2015年3月1日日曜日

「生存者ゼロ」 安生正 2013 ★

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第11回(2012年)『このミステリーがすごい! 』大賞受賞
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2014年夏、西アフリカより世界を恐怖に落とし込んだエボラ出血熱の猛威。細菌という目に見えない敵の前に無防備な死を拡散する人類。そんな恐怖がまだ記憶に新しい中、しばらく書店の店頭に平積みされていたなと見慣れたこの本のタイトルが気になり手に取った一冊。

世界的な規模で感染が広がるパンデミック。北海道根室半島沖の北太平洋という、都市にて日常を送っていたらそこが日本の一部だと認識することもなく過ごしてしまうそんな辺境の海の上に浮かぶ石油採掘基地。

人口に作られたインフラスケールの密室。そこで職員が通常では考えられない形で全員死亡した姿で見つかる。あたかもバイオ・テロの様に病原菌がその原因として疑われていく。

限られた空間で「生存者ゼロ」というセンセーショナルなタイトル通り、一人残らず死んでいく。そんな北海道の海の上から今度はアフリカの森の中へ場所を移し、そして東京と3点で結びながら物語りは展開していく。その為に「ジェノサイド」との共通を叫ばれているらしいが、物語としての詰めは圧倒的にこちらのほうが甘い。

敵が何なのか見えないだけに恐怖は広がり、じりじりとパンデミックは海を越えて北海道に上陸する。細菌やウイルスという見えないものを犯人と吊るし上げるが決定的証拠をつかめず、原発事故以後の混乱をモチーフにしたかのように、混乱する政治と学者としての信念を持ちながら立ち向かいながら組織の理論で思うように力を発揮できない苦しむ主人公。

「北海道を焼き払え」

と、さすがにそれはありえないだろうという決断を前に、敵はウイルスに犯されたシロアリが凶暴化して人を襲っていたのだと分かる。これだけ科学の発展した現代においても、凶暴化した蟻を止める手立ては無いというのもどうなのか・・・と思いながらも混乱はさらに続く。

ウイルスとシロアリを足すことまで引っ張りに引っ張ったが、そこからはややグダグダ感が漂いならが終わりを迎えることになる。やはりここら辺がこのミステリーがすごい大賞の限界なのかと思いながら頁を閉じることにする。

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