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2016年11月9日水曜日

フォーラム・デ・アール(Forum des Halles) パトリック・ベルジェ 2016 ★



「やっと完成した」と言われる建築が2016年パリに完成した。それはレ・アール(Les Halles)とも通称されるが、正式にはフォーラム・デ・アール(Forum des Halles)と呼ばれる巨大な複合施設。場所はパリのど真ん中1区で東に位置するポンピドゥー・センターからまっすぐ西に数百メートルの場所で、地下鉄やRER(郊外高速電車)が乗り入れるパリ中心地の交通の要として機能する。

なぜ「やっと・・・」と言われるかは、この場所の歴史を紐解かなければならない。

まず最初に、パリ1区という場所性を見ても分かるように、中世からこの地は大都市パリの中心として機能しており、1137年当時はシテ島をぐるりと取り囲むようにしてできていたパリの郊外に位置したこの地に、中央市場が建設される。

時代は下り、近代のパリ大改造に併せるように1848年、建築家ヴィクトール・バルタール(Victor Baltard)の設計により、衛生面での問題を抱えていたこの中央市場の大改修が行われる。時代の流れを受け、街中に現れていた新しい時代を象徴するインフラや建築同様に、鉄をガラスをふんだんに使った透明感のある軽やかなデザインの市場として1870年に完成する。

さらに時代は下り現代へ。各時代において時代を牽引する商業空間を生み出してきたパリも新しい時代に適応すべく、街のあちこちに巨大なショッピング・モールが建設される。1979年、当時のシラク大統領時代に、ここ中央市場跡地も新たに、フォーラム・デ・アール(Forum des Halles)として商業施設として生まれ変わることになる。

しかし長いことその利便性やデザインに対して様々な問題定義がなされ、その結果2003年に設計コンペが開催され、フランス人建築家のダヴィッド・マンジャン(David Mangin)の案がシンボリックな大屋根で敷地を覆うという大胆な案で一等を獲得するが、その案に対しても再度市民から多くの批判が飛び交い、全体の配置計画は踏襲しながらも2006年に再度国際コンペが行われる。

その結果、パトリック・ベルジェ(Patrick Berger)の案が一等を獲得し、その案はマンジャンを曲線を用いて有機的な表現へと変換するもので、2012年についに建設が開始されるが、もともと地下鉄やRERが地下に通る大変複雑な場所であるために建設にも時間がかかり、6年の歳月を費やして「やっと」この度完成したと言うわけである。

そんな訳で、建築の世界に身をおいているものとしては、ぜひとも「カノペ(森の木々の梢)」と名づけられたその優雅な大屋根の空間を見てみたいと、地元のチームとの夕食の前の時間を利用して足を運んでみることにする。

巨大な空間を無柱で飛ばすためにか、軽やかという表現からは程遠いくらい重く、ごつい構造体はまるで巨大なコンドルが翼を広げて飛び立つ姿のようであり、覆われていると思っていたその屋根は、開放されており、あいにくの雨は地下に設けられた広場の上に設置された排水口からドボドボと胃液でも垂れ流すかのように階段の踊り場へと水を落とし、何ともいえないノイズを立てる。

屋根に覆われた下に独立して立つ小屋の建物の屋根には、大量の鳥が我が物顔で闊歩し、当然のことながら糞などで満ち、アラン・デュカスなど高級レストランが入るという左右の商業施設とは目と鼻の先でよく営業に支障が出ないなと思いながら、じっくり見て歩けば歩くほど、なんどもがっくりする気持ちになりながら、この建物のすぐ北に位置する古くから残るパリの一角の中にあり、生まれも育ちもパリだというフランス人お勧めのエスカルゴのお店へと足を向けることにする。


パリ1区














2016年11月7日月曜日

パサージュ・パノラマ ((Passage des Panoramas) 1800 ★★★



テュイルリー公園を北に抜け、少し遅めのお昼を取ろうと、マドレーヌ寺院付近の賑わっているカフェに入り、何とか見真似で注文に成功してお腹を満たし、途中で購入しておいたラデュレのマカロンをおやつとして楽しみながら、せっかくだからと北に位置する8区のギャラリー・ラファイエットの地下でつまみの適したお土産を物色し、一気に東に歩いて向かう先は2区に位置するパサージュ・パノラマ (Passage Panoramas) 。前回来た際にはあまりに早朝の為にまだ門が開いてなかったので、「ぜひとも今回は」と思っていた場所である。

建築をやっていれば、「パリといえばパッサージュ」と連想されるが、世界有数の大都市であったパリの雑踏の中に生まれたのが新しい商業空間であり、都市の産物でもあったこのパッサージュ。建物の外部空間にガラスの覆いをかけ半屋外空間として、様々な商店をリニアな空間に沿いながら楽しめることができる。

その後このモデルを一つの建物に押し込んでしまえという発想で生まれたデパート、つまり百貨店が生まれ広まっていくのはこのパサージュが生まれてからおよそ100年の歳月のち。そしてその百貨店の誕生からさらに100年がたった2000年前後には、世界の商業空間の新たなるトレンドとして巨大なショッピング・モールが世界を席巻することになる訳である。

しかし何かしらの建築における空間の祖形が生まれ、それが標準形として世界に広まっていくのには、間違いなく人々が惹きつけられる何かしらの快適性があり、そしてそれを波及させていく使いやすいフォーマットが存在しており、時代のニーズと技術的な発展に支えられていることは間違いなく、その誕生の場に身をおいて、当時この場所に惹きつけられた人々が何を求め、そして感じていたのかを少しでも理解することは、これからさらに多様化しつつも、確実にまた新しい祖形を生み出していく現代の商業空間を理解するうえにおいてもきっと役立つはずである。

このパサージュ・パノラマは子のあたらいに集まっていた切手商や絵葉書商、そして何軒かのレストランがこのパサージュに面して店を開いたことで人気となったと言うが、何と言ってもその名を世に知らしめたのは、パサージュの名前にもなっているパノラマ。今で言えば、iphoneのカメラ機能かと思われるが、当時のパリにおいては、パノラマとは、窓を持たない円形の建物の壁にそって360度展開する写真を展示し、それを中心から眺めることであたかも自分が実際にその場にいるかのような新しい空間体験をさせてくれる見世物小屋ということであり、自分も学生時代に、ある教授がこの建物の説明をしてくれ、その断面図を見せてくれた時のことも今でも鮮明に覚えている。

気になってその画像をgoogleで検索してみるが、見つけることはできず、アナログの記録凄さを改めて感じるとともに、ぜひともあの教授と再会し、このパサージュの魅力について語ってみたいと思いながら、狭い路地の様な空間に張り出した広告や、脇で食事を楽しむ人々の脇を通り抜けながら、何ともいえない心地よさを感じつつ、上部から降り注ぐ日の光を楽しみながら南へと抜けていくことにする。




パリ2区





2016年1月1日金曜日

パシフィックプレイス(Pacific Place,太古広場) Thomas Heatherwick 2011 ★★★



完全に建築界における次世代の中心メンバーとなったイギリス人のトーマス・ヘザーウィック(Thomas Heatherwick) 。ロンドン出身でロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)でデザインを学び、卒業後すぐに自らのデザイン事務所を立ち上げ、今では世界を代表する建築家の一人として様々な場所でプロジェクトを手がける。

主なプロジェクトを年代別に見ていくと

2001年 Blue Carpet, Newcastle-Upon-Tyne 
2002年 Paternoster Vents, Paternoster Square, London
2005年 B of the Bang, Manchester
2005年 Bleigiessen, Wellcome Trust, London
2005年 The Rolling Bridge (also known as "the curling bridge"), Paddington Basin, London
2005年 East Beach Cafe, Littlehampton, West Sussex
2006年 Longchamp store in the SoHo district of New York City
2006年 Interior, Konstam Restaurant, Kings Cross, London WC1
2008年 Southorn Playground, Wan Chai, Hong Kong
2007年 Boiler Suit, Guy's Approaches, Guy's & St Thomas' Hospital, London
2008年 Sitooterie II, Barnards Farm, West Horndon, Essex.
2009年 Studios Complex at Aberystwyth Arts Centre, Aberystwyth University
2009年 Extrusions, London Design Festival 09
2010年 "Seed Cathedral", the UK pavilion at the Shanghai Expo 2010
2010年 Spun Chair, Milan Salone 2010
2011年 Pacific Place, Hong Kong
2012年 London 2012 Summer Olympics and Paralympics cauldron
2012年 New Routemaster(London Bus, Borisbus, Borismaster)
2014年 Bombay Sapphire Distillery, Hampshire
2015年 Nanyang Technological University Learning Hub, Singapore
2016年 Zeitz Museum of Contemporary Art Africa, Cape Town
2016年 Pier55, New York
2018年 Garden Bridge, London

インテリアや家具的スケールの作品から、ある時を境に一気に建築へ、しかもかなり大規模な建築作品を手がけるようになり、今では建築を通り越してインフラスケールの作品まで手を伸ばしている。最近ではBIGとともにGoogle Mountain View Campusを設計したことでも良く知られる。

その重要な転換点ともいえるのがこの香港にある複合施設。イギリス・ロンドンを拠点とする巨大コングロマリットのスワイヤー・グループ(Swire Group,太古集团)が中華圏で知られる「太古(Taikoo)」の名前を冠した商業開発プロジェクトで、中国国内の拠点都市にも同様の手法を持って展開し、それぞれにおいて非常に商業的成功を収めている不動産開発の香港バージョンというわけである。

銀行群が密集する金鐘(アドミラリティ)の中心地に位置し、巨大なショッピング・モールと、三つのホテル、映画館、レストランなどが入った商業施設で、地下において直接地下鉄に直結していることもあり、非常に成功を収めているようである。

なんといっても、外構も含めてデザインを行ったヘザーウィックはこれだけ複雑な機能が入り組んでいるにも関わらず、非常に特徴的でまたうまく全体を統合する能力を見せて、建築設計の上でも非常に注目されているプロジェクトのため、ぜひとも一度実物を見てみたいと思っていた建築である。

分散させるのではなく、入り口付近に集中して配置したトイレは、恐らく世界でも最も有名なトイレの一つとなったのではと思えるほど、よくデザインされており、それが実際にどのように使われているのかを確認し、多用される曲線が、思ったよりは制御されており、しっかりと標準部分と特殊部分に整理されており、破綻することなく全体をカバーしていることなどを学び、外構の植栽周りのデザインや、天窓のデザインにいたるまで、しっかりと設計事務所の手が入っており、それが最後の施工までしっかりとカバーされてクオリティを保っている事実に、かなり衝撃を受けながら、地下に入っている広東レストランで、カリカリのクリスピー・ベリー・ポークを食べながら、じっくりと消化することにする。