オーストリアから再度ドイツに向かう前に、晴れ上がった空の下で少しだけ現代建築を見ていこうと言う事で立ち寄ったものの一つ。事前の調査ではひっかからなかったが、パートナーがどこかのサイトで見つけたようで、市の中心にあるUNスタジオ設計の変電施設を見に行くことに。
昨日見たLandhausplatzのすぐ近くの少し街路を入ったところにあるので、これは知っていないとなかなか見つけられないなと思いながら、その黒い石のような不思議な建物を観て回る。
UNスタジオ(UNStudio)はオランダ人のベン・ファン・ベルケル(Ben van Berkel)とカロリン・ボス(Caroline Bos)によって作られたロッテルダムに拠点を置く建築事務所。ベルケルがAAスクール出身で、ザハの教え子であり、その後ザハのユニットを引き継いで教鞭をとっていた事からも、かなりコンセプト的でダイアグラムなどで明確に設計手法をグラフィック化する事務所で、ここ最近は世界中でプロジェクトを展開するスターキテクト事務所の一つとして活躍している。
代表的な作品を見てみると
1996 Erasmus Bridge(オランダ)
1998 Mobius House (オランダ)
1999 Het Valkhof Museum (ネイメーヘン, オランダ)
2000 Waste Disposal Installation (デルフト, オランダ)
2000 NMR facility(ユトレヒト, オランダ)
2000 La Tour(アペルドールン, オランダ)
2001 Water villa's(アルメーレ, オランダ)
2002 Electrical substation(インスブルック, オーストリア)
2003 Living Tomorrow(アムステルダム, オランダ)
2003 Prince Claus Bridge(ユトレヒト, オランダ)
2004 Glleria Department Store(ソウル, 韓国)
2004 Hotel and Hamam(ツオーツ, スイス)
2004 La Defense Offices(アルメーレ, オランダ)
2005 Park and Riji Towers(アルメーレ, オランダ)
2006 Tea House on bunker(オランダ6)
2006 Mercees-Benz Museum(シュトゥットガルト, ドイツ)
2007 VILLA NM(ニューヨーク, アメリカ)
2007 Theatre Agora(レリスタッド, オランダ)
こうして見ると、このインスブルックの作品はキャリアの中間からやや前期に含まれるものだというのが見て取れる。
高圧電力施設ということで、内部への採光の為の窓が必要なく、ただ通気の為の開口が機械的に設置されており、丸みを持ったコーナーを持つ巨大な黒い石が、地面から浮かされて鎮座するような表情を見せている。
この石はマグマから作られる岩石である火成岩のようで、如何にも山の麓に位置する窓を持たない特殊な建築によくマッチしている雰囲気である。3階建てというスケールも周囲の住宅街にマッチしており、よく注意しないとそこにこんな建物があるということを、周辺住民ですら意識せずに過ごしているのだろうという、存在を消すデザインの在り方を考えながら、この街最後の建築へと足を向けることにする。
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