2015年3月8日日曜日

シャルル・ド・ゴール空港 ポール・アンドリュー 1974 ★★★

通常、時間が少しでも空けば、できるだけ周囲にある現代建築を見ていこうとするのだが、さすがにこの五日間は余りに多くの建築を見すぎたためで、少々消化不良となり、予定よりもかなり早いがパリに戻って空港へと向かうことにする。

二人のパートナーはプレゼンの為にパリからドバイに向かい、自分は先に北京に戻るために別々のターミナルへ。そんな訳で久々に一人となり、チェックインも早く済ませたので空港内を散策することに。

「空港」に到着する際は普段とは違った都市へ足を踏み入れる期待に満たされつつ、入国審査や荷物のピックアップ、そして市内までの交通の確認など、何かと忙しく感傷に浸ることはないが、「空港」から出発する際はチェックインや諸々の手続きの為に、どうしても空港内部で「漂う」時間を持つことになる。

それは同時に、空港という場の持つ特殊性に向き合う時間でもある。

多木浩二が「都市の政治学」で指摘するように、現代を表象するのは拘束された無能な身体によって行程を切り落とされた飛行機による旅。そしてその目的地は都市の玄関として表象される駅や港ではなく、どこでもない場所としての空港。そんな無場所性を最も体現する建築がネットワーク化された現代を象徴し、目的地という点と発着の時間だけの情報を求めて空間をさまよう旅人で埋め尽くされる。

「到着」するこれから都市に「入ってくるもの」と、「出発」する都市から「出て行くもの」の徹底した管理空間。そのシステムとしての一つの建築タイポロジーである空港、が交通革命によってたった数十年の間に世界中でこれほど多く作られるということは建築の歴史においても稀に見る減少であろう。

このシャルル・ド・ゴール空港が作られて既に40年近い月日が流れている。その間に「空港」という場所の使用頻繁度は加速度的に上昇し、その場で過ごす人々の時間も意味も激しく変貌した。

現代の都市において「閾」となるべきこの「空港」建築。現代の空港の代表的作品であるこのシャルル・ド・ゴール空港を改めてみることで、40年以上も前に人類が来る21世紀において空の移動の頻度が増し、空港という施設の持つ重要度が変化していく上で、どのようなブループリントを持って設計が行われ、40年という時間の中でその想定のどこが当たり、なにが偏差したのかを見ることで、今後の空港に求められる問題に想いをめぐらすことにする。





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