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2017年4月15日土曜日

「ライオン~25年目のただいま」 ガース・デイビス 2016 ★★

ある日の新聞で、この映画に関する記事を目にした。

実話を元にした話であり、インドの駅で家族からはぐれ迷い子となり、その後家族を見つけることができず、オーストラリア人夫婦の元へと養子縁組で移住したインド人の青年が、成長後自らの本当の家族への想いに駆られ、グーグルアースと自らの記憶を元に細い糸を手繰るようにして自らの家と家族を見つけるという内容。

今年のアカデミー賞の作品賞の候補にも上がっており、様々なところで高評価を得ているというのは聞いていたので、ぜひとも見ておくべき一作だろうと手にとることにした。

主演のインド人の青年を演じるのは、デーヴ・パテール。「スラムドッグ・ミリオネア」でかつてアカデミー賞作品賞を受賞したあの少年がこれほどの青年に成長した姿をみるのは、それはそれである種の感慨を感じることになる。

ニコール・キッドマン演じるオーストラリアのタスマニアに住む豊かな夫婦は、わざわざインドから養子を引き取るのは、自分たちに子供ができなかったからではなく、この世界にはすでに多くの人間がいて、それを増やすことよりも、すでにこの世にいて、恵まれない子供たちを引き取り育てることの方が、この世界に何か良いことをできるのではという信念によってだと話を主人公に語ることが、結局はインドに赴き家族に再会するのを後押しするあたりも、誰がどう見てもポリティカル・コレクトネス満載の一作であり、その意味で様々なところで高評価を得ているのもまたしかり、

冒頭のドローンによって可能になった新しい映像美が、スケールをまったく無視してズームインしていくグーグルアースの映像とリンクさせる手法など、映像の観点からみても素晴らしい点はあるのだろうが、記事で読んだ物語のそれ以上でも以下でもないという感想を持って見終えた一作。

ガース・デイビス(Garth Davis)









デーヴ・パテール (Dev Patel)
ルーニー・マーラ(Rooney Mara)





2017年1月10日火曜日

映画の季節

年が明けるとすぐに報じられるゴールデン・グローブ賞の模様。その報道の最後には必ず2月終わりに行われるアカデミー賞の受賞予想がついてまわる。そうかと思えば、二月頭から開催されるベルリン国際映画祭のニュースも報じられ始め、一気に映画熱が高まるのがこの季節。

普段はなかなか忙しく、今年の話題作など調べている暇も無いが、長期休暇と重なって、日本でぜひともこれらの映画賞の受賞、ノミネート作品でも映画館で観てみようかとどんな作品が話題に上がっているのか調べるのもまたこの季節の楽しみである。

今年最大の注目作品の「ラ・ラ・ランド」は必ず映画館で観るべき作品のようであり、トランプ次期大統領へのスピーチで注目を浴びるメリル・ストリープの「マダム・フローレンス」もヒュー・グラントとの共演が気になるところで、遠藤周作作品のハリウッド化、しかもマーティン・スコセッシの手によるものとして、数多くの日本人俳優も出演して話題の「沈黙」は必見であろうし、じわじわと昨年のキネマ旬報ベスト・テン日本映画で一位まで上り詰めたという「この世界の片隅に」もこの機会にぜひ映画館で観てみたい作品であるし・・・と思いをめぐらす。アカデミー賞やゴールデン・グローブ賞のノミネート作品とその日本公開スケジュールをチェックしながら過ごすこの時期もまた、季節の風物詩ということだろうと思いながら、選択した映画をカレンダーに楽しみとともに入れていくことにする。

2015年3月3日火曜日

アカデミー賞は映画館で

「バードマン」を観終えて、改めて振り返ると、やはりアカデミー賞などを受賞する作品は、機内で見てしまうのではなく、ゆっくり映画館で見るのが相応しいのではと思う。

そして一人で観てしまうのではなく、見終えた後に感想を言い合い、その中で意味の再発見を行うように、誰かと一緒に観たほうがよいと思う。

そんなことを思い妻に、「来年からはアカデミー賞受賞作品は一緒に映画館で観ることを慣習としよう」と言うと、ややポカンとされるので、上記の思いを伝えると、「好注意」と喜ばれる。

来年は映画館に足を運ぶまで機内で我慢しければと思いながらどんな作品を観ることになるのか楽しみが一つ増える。

2014年6月3日火曜日

「ゼロ・グラビティ」アルフォンソ・キュアロン 2013 ★

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2014年(第86回)アカデミー賞 監督賞、撮影賞など7部門受賞
2014年(第71回)ゴールデングローブ賞 監督賞受賞
2014年(第67回)英国アカデミー賞 監督賞受賞
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アカデミー賞で最多部門を受賞したと何かと話題のこの映画。恐らく宣伝で映画の内容は理解できてしまっていると思われる、それほど深いストーリーでは無いと思いながらせっかくなので鑑賞してみる事にする。

サンドラ・ブロックとジョージ・クルーニーを主演に配し、無重力状態で作業をする宇宙飛行士が、事故で宇宙空間に投げ出される極限状態を描き出す。

無重力に宇宙空間という多くの観客にとって未知の空間。その恐怖をどれだけ表現できるか。地球上とはまったく違った物理が支配する空間で、以下に人間が非力な存在となるのか、その中で地球上と同じ肉体で向き合わなければいけない宇宙飛行士。その極限名精神状態。

そんな誰も描いたことのない映像を作り出すことに、映像の世界に身をおくプロフェッショナルとしてどれだけ魅力を感じるかは想像に難くない。しかし、これだけCGが発達し、現実の世界では見ることができない世界を見せ付けられている現代人にとっては、やはり映像の新鮮さもさることながら、それを成立させる物語に、宇宙空間での事故によって一人で立ち向かわなければいけない状態というものからもう一つ深さがあればと思わずにいられない。

恐らくそれが、監督賞の受賞にとどまっている各賞レースの結果にも現れているのだろうと想像する。

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スタッフ
監督アルフォンソ・キュアロン
製作アルフォンソ・キュアロン、デビッド・ハイマン
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キャスト
サンドラ・ブロック ライアン・ストーン
ジョージ・クルーニー マット・コワルスキー
エド・ハリス ミッションコントロール(声)
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作品データ
原題 Gravity
製作年 2013年
製作国 アメリカ
配給 ワーナー・ブラザース映画
上映時間 91分
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2013年5月19日日曜日

「つみきのいえ」加藤久仁生 2008 ★★



アメリカならば、先に逝ったお婆さんとの思い出を胸に生きるお爺さんが、空に飛んでいって大冒険を繰り広げるという、陽の世界なら、日本はそのお婆さんとの思い出は、沈んだ水の底にあるという、なんとも陰な世界観。

数年前にアカデミー賞のなにかの部門で受賞したと覚えていたので気になってみてみた一本。

無声映画で雰囲気のある画風。そして地球の行く末を暗示するような海面の上昇によって水没していく街と、それに伴って上へ上へと積み上げられる家。

設定もストーリーも芸術性もレベルが高いので期待をしてみていたが、あっさりの幕切れ。まぁこういう作品はそういうものだろうと一人で納得してみることにする。



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第81回(2009年)アカデミー賞 短編アニメ映画賞
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2013年1月20日日曜日

「ハッシュパピー バスタブ島の少女」ベン・ザイトリン 2012 ★★



サンダンス国際映画祭グランプリ受賞に、主役の女の子が史上最年少で米アカデミー賞主演女優賞にノミネートされるなど、何かと前評判の高い一作。

インターネットがインフラ・レベルとして生活に入り込むようになった現代の情報社会では、どんな映画を見る時にも、既に前情報としてどの映画祭で賞を受賞したということを知っていることになる。

それらの情報から、これはどこで評価を得た映画なんだ、どの映画祭がどのような作品に賞を与える傾向があるか大体イメージを持ち合わせていると、見る前にこの作品はやや芸術系で派手さは無いが高い評価をうけた良い映画なんだという先入観を持って見ることとなる。

それが情報社会の宿命であり、それらの偏見のなか、自分なりの受け取り方をできるかどうか、自分の視点で判断ができるかが極めて重要になってくる。そんなプレッシャーを感じなければいけないほど、多方面から絶賛されている一作。

原題の「Beasts of the Southern Wild」。これがデビュー作という29歳の新人監督ベン・ザイトリンが、若かりしころからこのチャンスを掴み取るまでに温めつくしてきたと思えるアイデア、想いが詰まった濃厚な映像作品となっている。圧巻は過酷な環境のなか成長していく子供の心の中で育つその野性の象徴として描かれる獣たち。一体どうやって撮影したのか?と思わずにいられないその迫力。

舞台は原住民文化が多く残るといわれるルイジアナ州。居住が許されない川沿いに独自のコミュニティを作り人種も関係なく住み着く人々。そのコミュニティはバスタブと呼ばれ、コミュニティの中で教育を行い、自足自給的な生活を営む。

そのバスタブの最大の脅威は、突然襲ってくる大規模な嵐。巨大な嵐は川の水を氾濫させ、工業地域へと氾濫が押し寄せないように政府によって作られた堤防が水の流れをせき止め、バスタブのある地域の多くは、水の中へと沈むことになる。

そんな話を見ていると、かつて訪れたデンマークの首都コペンハーゲンで現地の建築家に案内してもらった政府公認の自治区、クリスチャニア(Christiania)を思い出す。税金を支払うことを拒否したヒッピー達が集い独自のルールを作り出して暮らしている地区。

案内してくれた建築家によると、そのコミュニティに入るためにはコミュニティの中の誰かの紹介がなければいけなく、一度コミュニティに入ると、自治会によって割り振られて仕事をして、食事などは給付されるという。そんな訳で、現代社会から敢えて隔絶した理想郷のイメージが重なるのか知らないが、世界中の有名アーティストがここでコンサートを開くことを願う人も多いという。

そんな話を思い出す現代の近代社会に属さない人々の話。物理的距離はそんなに遠くはないければ、自分達の乗っているルールから離れているだけで、異端としての距離が現れて、急に「あちらの世界」的な見え方がしてくるから不思議である。

世界がフラットになった情報社会。何でも目新しくはなく、なんでも聞いたことがある、何でも知っていて、何でも調べればすぐ出てくる。そんな中でも新しい物語を作らないといけない、見つけないといけない。そうなればなるほど、どんどん重箱の隅を突き、こんな人たちもいたんだ、こんな生活まだあったんだ、という風にネットではたどり着くことの出来なかった場所まで世界を広げ、より透明へしていく。

しかし、それは今まで知られてなかったことを、また一つネットのデータベースに加入させて以上にはならず、映画として何かしら新たなるブレイク・スルーをもら足したかといえばそうともいえない。

だから難しい。誰もが知ってる時代だからこそ、作り手の苦難が強く見える一作。それだけ悩み、現代を考慮し、それでも映像の力を信じたつくりでの想いがにじむ一作。

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第28回サンダンス国際映画祭グランプリ 最優秀撮影賞受賞
第65回カンヌ国際映画祭カメラドール
第85回米アカデミー賞主演女優賞、作品賞、監督賞、脚色賞ノミネート
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スタッフ
監督 ベン・ザイトリン
脚本 ベン・ザイトリン

キャスト
クワベンジャネ・ウォレス
ドワイト・ヘンリー
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作品データ
原題 Beasts of the Southern Wild
製作年 2012年
製作国 アメリカ
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