され、それに関わる多くのコンサルタントがいるにも関わらず、設計の世界でスペシャリストとして名前があがるのは一人の日本人と一人のスペイン人。

そのうちの一人である日本の永田音響設計の豊田泰久さんが音響設計をしたというこのフィルハーモニー・ドゥ・パリ。なんといってもゲーリーのディズニーホールの音響設計でも知られる氏は、現在では世界中で多くの建築家と音楽空間の設計に携わっている。

その為にもぜひともここで実際にオーケストラの音を聴いてみたいと願っていたが、今回は時間の関係で実現できず、次回の機会に期待することにする。

建物をでると、すぐ脇に印象的な赤いフォリーが見えてくる。建築を学んだ者にとっては、それが歴史的なラ・ヴィレット公園のコンペを勝ち取ってベルナール・チュミが「フォリー」をグリッド状に散りばめて、「イベント」を喚起するという手法で、治安の悪いこの19区を、人々が憩いの場として集う都市公園へと変貌したのはすでに30年近く前。学生時代に訪れた風景と比べると、すっかり都市の日常の一部になったのを感じる。

2015年1月に発生したシャルリー・エブド襲撃事件の影響で、まだまだ街中には緊張感が張り詰めているのかと思っていたが、どうやら市民の人はテロに負けることなく、しっかりと日常生活を楽しんでいるようだと感じながら、そろそろホテルへと戻ることにする。





























0 件のコメント: