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2015年4月5日日曜日

「鬼神伝」 川崎博嗣 2011 ★

現代に住まう中学生が、ある日謎の鬼に追われ、そこを救ってくれた僧侶に連れられ時空を超えて1200年前の平安の都である京都にタイム・トラベルし、そこで人と鬼の戦いに巻き込まれる。

というストーリー。

最初の「鬼」の描き方が何かもやもやとして気になったので見てみたが、ことごとくつくりが浅い一作。平安の都の描き方がアニメーションだからこそできる特別な表現になっているかといえばそうでもなく、「鬼」として虐げられる部族と貴族の戦いで何が正義かを悩む主人公の姿も「どこかで見た設定・・・」と思わされるだけ。

なぜこの主人公がわざわざ時空を超えて平安から現代までやってきて呼び寄せられたかの深い設定も感じられず、平安という文献がそれほど残されていないだけにまだ不思議な世界観が通用する距離感とそこにアニメの手法を被せることでの期待感は分からなくも無いが、それがうまく融合されなかったという感じだろうか。

八百万の神々がもっと身近であったはずの日本の日常を、ぜひともアニメの力で説得力を持って描き出す。そんな作品を期待せずにいられない。
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スタッフ
監督 川崎博嗣
著者 高田崇史
脚本 荒川稔久、川崎博嗣
イラスト 村上豊
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キャスト
天童純:小野賢章
水葉:石原さとみ
源雲:中村獅童
源頼光:近藤隆
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2014年8月31日日曜日

「黒と茶の幻想 上・下」 恩田陸 2001 ★★★★★

高校の卒業15周年を記念しての発足させて高校の同窓会。5年に一度と決めた全体同窓会が来年の夏に迫ってきたために、各クラスの世話人に「そろそろ始動し、役割分担をしていきます」とのメールを送る準備をする。

そんな時に手にしたこの一冊。地方の公立新学校の卒業生が東京の大学に進学し、そこで出会ったもう一人の友人とともに、大学を卒業後、就職、結婚、出産などを経験し、40歳を目前にした時期に、思い切って4人の同窓生での小旅行を決行する。そのテーマは「非日常」。

ドンピシャで今の自分の年齢に当てはまることと、登場人物達の背景などもかなり感情移入できる部分もあり、久々に恩田作品で一気読みしてしまった作品である。恐らく相当部分が、著者自身の人生に重なる部分もあるのだろうと思うが、逆に言えば、地方出身で東京に大学に進学する多くの人がどこかしらに自分の人生と重ね合わせることができる物語であるという点においては、「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」と同じ分類ができる作品である。

最近はあまり当たりの作品に出会わなかった恩田作品であるが、やはり日常のすぐ横の非日常に入り込み、その中を「歩きながら」物語が進んでいくというゆっくりした動作の中での物語りは、読書以上の身体体験をもたらし、非常にスムースに物語の同化させてくれる。

「上と外」でも見られてようなうっそうとした森の中で流れる時間と空間は、日常を過ごす都会の中のそれとはまったく違ったものになり、今まで見えなかったものを見えるようにし、聞こえなかったものを聞こえるようにしてくれる不思議なデバイスとして扱われる。

日本に暮らしていると山に上ることは多々あれど、森の中を歩くということは非常に少なくなってしまう。その森を歩きながら、前と後ろに歩いている同行人に語りかけながらも、その実自分に向けて発している言葉が森の中に漂うのを感じるのは心にとって計り知れない効用をもたらすのであろう。

多感な高校時代から20年近い年月を過ごし、その間に進学、就職、結婚、出産などの様々な人生ゲームの一ページをクリアしてきてはいるが、かつて思ったほど自分の中では当時思い描いていた未来の自分の姿にはなっていないと理解しながら今を生きる主人公達。

自分で選ぶことができず、生まれた場所で振り分けられる人生の第一部。社会に出ていき、仕事上の関係性で付き合うことになる人生の第二部で出会う人は、どうしても根底のところで共感をもてないのは、マイルドヤンキーだけに限られて事ではなく、こうしてたまに同級生であつまるまともな大人たちもまたしかり。

自分にとっての人生の根っこがどこにあり、その根っこを共有している人々が人生にとってどれだけの意味をもたらしてくれるかをしっかりと描くのが「夜のピクニック」しかり、著者の一番の強みであろう。

歩きながら話す。そして、旅の中で非日常に出会い、自らの過去に会いに行く。

そんな旅を重ねることができること。
そんあ旅を共有する仲間がいること。

それが人生の豊かさなのだろうと思わずにいられない。


2013年6月4日火曜日

「ねじの回転 FEBRUARY MOMENT 上・下」 恩田陸 集英社文庫 2002 ★★★★


タイム・トラベルという言葉が刺激する人類の想像力。何度も何度も描かれきた物語の中で、それでもまだ手付かずだったスペースがあったのかとまずは驚愕するこの作家の想像力。

人が過去に戻れるようになれば、現在の自分達に有利なように過去の歴史に手を加える。それは容易に想像がつく。では、今度はそれを防止する側、監視する側が現れる。国家レベルを超えて、人類全体としての組織がそれに当たる。まさに国連のような組織。

そして過去に戻って歪められた歴史を修正することになるだろうが、完全に一致させずとも、押し寄せる波のように、歴史も長い年月をかけて自分自身を修正するように振舞うという過程を作り出す。これは斬新。

しかし、その上を行くのは、過去に戻って歴史に手を入れるのはオリジナルの歴史を歪めることになるのだが、ではどこまでをオリジナルの歴史を定義するのか?つまりは、こうして人類が過去に戻って歴史に手を加えることすれ、それはオリジナルの歴史の一部なのではないかというクラインの壷の様な設問。まさに禅問答。

こうして設定されたタイム・トラベルの新たなる地平線に絶対の自信があるために、物語の最初の3分の1は、2.26事件というかなり思い昭和の歴史をただ淡々と描き、一体何が行われているのかといういかにも説明的な文章は一切書かないその潔さ。

タイム・トラベル小説に新たなる一石を投じることになる名作ではないだろうか。

2013年3月17日日曜日

「時をかける少女」細田守 2006 ★★★



「タイム・トラベル」と言えば、ミステリーかSFというのが王道だと思っていたら、そこにまさかの「恋愛」と「青春」を絡ませるところは流石の筒井康隆というとこか。

「もし、過去に戻れたら・・・」

という質問に対して、様々な立場の人が様々な思惑を持ってその恩恵を受け取るというのを非常によく描き出したのが「リピート」 を経験した後では、どうしても誰もが打算的な動きをするものだと思いがちだったが、毎日そこそこに楽しい青春真っ只中の悩みも可愛いらしい程度の高校生が過去に戻れるとなったら、こんなに話が変わるのかと非常に納得してしまう。

「妹に食べられてしまった、取っておいてプリンが食べたい。」
「仲いい友達が急に切り出した告白を聞かなかったことにしたい。」

なんて、とても単純な目的になんだかほのぼのさせられる。

と、同時に、「好き」とか「付き合いたい」とかが毎日のすべてであり、副次的に「部活」とか「勉強」が彩りを加える高校時代の時間の過ごし方が、とても自然に描かれて、それがとっても懐かしく感じられるシーンばかり。

テレビやドラマで何度も実写化されてきた原作の持つ魅力が、アニメという世界で細田守という才能によって映像化され、新たなる世界観が足されたような一本。「サマーウォーズ」につながる様な、「時間」の描き方が覗き見れるような一作である。


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監督 細田守
原作 筒井康隆

キャスト
仲里依紗 紺野真琴
石田卓也 間宮千昭
板倉光隆 津田功介
原沙知絵 芳山和子
谷村美月 藤谷果穂
垣内彩未 早川友梨
関戸優希 紺野美雪
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