2014年2月16日日曜日

なりたいと願った職業

クタクタに疲れ果てた打ち合わせの後の会議室。ふと思うことがある。

世の中には様々な職業があるのだろうが、その中にはなんとなくその仕事についている人もいるだろうし、あまり多く考えなくてやっている仕事もあるだろう。しかしその中には人生の中で自分が強く「なりたい」と願わなければ決してその職業についていないという種類の職業がある。

恐らく「建築家」という職業もそのうちの一つに違いない。

社会的に責任を伴う職業であるから、大学で何年にも渡って専門教育を必要とし、専門教育を終了したことが条件としてその後実務を何年も経験した後にやっと始めてその資格試験を受けることが出来る。

厳しいその試験を合格してやっと国家に認められた建築士として名乗れることになる。そしてその建築士としての技能を十分に持ち合わせ、重い責任をしっかりと引き受けて、更に世の中が認めるような設計の能力を組み合わせることで社会にとって意義のある建築物を作っていくのが建築家。

日本人としてではなく、一人の職業人として世界に出て行き、大きな舞台で思いっきり自らの能力を試してみる。様々な国籍の仲間と一緒に、英語と中国語という世界言語を使いながら新しい価値を生み出そうと必死に毎日机に向かう。

そんな日常を考えると、恐らくどこかの段階で、そうなりたいと願った若かりし日の自分がいたのだろうと振り返る。だからこそ、今こんな日常を送っているのだろうと。

そしてどんなに苦しい日常だといっても、やりたければ、どれだけでも自分が想い描く素晴らしいと思うディテールを描き、それを適応できるプロジェクトがあり、それを語り合う仲間もいる。恐らくそれは喜んでよいことなのだと思う。

90%の日常が問題ばかりだと、どうしても物事の良い側面が見えにくくなってしまう。しかし今の自分が立っている場所は、かならずかつての自分が望んだ場所なんだという事実を忘れずに、問題は今の自分がその先にどんな場所に立つことを望んでいるかであり、それがどれだけ素晴らしい場所なのかを考えて今を過ごすことなんだと自分を奮い立たせて会議室を後にすることにする。

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