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2015年10月6日火曜日

酒列磯前神社(さかつらいそさきじんじゃ) 856 ★★★★


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所在地 茨城県ひたちなか市磯崎町
主祭神 少彦名命
社格  式内社(名神大),旧国幣中社
創建   856
機能   寺社
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海岸沿いを車で走っていると、方向感覚が失われる。その為に参道の向きがてっきり南北だと思っていたが、改めて航空写真で見てみると、西から東へ人工性を現す線が延び、それを受けるように社殿が建ち、その後ろには海が広がっているのが分かる。つまり参道からアプローチをすると社殿の後ろから太陽が昇ってくるという構成である。

朝一番で参拝した大洗磯前神社と深い関係にあり、同じ主祭神を祀り二つの神社で一つの信仰を形成しているという。大洗磯前神社では主祭神に大己貴命 、配祀神(はいししん)に少彦名命を、こちらの酒列磯前神社ではそれが逆になり主祭神に少彦名命 、配祀神に大己貴命を祀っており、二つの神も海から現れたという伝承にそって、海への方向性がとても強い配置となっている。

大洗磯前神社ではアプローチは海から丘へという東から西の方向性であったが、この酒列磯前神社ではそれも逆になり西の森から東の海への方向性となっている。一の鳥居の後ろに控える樹叢はまるでトンネルの様に上部で繋がり、その下にポッカリと暗い口を開いている様である。

歩いてみると良く分かるのだが、300mほどの距離があるこの参道。微妙であるが、上下に起伏しているようである。しかもそれが一定ではなく、一の鳥居からまず微妙に上昇し、その後境内に向かって下っていくというもの。明治神宮に向かう表参道とは逆の構成で、加速度を持って社殿に落ち込んでいく、そんな感覚にとらわれる。

そのトンネルにおばあさんに手を引かれ、足元のおぼつかない赤ん坊がヨチヨチと歩いていく姿を見ると、このような場所が日常の一部としてあるのは、きっと強い感受性を持った子に育つのだろうと勝手に想像を膨らませる。

暗い参道を前方に強く意識を向けられながら進んでいくと、突然左手、つまり北側にポット森が切れて道を共に風景が飛び込んでくる。森という無方向性の場に道という方向性を持った直線が風景を作り出す。その素晴らしい一例。

境内前の二の鳥居前に掲示板が置かれており、その中にデカデカと「きもだめし禁止」の文字。このトンネルと雰囲気を持ってすれば、夜にはさぞや恐ろしい空間へと変貌するのだろうと想像する。近寄って見ると、その張り紙の上には大きな蜘蛛がガラスに張り付いており、如何にもな演出してくれている。

参道を行き着いた先にポッカリと広がる空間。そこで出くわす社殿とその後ろに意識付けられる大海原。そして上に広がる切り取られた空。向き合う自然が強力であればあるほど、またそこから受け取る恩恵が大きければ大きいほど、人々の畏怖の念はまた強まったはずで、そこから自然の力と向き合う場所として作られたこれらの寺社の空間が長い年月をかけてこの地で人々が積み重ねてきた感受性の具現化として、このような素晴らしい空間になっているのだと改めて感心する。

素晴らしい参道と、参道によって生み出された強い方向性に大きな意味と物語を持った素晴らしい神社である。



















2014年2月3日月曜日

江津市役所 吉阪隆正 1962 ★★



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所在地  島根県江津市
設計   吉阪隆正
竣工   1962
機能   市役所
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こんな風に真面目に一つ一つの記事を書いていたら、山陰旅行を書き終える頃には年末になってしまっているだろうと理解し、簡潔に方向を変えることに決める。少しくらいライフ・ログから漏れてしまう感情は余り気にしないようにと心に決める。

さて、昨晩すっかり酔っ払い、どのタイミングで寝たのか覚えておらず、寝起きと共に内湯に浸かり昨晩の記憶を整理する。そのせいですっかり寝坊となってしまったが、昨日に本日分の立ち寄り地を二つほどクリアしていたので1時間の余裕がここで役に立つ。

素泊まりなのですぐに用意をしてチェックアウト。ここまでは順調にきていた天候も、本日から曇り模様。既に振り出した細かい雨を気にしながら、温泉街を後にする。如何にも日本海という表情をし始めた空模様を心配しながら、暫くして到着する江津市(ごうつし)。

山陰地方と県内の市の中で最も人口が少ないという総人口24,540人のこの江津市。街の中心を流れるのは、中国山地を山陽側から貫いて流れる数少ない河川であり、中国地方最大の河川である江の川(ごうのかわ)。この江の川が日本海に注ぐ港という意味から江津市と名づけれたこの地は古くから朝鮮との貿易拠点となった港町でもある。

車で市の中心に向かうと渡る橋から眺める川岸の風景。煙を吐き出す工場が立ち並びなかなか壮観な風景を見せてくれる。

線路を渡って少々分かりにくい道を入っていくと丘の上に待ち受けるのは、Aの字の構造体で持ち上げられた大きなボリューム。この建物を今から50年以上も前に設計したのは、日本から海を渡り近代建築を学ぶ為に巨匠ル・コルビュジェに師事した三人の日本人建築家(前川国男、坂倉準三、吉坂隆正)の一人である吉坂隆正。

コルビュジェの元で学んでモダニズムを自らの体験の中で培ったプリミティブな感覚を見事に融合させ、独特な建築を作り出していった山登りでも有名な建築家である。

コルビュジェが提唱したピロティがまずは来訪者を待ちうけ、大きく持ち上げられた重そうなボリュームが庇をなってエントランスにアプローチする。それとは別に、特徴的な石に覆われた螺旋階段で上階に上がり、ブリッジを渡って直接上階にもアプローチできるようになっている。

この階段の途中から、線路の向かいに立っている次の目的地が目に入るが、なんとも清掃センターかのようなデザインに、やはりこちらの表情豊かな建築の方が面白いなと思いながら中に入っていく。



















2014年2月2日日曜日

大社文化プレイス 伊東豊雄 1999 ★★


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所在地  島根県出雲市大社町杵築南
設計   伊東豊雄
竣工   1999
機能   劇場、図書館
構造   鉄筋コンクリート造、一部鉄骨造
規模   地上4階
敷地面積 20400㎡
建築面積 5567㎡
延床面積 5847㎡
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出雲の地には、その風景に相応しい名匠の作品が体験できるいくつもの建築がある。こちらも2013年プリツカー賞受賞者である伊東豊雄氏の作品。出雲の文化活動の中心となる、図書館と劇場を併せ持った複合施設である。

この作品の大きな特徴と言えば、図書館部分を覆うスロープ状の屋上緑化。地面の芝生がそのまま丘を形成し、「緑のカーペット」となりその下に建築が埋まっている構成で、下記のリストの様に、伊東氏の作品の中で何度も何度も繰り返し現われ、一つの建築言語として発展させてこられた要素である。

1991 八代市立博物館・未来の森ミュージアム
1999 大社文化プレイス
2005 ぐりんぐりん
2006 国営昭和記念公園・花みどり文化センター(アトリエ・ワンとの共同設計)

建築が如何に大地と一体となり、そして訪れる人が地形を楽しむように緑の丘を登り、自然を楽しむように寝転がったり駆け上がったりとする場として建築が存在し、自然の中に建築を埋もれさせることができるか。そんなビジョンを感じることが出来る作品である。

円形を切り取ったようなプランを採用し、アプローチしてくるとまず徐々にせりあがる緑の丘を目にしながら、今度は円形の平面が奥へ奥へと引き込んでいくように立ち上がってくる壁面を見せていく。

背が十分に高くなったところから中心に向かって内部に入って行くと、太陽光が燦燦と降り注ぐ背の高いロビーの中に、矩形と円形の二つのホールのコンクリート壁が現われる。右を見えるとこの建物の肝でもある屋上緑化のスロープがせり上がる断面が内部から良く見えるようになっている。

地域の文化拠点として上手く使われているのが良く分かるように、当日もホールの一部は地元の高校の吹奏楽部によって練習場として使用されているようで、ホールには練習をサボった様子の高校生のカップルが床に腰を下ろしておしゃべりを続けている。

そんな様子になんだか懐かしい思いをしながら外にでると、緩やかにせりあがっていく「緑のカーペット」の脇に設置されたベンチに、こちらも練習を終えたのか二人の女子高生がおしゃべりをしている様子。

こちらも「なんだかいい」と気分も上々に、小走りで緑の丘を駆け上がってみる。その後、なんだか高校時代に戻ったような気分で木製ルーバーの詳細などを観察し、次なる目的地に向けて車に戻ることにする。